『ブレイド3』:2004、アメリカ

シリア砂漠の遺跡に、重装備に身を包んだ複数の面々がヘリで現われた。ダニカ・タロスをリーダーとする一行は、遺跡の中へと歩みを 進めた。彼女達は、4000年前に文明が生まれた証であるクサビ型文字が描かれた壁を発見する。その直後、地面が異常なうごめきを示し、 中から不気味な腕が伸びてきた。その生物は地中から飛び出し、ダニカの仲間を襲撃した。
ヴァンパイアと人間の混血であるブレイドは、“デイ・ウォーカー”と呼ばれるヴァンパイアハンターとして今日も活動している。彼は 倉庫に時限爆弾を仕掛け、爆発と共に一斉にヴァンパイア達が飛び出してきた。ブレイドは相棒ウィスラーの運転するトラックに乗り、 逃げた1人を追い掛ける。市民が見ている中で、ブレイドは男を射殺した。だが、その男ゲッジは、死の間際に作り物の牙を外し、 「騙されたな」と笑う。彼はヴァンパイアの手下として動く人間、ファミリアの一員だったのだ。
ブレイドがゲッジを射殺する様子を、ダニカがビデオカメラで撮影していた。この事件によって、ブレイドは警察やFBIに追われる身と なった。ヴァンパイア軍団のリーダーであるダニカは、アジトに遺跡から復活したドレイクを連れて来ていた。ダニカはドレイクに、 ブレイドを殺して欲しいと依頼した。アビゲイルという女は、4人のヴァンパイアに絡まれた。アビゲイルは怖がって逃げようとするが、 それは芝居だった。彼女は靴に仕込んだ刃を伸ばし、ヴァンパイア達を退治した。
FBIの特別捜査官カンバーランドやヘイルはウィスラーを尾行し、隠れ家を突き止めた。特殊部隊が隠れ家を急襲し、ブレイドを追う。 ブレイドを逃がそうとしたウィスラーは、自爆という方法を取った。しかしブレイドは取り囲まれ、警察署に連行されてしまった。 取調室に精神科医ヴァンスが現われ、ブレイドの鑑定を行う。彼はブレイドの精神に問題があると断定し、精神施設への移送を決定する。 カンバーランドとヘイルは反対するが、警察本部長のヴリードはヴァンスの鑑定を容認する。
ヴァンスは移送の準備として、ブレイドに鎮静剤を注射する。その手首には、ファミリアを示す刺青があった。やがて取調室にはダニカや 兄アッシャー、仲間のグリムウッドらが現われた。そこへハンニバル・キングと呼ばれる男が現われ、ブレイドを救出する。警察署には、 アビゲイルも来ていた。アビゲイルとハンニバルは、仲間のデックスが運転する車にブレイドを乗せて脱出する。
ブレイドは、アビゲイルたちのアジトである廃墟へ案内された。そこには、盲目の科学者サマーフィールドと娘ゾーイ、武器開発担当者 ヘッジスがいた。アビゲイルたちは、“ナイト・ウォーカーズ”としてヴァンパイヤ退治を行っていた。ハンニバルは、かつてダニカの奴隷 だったが、アビゲイルに救われて仲間となっていた。アビゲイルたちは、ダニカがヴァンパイアの始祖ドレイクを復活させたことをブレイド に告げた。
サマーフィールドはヴァンパイアだけを標的とするウィルスを開発したが、その威力を100パーセントに高めるにはドレイクの血が必要 だった。ブレイドはアビゲイルたちに、夜しか行動できないヴァンパイヤの手下として昼間に活動するファミリアを絞り上げるよう指示した。 ファミリアの1人を捕まえたブレイドたちは、携帯にヴァンスから連絡が入るのを確認した。
ブレイド、アビゲイル、ハンニバルの3人は、ヴァンスのオフィスがあるビルに乗り込んだ。しかしヴァンスのオフィスに入ると、 そこにはドレイクが待ち受けていた。ドレイクはハンニバルに重傷を負わせ、ビルから逃亡する。ブレイドが追跡すると、ドレイクは 赤ん坊を人質に取った。放り投げた赤ん坊をブレイドが抱き止める間に、ドレイクは姿を消した。
ブレイドとアビゲイルは、ヴァンパイヤの秘密倉庫を突き止めた。倉庫へ赴くと、ダニカの手下ヴィラーゴとファミリアであるヴリードが 接触していた。ブレイドはヴィラーゴを始末し、ヴリードを脅して倉庫のロックを解除させた。倉庫の中では、薬品で脳死状態となった 人間たちが保管されていた。そこはヴァンパイヤの血液製造工場だった。ダニカ達は全米のホームレスを捕獲し、血液を採取していたのだ。 ブレイドは工場の機能を停止させ、ヴリードを射殺した。
同じ頃、ドレイクがナイト・ウォーカーズのアジトに侵入していた。彼はサマーフィールドたちを惨殺し、ハンニバルとゾーイを連れ去った。 アジトに戻ったブレイドとアビゲイルは、ドレイクの残した挑戦的メッセージを目にした。2人の前にサマーフィールドの遺志を継いだ 科学者コールダーが現われ、培養に成功したウィルスを手渡した。ただし、そのウィルスが完全に機能した場合、混血であるブレイドも 命を落とす可能性があるという…。

