『ブレット・トレイン』:2022、アメリカ

殺し屋の木村は、幼い息子の渉が入院している病室にいた。そこへ木村の父が現れ、渉の様子について質問された。渉は意識不明の状態が続いており、木村は父から「父親の役目は家族を守ることだ」と言われる。渉が屋上から転落した時、木村は一緒にいなかった。一方、白人の殺し屋はセラピーを受けて仕事に復帰し、東京にやって来た。彼は仲介屋のマリアから電話を受け、「レディーバグ」という新しい暗号名を与えられた。レディーバグは自身の悪運が破壊的だと言い、前回の仕事について語る。彼が政治家の不倫現場を撮影中に、ホテルのボーイが飛び降りた。ボーイはレディーバグの車の屋根に落ち、病院に運ばれて一命を取り留めていた。
今回のレディーバグの仕事は、盗みを嫌がったカーヴァーの代役だった。彼はロッカーで拳銃を入手し、16両編成の列車に乗り込む。同じ列車には木村や殺し屋コンビのタンジェリンとレモンも乗っていた。レディーバグはマリアの電話で、持ち手に汽車のシールが貼ってあるブリーフケースを盗むよう指示された。木村は拳銃を握り、メモに書いてある座席へ向かう。彼は座席の乗客に拳銃を向けるが、少女だと気付いて驚いた。木村が謝罪すると、その少女はスタンガンを首筋に押し付けて気絶させた。
レディーバグは列車の連結部分へ行き、ブリーフケースを発見した。タンジェリンとレモンが喋っていると、廊下を挟んだ向かいの座席で眠っていた男性客が目を覚ました。タンジェリンたちは男に話し掛け、「お前の親父の使い」と告げる。男の父親は犯罪組織の頭目であるホワイト・デスで、タンジェリンたちは手下ではなく請負人だと述べた。彼らは息子に「お前を救出するよう言われた。誘拐して身代金を要求した三合会から連れ出した」と説明し、殺した人数が16人か17人かで意見が分かれた。
タンジェリンはレモンに、身代金1千万ドルが入ったブリースケースを取って来るよう告げた。彼は電話を受け、「京都駅で降りろ。それで仕事は完了する」と言われた。レモンはタンジェリンに、ブリースケースが無くなっていることを教えた。レディーバグが駅で降りようとすると、ホームにいたウルフが襲い掛かった。木村が目覚めると、少女は「アンタが列車に乗ったのは私を殺すため」と告げた。彼女は「両親は私をプリンスと呼ぶ。つまり男の子を望んでた」と語り、話を全て聞かないと後悔すると言う。彼女は病院にいる手下に電話を掛け、「連絡が途絶えたら渉を殺していい」と指示した。
レモンはホワイト・デスが何者なのか知らず、タンジェリンは「資料を転送したぞ」と呆れながらも説明した。かつて日本の裏社会は峰岸という昔気質の男が仕切っており、ロシアから来たホワイト・デスが手下になった。殺しを重ねて出世したホワイト・デスは密かに仲間を集めて峰岸を殺害し、犯罪組織のトップに立ったのだ。彼は妻が交通事故で死ぬと屋敷で引き籠るようになり、今回の仕事も自分が動かず「ボリビアの仕事の2人」であるタンジェリンとレモンに指示していた。
プリンスは木村に、「アンタの雇い主はホワイト・デス。当然、否定するよね。でもアンタを雇った奴は誰かを介して、最後は奴に行き着く」と話す。さらに彼女は「2日前にブリーフケースをホワイト・デスの仲間に届けたね」と指摘し、「ピンと来た。ブリースケースを追えばホワイト・デスの居場所へ」と述べた。「俺にどうしろと?」と木村が尋ねると、プリンスは「私のため、奴を殺して」と答えた。木村が「どうやって探せというんだ?」と言うと、彼女は「もうすぐ分かるよ」と余裕を見せた。タンジェリンとレモンが座席に戻ると、息子が何者かに殺されていた。
26年前、メキシコ。ウルフは母から「強い子になりなさいね」と言われ、狼の顔の形をしたペンダントをプレゼントされた。ウルフは都会に出て殺し屋になり、殺しを重ねた。彼は1人の女と出会って惹かれ合い、結婚式を挙げた。しかしワインに混入された毒物により、彼を除く全員が死亡した。ウルフは復讐心を燃やし、犯人を見つけ出すよう手下に命じた。彼はレディーバグが犯人だと断定し、彼を襲った。レデイーバグは相手が誰か分からず、「落ち着いて話し合わないか」と持ち掛けた。しかしウルフは耳を貸さず、ナイフを投げ付けた。レデイーバグがブリースケースで体を守るとナイフが弾かれ、ウルフの左胸に突き刺さった。
レデイーバグは戦いでスマホが使えなくなり、ウルフを席に座らせて別の車両に移動した。彼は銃を持つレモンを目撃し、ヨハネスブルグの男だと気付いた。レデイーバグはキグルミとぶつかってブリースケースを奪われそうになり、殴って取り返した。彼はウルフのスマホを盗んでマリアに連絡を入れ、「悪運のせいで降り損ねた」と告げる。彼はマリアとの会話で、ウルフはメキシコの潜入捜査で見た花婿だと思い出した。彼はマリアに、ボリビアの双子と呼ばれる2人組が乗っていることを知らせた。
プリンスはタンジェリンから「銀のブリースケースを持った男を見なかったか」と質問され、「黒縁メガネの男よ。あっちへ行った」と教えた。レデイーバグはブリーフケースを隠し、レモンの元へ赴いた。レモンがタンジェリンから「黒縁メガネを捕まえろ」というメールを受け取った時、レディーバグが向かいの席に座って銃を向けていた。レディーバグはヨハネスブルグにいた頃、レモンに追われて2発の銃弾を浴びていた。2人が話している間に、プリンスはレディーバグが隠したブリーフケースを簡単に見つけ出した。
