『ブルービートル』:2023、アメリカ
コード産業のCEOを務めるヴィクトリア・コードはカラパックス中尉やサンチェス博士たちに指示し、パゴ島でスカラベを発掘させていた。彼女は前任者である兄のテッドが失踪したことを受け、会社を引き継いでいた。ヴィクトリアはカラパックスに「15年も探させた。もう待てない」と言い、巨大な球体からの発掘を急ぐよう要求した。一方、大学を卒業したハイメ・レイエスは、故郷のパルメラ・シティーへ久々に帰郷した。彼は一家にとって、初めての大学卒業者だった。
ハイメは地元のエッジ・キーズで祖母のナナ、叔父のルディー、父のアルベルト、母のロシオ、妹のミラグロと会い、大学の卒業を祝ってもらう。しかし彼は家賃が3倍になって3ヶ月以内に支払わないと退去させられること、父が心臓発作で休んでいたので車の修理工場が潰れたことを知らされた。ミラグロが「エッジ・キーズのメキシコ人は街の発展には無縁。貧者は追いやられる」と口にすると、ハイメは「俺の学位が役に立つ。一流の職業に就いて家族を養う。リッチになる」と自信満々に語った。
しかし実際にハイメが就いた仕事はコード邸の清掃員で、しかもミラグロの紹介だった。ヴィクトリアの元をテッドの娘であるジェニーが訪れ、ワンマン機動部隊OMACの計画について指摘した。OMACは脳に接続して自立式の戦闘ユニットを生成する計画だが、何年も前に中止したはずだった。ジェニーはヴィクトリアが再開したことを批判し、「もう武器を作らないはずよ」と言う。ヴィクトリアは全く悪びれた様子を見せず、「貴方は会社のお荷物。父親の空いた席に座り、会社の金で慈善事業をしてる。会社を築いたのは私。テッドは馬鹿げた発明と無謀な経営で会社を傾かせ、挙句の果てに失踪した」と語った。
ジェニーが「計画は阻止する」と言うと、ヴィクトリアは「邪魔しないで」と睨む。ハイメは口論を止めに入るが、勝手に住人用トイレを使っていたミラグロと共にヴィクトリアからクビを通告された。ジェニーはハイメに巻き込んだことを謝罪して電話番号を教え、「明日、コードタワーに来て。仕事を紹介できるかも」と立ち去った。ミラグロから「彼女は絶対に気がある」と言われたハイメは、すっかりその気になって浮かれた。
翌日、ハイメはコードタワーへ行き、受付でジェニーを待った。ジェニーは立入禁止区域に侵入し、スカラベがあるのを見て盗み出した。ハイメが声を掛けると、彼女は「急いでるの」とタワーを去ろうとする。ハイメは「仕事が決まるまで帰れない」と食い下がり、ジェニーは追っ手が来ていることに気付いた。彼女は「何でもする?」と確認した上で、ハイメにスカラベを隠したハンバーガーの箱を渡した。ジェニーは「命懸けで守って。絶対に開けないで。見るのもダメ」と言い、その場を去った。
帰宅したハイメは家族に囃し立てられ、箱を開けた。家族がスカラベをふざけて投げ合うと、ハイメは奪い取った。するとスカラベは顔面に張り付き、ハイメの体内に吸収された。ハイメは青い金属スーツに全身を包まれ、「ホストを獲得しました」という声が響く。システムが起動し、ハイメは宇宙へ飛び出した。彼はコントロール不能な状態で街を飛び回り、何とか自宅に戻った。ハイメの背中には謎の機械が埋まっており、取り出せない状態になっていた。
ハイメはジェニーの元へ行き、追ってから隠れて逃げ出した彼女を見つけた。ジェニーが車に乗り込むので、ハイメは自宅に連れ帰った。ジェニーはスカラベについて、「私が子供の頃、父が持っていた世界ほ破壊する兵器。父によると、選ばれた者しか起動できない」と説明した。ハイメが「俺を選ばせない方法は?」と尋ねると、彼女は「分からない。でも急がないと、叔母は殺してでも奪う。まさか起動するとは思わなかった」と答えた。
ハイメが体から取り出す方法を尋ねると、ジェニーは「ある場所に行けば答えがある。でも鍵はコードタワーの中」と言う。ヴィクトリアはクレーン将軍と会い、カラパックスが試作品の製作に尽力していると説明した。彼女はジェニーに逃げられたことをカラパックスから聞き、必ずスカラベを取り戻すよう命じた。ハイメとジェニーはルディーに協力してもらい、コードタワーに潜入した。ジェニーはハイメに、「叔母と祖父が会社を始めて軍需産業に成長させた。彼女は祖父が死んで会社が手に入ると思ったけど、祖父は父を後継者に選んだ。父が別の方向に会社を導いたから、その偉業を叔母は消したいの」と語った。
ジェニーはテッドウォッチの試作品を盗み、ハイメと共にコードタワーを去ろうとする。そこへカラパックスが立ちはだかると、ハイメは勝手に変身した。カラパックスもOMACを起動させ、ハイメと戦う。ハイメはカラパックスを殺そうとするスーツを制止し、反撃を食らって窮地に陥った。ルディーはハイメを救って車に乗せ、その場から逃亡した。ハイメはジェニーとルディーに、「スカラベの名前はカージ=ダー。頭の中で感じる」と述べた。ジェニーは「共生し始めてる」と、危機感を示した。
