『ベイスメント 院内感染殺人』:1973、アメリカ

スティーヴンス精神病院では、自分を軍曹だと思い込んでいるジャフィーと黒人のサムが窓から外を眺めている。ジャフィーは双眼鏡を構えて「奴らがいる」と告げ、サムは不安そうな様子を見せる。傍らにいる熟練看護婦のジェニーが、「大丈夫よ」とサムに告げ、もう夕食の時間なので窓から離れるよう促す。ジェニーはハリエットの部屋へ行き、赤ん坊の人形を本物のようにあやしている彼女に食堂へ行くよう促す。ジェニーが人形を置いていくよう求めて預かろうとすると、「触ったら殺す」とハリエットは睨み付けた。
サムは子供っぽい態度で、ジェニーに「スティーヴン先生が毎晩、スープをくれるんだ」と話した。ジェニーは彼に病院を辞めることを明かし、「もう限界なのよ」と述べた。ハリエットの部屋には患者のダニーが現れ、人形を奪おうとする。ハリエットは「やめて」と抵抗するが、ダニーが人形を持ち去ったので激しく喚き散らした。院長のスティーヴンスは自分を判事だと思い込んでいるキャメロンに、「斧を使うんだ」と命じる。キャメロンは斧を丸太に振り下ろすと、スティーヴンスは何度も繰り返させた。それを特別な治療として行っているスティーヴンスに、ジェニーは「もう辞めます。新しい人が来ると言ってましたよね」と告げた。
スティーヴンスが「辞めることは許さん」とジェニーの辞職を拒絶した直後、キャメロンが斧を彼の背中に突き刺して殺害した。ジェニーが悲鳴を上げているとジェラルディン・マスターズが駆け付け、キャメロンに斧を置くよう要求した。マスターズはキャメロンを落ち着かせた後、やって来たサムに「これからは私がみんなの面倒を見るわ」と告げた。するとサムは、ジェニーが辞めると言っていることを教えた。ハリエットが目を離した隙に何者かが人形を盗み、それをジェニーの部屋へ置いた。赤ん坊を捜し回ったハリエットはジェニーの仕業だと思い込み、彼女の首を絞めて殺害した。
その夜、看護婦のシャーロット・ビールが精神病院へやって来た。マスターズが応対に出て行くと、シャーロットはスティーヴンスに雇用されて住み込みで働くことになっていると説明した。マスターズが「私は何も聞いていない」と言うと、シャーロットはスティーヴンスとの面会を求めた。マスターズはスティーヴンスが患者に襲われて死んだことを明かし、後任として運営方針を変えるつもりなので雇うことは出来ないと告げた。
シャーロットはグリーンパーク総合病院の婦長を辞めてまで来たこと、上司に採用通知も見せたことを語り、書類を見せた。シャーロットが「スティーヴンス先生のことも話せば総合病院が復帰させてくれるかも」と言うと、マスターズは彼女の採用を決めた。マスターズはシャーロットを寝室に案内し、隣が患者の部屋であること、ドアに鍵が無いことを説明した。患者と医師を分け隔てなく生活させるのが、スティーヴンスの方針だったからだ。
シャーロットは老女のカリングハムから、「一人で歩き回っちゃダメ。逃げなさい。戻って来てはいけない」と警告された。翌朝、彼女はマスターズに連れられて談話室へ行き、数名の患者と会った。サムはハリエットに、「スティーヴンス先生は今朝もシャーロットを心配してた」と語った。ジャフィーが「時間だ」と呼びに来ると、サムは渋々ながら承諾した。ジャフィーはサムに「中に捕虜がいる。ドアを見張れ」と命じ、その場を離れた。
ジャフィーは院長室へ行き、「捕虜に見張りを付けました」とマスターズに報告した。マスターズは「ジェニファーのね。ありがとう」と告げた。彼女はシャーロットに、何度か脱走を試みたジェニファーは要注意人物だと教えた。サムについてマスターズは、スティーヴンスが4年前にロボトミー手術を施したこと、精神年齢が8歳になったことを告げた。アリソンについては、過去の不幸な男性関係のせいで誰彼構わずセックスしたがるようになったことを説明した。