レディーバグはレモンに、「ケースを返すから俺を殺すな」と交渉を持ち掛けた。レモンが拒否して銃を奪おうとすると、レディーバグは格闘して昏倒させた。レディーバグはレモンの元を去ってマリアに電話を掛け、「車内に別の仕事人がいる。双子はホワイト・デスの息子を護衛してたが、結婚式の毒で殺された」と語った。荷物の棚を調べたレディーバグは、動物園から盗まれたブームスラングという毒蛇がいるのを見つけて焦った。
レディーバグは乗客の男性に協力を頼み、自分の帽子を被せて身代わりになってもらう。タンジェリンが誤解して男性に気を取られている隙に、レディーバグは別の車両へ逃げた。プリンスは木村にブリーフケースを渡し、あらゆる組み合わせを試して開けるよう命じた。駅で降りて息子とケースの無事を確かめさせるよう電話で命じられたタンジェリンとレモンは、誤魔化す作戦を考えた。タンジェリンは駅でホームに降り、待っていた一味に車窓を見るよう促した。レモンは息子の遺体を操って生きているように見せ掛け、タンジェリンは足早に列車の中へ戻った。
木村がケースを開けると、大金が入っていた。プリンスはケースを開けると爆弾が起動する細工を施し、木村に渡した拳銃にも同じ仕掛けがあることを話す。彼女は「ホワイト・デスは31回も暗殺未遂に遭ってる。狙ったのは組織の者。みんな自分が使った武器で処刑された。もう分かった?アンタは失敗するの」と言い、木村は彼女が渉を屋上から落として自分を列車に誘導したのだと悟った。「俺を暗殺者に仕立てて、この銃でホワイト・デスが俺を撃ち、爆死するのか。馬鹿げた計画だ」と彼が吐き捨てると、プリンスは「天才的な計画だよ」と自信満々に言い放った。
レディーバグはマリアからの電話で、かつて天才外科医を毒殺した殺し屋のホーネットについて聞く。ホーネットは30秒で血清を打たないと死ぬ毒の使い手で、ウルフの結婚式で仕事をした女だった。マリアはレディーバグに、正規のルートではなく別の形の依頼で車内にいると告げた。レディーバグはレモンから奪ったスマホを使っており、アプリで追跡したタンジェリンが彼を見つけて襲い掛かった。電話連絡が来たので出ると、ホワイト・デスから「次の駅でケースを持って降りろ。従わなければ乗客を皆殺しにする」と脅された。
レディーバグはタンジェリンに協力を申し入れ、レモンを装って一緒に駅で降りた。彼は待っていた一味に別のケースを見せるが、調子に乗ってダイヤルを回してしまった。ケースが開いて嘘が露呈したので、レディーバグとタンジェリンは慌てて列車に飛び乗った。木村はプリンスに「言うことを聞くから息子には手を出すな」と頼むが、「アンタの息子は簡単に屋上まで付いて来たよ。まさか3時間も息子が消えたことに気付かないとは」と馬鹿にする言葉が返って来た。
レモンがプリンスと木村の元へ来て、銀のケースを見なかったかと質問した。プリンスは何も知らないと嘘をつき、「ブリーフケースを見た、木村?」と口にした。その言葉でレモンは、プリンスの嘘に気付いた。レディーバグはタンジェリンに「京都駅にはホワイト・デスがいる。ここで降りよう」と提案するが、拒否された。「ケースは一等車のゴミ箱の中だ。ここで降りる」と彼が言うと、タンジェリンは「身代わりが必要だ」と告げてドアの前に立ちはだかった。レディーバグはドアが閉まる寸前、彼をホームへ突き落とした。
レモンはプリンスと木村に拳銃を向け、「ボスは手を上げて、もう1人はボスを指差せ。どっちも手を上げたり、互いを指せば2人とも殺す」と脅した。木村は渉のことを思ってプリンスを指せず、プリンスは木村を指差した。木村はレモンの銃弾を腹に浴び、その場に倒れ込んだ。タンジェリンは列車を追い掛け、屋根に飛び乗ってしがみ付いた。
プリンスはレモンに、木村から脅されていたと話す。レモンは嘘に気付いて拳銃を構えるが、薬が混入されたペットボトルの水を飲んで倒れ込んだ。プリンスは彼に何発も銃弾を浴びせ、その場を後にした。レディーバグは落ちているスマホが鳴っているのに気付き、拾って出た。それは木村のスマホで、掛けて来たのは長老だった。レディーバグは列車に落ちていたことを彼に教え、京都駅に預けると告げた。キグルミを着ていたホーネットは車内販売員を殴り倒し、制服を奪った。
47分前、ホーネットはキグルミ姿で息子に近付き、毒殺していた。レディーバグはホーネットがウルフの結婚式でパティシエに化けていたことを思い出した。そこへ販売員の姿をしたホーネットが現れ、レディーバグに襲い掛かった。レディーバグが背後から首を絞めて脅すと、彼女はネット経由で「約束の報酬はケースの中」と言われたことを明かした。ホーネットはレディーバグの隙を見て、注射器を掌に突き刺した。レディーバグは注射器を抜き取り、ホーネットに突き刺す。ホーネットは血清を持っておらず、苦悶して死んだ。
車内に戻ったタンジェリンは、レモンの遺体を発見して嘆いた。ホワイト・デスからの電話で「私に嘘をついていたな。息子と金の無事を確保する契約だ」と言われたタンジェリンは、息子を扱き下ろした。ホワイト・デスが「京都駅で会おう。お前らの目を見ながら殺してやる」と話すと、タンジェリンは「朝のラッシュが始まるぜ。どうする気だ」と尋ねる。ホワイト・デスは「列車には誰も乗っていない」と教え、終点まで全席を買い占めたことを明かした。プリンスはタンジェリンは遭遇し、泣く芝居でやり過ごそうとする。タンジェリンはレモンを殺した相手だと気付いて始末しようとするが、レディーバグが駆け付けて阻止する。タンジェリンはレディーバグと揉み合いになり、銃の暴発で死亡した…。