ジェニーは空き家になっているコード邸へハイメとルディーを連れて行き、テッドウォッチを使って地下室へ向かう階段を出現させた。地下室に入ったルディーは驚き、「テッドがブルービートルだったのか」と口にした。ブルービートルを知らないハイメに、彼は「世代の差かな。パルメラ・シティーのヒーローだ」と語る。ジェニーはハイメたちに、「父はスカラベを起動できず、独自の技術を駆使して敵と戦った」と言う。ルディーはテッドのファイルを調べ、「テッドの師匠はダン・ギャレット。スカラベに選ばれた先輩だ。スカラベは脳に繋がり、お前と1つになろうとする」とハイメに説明した。
ルディーはハイメに、「取り外すには死ぬしか無い」と教えた。ショックを受けるハイメに、ルディーは「天が与えた力だ。何に使うか考えろ。みんなのヒーローになれるかも」と告げた。ヴィクトリアのヘリコプターが自宅へ向かうのを目撃したハイメは、ブルービートルに変身して急行する。ヴィクトリアは特殊部隊を家に突入させ、ハイメの家族を引っ張り出させた。そこへ駆け付けたハイメは「撃つな。傷付けたくない」と呼び掛けるが、特殊部隊は構わずに発砲した。
ハイメのスーツが防弾仕様で全くダメージを受けないと知ったヴィクトリアは、特殊部隊に家族を撃つよう命じた。ハイメは家族の盾になって守り、カージ=ダーが脅威を排除しようとすると「ダメだ、殺しは無しだ」と制止した。彼は能力を抑制し、特殊部隊を弾き飛ばすだけで済ませた。ハイメは拘束されそうになったアルベルトとミラグロを逃がし、敵と戦おうとする。しかしアルベルトは死んで家は全焼し、ハイメは連行されてしまった。
ナナはアルベルトの死に沈む家族に対し、「悲しんでる暇は無いよ。ハイメを救うのがアルベルトの願いだ。今は戦う時だよ」と告げる。ジェニーは「一緒に来て。力になる」と告げ、ナナたちをテッドが残した甲虫型飛行艇のバグシップに乗せた。彼女は父の発明した武器を見せ、救出作戦を話し合う。ジェニーたちは武器を装備し、ハイメが拉致されたパゴ島へ向かう。一方、ヴィクトリアはハイメを拘束し、カラパックスのOMACにデータを転送するようサンチェスに命じた…。監督はアンヘル・マヌエル・ソト、脚本はギャレス・ダネット=アルコセル、製作はジョン・リッカード&ゼヴ・フォアマン、製作総指揮はウォルター・ハマダ&ゲイレン・ヴェイスマン&ギャレット・グラント、共同製作はアリス・S・キム&K・C・ホーデンフィールド、撮影はパヴェウ・ポゴジェルスキ、美術はジョン・ビリングトン、編集はクレイグ・アルパート、衣装はメイエス・C・ルビオ、視覚効果監修はケルヴィン・マキルウェイン、音楽はボビー・クルリック、音楽監修はシーズン・ケント。
出演はショロ・マリデュエニャ、ジョージ・ロペス、スーザン・サランドン、アドリアナ・バラッザ、ダミアン・アルカザール、エルピディア・カリロ、ブルーナ・マルケジーニ、ラオール・マックス・トルヒーヨ、べリッサ・エスコベド、ハーヴェイ・ギレン、ホルヘ・ヒメネス、エイラ・アグエロ・ジュベール、ガブリエラ・オルティス、ヴィセンテ・イデラク、モデスト・ラセン、オシュン・ラミレス、ブリアナ・ルイス、タージ・ヴァウアンズ、ダンテ・ゴンダレス=アブレウ、ジョン・Z、カルロス・ポンセ他。
DCエクステンデッド・ユニバースの第14作で、DCユニバースの計画にも組み込まれた。
監督は2020年の『Charm City Kings』がサンダンス映画祭で注目を集めたアンヘル・マヌエル・ソト。
脚本は『ミス・リベンジ』のギャレス・ダネット=アルコセル。
ハイメをショロ・マリデュエニャ、ルディーをジョージ・ロペス、ヴィクトリアをスーザン・サランドン、ナナをアドリアナ・バラッザ、アルベルトをダミアン・アルカザール、ロシオをエルピディア・カリロ、ジェニーをブルーナ・マルケジーニ、カラパックスをラオール・マックス・トルヒーヨ、ミラグをロべリッサ・エスコベド、サンチェスをハーヴェイ・ギレンが演じている。
アンクレジットだが、テッド役でボビー・マッグハーが出演している。DCコミックスはマーベル・シネマティック・ユニバースの大ヒットを受けて、DCエクステンデッド・ユニバースをスタートさせた。しかし当初は上手く行かず、2作目の『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』は酷評を浴びた。
それでもワンダーウーマンだけは人気を得て、単独主演作『ワンダーウーマン』も興行的に成功した。