監督&脚本はデヴィッド・S・ゴイヤー、キャラクター創作はマーヴ・ウォルフマン&ジーン・コーラン、製作はピーター・ フランクフルト&デヴィッド・S・ゴイヤー&リン・ハリス&ウェズリー・スナイプス、共同製作はケヴィン・フェイジ、製作総指揮は アヴィ・アラッド&ケイル・ボイター&トビー・エメリッヒ&スタン・リー、撮影はガブリエル・ベリスタイン、編集はハワード・E・ スミス&コンラッド・スマート、美術はクリス・ゴラック&デヴィッド・フォーライン、衣装はローラ・ジーン・シャノン、音楽はラミン ・ジャワディー&RZA。
出演はウェズリー・スナイプス、クリス・クリストファーソン、ジェシカ・ビール、ライアン・レイノルズ、パーカー・ポージー、 ドミニク・パーセル、トリプルH、 マーク・ベリー、ジョン・マイケル・ヒギンズ、カラム・キース・レニー、ポール・アンソニー、フランソワーズ・イップ、マイケル・ アンソニー・ローリンズ、ジェームズ・レマー、ナターシャ・リオン、ハイリー・ペイジ、パットン・オズワルト、ロン・セルモア、 クリストファー・ヘイヤーダール、エリック・ボゴシアン、スコット・ヘインデル他。


シリーズ第3作にして完結編。
3部作の脚本を手掛けたデヴィッド・S・ゴイヤーが、メジャー映画では初めて監督を務めている。
ブレイド役のウェズリー・スナイプスとウィスラー役のクリス・クリストファーソンは、1作目からのレギュラー。他に、アビゲイルを ジェシカ・ビール、ハンニバルをライアン・レイノルズ、ダニカをパーカー・ポージー、ドレイクをドミニク・パーセル、グリムウッドを プロレスラーのトリプルHが演じている。

話としては、「前作の続きから」というわけではなくて、一話完結の読み切り連載方式。ブレイドとウィスラーの2人と世界観だけを 引き継いでおり、物語としては前作までとの関連性は無い。
トリニティー(3部作)と銘打っているが、今までに広げた風呂敷を収めにかかるとか、これまで明かされなかった謎が解明されるとか、 そのような「前2作を経て何かが解決したり収束したりする」ということは全く無い。
3つの作品を通して見ることで初めて意味が生じる、といったモノは全く無い。

まあ、最初から3部作として製作していたわけではなくて、結果的にトリニティーになっただけだから、前2作で3作目への伏線なんて 考えてないしね。
ただし、それでも例えば前2作で登場したキャラクターを出すとか、そこで扱われたエピソードの続きを描くとか、そう いうことは、やろうと思えば出来るはずだから、ようするにその気が無かったってことよね。
「3部作のラストで、いよいよ大団円」という形を取らず、本作品だけでも普通に成立する作りにしてあるのは、ある意味では「この作品 から見た人でも難なく話に付いていける」という親切になるのかもしれない。
ただし、この映画を見る人の大半はシリーズを1作目から見ているはずであり、「あのキャラのその後はどうなったのか」「あのエピソードの続きはどうなったのか」といったシリーズのファンに 対するサービス精神さえゼロなのは、逆に不親切に思える。

冒頭にカーチェイスがあるのだが、ホラー・アクションやファンタジー・アクションではなく、普通のアクション映画になっている。
監督としては前作で出来なかったカーアクションがどうしてもやりたかったのかもしれないが、少なくとも掴みのアクションとして、それで 良かったのかと。
工場にでケレン味溢れる格闘アクションを続けておいた方が良かったんじゃないのかと。

ブレイドが騙されて人間を殺してしまう展開が、どうにもマヌケに見えて仕方が無い。
まず作り物の牙に騙されるブレイドもアホだし
(どういう基準で彼はヴァンパイヤを判別しているのか。混血としての感覚じゃなくて、見た目だけなのか)、それでブレイドを騙す ダニカもアホに見えるぞ。
それで警察に逮捕させてファミリアを通じてブレイドを拘束しようなんて、セコい手口だよなあ。
モンスターのすることにしては、あまりにもチンケだぞ。
自分たちで戦ってブレイドを捕獲しようとか思わないのね。

