『プレスリー VS ミイラ男』:2002、アメリカ

テキサス州マットクリーク。老人向けの医療施設ジェイディー・ホームでは、老人のエルヴィス・プレスリーがベッドで休んでいる。彼は 老いて勃起もしなくなった自分を嘆く。同室の老人患者ブルは具合が急に悪化し、息を引き取った。翌朝、施設に入院している老女は、 治療器に入っている患者の眼鏡を奪い取り、廊下に置いてあったお菓子の箱を盗んだ。部屋に戻った老女は、床を這うスカラベを発見した 。布団に潜り込んだスカラベを潰そうとした老女は、腕を噛まれて出血した。
老女はスカラベを杖で叩き潰すが、死んでいなかった。老女が驚いていると、部屋にミイラ男が現れた。病室で眠っていたエルヴィスが目 を覚ますと、ドアにしがみついている老女の顔が見えた。老女は「助けて」と漏らした後、何かに引っ張られるように姿を消した。しかし エルヴィスは気のせいだろうと思い、また眠りに就いた。翌日、老女の遺体を引き取るため、霊柩車が施設にやって来た。
エルヴィスの病室にブルの娘キャリーが現れ、父の遺品を整理した。看護婦が病室へ来て、エルヴィスに「具合はどう、ハフさん」と声を 掛けた。エルヴィスは「俺のことはエルヴィス・プレスリーだと呼べ。セバスチャン・ハフの名前は、もう使わない。本名で行きたい」と 言うが、看護婦は呆れて相手にしない。彼女は「貴方はプレスリーのそっくりさんってことを忘れないで」とエルヴィスを諭した。
エルヴィスはキャリーに、「ドラッグで疲れていた頃、物真似タレントのハフと入れ替わった。そのハフが死んだので、エルヴィスが 死んだことになっている」と説明した。バーベキューの際にトレーラーが爆発炎上して契約書が焼失したため、エルヴィスは自分が本物 だと証明することが出来なくなったというのだ。しかし看護婦もキャリーも、エルヴィスの話を全く信じようとしなかった。
エルヴィスの話を信じたのは、患者のジャックだけだった。黒人の彼は、自分がJFKだと主張した。エルヴィスが「アンタは黒人だ」と 指摘すると、ジャックは真剣な顔で「真実を隠すため、全身の皮膚を移植された」と説明した。その夜、エルヴィスは病室でスカラベと 遭遇する。スカラベに襲われた彼は、フォークで突き刺して退治した。人を呼ぶために廊下へ出たエルヴィスは、自分の病室で倒れている ジャックを発見した。エルヴィスが慌てて駆け寄ると、ジャックは倒れているだけだった。
ジャックは「あいつが廊下を通ったのを見たか。カサカサと音がしてた。リンドン・ジョンソンが俺に殺し屋を送って来た」と語った。 エルヴィスが困惑しながら「ジョンソン大統領は死んだぞ」と告げると、彼は真顔で「死んでも奴を止めることは出来ん」と言う。施設の 管理人に事情を問われたエルヴィスは、拳ほどの大きさの虫が出たと説明した。管理人は「駆除業者を呼びます」と謝罪した。
次の夜、娘の幻影を見て目を覚ましたエルヴィスの病室に、ジャックが険しい顔で現れた。彼が「奴が来たぞ。あの音を聴け」と言った 直後、廊下でカサカサという音がした。ジャックは「ジョンソンだと思っていたが、違う暗殺者だ。証拠を見つけた。今夜は別の獲物を 狙ってる。一緒に来てくれ」と告げる。エルヴィスがジャックに案内されてトイレの個室へ行くと、壁には象形文字の落書きがあった。 ジャックは「本で文字の意味を調べてみた。翻訳すると、『フォラオはピーナッツを貪り食う。クレオパトラは悪戯好き』という意味だ」 と述べた。
エルヴィスが「こんな落書きに何の関係があるというんだ?」と訊くと、ジャックは「ハッキリとは分からないが、昨夜、俺が襲われた時 、奴はケツの穴に口を付けて魂を吸い取ろうとしていた」と話す。ジャックはエルヴィスを自分の病室へ連れて行き、専門書を見せる。 エルヴィスが本を読むと、「ミイラに特殊な葉を乗せて呪文を唱えると蘇る。ただし生き続けるには人間の魂を食わねばならない。小さい 魂だと長生きできない」と記されていた。
ジャックは「小さい魂とは、消えそうな魂のことだ。この施設には魂を食らうエジプトのミイラが潜んでいて、老人をエサにしている。 夜中に来て、眠っている老人たちを襲っているんだ。老人は弱っているから、簡単に魂を得ることが出来る。それに入所者は次々に来る から、永遠に魂を食うことが出来る」と語る。エルヴィスは「だが、なぜ奴はエジプトからテキサスへ来たんだ。なぜトイレに落書きを した?」と疑問を抱いた。
エルヴィスとジャックは話している最中、廊下に気配を感じた。エルヴィスは警告するジャックを無視し、廊下を覗いた。すると廊下の 向こうからミイラ男が歩いて来た。エルヴィスが体を強張らせていると、ミイラ男は一瞥をくれただけで通り過ぎた。患者のキモサベが 現れ、ミイラ男にオモチャの拳銃を空撃ちした後、その場に倒れて死んだ。魂は食われておらず、死因は心臓の血管破裂だった。
翌日、エルヴィスは施設の敷地を歩き回り、どうやってミイラ男が来たのか調べようとする。川辺に足を向けた彼は、水中に沈んでいる バスのナンバープレートを見つけた。自室に戻ったエルヴィスの元に、ジャックがやって来た。ジャックは図書館へ行き、過去の新聞を 調査していた。そして、美術館で展示するために運ばれていたエジプトのミイラがテキサスで盗まれたことを突き止めていた。
事件当日、銀色のバスに乗った2人組が深夜にミイラの運搬車を襲撃するところを目撃されていた。だが、嵐に襲われてバスは川へ転落 した。ジャックの話を聞いたエルヴィスは、川で見つけたナンバープレートがバスの物だと察知した。「だが、どうやって蘇った」と彼が 口にすると、ジャックは「ミイラの中には、棺に呪文を書いて封印されるものもあるそうだ」と語る。エルヴィスは「そうか、バスが転落 して棺が壊れた時、呪縛から解き放たれたんだな」と悟った。
エルヴィスが「それで、どうする?」と問い掛けると、ジャックは「施設を移るしか無いだろうな。ただ、奴は夜しか行動しない。だから 俺は今から寝ることにする。そしてコーヒーを飲みながら夜を明かすよ」と病室を去った。だが、エルヴィスは「俺の居場所は、ここしか ない。映画では常にヒーロー役だった。今こそ、本物のヒーローになれる」と考え、ジャックに内線電話を掛けた。彼は「施設が何をして くれるかではなく、自分が何をすべきか考えよう。一緒にミイラを倒すんだ」とジャックに語る…。