しかし残念ながら、「そこからは順調」と上手く運んだわけでもない。
おまけにマーベルも含めて次々に新作が公開されるため、観客の間では「スーパーヒーロー疲れ」が起きてしまった。製作サイドが期待したような結果が出しにくい状況に陥る中で、それでもDCエクステンデッド・ユニバースはペースを落とさず、次々に新しい映画を生み出し続けた。
そんな中で観客に満足してもらうためには、それまでのアメコミ映画には無かった特徴を出し、そこで魅力を感じてもらうことが重要になってくるはずだ。
では本作品でDCが用意した特徴は何かというと、キーワードは「ラテン」だ。
主人公の家族はラテン系、そしてイグナシオもラテン系。
極端に言えば、そこだけで一点突破を図っているような映画だ。話の設定やストーリー展開は、何もかもが「どこかで見たような気が」と思わせる既視感に溢れている。
DCエクステンデッド・ユニバースだけでなく、マーベル・シネマティック・ユニバースも含めた過去作の要素を寄せ集めて作ったような内容だ。
それをラテン系キャストに演じさせることによって、「今までとは違うでしょ」とアピールしているかのようだ。
でも結局は「ラテン版アイアンマン」ってだけで、その武器で勝負するのは、なかなか厳しいモノがある。一応は「家族の絆」というテーマも織り込まれているけど、ストロング・ポイントとしてプレゼンできるほどの力は感じない。
家族で言うと初代と二代目のブルービートルも物語に絡ませているが、あまり上手く行っているとは感じない。
これが原作ファンのためのサービス的な描写ならともかく、かなりガッツリと物語に絡んで来る。
だけど、スカラベを起動できなかったテッドが、なぜ独自で発明したアイテムを使ってまでヒーロー活動に励んだのかは良く分からないし。ブルービートルというヒーローに、見た目にしても能力にしても、そんなに魅力を感じないのも痛い。
これが「マーベルやDCを意識して撮られたメキシコ製の映画」ってことなら、「かなり良く出来たヒーロー映画」として高く評価できたかもしれない。
だけど本家のDCが、こういう亜流や二次創作の匂いを漂わせる映画を生み出しているのだ。
それって、もはやシリーズとして限界が来ているってことじゃないのかと言いたくなるぞ。ハイメは例え家族が殺されそうになっても怒りに燃えることは無く、冷静に「殺しはダメだ」とカージ=ダーを止める。どんな状況でも、徹底して敵の殺害は避けている。
ハイメは家族思いで気のいい善人として描かれているので、殺人者にすることを避けるという配慮は理解できなくもない。ただ、「ヌルいヒューマニズムだな」という印象もゼロではない。
それと、家族が殺されそうな状況でも、どこか余裕があって深刻さが足りない雰囲気なのは、どうなのかと。
シリアスなテイストがアメコミ映画疲れの一因になっており、どちらかと言えば明るく楽しい映画の方がヒットに繋がる傾向が増えて来たので、その時流に乗ろうという判断なのかもしれない。
それが悪いとは言わないが、さすがに家族が殺されそうな状況だと、TPOに合っていないんじゃないかと。しかも、それで家族を無事に守れていればいいけど、あっさりとアルベルトが殺されちゃってるからね。
おまけに、その死でハイメの行動や考えに変化が生じるかというと、特に何も無い。
何しろ、ハイメはアルベルトが死んだのを知らずに拉致されてるしね。
「ナナたちがハイメを救出するために一致団結する」という展開には繋げているけど、そんなのはアルベルトを殺さなくても全く問題なく成立するし。
ハッキリ言って、アルベルトって完全に「無駄死に」なのよ。拘束されて死にそうになったハイメが、三途の川でアルベルトと話して現世に戻って来るというシーンはある。
だけど「アルベルトの死」という出来事と天秤に掛けた時、あまりにも得られる実りが少なくないか。
終盤に用意されているカラパックスとのタイマンで、ようやく「ハイメが怒りに我を忘れる」という展開はある。
でも、そこは「ルディーも死んだと思って激高する」という流れなので、アルベルトを殺さなくてもいいんだよね。
ちなみにネタバレだが、ルディーは死んでいない。ハイメの救出作戦が開始されると、彼の家族はテッドの発明した特殊な武器を使って敵と戦う。
だけどブルービートルの活躍が充分に描写されているとは言い難い中で、そこに手を広げちゃうのかと。
そういうのは、この映画がヒットして続編が製作される時まで取っておけば良くないか。
この映画に限ったことじゃないんだけど、DCエクステンデッド・ユニバースってそういうのが多い印象だなあ。
まあ結果的には本作品の興行成績が芳しくなかったので、続編は難しくなったけど。(観賞日:2025年8月22日)