『パパVS新しいパパ』:2015、アメリカ
ブラッド・ウィテカーはサラと結婚し、連れ子であるメーガンとディランの良きパパになろうと懸命に努力している。しかしメーガンとディランは、なかなか彼を受け入れてくれない。ディランは3年前に歯医者で診察を受けた際、誤って股間にレントゲン照射された。そのせいで睾丸が役立たずになり、子供を持つことは諦めていた。しかしサラと出会って人生が変わり、メーガンとディランのことを心の底から愛していた。
ある日、ブラッドはサラから、「ディランが私じゃなく貴方と話したいって」と言われ、大喜びで2人になった。生意気な4年生の子から意地悪されていると相談され、ブラッドは「僕が必要とされた」と興奮してサラに話す。そこへメーガンが来て「学校の行事でパパと娘のダンスがあるんだ。私と一緒に来たい?」と言い、ブラッドは感激して号泣した。その夜、ブラッドは4人でテレビを見ながら、ようやく家族になれたと感じる。しかし実父のダスティーから電話が入って子供たちが喜ぶ様子を見ると、彼は複雑な気持ちになった。
子供たちの会話を聞いていたブラッドは、まだサラが再婚についてダスティーに話していないと知る。「この半年間、連絡してないから」とサラか慌てて釈明すると、ブラッドは「結婚はその前だ」と告げる。ブラッドがメーガンに「代わってほしいって」と言われると、サラは「やめて」と止める。ブラッドが電話を代わると、ダスティーは翌日に来たいと言う。サラは反対するが、ブラッドは軽い気持ちでOKした。「彼は親の責任を何も分かってない」とサラが話すと、ブラッドは「だったら、いい機会だ。境界線を引けばいい」と述べた。サラは手に負えない相手だと警告するが、ブラッドは全く意に介さなかった。
次の日、重役を務めるラジオ局で仕事をしていたブラッドは、社長のレオ・ホルトに空港へ妻の前夫を迎えに行くので早退することを話す。事情を聞かされたレオは、「父親のいない子供は父親に執着する」と助言した。空港へ赴いたブラッドは、ダスティーを見ると驚いて唾を飲み込んだ。しかしブラッドが「君がダスティー?」と声を掛けると、彼は「違う」と冷たく告げて通り過ぎた。ブラッドが夜遅くになって帰宅すると、ダスティーはハーレーで既に到着していた。彼は子供たちに菓子を与え、珍しいコインも見せていた。
ブラッドが「空港で会ったけど」と言うと、ダスティーは「先に気付いたけど、いいパパだと感じて、怖じ気付いてパニックになった」と説明した。ブラッドは「僕もバイクに乗っていた」と言い、知っている情報を絞り出した。ダスティーが「2人を寝かし付けてやりたい」と頼むと、ブラッドは快諾した。ダスティーは子供たちに御伽噺を語って楽しませ、お休みのキスをする。それを見たブラッドが負けじと子供たちにキスすると、ダスティーも対抗する。自分で終わらせたくないブラッドが子供たちに触れると、ダスティーは対抗して20ドルをプレゼントした。
ブラッドはダスティーにビールを御馳走すると言ったので、その約束を果たすことになった。「この町にはいつまでいるんだ?」という彼の質問に、ダスティーは「来週の明日には去る。アメリカのために戦ってくる」と答える。ブラッドはダスティーの「俺も男だ。綺麗に身を引こう。子供たちにも、君をパパと呼ぶよう言う」という言葉に感激し、1週間の滞在を承諾した。後で話を聞いたサラは「騙されてる。上手く乗せられたのよ」と呆れるが、ブラッドは「彼は騙してない」とダスティーを信用した。
翌朝、ブラッドが起床すると、ダスティーは既に20キロのジョギングを終えて朝食を作っていた。ダスティーはジョギング中に見つけた老犬のチューマを子供たちに紹介し、家で飼うよう促す。ブラッドは子供たちに懇願され、仕方なく承諾した。ブラッドはダスティーからバイクを動かすよう頼まれるが、アクセルを吹かし過ぎて壁に激突した。彼が肩を痛めたため、ダスティーが子供たちを学校へ送る車の運転を引き受けた。ブラッドはダスティーにラジオ局まで送ってもらい、「サラはもう1人、子供を欲しがってる。でも子供が出来ない男と結婚した。本物の愛だ」と言われて動揺した。
