『ブレイド2』:2002、アメリカ

黒人女性とヴァンパイアの混血として生まれたブレイドは、“デイ・ウォーカー”と呼ばれるヴァンパイア・ハンターとして活動していた。死んだはずの恩師ウィスラーがヴァンパイアに捕まっていると知ったブレイドは、チェコのプラハで彼を救出し、武器の発明家で相棒のスカッドが待つアジトに運び込んだ。ウィスラーはヴァンパイヤに噛まれていたが、ブレイドは血清を打って助けた。
ウィスラーが復活して間もなく、ブレイド達のアジトに2人のヴァンパイアが侵入した。その正体は、ヴァンパイアの大君主ダマスキノスの娘ニッサと仲間のアサドだった。しかし、2人はブレイドを倒すために来たのではなく、休戦協定を結びに来たのだという。ニッサ達の案内で、ブレイドはダマスキノスと面会した。ダマスキノスの傍らには、人間の弁護士カーターの姿もあった。
ダマスキノスはブレイドに、リーパー菌に冒された新種のヴァンパイア“リーパーズ”の存在を語り、リーダーのノーマックが暴れる様子を撮影したビデオテープを見せた。リーパーズが標的にしているのはヴァンパイアだが、いずれ人間も襲うだろうとダマスキノスは告げる。彼はブレイドに対し、リーパーズを倒すために協力しようと持ち掛けた。
共闘を承諾したブレイドは、ダマスキノスから精鋭部隊“ブラッド・パック”の指揮を任された。ブラッド・パックとは、そもそもブレイドを倒すために集められた面々だった。ラインハルト、チュパ、スノーマン、ヴェルレイン、プリースト、ライトハンマーといったブラッド・パックの面々は、やはりブレイドに対して好意的とは言えなかった。
ブレイドとブラッド・パックは、ヴァンパイアが集まる巨大ディスコを張り込んだ。やがてリーパーズが出現し、ブレイド達は戦闘を繰り広げる。しかしヴァンパイア退治の道具である銀の弾丸が、リーパーズには効かなかった。戦闘の中で、プリーストが犠牲となった。ノーマックはニッサを捕まえるが、なぜか殺そうとしなかった。
やがて朝が近付き、リーパーズは去った。ウィスラーは、リーパーズの1人を拘束していた。ニッサは、死んだリーパーズを解剖した。ブレイドは、朝を待って狩りを始めることを宣言した。ニッサが死体から採取したフェロモンで、リーパーズを誘い出すのだ。やがてリーパーズとの戦闘が始まるが、そこには意外な展開が待ち受けていた…。

監督はギレルモ・デル・トロ、キャラクター創作はマーヴ・ウォルフマン&ジーン・コーラン、脚本はデヴィッド・S・ゴイヤー、製作はマイケル・デ・ルカ&ウェズリー・スナイプス&ピーター・フランクフルト、製作総指揮はアヴィ・アラッド&デヴィッド・S・ゴイヤー&リン・ハリス&スタン・リー&パトリック・J・パーマー、撮影はガブリエル・ベリスタイン、編集はピーター・アムンゼン、美術はキャロル・スパイアー、衣装はウェンディー・パートリッジ、特殊メイクアップ効果はスティーヴ・ジョンソン、ヘッド・クリーチャー・デザインはウェイン・D・バーロウ、ヴァンパイア・デザインはティモシー・ブラッズストリート、音楽はマルコ・ベルトラミ。
出演はウェズリー・スナイプス、クリス・クリストファーソン、ロン・パールマン、レオノア・ヴァレラ、ノーマン・リーダス、トーマス・クレッチマン、ルーク・ゴス、マット・シュルツ、ダニー・ジョン・ジュールズ、ドニー・イェン、カレル・ローデン、マリット・ヴェラ・キール、トニー・カーラン、ダズ・クロウフォード、サンティアゴ・セグラ、スエン・トゥ・ヴァルディヴィア、マレク・ヴァサット、ピート・リー=ウィルソン、ポール・ケイシー、アンドレア・ミルトナー、ラディスラフ・ベラン他。


マーベル・コミックのアメコミを基にしたシリーズ第2作。
ブレイドのウェズリー・スナイプスとウィスラーのクリス・クリストファーソンは、前作から引き続いての出演。他に、ラインハートをロン・パールマン、ニッサをレオノア・ヴァレラ、スカッドをノーマン・リーダス、ダマスキノスをトーマス・クレッチマン、ノーマックをルーク・ゴス、カーターをカレル・ローデンが演じている。また、ドニー・イェンがファイト・コレオグラファーを担当し、スノーマン役で出演もしている。