もう3部作のラストなんだからブレイドとヴァンパイアとの最終決戦を描くべきだろうに、今さらブレイドとFBIの戦いなんぞ描いて どうすんのかと思ってしまう。もはや警察やFBIなど人間による組織など太刀打ちできないレヴェルで戦いを進めるべきじゃないのか。
っていうか、「未だに人間がヴァンパイヤの存在を全く知らない」という設定になっているのも、どうかと思うし。
もうね、人間がヴァンパイアの存在を信じるか否かなんて、今さらどうだっていいのよ。
しかもFBIとの戦いにおいて、あっさりとウィスラーを殺してしまう。前兆も余韻も何も無くて、「実は生きていたということで再登場するのか」と思ったぐらいだ。
前2作のキャラクターも簡単に使い捨てしていたが、それよりヒドい扱いじゃないか。
その犠牲によってブレイドが逃亡に成功するならまだしも、捕まってるし。
そんなに簡単にウィスラーを消去するぐらいなら、1作目で死んでいるんだから、2作目で強引に復活させなきゃ良かったのに。

ブレイドはファミリアの1人を捕まえ、電話連絡してきたヴァンスの元へ向かう。
でも、取調室でヴァンスの刺青を見ていたはずで、そんなことしなくても最初から彼のオフィスへ行けば良かったと思うが。
で、行ってみるとドレイクがいるのだが、普通に戦って圧倒的な力を披露するのかと思いきや、ハンニバルを盾にして窓際へ行き、そこ から猛スピードで逃げ出す始末。そして追われると、赤ん坊を人質にする始末。
始祖のくせに、態度は偉そうなのに、やってることはチンケだなあ。
パルクール的なアクション・シーンを見せたかったのかもしれないが、それならドレイクじゃなくて他のキャラでやれよ。

ドレイクがナイト・ウォーカーズのアジトに潜入する際、ウィスラーに変身してハンニバルやサマーフィールドの前に出現する意味が サッパリ分からない。ハンニバルは眠っているので、ドレイクのまま接近しても身構えたりしないぞ。サマーフィールドなんて盲目だから 、変身しても見えないし。
っていうか、ものすげえ強いはずなんだから、策を凝らさず普通に襲撃しろよ。
っていうか夜なんだし、アジトが分かっているなら、ダニカたちが襲撃すればいいじゃん。なんで始祖を手下として扱き使ってるのかと。
で、そのシーンの時点ではダニカたちの目的がイマイチ分からず、「ブレイドを誘い出すための人質を取ったのかな」と思っていたら、 そうではなかった。どうやら、ハンニバルからブレイドの情報を聞き出すのが目的だったらしい。
ブレイド退治が目的ではなく、その前の段階なのね。
ただ、「ブレイドはどんな武器を持っているの」などと聞いているが、そんなことを知ったところで、どうなるものでもないと思うんだが。
大体さ、そんなに色々と策を講じているなら、始祖を蘇らせた意味は何なのかと思っちゃうぞ。
始祖の圧倒的な強さでブレイドの退治を企てればいいんじゃないのかと。ダニカたちが、あまりにも慎重すぎるんだよな。もっと大胆に 振舞い、積極的に戦えよ。ブレイドには歯が立たないとしても、その弱さを自覚しているかのような行動は勘弁してよ。

前作は完全にウェズリー・スナイプスの俺様映画になっており、ブレイド以外はまるで目立たなかった。
今回は彼が自制したのか、デヴィッド・S・ゴイヤーが上手くコントロールしたのか、弓矢で戦うアビゲイルも存在感を発揮している。
というか、ブレイドより目立つぐらいだ。
ハンニバルとヴァンパイア軍団の存在感は今一つ地味だったけどね。

わざわざ「忘れていた」と言って警察署へ取りに戻るぐらい刀を大事にしているブレイドだが、それを使って戦うシーンはなかなか出て 来ない。銃を武器として戦っている。
終盤、ドレイクと戦うシーンになって、ようやく刀を使う。
その終盤の大バトル、ドレイクにしろグリムウッドにしろ、特殊メイクもCG加工による特殊能力も無いので、ごく普通の格闘アクション 映画になっている。
かなり戦ってから、ようやくドレイクが怪物に変身する。
しかし変身したかと思ったら、すぐにウィルスを注射されて死滅する見掛け倒し。

これでトリニティーは終了なんだが、何も終わっていない。
ダニカの一味を倒しただけであって、ヴァンパイア軍団が全滅したわけでもない。
ブレイドが血に飢えたまま暮らし続けなきゃいけないことも変わらない。
これは邪推だが、少なくともウェズリー・スナイプスとデヴィッド・S・ゴイヤーは、チャンスがあれば続編を作る気マンマンだったんじゃないのかね。

 

*ポンコツ映画愛護協会