レオはダスティーを見て釘を刺そうとするが、空挺師団のバッジを褒められて簡単に態度を変えた。レオはダスティーを気に入り、新しいジングル候補のレコーディングにも同席させて意見を求めた。ダスティーが試しに歌うと、レオは採用を決めた。ブラッドとダスティーが帰宅すると、サラは壁を修理してもらうために便利屋のグリフを呼んでいた。ダスティーはブラッドに「他人を雇ったのか。簡単な作業だから自分たちでも出来るだろう」と言い、グリフを帰らせるよう促した。
グリフが黒人だと知ったブラッドが切り出せずにいると、ダスティーは子供たちを呼んで「肌の色が違うだけで態度を変えるブラッドは、どういう人かな?」と問い掛ける。ブラッドは子供たちから人種差別主義者だと誤解され、帰るよう告げたグリフからは怒りを買った。しかしダスティーは工具箱の中身が少ないことを知り、「全て揃えたら人を雇うより高く付くぞ」と修理を諦めた。その夜、ブラッドはサラに子供が欲しいのかと尋ねる。サラは「ホントはもう1人産みたかったけど、貴方とあの子たちがいれば幸せよ」と語り、いいパパぷりをダスティーに見せるようブラッドに告げた。
ブラッドは気持ちを燃え立たせ、木曜日は校外授業で子供たちに水族館をガイドした。金曜日はガールスカウトのリーダーとして指導に当たり、土曜日はバスケのコーチを務め、日曜日は教会のボランティアに参加した。その様子を観察していたディランは、グリフを仲間にして庭に子供用のツリーハウスやスケボーパークを設置した。ダスティーがスケボーの腕前を披露すると、ブラッドは対抗心を燃やして上級技を見せようとする。しかし屋根から飛び出した彼は、電線に激突して感電した。
ブラッドはサラから「私の気持ちが分かった?ダスティーは急にどこからか現れて、いいパパでいられる」と言われ、「彼にはモーテルへ移ってもらうよ」と告げた。ブラッドはメーガン&グリフと一緒にDVDを見ているダスティーに声を掛け、2人で話そうとする。そこへディランが泣きながら帰宅し、「自転車から落とされた」と吐露する。ブラッドは事情を知って「そいつらをやってやる。親もだ」と憤り、サラも「今度ばかりは許せないわ」と感情的になった。
ブラッドは話し合いで解決すべきだと主張するが、「教えるべきなのは相手をやっつける方法だ」とダスティーは言い、サラも同調した。ブラッドは「暴力じゃなくてもダンスなら解決できる」と話すが、サラは納得せず、ダスティーが相手を殴って制圧する方法を教えることになった。ディランが怖がって「やりたくない。もう4年生には近付かない」と言うと、ダスティーはディランに説得するよう告げる。ディランは「君と同じぐらいの頃、年上グループに苛められた。僕は何も出来ず、両親はローンを組んで私立に入れ直した」とディランに話し、「その日以来、争いから逃げるようになった」と口にした。
ブラッドが「あの時、僕にもダスティーのようなパパがいれば立ち向かうことが出来た」と言うと、「立ち向かわなかったら、ブラッドみたいな弱虫になるの?」とディランは質問する。ブラッドが「そうだ」と答えると、ディランはダスティーとパンチの練習に取り組んだ。サラはブラッドとダスティーに、「一緒に頑張る姿は共同パパみたいで微笑ましかった」と言う。ダスティーは「借りを返そう」と2人に言い、不妊治療の専門医であるフランシスコを紹介すると告げた。ブラッドは「期待しすぎない方がいい」と告げるが、サラは浮かれた。レオはブラッドから話を聞き、「ハメられたな。奴は有名な医者を使い、サラの期待を煽った。これで子供が作れないと分かれば、誰が待ってると思う?」と述べた。
フランシスコの検査が行われ、ブラッドは「レントゲンが原因じゃない。睾丸の形が変わっている」と告げられる。フランシスコは同行したダスティーを呼んでズボンを脱いでもらい、ブラッドとサラに「これが理想の睾丸です」と告げた。ブラッドはレオからダスティーに印税の小切手を渡すよう頼まれ、自分より遥かに稼ぎが高いことを知って驚いた。自分が一度も呼ばれていないのにダスティーはレオの家へ招待されたことも知り、さらにブラッドは動揺した。彼が帰宅すると、家族はダスティーとサラが結婚していた頃のスライドショーを仲良く見ていた。ブラッドと子供たちに聞かせる御伽噺で、ダスティーへの対抗心を露骨に見せた。
