『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』:2021、アメリカ

ティム・テンプルトンはキャロルと結婚し、専業主夫になった。次女のティナは赤ん坊で、長女のタビサは小学2年生だ。タビサは町で一番の学校である、どんぐり教育センターに通い始めた。ジンボはステイシーと結婚して市長になり、三つ子は白バイ警官になっている。テッドは金融会社の社長になり、忙しくて滅多に会えないが子供たちには贅沢すぎるプレゼントを送って来る。タビサは勉強に夢中で、ティムが一緒に遊ぼうとしても興味を示さない。彼女はテッドを成功者として尊敬し、会いたがっている。
ティムはタビサから「お休みのキスは卒業」と言われ、成長の早さを感じて寂しく感じた。彼は屋根裏で魔法使い人形のウィジーを見つけ、懐かしく思ってお喋りした。ティナの部屋から人の声が聞こえたので、ティムは様子を見に行く。ティナがベイビー・コープ社の人間だと知って、彼は驚いた。ティナは副業だと前置きした上で、会社の危機なので極秘任務に立候補したと話す。ティムが「何か手伝うよ」と申し出ると、彼女はテッドを呼ぶよう求めた。
ティムがテッドへの電話を渋ると、ティナは「喧嘩でもした?」と尋ねる。ティムは「色々あるんだ」と言い、「早く電話して」という要求に「無駄だ。あいつの頭には仕事しか無い。だから、もう誘わなくなった」と告げる。「でも弟でしょ」とティナが話すと、ティムは「成長すると心が離れてしまうんだ」と述べた。翌朝、テッドは会社のヘリコプターでティムの家にやって来た。ティナがティムの音声を使い、留守電に「タビサが落馬した」と嘘のメッセージを残したからだ。
タビサはテッドの来訪を喜び、クリスマスまで一緒にいてほしいと頼む。テッドが「無理なんだ」と言うと彼女は寂しがり、頬にキスをした。それを見たティムは、自分との扱いの違いにショックを受けた。テッドはティムからベイビー・コープ社の話を聞くが、まるで相手にしなかった。2人が口論を始めるとティナは呆れ果て、おしゃぶりを咥えさせてベイビー・コープ社へ連れて行く。テッドは記憶を取り戻し、自分の銅像があるのを見てティムに勝ち誇った態度を示した。
ティナはテッドとティムを危機管理センターへ案内し、危機の内容について説明した。アームストロング博士は赤ん坊を教育マシーンとしか捉えておらず、能力開発を最優先事項として両親の介入を排除しようと考えていた。彼は半年の内に、どんぐり教育センターと同じ施設を世界中に作っていた。ティナは「博士の考えが広まったら子供の時代は消滅する」と語り、新しく開発した超スペシャルミルクで赤ん坊に戻り、どんぐり教育センターに潜入して博士の目的を探ってほしいのだと説明した。
ミルクの効果は48時間で、話を聞いたティムはすぐに前向きな態度を見せた。ティナは「パパの任務じゃないわ」と告げるが、彼はテッドへの対抗心からミルクを飲んだ。するとテッドも張り合ってミルクを飲み、兄弟は喧嘩をしながら子供の姿に変身した。ティナは2人で任務に当たるよう言い、「博士は毎朝11時45分に部屋を出る。部屋に監視装置を仕込んで、私に報告して」と述べた。2人が赤ん坊に変身したことがキャロルたちにバレてはマズいので、ティナは兄弟で旅行に出たように偽装した。
翌朝、テッドとティムは寝過ごしたため、スクールバスに乗り遅れてしまった。テッドはタビサにプレゼントしたポニーのプレシャスを呼び、それに乗ってセンターへ向かう。ティムはプレシャスの尻尾を掴み、必死で付いて行った。ティムはキャロルからの電話で「タビサの発表会は明日の夜よ。必ず来て」と言われ、「どんなことがあっても行く」と約束した。センターについて彼はテッドを赤ちゃんクラスへ送り込み、自身はタビサのいる青部隊へ赴いた。
ティムが席に座ろうとすると、意地悪な生徒のネイサンたちが妨害した。その様子を見たタビサは、自分の席をティムに譲った。モニターにアームストロングが姿を見せると、ティムはマルコス・ライトスピードという偽名を名乗った。青部隊は特進クラスでティムは全く授業に付いて行けなかったが、タビサはダントツでトップの成績を出した。一方、テッドは赤ん坊のボー・ビープたちに協力させて窓から教室を抜け出そうとするが、失敗に終わった。
ティムはわざと反抗的な態度を取り、校長室送りになろうと目論んだ。しかしアームストロングは隔離すると通告し、彼をボックスに閉じ込めて眠らせた。何とか脱出したテッドが校長室へ行くと、アームストロングが待ち受けていた。彼は「君が来るのを待っていた。ずっと監視していた」と言い、正体が赤ん坊であることを明かした。彼は「この世界では、赤ん坊は権力を握れない。君は使えそうだ。私の計画を理解できる者を探してる」と語り、放課後にエリートの赤ん坊の集まりがあることを教えた。
タイムアウトが終了したティムはボックスから解放され、センターに戻った。テッドは任務に失敗したティムを見下し、「俺一人でやる。ポニーと一緒に帰れ」と言い放った。ティムは「一人ぼっちは誰より得意だもんな」と嫌味っぽく告げると、その場を去った。彼が音楽室を覗くと、タビサとクラスメイトが歌の練習をしていた。タビサは歌が上手いとは言えず、練習を仕切るネイサンは酷評した。タビサは冬の発表会で独唱を任されていたが、それはネイサンが失敗させるために仕組んだのだとティムは知った。
ティムは迎えに来たキャロルの車に乗るタビサに声を掛け、追い払おうとするティナを無視した。彼はキャロルの同情を誘うような嘘を喋り、家に招待されるように仕向けた。一方、テッドは地下要塞に迷い込み、アームストロングと遭遇した。アームストロングはエリートの赤ん坊たちに様々なアプリを作らせ、金を儲けていた。彼はテッドに、「会社を作れば大儲けだが、金よりも大切なものがある。それは権力だ」と述べた。
家に着いたティムはティナから任務に戻るよう要求され、「やることがある」と拒否した。彼はタビサに「発表会が嫌なの?」と問い掛け、「家族が見に来る。パパも来る」と言われる。「パパが恥ずかしい?」という質問に、タビサは「違うわ。パパは独創的で想像力が豊か。私は違う。パパの自慢の娘になりたい」と答えた。シニアとジャニスが遊びに来たので、ティナはティムの正体がバレるのではないかと焦る。しかしティムは余裕の表情で、眼鏡かあるから大丈夫だと告げた。
アームストロングは作業中の赤ん坊を集め、「両親は児童心理学者で、私は実験に利用された。私は親よりも賢いと気付き、家出を決行した。私の邪魔をするのは両親だ。ベイビー革命を実行する。両親など不要だ」と呼び掛けた。彼はテッドに、「これがライフワークだ。1年5ヶ月もやってる」と語った。シニアとジャニスはティムを見て、「ティムに似てる」と口にした。テッドは家に戻り、シニアたちに気付かれないように忍び足で2階へ行こうとする。シニアとジャニスは、「テッドはティムを尊敬してた。いつもティムの真似ばかり。ティムは喜んでた。いつも連れ歩いて自慢してた。いつも2人は一緒だった」と語った。
ティムはタビサから部屋に招かれ、ギターを弾いて「歌の練習を手伝う」と持ち掛けた。タビサが「緊張する」と漏らすと、彼は歌の世界に入った自分を想像するよう助言した。タビサはティムに励まされ、リラックスして歌えた。ティナはテッドに「貴方のファイルよ」と言い、幼少期のティムが書いた手紙を見せた。そこには「約束する。いつも一緒だ。この先もずっと。君と僕は兄弟になるんだ。永遠に」というテッドへのメッセージが綴られていた。
テッドはティムに、アームストロングが親の存在を消そうとしていることを教えた。「一緒に止めよう」とティムが言うと、彼は「それはベイビー・コープがやる」と告げる。しかし電話を受けたティナは、証拠不足だと言われたことをテッドとティムに話す。彼女は「私たちで何とかしなきゃ」と告げ、ミルクの効き目が切れる前に発表会で作戦を決行しようと持ち掛けた。彼女はアームストロングにバブバブ装置を取り付け、ステージで挨拶する彼を操って本当の姿を晒す計画を説明した…。

