『バッド・デイズ』:1997、アメリカ
リー・イーガンはギャング稼業から足を洗おうと考え、最後の仕事として宝石店からダイヤを盗み出す計画を立てる。リーは計画実行のために仲間を集める。ホーレイ、スキップ、そして兄のロイの4人が集まり、計画は実行に移された。
宝石店襲撃を成功させ、無事にダイヤを手に入れた4人。彼らはトレーラーハウスでダイヤの分け前について相談する。その時、スキップが銃を抜いていきなり発砲した。リーとホーレイは即死するが、ロイは何とか現場から逃げ出した。
ロイは弟を殺してダイヤを持ち去ったスキップを探し出すため、彼の恋人や弁護士を脅して居場所を突き止めようとする。ホーレイの自宅に向かい、彼の妻レイチェルにも会うが、何も情報を得ることが出来ずに家から追い出されてしまう。
スキップは黒人ギャング団やチャイニーズ・マフィアを仲間に引き入れ、ロイの行方を追わせる。チャイニーズ・マフィアに襲われて重傷を負ったロイは、レイチェルの元へ転がり込む。レイチェルから10万ドルでスキップ探しに協力すると言われ、ロイはそれを受け入れる。
レイチェルが所持していたホーレイの手帳を手掛かりにして、ロイはスキップがダイヤを売却した相手を突き止め、金を奪い取る。ロイに金を奪われてことを知って怒ったスキップは、レイチェルを誘拐し、ロイに金を持ってくるよう要求する…。
監督はジョン・アーヴィン、脚本はケン・ソラーツ、製作はケン・ソラーツ&エヴゼン・コラー、共同製作はマシュー・ゲイン&フランク・K・アイザック、製作総指揮はバー・ポッター、撮影はトーマス・バースティン、編集はマーク・コンテ、美術はマイケル・ノヴォトニー、衣装はエデュアルド・カストロ、音楽はスティーヴン・エンデルマン。
出演はハーヴェイ・カイテル、スティーヴン・ドーフ、ティモシー・ハットン、ファムケ・ヤンセン、ウェイド・ドミンゲス、マイケル・ジェイ・ホワイト、ルーシー・リュー、レノ・ウィルソン、ダナ・バロン、タマラ・クラッターバック、ブライアン・ブロフィー、フランソワ・チャウ、フレックス、ブライアン・シェン、アイ・ウォン、サイラス・ファーマー、エヴゼン・コラー他。
1955年のジャン=ピエール・メルヴィル監督作品『賭博師ボブ』をリメイクした作品。
フランスのフィルム・ノワールをハリウッドでリメイクというわけだ。暗黒街のボスであるローン・シャーク役で、エリオット・グールドがカメオ出演している。序盤は雰囲気があって面白いし、その後の展開に期待を持たせる。
しかし、スティーヴン・ドーフ演じるスキップが裏切る辺りから、だんだん低調ムードが漂い始める。ハーヴェイ・カイテル演じるロイがスキップを探し始めるのだが、色んな場所を聞き回るだけでテンポに変化が無い。ストーリー展開に起伏が弱く、ノッペリしたままで進んでいく。
たぶん、物語進行のペースが遅すぎるのもいけないのだと思う。
観客に考える余裕を与えないぐらい、ジェットコースター・ムーヴィーのごとく、突っ走ってしまった方が良かったようにも思う。スキップ側の視点から描かれる部分が少ないのも問題だろう。
もっとスキップが出てくる場面を多くして、ロイとスキップの対決を煽るような形にすべきだったと思う。せっかくスティーヴン・ドーフがイカした雰囲気を持っているのに、それを使いこなしていないのは勿体無い。ロイとスキップは、お互いに相手を殺してしまおうと考えているはずなのに、どうにもスリルが漂ってこない。もっとスキップの仲間がロイを攻撃する場面を多く描くべきだし、そうすることによって、ロイの反撃する様子にもパワーが生まれたはずだ。
ファムケ・ヤンセン演じるレイチェルとロイとの関係が半端な扱いになっている。
ロイのレイチェルに対する態度には不満がある。
せっかくロイが荒っぽい方法でスキップを探す姿を描いていたのに、レイチェルに対してだけ優しくなる。ロイはずっと“復讐の鬼”であってほしかった。ロイがレイチェルに近付くことで、孤独感も消えるし、キャラクターに甘さが出る。
だからといって、密接な関係になっていくわけでもない。
だから、レイチェルを人質に取られたロイがスキップの指示に従う下りが不自然に感じられる。レイチェルというキャラは、出さない方が良かったのでは。ひょっとすると、画家エドワード・ホッパーのタッチをイメージしたという映像が最大のセールスポイントなのかもしれない。
しかし、環境ビデオやCG集じゃあるまいし、まさか映像の品質だけで観客を満足させることが出来るはずもあるまい。いや、出来るのかな?ワシは無理だったけど。