アリソンはキャメロンを誘惑し、冷たく拒絶されると罵倒した。シャーロットはマスターズに勧められ、カリングハムを散歩へ連れ出した。するとカリングハムは、また病院を早く出て行くよう警告した。何者かが部屋の電話線を切ったため、シャーロットが電話を掛けようとしても通じなかった。サムが来て「スティーヴンス先生がアンタに伝えろって」と言うが、シャーロットが「貴方の中では、まだ先生は生きているのね」と告げると「何を伝えるか忘れた」と部屋を出て行った。シャーロットが院長室へ赴いて電話が繋がらないことを告げると、マスターズは「たまに故障するの。何とかするわ」と述べた。
翌朝、シャーロットはカリングハムを起こしに行き、舌を切断された彼女が血まみれになっているのを見つけた。報告を受けたマスターズは、それがカリングハムの自傷行為なのだと説明した。電話局の修理工であるレイが病院を訪れるが、ドアをノックしても応答が無いので中に入った。キャメロンが姿を現すと、彼は電話回線に異常があることを説明した。なぜ故障の連絡が無かったのかレイは尋ねるが、キャメロンは自己紹介するだけで要領を得なかった。
頭のおかしなキャメロンの態度や舌の無いカリングハムに怯えたレイは、病院から去ろうとする。マスターズが現れて用件を尋ねたので、レイは事情を説明した。マスターズは腹を立てながらも、レイを配線のあるクローゼットに案内した。アリソンはレイを見つけて誘惑し、クローゼットの扉を閉めた。シャーロットは包丁を持って隠れていたジェニファーに襲われ、悲鳴を上げた。そこへマスターズが駆け付け、ジェニファーから包丁を奪い取った。シャーロットは病院を辞めたいと言い出すがマスターズから「わざわざ働かせてやってるのに、今さらそんなことを。私の指示に従っていればいいのよ」と告げられた。
サムはキャメロンに、「スティーヴンス先生はシャーロットが来たことを知ってる。先生は彼女を助ける」と話す。キャメロンが「先生は私が斧で殺したはず」と口にすると、サムは軽く笑った。ダニーはアリソンを口説くが、彼女が本気になると嘲笑して去った。アリソンはキャメロンに「私を愛して」と迫るが、「触るな」と拒絶される。アリソンは「みんな一緒よ。出てって」と怒鳴り付けるが、キャメロンが立ち去ろうとすると「待って、助けてほしいの。昨日、男とセックスしたの。でも彼がいなくなった。彼を見つけるのに協力して」と語る。キャメロンは「証拠を見つけないと」と言って立ち去り、アリソンは泣き崩れた。
院長室に入ったマスターズは、机が荒らされているのを目にした。ダニーはジャフィーの部屋へ行き、双眼鏡で窓の外を監視している彼に「僕にも見せてよ」と告げた。ジャフィーが「出て行け」と怒鳴ると、ダニーは「何も見えないのに狂ってるよ」と扱き下ろした。ダニーが出て行った後、マスターズはジャフィーの部屋へ赴いた。彼女は「消灯時刻を守らないのね。私の命令は絶対よ」と叱責し、床に落ちている自分のカルテに気付いた。マスターズはカルテを丸めて燃やし、ジャフィーに手を出すよう命じた。彼女はシャフィーの掌に燃えるカルテを置き、「私への挑戦は許さない。二度と歯向かわないで」と告げた。
翌朝、シャーロットが薬品庫の薬を確認していると、サムが来て「スティーヴンス先生から伝言を頼まれた。アンタを助けたいって」と腕時計を差し出す。「この時計を持っていれば先生が助けてくれる」と彼が言うので、シャーロットは腕時計を受け取った。その夜、就寝していたシャーロットは、抱き付いて来るダニーに気付いて目を覚ました。すると部屋には斧を持ったたキャメロンも忍び込んでおり、ダニーを追い払って「奴には監視が必要だ」と告げる。キャメロンはシャーロットを殺そうとするが、「今より良い機会があるだろう」と告げて部屋を出て行った…。

