『ビッグ・ライアー』:2002、アメリカ

ジェイソン・シェパードは、ミシガンに住む14歳の少年だ。朝、父のハリーから「起きてるんだろうな」と言われた彼は、その声で起きたのに「もちろん起きてるよ。服を着てるところ」と嘘をつく。「作文の宿題はやったよ」と問われ、「やったよ」と嘘をつく。「オートミール食べた?」と母のキャロルに訊かれた彼は、「美味しかったよ」と言いながら飼い犬に皿を差し出す。スケボーで学校へ向かった彼は、いじめっ子のブレットたちに捕まる。何とか逃れようとしたジェイソンだが、スケボーは渡す羽目になった。
遅刻して学校に到着したジェイソンは、ガールフレンドのケイリーに携帯メールで「先生の注意を逸らして」と頼む。ケイリーが担任教師のフィリスにドアを開けてもらっている間に、ジェイソンは窓から教室へ転がり込む。フィリスにはあっさりとバレてしまうが、「こっちの窓も開けないと風が通らないでしょ」と適当な嘘をつく。作文の宿題を読むよう促されると、「パパがミートボールを喉に詰まらせて病院に運ばれて」と言う。それが嘘であることはクラスメイトも全員が知っており、呆れた様子を見せた。
ジェイソンは「嘘じゃありません。パパに電話しますか」と言い、電話番号を口にした。フィリスが教室を出て電話を掛けに行くと、ジェイソンの携帯が鳴る。ケイリーは半ば強引に秘書の真似をさせられ、ジェイソンが父親のフリをした。するとフィリスは、すっかり信じ込んでしまった。しかし放課後、ジェイソンがケイリーと帰ろうとすると、フィリスは彼の両親を学校へ呼び出していた。ジェイソンの嘘が露呈していたのだ。
作文の評価が成績に大きく関わって来るため、フィリスは「夏休みは補習授業ね」と告げる。ハリーが「何とかなりませんか」と言うと、フィリスは「6時までコミュニティー・カレッジで外国人に英会話を教えています。それまでに彼が作文を持って来れば、評価の対象にしましょう」と告げた。あと3時間しか無いが、フィリスは「インターネットにある文章をダウンロードしても駄目よ。手書きで出してもらいます」と述べた。
ハリーから「作り話はお前の得意分野だろ」と言われたジェイソンは家に戻り、「ビッグ・ファット・ライアー」と題した作文を書き始めた。それは、世界一の嘘つきが嘘を重ねて行く内に体が巨大化し、ビッグ・ファット・ライアーになってしまうという話だった。彼は作文を完成させると、姉であるジェニーの自転車を借りてフィリスの元へと急ぐ。ブレットたちに嘲笑された彼は余所見をしてしまい、ハリウッドで映画プロデューサーをしているマーティー・ウルフのリムジンに激突した。
ジェイソンは車で送るよう頼み、マーティーが嫌そうな表情を浮かべると「首が痛いなあ」と芝居をした。仕方なくマーティーは彼を乗せ、運転手に指示してコミュニティー・カレッジへ向かわせる。マーティーはスランプに陥っており、最近はロクな映画を作っていなかった。ジェイソンはリムジンを降りる際、作文を置き忘れてしまった。それを拾ったマーティーは、そのまま新作の撮影現場へ向かった。
マーティーが手掛けている最新の映画は、子役出身のジャリール・ホワイトが警官を演じ、鶏とコンビを組むという内容だ。マーカスが文句を言うと、マーティーは「調子に乗るなよ」と告げた。ジェイソンは両親とフィリスに、「リムジンにぶつかって、送ってもらった。たぶん作文は車の中にある」と必死に説明する。しかし、いつも彼が嘘ばかりついていたので、今度も嘘だと思われてしまった。
夏休み、ジェイソンは補習授業を受けるが、ウンザリしてしまう。ケイリーに励まされながら映画館へ赴いた彼は、予告編を見て驚いた。それは『ビッグ・ファット・ライアー』という新作で、ジェイソンの作文のアイデアがそのまま使われていたのだ。帰宅したジェイソンは、自分のアイデアが映画に盗用されていることを両親に話す。しかし、もちろん全く信用してもらえない。テレビ番組に出たマーティーが「本物のアイデアは勝手にひらめく」と話しているのを見て、ジェイソンは「インチキ野郎」と腹を立てた。
両親が結婚記念日の旅行に出掛けたため、ジェイソンとジェニーと2人で留守番を任された。しかしジェニーは恋人のルディーと共に、さっさと出掛けてしまう。ジェイソンはケイリーの元へ行き、「荷造りするんだ。ロスへ行って作文を取り返す」と言う。祖母であるパールの家で泊まることになっているため、ケイリーは「ずっと留守にしていたらバレるわよ」と告げる。そこでジェイソンは補習の宿題をやる代わりに、ブレットにケイリーを装ってもらうことにした。
