『パラサイト』:1998、アメリカ
オハイオ州の田舎町。ヘリントン高校に通うケイシーは、校庭で奇妙な生命体を発見する。その生命体は教師達に寄生し、次々と仲間を増やしていた。寄生された教師は生徒を呼び出し、彼らの体を乗っ取っていった。
生命体の侵略を受けた高校の中で、難を逃れたのはわずか6名の生徒だけ。ケイシー、新聞部の部長デライラ、彼女の恋人でフットボール部のスタン、SFオタクのストークリー、不良のジーク、転校生のメアリーベス、という面々だ。
外見だけでは寄生されているかどうかは分からないため、6人の中にも敵がいるかもしれない。互いに疑いを持ちつつも、彼らは対策を考える。水分が無いと生命体が生きられないことを知った6人は、麻薬の利尿効果を利用して戦いを開始する…。監督&編集はロバート・ロドリゲス、原案はデヴィッド・ウェクター&ブールス・キンメル、脚本はケヴィン・ウィリアムソン、製作はエリザベス・アヴェラン、製作協力はタマラ・スミス=ジマーマン、製作総指揮はボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ワインスタイン、撮影はエンリケ・チェディアック、美術はケアリー・C・W・ホワイト、衣装はマイケル・T・ボイド、クリーチャー・デザインはベルニ・ライトソン、特殊メイクアップ&クリーチャー効果はハワード・バーガー&ロバート・カーツマン&グレゴリー・ニコテロ、視覚効果監修はブライアン・ジェニングス、音楽はマルコ・ベルトラミ。
出演はイライジャ・ウッド、ジョシュ・ハートネット、クレア・デュヴァル、ショーン・ハトシー、ジョーダナ・ブリュースター、ローラ・ハリス、ベベ・ニューワース、ファムケ・ヤンセン、ロバート・パトリック、ジョン・スチュワート、パイパー・ローリー、アッシャー・レイモンド、サルマ・ハエック、ダニエル・ヴォン・バーゲン、クリストファー・マクドナルド他。
青春学園ドラマとSFホラーをミックスさせたような作品。つまり、同じケヴィン・ウィリアムソン脚本の『スクリーム』のSFホラー版という感じだ。『スクリーム』『ラストサマー』に続く、青春ホラーの“3匹目のドジョウ”を狙ったのだろうか。
ケイシーをイライジャ・ウッド、ジークをジョシュ・ハートネット、ストークリーをクレア・デュヴァル、スタンをショーン・ハトシー、デライラをジョーダナ・ブリュースター、メアリーベスをローラ・ハリスが演じている。
先生達を演じるのは、ベベ・ニューワース、ファムケ・ヤンセン、ロバート・パトリック、ジョン・スチュワート、パイパー・ローリー、サルマ・ハエックといった面々。
それとなく豪華なキャスティングだったりする(B級ホラーとしては)。序盤、生命体に寄生された教師のウィリスが、「生きたいように生きればいい」とケイシーに告げるシーンがある。
その前のシーンでは、ある人物が同じ言葉を話している。
つまり、この言葉は生命体の親玉が誰なのかを示すヒントになっているわけだ。親玉が終盤まで正体を隠す必要は全く無いとか、なぜか親玉だけは人間の姿に変身することが可能だとか、辻褄が合わない部分や御都合主義が幾つもある。
まあ、B級ホラーなので、その辺りは許容範囲としておこう。監督がロバート・ロドリゲスで脚本がケヴィン・ウィリアムソンという組み合わせに期待したら、思いっきり肩透かしを食らってしまった。
ここでの期待とは、“おバカでハチャメチャな”B級ホラーとしての期待だったのだが、普通のB級ホラーになっている。『遊星よりの物体X』や『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』などの影響を受けているのは明らかである。そういった作品のエッセンスを誇張したり、笑いや毒を入れたりすれば、パロディーとしての面白さが生まれるだろう。
しかし、この作品は非常にオーソドックスなシナリオを、非常にオーソドックスな演出で描いてしまった。パターンを逆手に取っている部分もあるにはあるが、それはあくまでもわずかな部分に終わっており、それを徹底的に追及するという姿勢は見られない。鉛筆を掌に突き刺すとか、ハサミで胸部を刺しまくるとか、髪の毛が抜けて頭皮がネチャッと伸びるとか、切断された指が床を移動するとか、ホラーっぽい場面は幾つもある。でも、ものすごく普通。怖さは全く無いし、イカレっぷりも無い。
ストークリーにジャック・フィニィやロバート・A・ハインラインの作品について語らせたりしている辺りは、SFオタク的な趣味を挿入してニヤリとさせる作戦かと思わせる。しかし、そういう遊びは少しだけ。その部分でアピールするわけではない。敵への対抗手段が麻薬という時点で、“ブッ飛び作品”としての引っ掛かりはあるわけだ。
互いの正体を知るために麻薬を吸い込んでラリってしまう場面など、かなりバカっぽい。
だから、全面的にブッ飛んだ作品にするべきだったのだ。「みんな助かって良かったね」という大団円でハッピーエンドというのは、ホラーではなく青春学園ドラマのノリ。
カップル同士がキスして終わりとは、ヌルいねえ。
最後に登場する取材クルーに不審な動きをさせるとか、そういう引っ張りがあるかと思ったが。