監督はデヴィッド・リーチ、原作は伊坂幸太郎、脚本はザック・オルケウィッツ、製作はケリー・マコーミック&デヴィッド・リーチ&アントワーン・フークア、製作総指揮はブレント・オコナー&三枝亮介&寺田悠馬&カット・サミック、撮影はジョナサン・セラ、美術はデヴィッド・シューネマン、編集はエリザベット・ロナルズドッティル、衣装はサラー・エヴリン、視覚効果監修はマイケル・ブラゼルトン、音楽はドミニク・ルイス、音楽監修はシーズン・ケント。
出演はブラッド・ピット、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、アンドリュー・小路、真田広之、サンドラ・ブロック、マイケル・シャノン、ベニート・A・マルティネス・オカシオ、ザジー・ビーツ、ローガン・ラーマン、マシ・オカ、福原かれん、ケヴィン・アキヨシ・シン、村上(ミンチ)義輝、竹谷かおり、トシタカ・カツミ、ジム・ギャリティー、エメリナ・アダムス、ジェンソン・チェン、嶋本信明、ヨシ・スダーソ、ヨハンナ・ワッツ、イアン・マルティネス、タニア・ヴェラフォード、パンチョ・カルデナ、フリオ・ガベイ、アンドレア・ムニョス他。


伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』を基にしたハリウッド映画。
監督は『デッドプール2』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』のデヴィッド・リーチ、脚本は『フィアー・ストリート Part 2:1978』のザック・オルケウィッツ。
レディーバグをブラッド・ピット、プリンスをジョーイ・キング、タンジェリンをアーロン・テイラー=ジョンソン、レモンをブライアン・タイリー・ヘンリー、木村をアンドリュー・小路、長老を真田広之、マリアをサンドラ・ブロック、ホワイト・デスをマイケル・シャノン、ウルフをベニート・A・マルティネス・オカシオが演じている。
アンクレジットだが、カーヴァーをライアン・レイルノズ、レディーバグに協力する乗客をチャニング・テイタムが演じている。

この映画で描かれている日本は、嘘っぱちに満ち溢れている。正確な考証など、全く存在しない。
コロナ渦のせいで日本でのロケが不可能になったという事情はあるものの、昔と違って今の時代なら、その気になれば「正確性の高い日本」を再現することは難しくなかったはず。
デューク真田が参加しているので、彼ならスタッフに細かく注文を出すことも出来ただろうし。
しかし、この映画は意図的に「デタラメな日本」を作り上げているのだ。
だからこそ、この世界観をデュークは受け入れ、楽しく仕事をしているのだ。

なので、「日本の描写がデタラメすぎる」という観点からの批判は、完全にお門違いということになる。
それを狙って作っているのだから「もちろんデタラメですけど、それが何か?」と言われて終わりだ。
タイトルが英語と「弾丸列車」という日本語で並列表記され、主要キャラの登場シーンでレディーバグに「てんとう虫」、タンジェリンに「みかん」などと文字表記されるのも、日本へのリスペクトじゃなくてギャグ的な匂いが強い。

ポリコレ的な視点から、「原作小説の日本人キャラクターがアメリカ人に変更されている」という批判もあるようだ。
でも、これも前述の理由に関連して軽く受け流しちゃった方がいいのかな。まあ「それとこれとは違う」という問題ではあるんだけどさ。
ただ、そこを原作に合わせようとしたら全員が日本人になるので、それだとブラッド・ピットを含む大半の俳優は出演できないよね。
あと、そんなことよりも原題の「Bullet Train」を「ブレット・トレイン」とカタカナ表記している担当者のセンスが気になるぞ。
Bulletは日本だと「バレット」という発音の方が広く浸透しているはずなので。わざわざ「ブレット」にするメリットが分からないし。

序盤から次々にキャラクターが登場し、どんどん視点が移動していく。
それだけでも追い掛けるのが大変なのに、色んな回想が何度も挿入される。
まずはタンジェリンとレモンが「何人殺したか」と口論になり、検証するために三合会の連中との戦いを思い出すという形で回想シーンが挿入される。
ちなみに、この戦いでは17人目に無関係な人間が巻き添えを食らって死亡するのだが、その被害者を演じているのは監督のデヴィッド・リーチだ。

次の回想は、タンシェリンがレモンに「ホワイト・デスはどういう人物か」を説明するための回想シーン。その次は、「ボリビアの仕事の2人」ってことで、タンシェリンとレモンがボリビアで遺体を切断して処理している様子が短く挿入される。その次は、ウルフが列車に乗り込んで来るまでの経緯を描く回想シーンだ。
その全てが必要なのかというと、別に無くても物語としては成立する。
とは言え、「何人殺したか」ってのは遊びみたいなモンだから、まあ分からんでもない。ホワイト・デスの説明は、あった方がいいかな。
ボリビアのシーンは後で関わって来るけど、もう少し何とかならんかと感じる。
ウルフの回想は、入れるタイミングも入れ方も悪すぎる。