フランシスコから検査結果が出たという連絡が入り、ブラッド、ダスティー、サラは病院へ赴いた。ダスティーは生殖能力が無いという結果を確信していたが、フランシスコは「ブラッドは子供が産める」と告げる。ブラッドは大喜びでサラと抱き合い、その夜にダスティーと2人になって礼を述べた。彼が「君が現れた時、張り合っているんじゃないかと不安になった」と明かすと、ダスティーは「その通りだ。アンタを追い出して家族を取り戻そうと、陰険な真似をした。俺は酷い奴だ」と話す。
「君は当然の感情を抱いただけだ。あの子たちは、君の子供なんだ」とブラッドは語り、ダスティーとハグして分かり合えたと感じる。しかしダスティーが「俺はアンタを追い出して家族を取り戻す」と言ったので、ブラッドは「いいだろう。だが、この勝負は私が貰う」と対決姿勢を示した。彼は4月なのにサンタの格好で子供たちの前に現れ、クリスマスプレゼントとしてメーガンにはポニー、ディランにはNBAプレーオフのチケットをプレゼントした。彼はダスティーの前で、勝ち誇った態度を見せ付ける…。監督はショーン・アンダース、原案はブライアン・バーンズ、脚本はブライアン・バーンズ&ショーン・アンダース&ジョン・モリス、製作はウィル・フェレル&アダム・マッケイ&クリス・ヘンチー&ジョン・モリス、製作総指揮はリザ・アジズ&ジョーイ・マクファーランド&デヴィッド・コプラン&ケヴィン・メシック&ジェシカ・エルバウム&ショーン・アンダース&ダイアナ・ポコーニー、撮影はジュリオ・マカット、美術はクレイトン・ハートリー、編集はエリック・キサック&ブラッド・ウィルハイト、衣装はキャロル・ラムジー、音楽はマイケル・アンドリュース、音楽監修はデイヴ・ジョーダン&ジョジョ・ヴィリャヌエヴァ。
出演はウィル・フェレル、マーク・ウォールバーグ、リンダ・カーデリーニ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、ハンニバル・バレス、ボビー・カナヴェイル、スカーレット・エステベス、オーウェン・ワイルダー・ヴァカーロ、ビル・バー、ジェイミー・デンボ、マーク・L・ヤング、マシュー・ポール・マルティネス、デイヴ・デイヴィス、ジェームズ・ハーロン・パーマー、ライリー・アン・コービン、ラジェシー・スミス、ビリー・ジョンストン、オリヴィア・デュペペ、ビリー・スローター、ラモニカ・ギャレット他。
『俺のムスコ』『モンスター上司2』のショーン・アンダースが監督を務めた作品。
脚本は『プリティ・イン・ニューヨーク』のブライアン・バーンズ、ショーン・アンダース監督、『なんちゃって家族』『帰ってきたMr.ダマー バカMAX!』のジョン・モリスによる共同。
ブラッドをウィル・フェレル、ダスティーをマーク・ウォールバーグ、サラをリンダ・カーデリーニ、レオをトーマス・ヘイデン・チャーチ、グリフをハンニバル・バレス、フランシスコをボビー・カナヴェイル、メーガンをスカーレット・エステベス、ディランをオーウェン・ワイルダー・ヴァカーロが演じている。
NBA選手のコービー・ブライアントが本人役で、プロレスラーのジョン・シナがダスティーの再婚相手の元旦那役で出演している。冒頭、ブラッドがディランに挨拶しても無視され、メーガンには自分が家族から遠くに離れてナイフで突き刺されている絵を見せられる。
そうやって「全く子供たちに受け入れてもらっていない」という様子を見せておいて、そこからタイトルロールを挟んで3分ほど経つと、今度はディランから学校のことで相談され、メーガンには学校の行事に来てほしいと頼まれる。
つまり、子供たちから必要とされるシーンを描くのだ。
それは展開として早すぎるでしょ。
ついさっきまでブラッドを拒絶していた子供たちが、あっという間に受け入れモードへと変化しちゃってんのよね。もちろん、「子供たちに受け入れてもらったと喜ぶブラッドだが、ダスティーの出現で風向きが変わって」という展開が待っているので、早くトムを「子供たちから必要とされる存在」にしておく必要があるという都合は分かるのよ。
だけど、そういうストーリー展開の都合に合わせようとして、序盤の展開が慌ただしくて不自然になっちゃったら、それはそれでマズいわけでね。