監督はトム・マクグラス、原作はマーラ・フレイジー、原案はトム・マクグラス&マイケル・マッカラーズ、脚本はマイケル・マッカラーズ、製作はジェフ・ハーマン、製作総指揮はトム・マクグラス、製作協力はジョン・エリック・シュミット&ジョン・スワンソン、編集はメアリー・ブリー&マーク・A・ヘスター、プロダクション・デザイナーはレイモンド・ジハッハ、視覚効果監修はマーク・J・スコット、アート・ディレクションはクリストファー・ブロック&アンディー・シューラー、音楽はハンス・ジマー&スティーヴ・マッツァーロ。
声の出演はアレック・ボールドウィン、ジェームズ・マースデン、エイミー・セダリス、リサ・クドロー、ジミー・キンメル、アリアナ・グリーンブラット、ジェフ・ゴールドブラム、エヴァ・ロンゴリア、ジェームズ・マクグラス、ラファエル・アレハンドロ、セレニティー・ブラウン、デヴィッド・ソーレン、ニコラス・ギスト、ジェームズ・ライアン、デイヴ・スミス、ノヴァ・リード、モリー・K・グレイ、アシュリン・ルンダール、デイブ・ニーダム、トム・マクグラス、レイン・ドイ、コリン・アーカー他。


