『ボールズ・ボールズ』:1980、アメリカ
フロリダ。高校生のダニー・ヌーナンは大家族の長男で、ブッシュウッド・カントリークラブでキャディーのアルバイトをしている。彼は稼いだ金を進学のために貯金しており、父から「大学に入らないならトムの製材所で働け」と言われている。ダニーはクラブの常連客であるタイ・ウェッブに、「進学したいが学費が高く、奨学金も貰えない」と漏らした。スメイルズ判事は穴掘りネズミのゴーファーがコースを荒らしているのを目撃して激怒し、支配人のサンディー・マクフィディッシュを呼んだ。サンディーがアル・チャーヴィクの建設現場から来たのだろうと言うと、判事は「工事中止命令を出す。コーブァーを退治しろ」と告げた。
サンディーはグリーンキーパーのカール・スパックラーに、ゴーファー退治を命じた。キャディー小屋にいたダニーは、同僚のトニーから喧嘩を吹っ掛けられた。トニーの弟のアンジーは、勝手に加勢してダニーに襲い掛かった。そこへキャディー小屋の責任者を務めるルーが来て、アンジーを叱責した。ルーは優秀なキャディーが急死したことをダニーたちに明かし、「キャディー奨学金に欠員が出た。希望者は判事の所へ行け」と述べた。
判事は友人であるビーパー医師、ピッカリング司教の3人で、ラウンドを回ることにした。不動産成金のアルがゲストのワンを引き連れてクラブに来ると、判事は不快感を露わにした。判事は姪のレイシーが来たので、ビーパーと司教に紹介した。判事はタイにライバル心を偉大ており、ズルをしてスコアを上げようとする。彼のキャディーに付いたダニーは、ズルを黙認した。アルが無作法で失礼な行動ばかり取るので、判事は腹を立てた。カールは穴に水を注いでゴーファーを退治しようとするが、失敗に終わった。
ダニーはクラブハウスでウェイトレスをしている恋人のマギーと会い、夜に会う約束を交わした。彼は判事に進学の件で相談を持ち掛け、「キャディー・トーナメントで優勝すれば奨学金を貰える資格になる」と助言された。夜、ダニーはマギーに頼まれ、給仕の仕事を手伝う。アルはレストランでも失礼な言動を繰り返して複数の人間を怒らせるが、意に介さなかった。タイはレイシーに色目を使われ、すぐに口説いた。カールは銃でゴーファーを撃ち殺そうとするが、失敗に終わった。
ダニーはキャディー・トーナメントで優勝し、判事は「日曜日にヨットの進水式をする。ウチの芝を刈って進学資金の足しにするといい。芝刈りが済んだらヨットクラブに来たまえ」と告げた。キャディー招待日、ダニーたちはクラブハウスのプールで遊び、トニーはレイシーにアプローチした。スメイルズ夫人は風紀の乱れに腹を立て、全員にプールから出るよう要求した。夜、タイはレイシーを家に招き、一緒に酒を飲んで楽しんだ。
ヨットの進水式に出席したダニーは、判事から助手のチャックを紹介された。アルは大型クルーザーを突っ込ませて進水式を妨害し、判事のヨットに錨で穴を開けた。レイシーはダニーを誘惑し、寝室に連れ込んでセックスした。そこに判事が現れ、クラブを振り回してダニーを追い掛けた。司教はカールをキャディーに付けて、1人でコースを回った。雨が降り出しても彼は中止せず、雷が鳴り始めてもゴルフを続けた。彼は落雷を受け、感電して倒れ込んだ。
翌日、ダニーはマギーから妊娠を告白され、動揺して固まった。マギーが泣きながら「私の問題よ。何とかするわ」と言うと、ダニーは結婚しようと持ち掛けた。マギーは「よしてよ、義理で」と腹を立て、その求婚を拒絶した。判事に呼ばれたダニーは、「昨日の件は蒸し返さない。レイシーは好奇心が強い」と言われる。「自分の進むべき道を決めることだ。善の道か、悪の道か」と判事は語り、ダニーが「過去を反省して出直します」と告げると握手を求めた。
