『バグジー』:1991、アメリカ

1930年代のアメリカ。ベンジャミン・シーゲルは旧友マイヤー・ランスキーやチャーリー・ルチアーノと共に、ギャングの幹部として暗黒街で名を響かせている。シーゲルは、組織の金をくすねたブッカーのジェリーの元へ行き、自らの手で射殺する。マイヤーとルチアーノは殺し屋に始末させようとしたのだが、シーゲルは自分で殺したがったのだ。
シーゲルはロスを仕切るジャック・ドラグナと話を付ける役目を任され、ハリウッドへ向かった。旧友の映画俳優ジョージ・ラフトと会ったシーゲルは、スタジオで端役女優のヴァージニア・ヒルと出会った。シーゲルは、すぐにヴァージニアを口説き落とした。
シーゲルはドラグナに会い、手を組む約束を取り付けた。さらにシーゲルは組織の金を盗んだ一匹狼のギャング、ミッキー・コーエンと会って手を組むことを決めた。シーゲルはコーエンの案内で、ヴァージニアを連れてネバダ州の砂漠にある小さなカジノを訪れた。その帰り、シーゲルは砂漠にカジノ付きホテルを建設しようと決めた。
シーゲルはマイヤーから計画の承認を貰い、建設を進めていく。シーゲルは不安視する周囲の意見をよそに、金の管理をヴァージニアに任せた。シーゲルの口出しで計画は大幅に変更され、100万ドルの予算が600万ドルにまで膨れ上がった。
シーゲル組織を裏切った元仲間ハリーを殺害し、逮捕されてしまう。だが、かねてから金を渡していた検事の協力もあって、すぐに無罪放免となった。砂漠に戻ったシーゲルはコーエンから、ヴァージニアが200万ドルを横領していると知らされる…。

監督はバリー・レヴィンソン、リサーチ・ソースはディーン・ジェニングス、脚本はジェームズ・トバック、製作はマーク・ジョンソン&バリー・レヴィンソン&ウォーレン・ビーティー、共同製作はチャールズ・ニューワース、撮影はアレン・ダヴィオー、編集はスチュ・リンダー、美術はデニス・ガスナー、衣装はアルバート・ウォルスキー、音楽はエンニオ・モリコーネ。
出演はウォーレン・ビーティー、アネット・ベニング、ハーヴェイ・カイテル、ベン・キングズレイ、エリオット・グールド、ジョー・マンテーニャ、ベベ・ニューワース、ウェンディ・フィリップス、リチャード・サラフィアン、ルイス・ヴァン・バーゲン、ビル・グラハム、アンディ・ロマーノ、ロバート・ベルトラン、ジャン=カルロ・スカンドゥッツィー、ステファニー・メイソン、キンバリー・マックロー他。


ラスベガスを作った実在の人物、ベンジャミン・“バグジー”・シーゲルの半生を描いた作品。
シーゲルをウォーレン・ビーティー、ヴァージニアをアネット・ベニング、コーエンをハーヴェイ・カイテル、マイヤーをベン・キングズレイ、ハリーをエリオット・グールド、ラフトをジョー・マンテーニャ、ドラグナをリチャード・サラフィアンが演じている。

前半は、まだバグジーがラスベガス建設計画を思い付く前の話が描かれる。そこではドラグナやコーエンと手を組むエピソードがあり、それは大きな契約を一気に取り付ける凄腕っぷりや、利口な所をアピールするポイントになるはずだが、いずれも淡白に処理される。バグジーが凄いというより、相手があっさりOKしたという感じだ。
しかも、その前半の内容でシーゲルのギャングとしての凄さをアピールできていない代わりに、彼が女たらしでイカれた悪党だということだけはアピールしてしまう。そんな所だけをアピールするために長く時間を割いた意味が全く分からない。

前半部分は、バグジーのピカレスクとしての魅力を示すことが出来ておらず、逆に主人公の魅力を削いでいるだけだ。女たらしでイカれた悪党が後半に入って夢の実現のために頑張り始めても、そんなチンピラ野郎に感情移入は出来ないのだ。
そう、この映画の最大にして致命的な問題点は、バグジーという男が全く魅力的に見えないということだ。後半に入っても、ヴァージニアの元恋人ジョーイを急に「彼女を侮辱した」と言ってボコボコに殴るし。でも、ずっと前の出来事なのよね、ジョーイがヴァージニアを淫売と言ったのは。
そんなネチネチと根に持つ男、イヤだろ。

バグジーがカジノ付きホテルを作ることに固執する理由が、良く分からない。いきなり砂漠で「ひらめいた」と言うのだが、なぜ思い付いたのか、全く分からない。本当に、ただ突然にパッと閃いたのだとしても、そこは何か特別な演出が必要だろう。
そもそも、この映画を見た限りでは、確かに砂漠にカジノ付きホテルを作る着想だけは先見の明があったのかもしれないが、その後の計画は他人に任せた方が良かったのではないかと思ってしまう。バグジーの余計な口出しのせいで大幅に予算が膨らむし、テメエの女に金の管理を任せたせいで金を横領されてるし。
能無しじゃんか。

 

*ポンコツ映画愛護協会