2017年の映画『ボス・ベイビー』の続編。今回は『あかちゃん新社長がやってきた』が原作。
監督のトム・マクグラス、脚本のマイケル・マッカラーズは、いずれも前作からの続投。
テッド役のアレック・ボールドウィン、ジャニス役のリサ・クドロー、シニア役のジミー・キンメル、ウィジー役のジェームズ・マクグラスは、前作からの続投。
ティムの声をジェームズ・マースデン、ティナをエイミー・セダリス、タビサをアリアナ・グリーンブラット、アームストロングをジェフ・ゴールドブラム、キャロルをエヴァ・ロンゴリアが担当している。

前作から4年が経過しているが、実際に「4年後」の物語にする必要は無い。前作から1年後とか、何なら1ヶ月後の物語でも構わない。
しかし、この続編は逆に、4年以上の歳月が経過した設定を持ち込んだ。テッドとティムを大人に成長させ、ティムを2人の娘を持つ父親として登場させている。
だったら、前作では「ボス・ベイビーと兄の関係」が軸だったが、今回は「ボス・ベイビーと父の関係」をメインに据えればいいはずだ。
しかし、実際には「テッドとティムが険悪になっていて、兄弟が赤ん坊になって云々」という話が軸になっており、どうにもズレているように感じる。

テッドが赤ん坊の姿になったところで中身は大人なので、それは「ボス・ベイビー」とは全くの別物だ。
あと、この映画が大きく扱おうとしてのはティムとボス・ベイビー(今回はティナなのでボス・レディー)の関係じゃなくて、ティムとタビサの関係なんだよね。
ティムはタビサの成長に寂しさを感じ、テッドとの扱いの差にショックを受ける。その後、タビサの本心を聞き、力になろうとする。
そういう話がメインなのだ。
そうなると、もうティナって要らなくないか。

なぜテッドが高慢でティムを見下す奴になっているのか、なぜ兄弟の仲が悪くなっているのか。
なぜテッドが子供時代を全否定するのか、なぜアームストロングの考えに共鳴するのか。
その辺りの理由が、良く分からない。
もちろん前作から何年も経って2人とも大人になった設定なので、まるで違う人間、まるで違う関係性になるのは当然っちゃあ当然かもしれない。
だけど、そんな風に変化した経緯が全く描写されていないため、「ティナが指示した任務の遂行について描く前に、そこを説明してくれよ」と言いたくなる。

っていうか、現在進行性の物語を「なぜテッドが傲慢な仕事人間になったのか、なぜ兄弟仲が悪化したのか」ってのを描きつつ仲直りに至る内容にすればいいんじゃないかと。
で、この「兄弟仲の修復」という部分においても、やっぱり「ティナがボス・ベイビー」という要素は要らないんだよね。
せっかく「ティムの娘がボス・ベイビーだった」という仕掛けを用意しておきながら、それをメインで使う気が全く無いんだよね。
他の話を描くための、きっかけとして使っているだけなのだ。

ティナが任務を説明した時に積極的な態度を示していたティムだが、テッドから「俺一人でやる。ポニーと一緒に帰れ」と言われただけで、あっさりと仕事を放棄する。
それはテッドから冷たい言葉を浴びせられて腹を立てているだけで、「何やってんだよ」と呆れてしまう。
序盤は「テッドが傲慢で高慢な性格で、彼の方に一方的な非があって兄弟仲が悪くなったのか」と思っていた。だけど、ティムの側にも色々と問題はあるんだよね。
それは、「なんか嫌な奴だな」と思わせるぐらいの問題になっている。