夜、判事やビーパーたちがクラブハウスにいると、アルがやって来た。判事が怒って「出入り禁止だぞ。絶対に会員にはしてやらん」と口にすると、アルは馬鹿にした態度で「誰がなるか。買収ならしてもいいぞ」と言い放つ。アルと判事が掴み合いの喧嘩を始めると、タイが仲裁した。彼が話し合いでの解決を促すと、アルは判事に負けた方が2万ドルを支払うゴルフ対決を持ち掛けた。彼は判事がビーパーと組み、自分はタイと組んで勝負しようと言い出した。最初は断ったタイだが、判事の態度に不快感を覚えて承諾した…。監督はハロルド・ライミス、脚本はブライアン・ドイル=マーレイ&ハロルド・ライミス&ダグラス・ケニー、製作はダグラス・ケニー、製作総指揮はジョン・ピーターズ、製作協力はドン・マクドナルド、撮影はステヴァン・ラーナー、美術はスタン・ジョリー、編集はウィリアム・カルース、特殊効果監修はジョン・ダイクストラ、音楽はジョニー・マンデル、主題歌はケニー・ロギンス。
出演はチェヴィー・チェイス、ロドニー・デンジャーフィールド、テッド・ナイト、ビル・マーレイ、マイケル・オキーフ、サラ・ホルコム、シンディー・モーガン、アルバート・サルミ、スコット・コロンビー、ダン・レシン、エレーヌ・エイキン、ヘンリー・ウィルコクソン、ロイス・キビー、ブライアン・ドイル=マーレイ、アン・ライアソン、トーマス・カーリン、ジョン・F・バーモンJr.、ピーター・バークロット、ハミルトン・ミッチェル、スコット・パウエル、アン・クリリー、コーディス・ハード、ブライアン・マコナチー他。
『アニマル・ハウス』『ミートボール』の脚本を手掛けたハロルド・ライミスが、初めて監督を務めた作品。
脚本は本作品がデビューとなるブライアン・ドイル=マーレイ、監督のハロルド・ライミス、『アニマル・ハウス』ダグラス・ケニーによる共同。
タイをチェヴィー・チェイス、アルをロドニー・デンジャーフィールド、判事をテッド・ナイト、カールをビル・マーレイ、ダニーをマイケル・オキーフ、マギーをサラ・ホルコム、レイシーをシンディー・モーガンが演じている。冒頭、ゴーファーがコースを荒らす様子が描かれ、タイトルが出る。続いてダニーの家で母が子供たちを起こす様子、ダニーがバイト代を学費資金に入れるよう父から言われる様子などが描かれる。
しかし、それ以降、ダニーの家族は全く登場しないし、物語に影響を及ぼすことも無い。
だったら、冒頭で登場させて「これからダニーの家族が絡んで来ますよ」と匂わせている意味が全く無い。
極端に言えば、ダニーの家族なんて登場させなくてもいいぐらいだ。大家族のシーンから始めるぐらいだから「ダニーの物語」として進んでいくのかと思ったら、判事やサンディーやカールといった多くの面々がダニーと絡まない形で次々に登場する。
ダニーを蔑ろにしているわけではなくて、彼のターンもちゃんと用意されている。
ただ、判事がタイにライバル心を抱いているとか、判事がアルに不快感を覚えているとか、カールがゴーファー退治に燃えているとか、レイシーがタイとトニーを天秤に掛けるとか、ダニーと無関係に描かれるエピソードが多い。誰が主役で、どこに軸があるのかが全く分からない。
群像劇として良く出来ているわけでもなく、ずっと足元が定まらず落ち着きが無いままバタバタしているだけにしか感じない。
ひょっとすると、「カントリークラブを舞台にして、そこに出入りする人々の様々なドラマを描き出す」ってな感じで、グランド・ホテル形式を意識しているのかもしれない。
仮にそれが狙いだとしたら、悪いことではない。しかし、成功しているとは言い難い。あと、ダニーのエピソードたけ妙に真面目な要素が入っているのだが、それも他のエピソードと比べた時に、バランスとしては良くない。
また、「キャディー・トーナメントで優勝すればダニーが奨学金を貰える資格になる」という話が出て来るので、トーナメントをメイン・イベントに据えて全体を構成しているのかと思ったら、そうじゃないんだよね。
そこを前半の内に5分ぐらいで簡単に片付けているのも、いかがなものかと。基本的には幾つものスケッチを串刺し式に並べた構成だが、何のオチも無いまま次へ移ることも少なくない。
別にコントじゃないし、オチが必要不可欠ってわけでもない。ただ、オチが無くても面白さが担保されているのかと言うと、「それは全く」という仕上がりだ。