監督&脚本はドン・コスカレリ、原作はジョー・R・ランズデール、製作はジェイソン・R・サヴェージ&ドン・コスカレリ、製作総指揮 はドン・コスカレリ、撮影はアダム・ジャネイロ、編集はドナルド・ミルン&スコット・J・ギル、美術はダニエル・ヴェッキオーネ、 衣装はシェリー・ケイ、視覚効果監修はマイケル・T・スミス&デヴィッド・ハートマン、音楽はブライアン・タイラー。
出演はブルース・キャンベル、オジー・デイヴィス、ボブ・アイヴィー、エラ・ジョイス、ハイディ・マーンハウト、イーディス・ ジェファーソン、ラリー・ペンネル、レジー・バニスター、ダニエル・ローバック、ハリソン・ヤング、ダニエル・シュワイガー、 リンダ・フラマー、シーン・オカダ、ソランジュ・モランド、カレン・プラセンシア、ブルース・ラウィッツ、ジョセフ・プリメロ、 チャック・ウィリアムズ、ティム・グッドウィン、ジェームズ・マーリー、“トゥー=ガン”・タイラー他。


ジョー・R・ランズデールの短編小説を基にした作品。日本未公開作品。
エルヴィスを『死霊のはらわた』シリーズのブルース・キャンベル、ジャックを『ドクター・ドリトル』のアーチャー役だったオジー・ デイヴィス(ブラックスプロイテーション映画の監督でもあった)、ミイラ男をボブ・アイヴィー、看護婦をエラ・ジョイス、キャリーを ハイディ・マーンハウト、老女をイーディス・ジェファーソン、キモサベをラリー・ペンネル、老人ホームの管理人をレジー・バニスター が演じている。
『ファンタズム』シリーズのドン・コスカレリが監督、脚本、製作、製作総指揮を務めている。
アメリカでも幾つかの映画祭で上映された以外は限定公開だけで、ほぼ日本で言うところのVシネマ状態だ。それでも、なぜかブラム・ ストーカー賞の脚本賞なるモノを受賞している。
それにしても、こんな映画に原作小説があるとはね。