製作&監督はS・F・ブラウンリッグ、脚本はティム・ポープ、製作総指揮はウォルター・L・クルツ、撮影はロバート・オルコット、編集はジェリー・キャラウェイ、美術はリンダ・ペンデルトン、衣装はフローレンス・ベイカー、特殊効果はジャック・ベネット、音楽はロバート・ファーラー。
出演はウィリアム・ビル・マッギー、ジェシー・リー・フルトン、ロバート・ドラカップ、ハリエット・ウォーレン、マイケル・ハーヴェイ、ジェシー・カービー、ヒュー・フィーギン、ベティー・チャンドラー、カミーラ・カー、ジーン・ロス、アン・マクアダムス、ロージー・ホロティク、レア・マクアダムス他。


アメリカのカルト映画ファンの間では知名度の高いポンコツ映画。
脚本を手掛けているティム・ポープは、後に『THE CROW/ザ・クロウ』の監督を務める人。
これが監督&プロデューサーとしてのデビュー作となるS・F・ブラウンリッグは、それまで音響マンや編集マンとしてラリー・ブキャナン(ポンコツ映画マニアには御馴染みの監督)の作品に携わっていた人。ちなみに『The Naked Witch』(1961)と『High Yellow』(1965)では音響、『The Eye Creatures』(1965)では編集、『金星怪人ゾンターの襲撃』(1966)では音響監修として携わっている。
サムをウィリアム・ビル・マッギー、ジェニーをジェシー・リー・フルトン、レイをロバート・ドラカップ、ジェニファーをハリエット・ウォーレン、スティーヴンスをマイケル・ハーヴェイ、ダニーをジェシー・カービー、ジャフィーをヒュー・フィーギン、アリソンをベティー・チャンドラー、ハリエットをカミーラ・カー、キャメロンをジーン・ロス、マスターズをアン・マクアダムス、シャーロットをロージー・ホロティク、カリングハムをレア・マクアダムスが演じている。
ロジャー・コーマン印の低予算映画なんかだと、後に有名になるスタッフやキャストが参加しているケースもあるが、この映画には後に有名になるメンツは誰一人としていない。

まず邦題には大いに問題があって、『ベイスメント 院内感染殺人』というのは全く内容と合致していない。
物語の舞台は精神病院だが、院内感染なんて起きないのだ。この邦題だと、まるでウイルスか何かが蔓延するかのようだけど、そんなのは全く無関係だ。
まさか、キチガイが感染するとでも言いたいのか。
この邦題はDVD販売元である有限会社フォワードの担当者が付けたんだろうけど、映画を見ていないのか、それとも見た上で「インパクトのある邦題にしよう」ってことで嘘をついたのか。

最初に完全ネタバレを書いてしまうと、ハリエットの人形をジェニーの部屋に置いて死に追いやったのも、レイを殺したのもマスターズだ。
そもそも彼女は医師ではなく、自分が医師だと思い込んでいる患者なのだ。つまり、軍曹や判事と同じようなケースってことだ。
ある思い込みを持ったキチガイがいて、それを隠したまま進行してオチに使うってのは、他の映画や小説なんかでも使われているネタだから、特に斬新さがあるわけではない(それが1973年という時代の作品であっても)。
とは言え、ネタとして面白味が無いってことじゃないんだけど、それを見事なぐらい陳腐に仕上げてしまうS・F・ブラウンリッグのセンスは、やはり師匠筋に当たるラリー・ブキャナンから受け継いだものなんだろうか。

根本的な問題としては、「オチが途中でバレちゃってる」ということが挙げられる。
「実はマスターズが犯人であり、医師ではなく患者だった」というオチは本作品の肝であり、そのドンデン返しに全て懸かっていると言っても過言では無い。しかし、かなり早い段階で、もうネタバレは始まっている。
まずマスターズが警察に知らせずに事件を隠蔽している時点で、違和感が強い。マスターズが本物の医師なのに警察に連絡しないとすれば、それはそれで陳腐だし。
あと、マスターズは本物の医者じゃないんだから、序盤でジェニーが彼女の前で「医者に対する看護婦」みたいな対応を取っているのは不自然だぞ。

そもそも、この手の映画では犯人を1人に絞り込むのが王道なのに、スティーヴンスとジェニーの殺害にはそれぞれ別の犯人がいるという形にしている時点で上手くないでしょ。
犯人を複数にすることがミステリーやサスペンスとしての面白さに繋がるなら大いに歓迎するけど、ただ散漫にしているだけなんだから。
あと、「ジェニーに罪を被せてハリエットに殺害させる」という方法を取るのなら、それ以降も基本的には「キチガイを騙して殺人を遂行させる」ってのを続けるべきだわ。
それ以降は本人が実行犯ってのは、統一感が無い。

