『ハード・チェック』:1994、アメリカ

ウエスタン大学のバスケットボール・チーム“ドルフィンズ”は敗戦が続き、コーチのピート・ベルは苛立ちを募らせている。試合後の会見ではデイリー・ニューズの記者エドに4年前の八百長疑惑を持ち出され、ますます苛立つ始末だ。
ドルフィンズは過去に2度の全米優勝を経験しているが、最近は弱体化が進んでいた。地元の有望選手は、他の大学に買収工作で獲得されてしまう。だが、ピートは決して買収工作に手を出そうとはしなかった。
来シーズンに向けて、ピートは新人選手のスカウトを開始した。彼はブッチ・マクレーとリッキー・ロー、そして無名選手のネオン・ブドーに会う。しかしブッチの母親やリッキーの父親からは、入学の代償として裏金や物品を要求されてしまう。
ピートは3人の選手を大学に招き、何とか入学してもらおうとする。リッキーは入学を決めたとピートに告げるが、その代わりに3万ドルを要求してきた。怒ったピートだったが、同窓生のハッピーを通じて3人の選手を買収することにした…。

監督はウィリアム・フリードキン、脚本はロン・シェルトン、製作はミシェル・ラパポート、製作総指揮はロン・シェルトン&ウォルフガング・グラッテス、撮影はトム・プリーストリーJr.、編集はロバート・K・ランバート&デヴィッド・ローゼンブルーム、美術はジェームズ・ビッセル、衣装はバーニー・ポラック、音楽記ナイル・ロジャース&ジェフ・ベック&ジェド・リーバー。
主演はニック・ノルティ、共演はメアリー・マクドネル、エド・オニール、J・T・ウォルシュ、シャキール・オニール、アルフレ・ウッダード、“ペニー”・ハーダウェイ、マット・ノーヴァー、ロバート・ウール、ボブ・クーシー、シルク・コザート、アンソニー・C・ホール、ケヴィン・ベントン、ビル・クロス、マーカス・ジョンソン他。


買収や八百長が平然と行われる大学バスケットの世界を描いたドラマ。
ピートをニック・ノルティ、彼の別れた妻ジェニーをメアリー・マクドネル、エドをエド・オニール、ハッピーをJ・T・ウォルシュが演じている。
ネオンとブッチを演じるのは、当時NBAの若手だったとシャキール・オニールとペニー・ハーダウェイ。ラリー・バードを始めとするバスケット関係者が、本人役で出演している。アンクレジットだが、ルイス・ゴセットJr.が神父役で出演している。
『栄光なきシュート/全米カレッジ・バスケの罠』という別タイトルもある。

最初の内はドルフィンズが連敗する様子が描かれるので、「弱小チームに新人選手が加わり、奮起して強くなる」というスポーツ青春ドラマかと思ったが、実は社会派ドラマだった。
ただし、前半の30分ぐらい、さんざんパスケットの試合の様子を見せられるだけに、すんなりと社会派のテイストに入っていくことは難しい。

ネオンは金や物品を要求していないのだから、ピートが買収への誘惑を断ち切り、他の2人は逃げられたがネオンはチームに入るという展開にすることも可能だった。
だが、この作品は後味の良さよりもメッセージ性を重視しているようだ。

ピートは買収はやらないと言っているが、自分の信仰する宗教については、新人選手の両親に合わせて平気で嘘をつく。
つまり、マジメ一本槍な男として描かれているわけではない。
しかし、そこは正直を貫く男として描いたおいた方が良かったかも。

買収を決めるまでの苦悩、買収してからの悔恨、そういったピートの心の動きは、あまり見えてこない。
作品の内容を考えれば、そこが最も重要視されるべきだろう。
練習や試合のシーンに多くの時間を割くより、そこにウェイトを置くべきだったのではないだろうか。
ただし、そうなるとNBAの選手を出演させている意味が失われるが。

平然と悪事に手を出すハッピーというキャラクターが登場させることで、規約違反をやらかすピートのダーティーなイメージを薄めようとしているようだ。
しかし、自分の行動に対する覚悟が無い分、ピートの方がハッピーよりもタチが悪い。

自分は規約違反をやってるのに、不正を行った選手を非難するピート。
ラストには記者を前にして不正に関する演説をぶつが(質問されてから話し始めるというのも情けない)、自分だけじゃなくて他人にも責任を押し付ける。
冴えない演説だこと。


第15回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低新人賞[シャキール・オニール]

 

*ポンコツ映画愛護協会