明らかに受け狙いの邦題が付けられた作品って、タイトルが一番面白くて、中身はそれを越えられないというのが、私の持論だ。
まあ本作品の場合、中身から大きく逸脱したり、一部分だけを誇張したりして邦題を付けているわけではなく、映画の根幹部分をバッチリ と表現している邦題ではあるんだけど、だからって中身がタイトルに見合うほど面白いってわけではない。
タイトルから受ける印象と比較すると、そんなに弾けたバカ映画として仕上がっているわけではない。

まずテンポが悪い。
笑いが脱力系だったり、ユルいノリがあったりするのは別に構わないんだけど、全体のテンポがユルすぎるってのはマズい。
そりゃあ場面によっては落ち着いたテンポでもいいけど、小気味よく進めるべき部分まで全てノロノロ&ダラダラしている。
エルヴィスがハフと入れ替わる経緯を説明する時に回想まで入れて丁寧にやっているけど、そんなの、どうでもいいよ。

「なぜ死んだはずのエルヴィス・プレスリーが生きているのか」という部分は、それほど重要な問題ではないはずでしょ。
それを描くことが本作品のメインではないんだし、もっとサラッと処理してしまった方がいい。
ハフと交わした契約書を消失した経緯とか、医療施設へ送られる原因となったステージでの転落事故とか、そんなモノを、わざわざ回想 シーンの時間を使って見せる必要なんて無いよ。

喜劇が繰り広げられるわけでもなく、ミイラの恐怖をアピールするわけでもなく、プレスリーがミイラや虫と戦うわけでもなく、特に ストーリーの進行には関係の無いシーンも無駄に多い。
話のメリハリも無い。
あと、キャリーは何のために登場したんだ。
看護婦にしても、殺されそうなフラグが立っているのに、殺されないどころかミイラとは全く絡まず、これまた存在意義が薄いし。

ジャンル分けの難しい作品ではあるが、あえて分類するなら「ホラー・アクション」なのかな。
で、本来なら、ここに「コメディー」の要素が、もっと色濃く盛り込まれるべきなんだよな。
そこが薄いってのが、この映画が面白くない一番の原因だと思うなあ。
だからって徹底してシリアスなホラーとしてやっているわけじゃなくて、ホラー・コメディーをやろうとしている節が窺える箇所も あるんだよな。
でも、なぜか哀愁ムードの強いテイストに仕上げているので、ちっとも弾けない。

あと、主人公が歩行補助器を使わないとマトモに歩くことも出来ないような老人だから仕方が無いんだけど、アクションシーンの尺は 少ないし、中身も薄いんだよな。
予算の問題はあったんだろうけど、敵も小さな虫が一匹とミイラが1体だけだし、どっちもチープで怖さも迫力も皆無だし。
そっちの方で弾けてくれれば、もう少し何とかなったとは思うんだけど、そっちでの面白味も味わえない。

モノローグの洪水も疎ましい。それが笑いに繋がっているならともかく、そうじゃない。
ただエルヴィスの心情を淡々と語っているだけ。
これが「老いたプレスリーの悲哀を描く人間ドラマ」ということなら、それでも構わないかもしれんが、そうじゃないからね。
エルヴィスが老いぼれた自分を嘆いたり愚痴ったりするモノローグが多用されるが、だから何なのかと。
ホントに、ただの愚痴でしかない。

ドン・コスカレリは「誰からも必要とされず、ただ死を待つだけの老人だったエルヴィスが、ミイラ男と戦うことに生き甲斐を感じるよう になる」という流れを作りたかったのかもしれんが、そこを上手く表現できているとは思えないし、そんなに大量のモノローグは要らない 。無駄に多すぎる。
大体、それをモノローグで説明するってのは不恰好だし。
それと、そういう流れをやるとしても、もう少し早いタイミングでエルヴィスを燃えさせてくれないと。
残り20分ぐらいになって、ようやく戦いに出向くんだよな。
そこまでに、エルヴィスがミイラ男に襲われることは無いし、ミイラ男が他の患者を襲う様子も直接的には描かれないから、盛り上がりに 欠ける。

(観賞日:2012年8月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会