だったら、例えば「まだブラッドが子供たちから必要とされていない」という状態でダスティーを登場させて、物語を進める中で「子供たちがブラッドの必要性を感じて、態度を変化させるようになる」という流れにするのも1つの手だったんじゃないかと。空港へダスティーを迎えに行ったブラッドは、彼を見ると「嘘だろ」と驚いて唾を飲み込む。
「予想していた相手と全く違っていた」というリアクションなのは分かるけど、そこまで驚くのは「なんで?」と言いたくなる。
そもそもブラッドは、ダスティーがどういう人物だと思っていたのか。
前夜のシーンではダスティーの声さえ聞こえないので、観客は「相手がどういう人物か」を推理する手掛かりが何も無い。なので、完全に白紙の状態でダスティーの登場を迎えることになるのだ。一方で、事前に情報を得ていれば、ダスティー役がマーク・ウォールバーグなのは知っている。そしてダスティーの登場シーンは、ただ単に「ごく普通のマーク・ウォールバーグが現れた」というだけだ。服装が風変わりなわけでもないし、特殊効果で誇張する飾り付けがあるわけでもない。
なので、どこに驚嘆のポイントがあるのか全く分からない。
空港でダスティーが現れた時も、帰宅したブラッドが彼を見た時も、同じBGMでスロー映像を使っているし、たぶん「ワイルド・ガイ」としてアピールしたいんだろうってのは分かる。
だけど、そういう見せ方をしたいのなら、演出が弱すぎる。もっと誇張しないと、その狙いは成就しないよ。この映画の重大な欠点は、端的に表現することが出来る。
それは、「コメディーなのに笑えない」ってことだ。
ブラッドは血の繋がった子供ではなくても、メーガンとディランを心の底から愛している。2人にパパとして認めてもらおうと、懸命に努力している。メーガンは彼が家族から離れた場所で殺されているような絵を描くが、それでもディランは前向きに考えて穏やかに受け止める。パパとしての仕事に全力で取り組み、決して弱音を吐いたり愚痴をこぼしたりしない。
そんなブラッドだが、実の父であるダスティーが現れると、すぐに自分の立場が脅かされると焦りを覚える。そこで負けないように色々と行動を取り始めるが、ダスティーの方も黙っちゃおらず、そこからはマウンティング合戦になる。しかしダスティーの方が一枚も二枚も上手で、ブラッドはどんどん追い込まれていく。
もちろん映画として、「主人公がダスティーに翻弄され、酷い目に遭う」ってのを笑ってもらおうと目論んでいることぐらい誰の目にも明らかだ。
だけど、真面目に頑張ってきたブラッドが狡猾なダスティーの策略で酷い目に遭う様子は、まるで笑えないのよね。とは言え、それは「ブラッドが可哀想にしか見えない」という問題でもない。
そういう形だとしてもコメディーとしては完全にアウトなわけだが、ブラッドを全面的に応援したいと思うわけでもないのだ。
それはダスティーが来た初日から感じることで、すぐにブラッドは彼への対抗心を燃やす。バイクに関する薄い知識を口にしたり、子供たちを寝かし付ける時の行動でも自分が最後にしようとする。
それはブラッドだけじゃなくてダスティーもやっていることなので「どっちもどっち」ではあるのだが、どちらかと言えば「最初に仕掛けたのはブラッド」という形になっているのよね。
そこは大いに引っ掛かる。何が問題なのかというと、せっかく「子供たちに拒絶されても前向きに捉え、穏やかで優しく接していた寛容なパパ」だったはずの男が、そこに来て一気に「器の小さい奴」になっちゃうってことだ。
ダスティーが実際に来るまでは余裕の態度だったのに、いざ現れると途端に肝っ玉の小さいトコを露呈させる。
たぶん、そこも笑いの仕掛けとして用意しているんだろうとは思うが、全く成功していない。
つまり厄介なことに、ダスティーは嫌な奴にしか見えないけど、対抗心を燃やすブラッドも全く好感が持てないのだ。「ブラッドはダスティーに勝とうとするけどヘマの繰り返し」という部分は、コメディーの作り方としては大きく間違っているわけではない。
なので、そこでブラッドに不快感を抱くことは無いけど、だからって笑えるわけでもない。
前述したような問題もあるので、根本的なアプローチを変えた方が面白くなる可能性はあると思う。