ティムがキャロルの同情を誘う芝居をする時も、ティナに「やることがある」と告げて指示を拒否する時も、すげえ生意気で嫌な感じだ。
ティナは自分の娘だから「生意気」ってのは変かもしれないけど、とにかく表情も態度も嫌な感じなのよ。 まるでティナを馬鹿にしているみたいで、性根が歪んでいる奴にしか見えないのよ。
あと「娘の力になりたいから」という理由で任務を放棄するのは、父親としては間違っちゃいないのかもしれないけど、物語としては「ホントにそれでいいのか」と言いたくなるぞ。

「アームストロングの野望と、それを阻止すべく動くティムたち」「ボス・レディーだったティナとティムの関係」「テッドとティムの反目と関係修復」「ティムとタビサの親子関係」といった色々な要素を持ち込んで、何もかもを中途半端に食い散らかしている。
あっちへ行って何かを少しかじっては、こっちへ来て別の何かを少しかじる。
フラフラと行ったり来たりを繰り返している。
多くの要素が上手く絡み合い、相乗効果に繋がっているわけではないのだ。

何より、今回はボス・レディーであるティナを輝かせなきゃいけないはずなのに、そこが「別にいなくても構わない」という内容になっているのは、明らかに間違いだ。
テッドとティムを子供の姿に変身させることで、ティナの役割を奪っているのだ。
じゃあ子供の姿になったテッドとティムが魅力的なのかというと、ちっともそんなことは無い。
また、ティナと子供になったテッド&ティムをトリオとして魅力的に絡ませているのかというと、お互いに潰し合っているだけだ。

タビサがティムと遊ばなくても、お休みのキスを拒んでも、嫌っているわけじゃないのは最初から分かっている。
ただ、その後の展開を考えた時に、そういう描写が邪魔になっているんだよね。
「ティムが子供の成長を感じて寂しさを感じる」という作業のために持ち込んでいる描写なんだけど、もっと他の形で何とかならなかったのかと。
「タビサが自慢の娘になりたがっている」ということが明らかになった時、それと「ティムとの遊びを拒否したり、キスを拒否したりする」という行動が上手く合致しない印象なのよね。

テッドはティナからアームストロングのことを聞いた時、彼の考えを全面的に否定することは無かった。むしろ、「俺の子供時代は最悪だった」ってことで、子供時代を否定する方針には同調していた。
そんな彼が、いつの間にか「アームストロングの計画を止めないと」という考えになっている。
そこの気持ちの変化を、スムーズに描いているとは言い難い。
あと、「仕事で成功したいなら、トップに立つまでチャレンジを続けるべき」という考えまで否定する形になってるけど、そこは別に悪いことでもないだろ。

テッドは「俺の子供時代は最悪だった」と言ってるけど、具体的に何が最悪だったのかは教えてくれない。そこから「最悪だと思っていたが、そうではなかったと気付く」という展開があるのかというと、そういうわけでもない。
そもそも、「子供時代は最悪だった」と思っているのなら、そこでテッドが責めるべきはティムじゃなくて両親のはずでしょ。ところが、テッドと両親の関係には全く触れていない。
そのため、「アームストロングがアプリで親をゾンビ化しようと企んでいる」と判明し、それをテッドが阻止しようとする終盤の展開にも上手く繋がらない。
それは「両親なんて要らない」と思っていた奴が、「やっぱり両親は大切。両親を愛してる」ってことで計画の阻止に動いてこそ、気持ちが高まる展開なのよね。しかも、テッドが計画の阻止に動こうとしている状況でも、まだティムと喧嘩しているんだよね。
その後でようやく仲直りするんだけど、「くだらない兄弟喧嘩とかしてる場合かよ」とイラッとするわ。

この口論のシーンで、ティムがタビサについて「父親が付いていなきゃ」と言うと、テッドは「いつもいなかったくせに」と腹を立てる。
彼は自分の卒業式に一度もティムが来なかったことを非難するのだが、それは親の仕事でしょ。
ティムが「父親として娘にしてあげたい」という立場で発言しているのに、テッドが兄であるティムに対して「お前は俺に対して父親のような仕事をしなかった」と責めるのは、完全に御門違いだぞ。
それが理由でテッドが「子供時代は最悪だった」と主張しているのなら、完全にズレているぞ。

あと、粗筋でも書いたけど、アームストロングは両親の実験台にされて、それが嫌で家出したんでしょ。
それなら、ベイビー革命が失敗に終わった彼が改心し、「家に戻ったら両親が温かく迎えてくれました。めでたし、めでたし」みたいなエンディングになっているのは、どう考えても無理があるだろ。
両親が反省していなかったら、また同じように息子を実験台にするぞ。
だからアームストロングは、また嫌な思いをすることになるぞ。

(観賞日:2024年9月4日)

 

*ポンコツ映画愛護協会