『バードケージ』:1996、アメリカ

フロリダでゲイクラブ“バードケージ”を経営するアーマンド・ゴールドマンは、店のトップダンサーであるアルバートと長い間、夫婦として暮らしている。ゲイクラブのトップダンサーなのだから、もちろんアルバートは男であり、つまり2人はゲイのカップルだ。
アーマンドには20年前に一度だけ関係した女性との間に生まれた息子、ヴァルがいる。アーマンドとアルバートは、ヴァルを自分達の息子として育てている。だが、彼らに1つ、大きな問題が持ち上がった。ヴァルに結婚を考える恋人が出来たのだが、その相手バーバラは、上院議員ケヴィン・キーリーの娘なのだ。
キーリーは道徳強化協議会の副会長をしており、とても考え方の堅い人物だ。ヴァルの父親がゲイクラブのオーナーで、しかも男と同棲していると知ったら、キーリーは決してバーバラとの結婚を許さないだろう。そこでアーマンドはヴァルの結婚のために、ゲイであることを隠して真面目な父親を演じようとするのだが…。

監督&製作はマイク・ニコルズ、原作戯曲はジャン・ポワレ、オリジナル脚本はフランシス・ヴェベール&エドゥアール・モリナロ&マルチェロ・ダノン&ジャン・ポワレ、脚本はエレイン・メイ、製作総指揮はニール・マクリス&マルチェロ・ダノン、撮影はエマニュエル・ルベツキー、編集はアーサー・シュミット、美術はボー・ウェルチ、衣装はアン・ロス、音楽はジョナサン・チューニック&マーク・マザーズボウ。
出演はロビン・ウィリアムズ、ジーン・ハックマン、ネイサン・レイン、ダイアン・ウィースト、ダン・ファターマン、キャリスタ・フロックハート、ハンク・アザリア、クリスティン・バランスキー、トム・マッゴーワン、グラント・ヘスロフ、カービー・ミッチェル、ジェームズ・ラリー、ルカ・トマシーニ、ルイス・カマチョ、アンドレ・フエンテス、アンソニー・リチャード・ゴンザレス他。


フランスの舞台劇『ラ・カージュ・オウ・フォール』、その映画版である1978年のフランス映画『Mr.レディ、Mr.マダム』を、ハリウッドでリメイクした作品。
アーマンドをロビン・ウィリアムズ、キーリーをジーン・ハックマン、アルバートをネイサン・レイン、キーリーの妻ルイーズをダイアン・ウィースト、バーバラをキャリスタ・フロックハートが演じている。

扱っている題材からして分かるだろうが、これはもちろんコメディである。
だが、残念ながら、サッパリ笑えないのだ。
前半は特に、ヴァルがアルバートを追い出そうとしたりするので、ゲイのマイノリティーとしての悲しさが感じられて切なくなる。

映画が半分くらい過ぎてから、バーバラの両親がアーマンド達と会食をする。ここに女装したアルバートが妻として乱入し、ゲイだということを隠そうとアーマンド達がドタバタする。ここは笑わせるポイントだが、ドタバタが弱いし、時間も短すぎる。

ネイサン・レインが演じたアルバートというキャラクターは、とにかく光っている。
映画自体の出来は大したことがないが、アルバートだけは素晴らしい。ほとんど彼(彼女?)の1人勝ちといった状態。他の部分を削っても構わないから、アルバートがクラブでパフォーマンスを披露するシーンがもっと見たかったと思うぐらいだ。

それと、ジーン・ハックマンの女装も意外に良かった。彼が女装する部分は、もっと話として広げた方が面白くなったようナ気がする。それだと全く別の作品になってしまうが、いっそ彼の女装で1本の作品が作れるくらいだと思ってしまった。

で、他のキャストだが、ロビン・ウィリアムスにしろ、ダイアン・ウィーストにしろ、どうも冴えが見られない。キャリスタ・フロックハートもヴァル役のダン・ファターマンも低調。
ネイサン・レインとジーン・ハックマンが光っているのはもちろんなのだが、それよりも物語がキャラクターを上手く使いこなせていないんじゃないだろうか。

 

*ポンコツ映画愛護協会