ネタバレになるが、終盤になってホワイト・デスの計画が明らかになる。
かつてタンジェリンとレモンがボリビアで組織の連中を残らず殺し、ホワイト・デスは後始末に向かった。彼の車を妻が使い、殺し屋が車を衝突させて大怪我を負わせた。
妻は超一流の心臓外科医しか救えない状態に陥るが、その医者はホーネットに毒殺されていた。妻が出掛けたのは、役立たずの息子を救うためだった。妻を事故に偽装して始末した張本人はカーヴァーだった。
つまり列車に殺し屋たちが集まったのは、全てホワイト・デスの復讐計画だったのだ。
いかにも伊坂幸太郎の原作らしく、それまで無関係に思えた出来事が終盤になって一気に集約される。

ボトルウォーターが大事なシーンで多くな役割を果たすとか、プリンスを生き残らせずに因果応報で葬るとか、その辺りの仕掛けも良く出来ている。
ただ、伊坂幸太郎の原作小説とデヴィッド・リーチ監督の持ち味の相性が悪かったのか、込み入った人間関係や複雑な物語が上手く整理できていないように感じられる。
そのせいで、やたらと説明臭い部分があったり、無駄なお喋りが邪魔だと感じたりする。
話のテンポがモタ付いている部分もあったりして、なんかスタイリッシュに仕上がっていないのよね。

フラットな目で見た場合、これはポンコツ映画になってしまうだろう。
だけど、個人的には好きだ。
ただし、いびつな感覚で「好きだ」と言っていることは、紛れも無い事実である。
そこにある感覚は、「デューク・サナダがものすごくカッコイイじゃないか」という興奮だ。私がこの映画を好きだと言い切る理由は、その一点に尽きる。
仮に長老のポジションがデュークとは異なる俳優だったら、単純なポンコツ査定で終わっていただろう。

粗筋で書いた展開の後、長老が列車に乗り込んで来る。そこからは実質的に、長老が主人公になっている。
そもそもレディーバグは悪運の強さだけで何とかうまくやり過ごしているだけであり、とてもじゃないが有能な殺し屋と言える活躍はしていなかった。
これが徹頭徹尾、完全なるコメディー映画ならともかく、そうではないので、主人公としては頼りなくて魅力に欠けると言わざるを得ない。
そこへ長老が登場すると、他の連中のようなユーモラス要素は皆無だが、その徹底して渋くてワイルドなイケオジっぷりがたまらないのだ。

ただでさえ頼りないレディーバグだが、そんな中で誤爆とは言えタンジェリンを死なせてしまうので、ますます厳しいことになる。しかも、それはプリンスを助けようとした行動の結果だからね。
こっちは早い段階で、プリンスが卑劣で醜悪なクズだと知っている。なので、そんなプリンスを助けようとしてタンジェリンを死なせるレディーバグには、かなりイラッとしてしまう。
そこへ長老が登場くと、すぐにプリンスの嘘を見抜いて指摘する。そして病院の手下を始末したこと、木村が生きていることを泰然自若で語る。プリンスは強気に出るが、長老は凄みと貫禄で圧倒して黙らせる。
そんな様子を見せられたら、「惚れてまうやろ」である。

長老はレディーバグに、かつて峰岸の側近だったこと、ホワイト・デスに妻を殺されたことを明かす。そして彼はレディーバグと生きていたレモン&木村を集め、復讐への協力を要請する。
完全にチームのリーダーになるのだ。
列車が京都駅に着くとレディーバグたちは各自の役目を果たすが、長老が主役の座を譲ることは無い。
麻倉未稀の『ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO』が流れる中、列車に乗り込んで来た暗殺者軍団を日本刀で次々に斬るシーンの、なんとカッコイイことよ。

(観賞日:2024年7月3日)

 

*ポンコツ映画愛護協会