『ブレイブ』:1997、アメリカ

ネイティプ・アメリカンのラファエルは、バーで会った男に「特別な才能を持った男を探している」と書かれたメモを渡された。指定されたビルに行ったラファエルは、そこで待っていたマッカーシーという男にスナッフ・ムービー(実際に人を殺す映画)への出演を持ち掛けられる。
5万ドルの出演料でその話を引き受けることにしたラファエル。出演は1週間後だ。妻リタ、息子フランキー、娘マルタへのプレゼントとして、前金に貰った金で高価な買い物をするラファエル。以前の泥棒仲間ルイスは彼が泥棒で大金を手に入れたと信じ込む。
盛大な祭りを開き、仲間と共に盛り上がるラファエル。そこへルイスがやって来て金を分けろと言うが、ラファエルは断る。ビデオ出演を翌日に控えたラファエルは教会に行き、ストラットン神父に金の入手方法を告白する。
自宅に戻ってきたラファエルは、ルイスがリタを殴ってレイプしようとしたことを知る。ルイスの元に向かったラファエルは彼を殺してしまう。ラファエル達が住むモーガンタウンは都市開発で立ち退きを迫られている。そんな町を後にして、ラファエルはビデオ撮影現場に向かった…。

監督はジョニー・デップ、原作はグレゴリー・マクドナルド、脚本はポール・マクカドン&ジョニー・デップ&D・P・.デップ、製作はチャールズ・エバンス・Jr.&キャロル・ケンプ、製作総指揮はジェレミー・トーマス、撮影はヴィルコ・フィラチ、編集はパスカル・ブッバ、衣装はリンディ・ヘミング、音楽監督はスティーヴン・R・ゴールドマン、音楽はイギー・ポップ。
主演はジョニー・デップ、共演はマーロン・ブランド、マーシャル・ベル、エルピディア・カリーロ、フレデリック・フォレスト、ルイス・グズマン、クラレンス・ウィリアムズ三世、マックス・パーリッチ、ペッペ・シーナ、フロイド・“レッドクロウ”・ウェスターマン、ループ・オンティヴェロス、アレクシス・クルズ、コディ・ライトニング、ニコル・マンセラ、イギー・ポップ他。


マッカーシーとラファエルが契約を交わすシーンは重要なはずなのだが、何の契約なのかイマイチ分からない。「ラファエルが1週間後にビデオ撮影で殺される」というのは大事な部分なのだから、ハッキリと契約内容について説明すべきだった。

なぜラファエルが命を捨ててまで金を稼ごうとしたのかが見えて来ない。ラファエルのこれまでのすさんだ生活や、仕事の見つからない毎日や、モーガンタウンの差し迫った状況が、言葉では説明されるものの、強く訴えかけるだけの力は感じられない。

美しくも悲しい家族への愛を引き立たせるためには、その背景となる貧乏な生活風景がしっかりと描かれていなければならない。だが、そういった大事な部分が描かれなていない。
そのくせ、明らかに不要と思われる岩場でのセックスシーンなどはあったりする。

ラファエルが家族のために派手な飾り付けをしたミニ遊園地を作る場面があるが、それまでの貧困生活がキッチリ描かれていないため、効果が薄い。
ラファエルの心が見えてくるようなシーンが無いので、何も伝わってこない。

1週間という生命のリミットがあるのに、それまでの生活に緊張感や焦燥感はなく、非常に牧歌的に描かれている。しかしながら、物悲しさを浮き立たせるほどの陽気さにも欠けており、淡々とした展開に間延びした印象を受けるばかり。
緩急の「急」が無いのだ。

ジョニー・デップの初監督作品だが、本人も「やめときゃ良かった」と思っているかもしれない。そう感じさせる出来映え。
ちなみにマッカーシーを演じるマーロン・ブランドは、日本の大作映画における丹波哲郎のようなポジションで出演。完全なる特別出演だが、タンバ的な長い講釈をかます。

 

*ポンコツ映画愛護協会