ジェニーが殺されたところでタイトルロールに入るのだが、この段階で患者が全て登場していないってのは構成として下手。
どういう形でもいいから、そこまでに全ての患者を登場させておくべきだわ。
ちなみに、1960年代から1970年代に製作されたアメリカの低予算クズ映画に共通しているのは「無駄にダラダラしていてテンポが悪い」ってことなんだけど、この作品も御多分に漏れずである。
ダラダラしているのに上映時間が88分と短めなのは、ようするに内容が薄いってことでもある。

導入部で全ての患者を登場させないことで、ジェニーを死に追いやった容疑者が絞り込まれてしまう弊害もある。
ハリエットは実行犯だから除外するとして、残りはマスターズ、サム、ジャフィー、ダンの4名。
この内、ダンはチョロッと出て来ただけだし、ジャフィーは直前に斧でスティーヴンスを殺してボーッとした状態で部屋へ戻っており、サムはスティーヴンスの死体に寄り添っている。
そうなると、もう「人形を盗んでジェニーの部屋に置く」という利口な行動を取れそうなのは、マスターズぐらいしかいないんだよな。

あと、サムがマスターズに「ジェニーが辞める」と教えた直後に人形が盗まれて彼女の部屋に置かれるので、それも「犯人はマスターズしかいないじゃん」と感じさせる大きな要因になっている。マスターズがシャーロットのことを聞いていないってのも、その前にジェニーが「新しい人が来るんでしょ」と言っているので、その情報を知らないってことはマスターズは医者じゃないんだろうってのが何となく分かってしまう。
とにかく、語り口が何かに付けて下手すぎるのよ。
この映画って「犯人が誰で目的は何なのか分からない」ってトコで観客の興味を引っ張る形にしてあるので、にも関わらず序盤から犯人の正体も目的もバレバレってことは、どうしようもないのよね。
それがバレバレになった上で、それでも観客の興味を引き付ける要素が残っているのかというと、特に何も無いんだからさ。

ハリエットはダンに人形を奪われたはずなのに、いつの間にかベビーベッドの中に戻っている。
いつの間に戻ったんだよ。自分がダンの部屋へ行って取り戻したわけでもなく、誰かが取り返してくれたわけでもないのに。
で、ジェニーが預かろうとした時は「奪ったら殺す」と睨んでいたのに、ダンが奪い去った時には追い掛けて殺そうとしていない。そのくせ、次に人形が無くなると、ジェニーを殺害している。
行動がブレブレじゃねえか。
そこは「キチガイだから」ってことで納得できるモンじゃねえぞ。キチガイにもキチガイなりに、行動や思考の一貫性ってのはあるはずだろ。

シャーロットがスティーヴンスの面接を受けて採用され、病院へやって来るという時点で、彼女が怖い目に遭っても同情心が削がれてしまう。
何しろ、スティーヴンスの治療方法を見て面接を受けてるんだからさ。
スティーヴンスの方針がイカれていることは、ジャフィーに斧を何度も振り下ろさせているシーンだけでもハッキリと分かる。
つまり、シャーロットはイカれた治療方針を「素晴らしい」と感じて働くことを決めたんだったら、そりゃあ酷い目に遭っても自業自得じゃねえかと思ってしまうのよ。

何しろ、シャーロットは待遇の良い総合病院にいたのに、しかも引き留められたのに、わざわざ辞めて精神病院へ来ているのだ。
おまけに、スティーヴンスが患者に殺されたと聞かされても、なぜか全くビビらず、何とか採用してもらおうと食い下がるのだ。
ただのバカじゃねえか。
そこは「雇ってもらわないと困るぐらい追い詰められている」「不安があっても我慢して働かなきゃいけないような境遇にある」という状況に彼女を置くべきじゃないかと。

シャーロットを追い払おうとしたり、総合に喋ると言った途端に雇うことに決めたりと、とにかくマスターズは事件を隠蔽しようとしている。
だが、普通の医師なら隠蔽の必要性は全く無いし、むしろ早く警察に報告すべき事態だ。
それを隠蔽するのは、「私がみんなを守らなきゃ」という強迫観念に捉われているからだろうけど、そうなると、それを突き詰めた方がいいんじゃないかと思っちゃうのよ。
どういうことかっていうと、つまりマスターズを本物の医師という設定にして、でも「みんなを守らなきゃ」という気持ちが強すぎるあまり、キチガイ化してしまったという設定にするってことよ。