例えば進水式のエピソードでは、アルがクルーザーを暴走させて大勢の人々が迷惑を被っている。
一応はドタバタ喜劇として描いているのだが、アルがホントに嫌な奴でしかないので、まるで笑えない。そりゃあ判事だって決して褒められたわけではないが、アルの迷惑行為は判事だけに向けられているわけではない。
また、判事は「ゴルフでズルをする」とか「口が悪い」という程度で周囲への迷惑は少ないので、アルとはやっていることのレベルが全く違う。
あと、これが互いに嫌がらせを繰り返している構図なら、その醜い争いも笑えたかもしれない。
しかし判事は自分から攻撃を仕掛けておらず、一方的にアルが迷惑行為や嫌がらせを繰り返しているだけなのだ。レイシーの寝室にいたダニーが判事に見つかって逃げ出すシーンは、ベタではあるけど、ドタバタ喜劇として間違ったことは何もやっていない。
シンプルな追いかけっこだけで済ませず、風呂場に隠れたダニーが、入浴中の夫人に判事と誤解され、別人と気付いた夫人が笑顔を見せるといったネタも用意している。
ただ、表面的な部分だけで片付けており、「もうちょっと頑張れただろ」と感じる。
司教が大雨の中でもゴルフを続けるシーンは、雷が鳴り始めた時点で「落雷オチ」ってのが見え見えになる。
これもベタが悪いわけじゃないんだけど、面白くは仕上がっていない。ダニーがマギーから妊娠を告白されて求婚するとか、妊娠していなかったと分かってマギーが安堵するとか、そういうストーリーは笑いの入り込む余地が無い。普通に青春ドラマのような中身になっている。
コテコテのコメディーの中で、一服の清涼剤みたいな効果を狙っているわけでもないだろうに。
妙に行儀がいい青春ドラマのパートが、この映画にとってプラスに作用しているとは到底思えない。
そこだけを切り分けて抽出したとしても、魅力的な青春ドラマとしてキメ細かく作られているわけではないし。タイがアルから誘われた対決を「金のためにゴルフはやらん」と断ったのに、判事への当て付けで賞金を倍増させてまで引き受けるのは、キャラの動かし方としてどうなのかと。
タイはプレイボーイではあっても、ダニーのメンター的なポジションとして描かれていた。しかし勝負を受けることで、アルの片棒を担ぐことになるわけで。
その対決に勝てば、ますますアルが付け上がることが確実だ。
判事への反感を覚えていたからって、嫌な野郎であるアルに協力させるのはダメでしょ。ゴルフ対決のシーンまでは、アルが余裕の態度で馬鹿にして、それに対して判事が苛立つという関係性だった。
ところがアルはゴルフが下手なので、対決が始まるとスコアの悪さに腐ってしまい、判事が余裕の態度で馬鹿にする。
立場の逆転が起きているわけだが、それが笑いに繋がることは無い。
そこだけ急に関係性を入れ替えるのは、マイナスでしかない。何か計算があった上で逆転現象を描いているわけじゃなくて、結果的にそうなっているだけにしか感じないし。対決の途中でアルが「腕が折れた」と言い出し、タイは代役としてダニーを指名する。ダニーは代役を引き受け、対決に勝利する。
そこに笑いなど皆無だし、だからって言わずもがなだろうけど感動みたいなモノがあるわけでもない。
やっぱり最後まで、「ダニーの青春物語」的なパートが上手くハマっていない。
後述するゴーファー退治の要素を除くと、「ダニーが勝利して人々に祝福されました。めでたし、めでたし」みたいに映画を締め括っているけど、「いや何が?」と言いたくなる。ゴルフ対決のシーンと並行して、カールが爆薬を使って作り物丸出しのゴーファー人形を退治しようとする様子が描かれている。
対決のエピソードが何の面白みも無いまま進んでいくので、次々に爆発が起きるのを見せて何とかコメディーらしさを持ち込もうとしている感じになっている。これも「結果的にそうなっている」ってだけなんだけどね。
そして、これまた結果論に過ぎないが、ゴーファー退治の話を厚くして、そこを軸に映画を作った方が良かったんじゃないか。
この映画でマシな部分って、そこだけなのよ。(観賞日:2025年12月2日)