これはウェズリー・スナイプスの、ウェズリー・スナイプスによる、ウェズリー・スナイプスのための映画である。とにかく彼さえカッコ良く映ればそれで良し、おいしいトコは全て主役が持っていくという、とても分かりやすいオレ様映画である。
まるで片岡千恵蔵御大や市川歌右衛門御大が主演するスター時代劇のような感じである。
監督のギレルモ・デル・トロは、映像面で自分の色を出している(ちなみに『ヘルボーイ』のマイク・ミニョーラと『パニッシャー』などのカヴァーイラストレーターであるティム・ブラッドストリートが、コンセプチュアル・アーティストとして参加していてる)。
しかし、作品を統括しているのは彼ではなくウェズリー・スナイプスだ。

「主人公だけをカッコ良く目立たせる」というの徹底していて、だからブラッド・パックの面々も、ほとんど個性を発揮しないままで消えていく。名前や顔をちゃんと把握できないままのキャラもいるが、それでも何の不都合も無いぐらいの扱い。
極端な話、ニッサとラインハート以外はスタントマンで間に合わせても充分なぐらいだ。
主要キャストの中では飛び抜けてアクションをこなせるドニー・イェンでさえ、飛び蹴りをさせてもらう程度で、冴えないままに消えていく。
そりゃあ、仕方が無い。彼に活躍する場面を多く与えてしまったら、ウィズリー・スナイプスより鋭いアクションを見せるのは明白で、そんなことをしたら主役が食われてしまう。
それは許されないことだ。

前作にも増して、日本刀を背負っている意味が薄くなっている。
日本刀よりも、他の武器を使ったり素手で戦ったりするシーンの方が圧倒的に多い。
前作で見せたチャンバラシーンが冴えないものだったので、ひょっとするとウェズリーは「オレ様は刀を使うより他の武器を使った方がカッコ良く見えるんじゃないか」と考えたのかもしれない。

アクションに特化して作られているため、ストーリーは二の次、三の次だ。
そもそも、ブレイドがダマスキノス達の共闘呼び掛けに応じるところからして筋が通っていない。
リーパーズは当面はヴァンパイアを標的にしており、全滅させたら次は人間も標的にするだろうと言われているのだから、だったらヴァンパイアを全滅させるまで放置しておけばブレイドにとっては好都合なのだから。

で、オレ様アクション映画として作るなら、それを徹底するためにストーリーは簡単明瞭にしておけば良かったのである。
この映画の最大の問題点は、オレ様映画になっていることでもないし、アクションが本人(ウェズリー)が思っているほど冴えないことでもない。
ストーリーの中途半端な捻りが、「オレ様のカッコ良さアピール」を邪魔していることにある。

この映画、最初に敵対していたブレイドとヴァンパイア軍団が共通の敵を倒すために手を組むという流れがある。
だったら、そのまま行けばいいのである。
ところが、そのチームが大して活躍しないまま、「実は全てダマスキノスの仕掛けた罠でした」という方向に転換してしまうのである。
そんな捻り、要らないっての。

で、「ホントはノーマックはニッサの兄で、ダマスキノスが作り出した実験体。ノーマックは、それをブレイドに伝えようとしていた。ダマスキノスは新種のヴァンパイア完全体を作るためにブレイドの血を手に入れようとしていた」という真相が明かされる。
だけどさ、ブレイドを捕まえるのが目的なら、しばらく共闘する必要はあったのか。
ウェスラーを奪還に来た時、捕まえられたんじゃないのか。
あるいは休戦協定で宮殿に招いた時でも、捕まえるチャンスはあっただろうに。

その真相が明かされた時点で、悪党はダマスキノス達に変わっているのだが、そのダマスキノスはノーマックによって殺される。
さらにノーマックも被害者としてブレイドと手を組むわけじゃなくて、やはり最後は悪党として振る舞い、ブレイドと対決する。
もう余計な捻りを話に加えたせいで、後半がメチャクチャだよ。
もっとシンプルな筋書きにして、さらに言えば敵のボスをドニー・イェンにして、クライマックスをウェズリーとドニーの対決にすりゃあ良かったんじゃないのかと。

 

*ポンコツ映画愛護協会