ジェニファーがシャーロットに襲い掛かるのは、本人の意思なのかマスターズの指示なのかが良く分からない。
マスターズの指示だとすれば、彼女が止めに入るのは筋が通らない。しかしジェニファー自身の意思だとすると、それはそれで「犯人が邪魔者を排除しようとする」という以外の殺意が発生しているのは話を散らかすことになっちゃうのでマイナスだ。
とは言え、そこでマスターズがシャーロットを殺そうとする理由は無いので(始末する気があれば、もっと早い段階で動いているだろう)、やはり本人の意志なんだろう。
たぶん「その辺りでシャーロットをビビらせよう」という程度の軽い気持ちで盛り込んだエピソードなんだろうけど、全体の計算とか、まとまりとか、そういうのは完全に無視しているわけだ。

その後にはキャメロンがシャーロットを斧で殺そうとするシーンもあるが、これも同じことが言える。
そこはマスターズの指示が無いことが明白なのだが、だったらシャーロットに「患者に殺されるかもしれない危機」を用意すべきじゃないよ。
シャーロットを追い込むことで観客の恐怖や不安を煽ろうとするのであれば、そこは「シャーロットが何かを嗅ぎ付ける恐れを感じたマスターズが、患者を利用して始末しようとする」という形にすべきだわ。
せっかく序盤で「人形を利用してハリエットにジェニーを始末させる」という方法を取ったのに、それ以降は同じ手口を使わないってのは勿体無いって言うか、雑だと感じるし。

しかも、シャーロットはダニーに体を撫で回されたりキャメロンに殺されそうになったりしたのに、翌朝には何事も無かったかのように働いているんだぜ。
それは「昨夜の出来事は内緒にして平静を装っている」ってことじゃなくて、ホントに何も体験していないかのような態度なのだ。
ひょっとすると、後からキャメロン&ダニーの侵入シーンを挟み込んだのかもしれない。
だけど、どういう事情があるにせよ、ちゃんとシーンが繋がっていないのはアウトでしょ。

その後には薬品を盗み出したジェニファーが殺害される展開があるが、話の筋道がズレちゃってるなあと感じる。
マスターズは「私が家族を守る」という強い意識で後任の院長になったはずなのに、守るどころか殺しちゃったら整合性が取れないでしょ。つまり、マスターズの動かし方としては、「病院と家族を守るため、秘密を漏らそうとする人間や家族の和を乱す外部の人間を排除しようとする」という形で徹底すべきなのよ。
つまり、もっと「マスターズのせいでシャーロットが危険な目に遭ったり命を狙われたりする」ということで徹底すべきってことよ。
そのためには、シャーロットを「逃げたくても逃げられない」という状況に追い込む必要があるけどね。この映画の場合、その気になれば彼女はいつだって逃げ出せるので、そこが引っ掛かっちゃうし。終盤になって「出口が無い」と言い出すけど、そんなわけねえし。
出口が無いなら入り口も無いはずで、だったらテメエはどっから入って来たのかってことになるでしょ。

サムは何度も「スティーヴン先生は云々」と、まるで彼が生きているかのような発言を繰り返す。
これはネタ振りで、実際にスティーヴンは地下室で生きているのだ。
原題の『Don't Go in the Basement』はそこに繋がって来るんだけど、ただし劇中で地下室に言及することは一切無いし、「そこに入っちゃダメだ」とサムが誰かを止めることも無いんだよね。
そんで終盤になって、シャーロットがサムからメモを受け取ってスティーヴンの生存を知った時に、初めて地下室の存在が明らかになる。
それは見せ方が下手すぎるわ。

「マスターズが犯人で、実は医者じゃなくて患者」というネタだけじゃ弱いだろうってことで、「実はスティーヴンスが生きていて」というネタを盛り込んだのかもしれない。
だけど、その2つは上手く絡むことも無ければ、相乗効果を発揮することも全く無い。
おまけに、「スティーヴンスが生きていた」というネタに関しては、「地下室に入ったシャーロットがヌッと出て来た手にビビってボコ殴りにしたらスティーヴンスだった」ってことで殺害しちゃうので、まるで意味が無いのだ。
スティーヴンスが生きていようがいまいが、物語の展開には何の影響も与えないのだ。
アホですか。

(観賞日:2015年6月30日)

 

*ポンコツ映画愛護協会