しかし、基本的な部分をそのまま使うとしても、もっと全体的に大げさに描写すれば、かなり印象は変わったんじゃないだろうか。どうも弾け切れていないように感じるんだよね。マウンティング合戦が始まると、1つの重大な問題が生じてしまう。それは「ブラッドの子供たちに対する愛が見えなくなる」ってことだ。
それまでのブラッドは、子供たちを可愛がり、愛を注いでいた。しかしダスティーへの対抗心を燃やすようになると、「彼に勝つ」ということばかりに気持ちが向いてしまい、「その行動が子供たちのためになるのか」という視点は失われる。
「対抗心より何より子供たちのことが大切なのだ」とブラッドが気付き、行動を改めるという展開があるなら構わない。
しかし、そこを明確な形で表現するような展開は用意されていない。サラはダスティーを遠ざけようとしていたし、ずっと全面的にブラッドの味方だった。ところがディランが自転車から落とされて戻ると、すっかりダスティーと同調する。ブラッドが話し合いで解決すべきだと説いても、まるで聞き入れない。
この時点で「サラの動かし方は、ホントにそれでいいのか?」という引っ掛かりはあるのだが、さらに別の問題まで生じる。
ブラッドは自身の幼少期の体験を語って「苛めから逃げずに立ち向かうべきだ」と説き、ディランはパンチの練習を積む。ところが、苛めていたという相手は、ディランが好きだからチョッカイを出していただけだと判明するのだ。
つまりブラッドの言葉は、何の意味も無いモノになってしまうのだ。
「苛めだと思っていたら違っていた」というネタをやりたかったのは分かるけど、さんざん引っ張った挙句に得られる効果はゼロに等しい。
全く笑えないネタと引き換えに、「本来なら親子の絆に繋がるべき要素まで台無しにする」という負債を背負っている。ダスティーが「ブラッドを追い出して家族を取り戻す」という狙いを明らかにすると、ブラッドも勝負を受けると宣言する。
そこから先に行動を取るのはブラッドで、クリスマスでもないのにツリーを飾り、サンタの格好で子供たちに高価なプレゼントを用意して機嫌を取る。
それは誰が見てもセコい手口である。
ここはダスティーが先に何か行動を起こし、それに対抗してブラッドが馬鹿な真似をするというわけでもない。だからブラッドを擁護できる材料が何も無い。その後、高額チケットでNBA観戦に行ったのに、ダスティーはたまたまトレーニングコーチと知り合いだったので子供たちをコービー・ブライアントに紹介できて、それに腹を立てたブラッドが激しく取り乱して喚き散らすという展開がある。
ここでも、まるでブラッドへの同情心が湧かない。ただ不愉快なだけで、これっぽっちも笑えない。
悪酔いしてコートで暴走したブラッドが家を出てラジオ局で寝泊まりするようになっても、まるで可哀想だとは思わない。自業自得だからね。
反省して謝罪する様子も無ければサラに追い出されるわけでもないから、ただ逃げただけにしか見えないし。その後にはグリフから「本当のパパなら我が子を簡単に見捨てない」と言われたブラッドが気持ちを燃え上がらせる展開はあるのだが、じゃあメーガンのダンスパーティーに父親として出向くのかというと、そうじゃない。
バーで飲んでいるダスティーに、「ダンスへ行け」と説く。
結局は2人で行くことになるのだが、メーガンはずっと待たされて落ち込んでいる。
しかも、そんなメーガンと2人がダンスする流れかと思ったら、「ディランが苛められているとメーガンが2人に伝える」という展開になり、「メーガンを長く待たせてしまった」という問題はキッチリと片付けずに済まされてしまう。ディランを苛めていたのは4年生の女子で、彼のことを好きだからチョッカイを出していただけだ。しかしディランは分かっていないので、ダスティーから教わった通りに顔をパンチしてから股間に蹴りを入れてしまう。
女子の父親が激怒するが、ブラッドはディランから「2人ともパパ」と言われて感激する。さらにダスティーからパパとして称賛され、さらに感激する。
女子の父親が殴り合いを要求するが、ダスティーは周囲の目を気にしてダンス対決に持ち込む。
一応、伏線を回収する形にはなっているが、それよりも「まるで上手い着地じゃねえな」という印象の方が圧倒的に強い。(観賞日:2018年10月24日)