ロスの空港に到着したジェイソンは、ストゥルーグという人物を待っているリムジン運転手のフランク・ジャクソンに気付いた。彼が「ストゥルーグです」と言うと、フランクは「毛皮商にしてはお若いですね」と口にする。ジェイソンが自信満々の態度なので、フランクは彼とケイリーをリムジンに乗せた。ジェイソンとケイリーは警備員のレオに見つからないようにユニバーサル・スタジオを移動して、ウルフ・ピクチャーズのオフィスに到着した。
ジェイソンとケイリーはマーティーと会おうとするが、アポが無いので受付係のアストリッドに取り次ぎを拒否された。2人は電話でアストリッドを騙し、駐車場へ向かわせた。その間にケイリーは受付係の席に座り、ジェイソンはオフィスの奥へ向かう。マーティーを見つけたジェイソンは、「パパに電話して、盗作を認めてほしい。そうしてくれたら二度と現れないよ」と言う。マーティーは作文を燃やして証拠を消し去って「これがハリウッドだ」と言い、警備員を呼んでジェイソンを追い払った。
彼はケイリーに、「あいつに盗作を認めさせるまでは帰らない」と話す。ケイリーは「ウルフは認める気なんて無いでしょ」と言うが、ジェイソンは追い出される際にマーティーのPDAを盗んでおり、それを利用してギャフンと言わせようと考えていた。「パパの信用を取り戻すためなんだ」とジェイソンが言うので、ケイリーは協力することにした。衣裳と道具類の倉庫を見つけた2人は、そこで身を隠して必要な品物を揃えることに決めた。
翌日、フランクの車に乗り込んだ2人だが、詐称がバレていた。フランクは「お前らのせいでクビにされかけた」と怒るが、マーティーへの仕返しを2人が企んでいると知って態度を変えた。売れない俳優のフランクは、去年までマーティーの運転手をしていたがクビにされていた。フランクがオーディションを受けたいと申し出たところ、マーティーは彼の写真の額に「負け犬」と書いてハリウッド中の映画関係者に送ったのだという。フランクは2人に、「俺も協力する」と告げた。
ジェイソンは復讐のために、まずはマーティーの調査から手を付けた。彼はケイリーと共に、マーティーを張り込んで行動を観察した。マーティーは助手のモンティーや監督のダスティー、広報副部長のジョセリンたちとミーティングを行い、横柄な態度を取る。ベテランのスタッフであるヴィンスが孫のために休暇を取ろうとすると、マーティーは意地の悪い態度で却下した。夜、ハリーからジェイソンに電話が掛かって来るが、あらかじめ転送機能を使っていたため、ロスにいることはバレなかった。
翌日、ジェイソンとケイリーはマーティーの屋敷に忍び込み、プールに体が青くなる塗料を流し込んだ。さらにイヤホンには強力接着剤を付け、シャンプーの容器にはオレンジ色の染料を注ぎ込んだ。ケイリーはユニバーサル・スタジオの新社長であるダンカンの助手を詐称してモンティーに電話を掛け、嘘の引っ越し先を教えた。それはヴィンスの孫が参加するパーティーの会場だった。
マーティーはモンティーに電話を掛け、ダンカンとのミーティングを中止するよう指示した。「それは出来ませんよ」と言われた彼は心を落ち着かせ、真っ青な皮膚にオレンジ色の髪という姿でモンティーから教えられたダンカンの家へ向かう。電話を切ったマーティーだが、イヤホンが耳から離れなかった。屋敷に到着したマーティーは、パーティーのゲストだと誤解された。広間から飛び出してきた子供たちは、マーティーに飛び掛かった。
ジェイソンとケイリーはマーティーの車に細工し、勝手に音楽が鳴ったりワイパーが動いたりするようにした。ジェイソンはマーティーの前に姿を現し、「パパに本当のことを言ってくれたら、いつでも終わらせるよ」と告げる。彼はハリーの連絡先を渡し、その場を去った。マーティーは軽い衝突事故を起こして前を走っていた男を怒らせてしまい、車をオシャカにされた。彼はモンティーに電話を掛け、「君の落ち度ということでダンカンとアポを取り直せ」と指示した。
マーティーがジャリール主演作のプレミア上映会へ赴くと、会場の前でジェイソンが待ち受けていた。「降参するかい?」と彼が言うと、「俺様を誰だと思ってるんだ。ガキの悪ふざけに怯むとでも?」とマーティーは強気な態度で笑い飛ばした。そこでジェイソンは計画のフェイズ3として、パーティーに潜入することにした。マーティーはダンカンのホーム・パーティーに出席し、機嫌を取ろうとする。「新作のプレゼンを考えていた」と釈明すると、ダンカンは「あと1度だけチャンスをやろう」と告げた。
モンティーから「どういうことです?」と詰め寄られたマーティーは、「新作のプレゼンなんて無い」と打ち明けた。そこへジェイソンが来て、「助けてあげようか。『ビッグ・ファット・ライアー』をブレイクさせなきゃならないんでしょ」と持ち掛けた。モンティーは、彼が映画のアイデアを出したことを初めて知った。マーティーはジェイソンに、助けてくれたらパパに盗作のことを話すと約束した。
マーティーはダンカンやパーティー客の前で、ジェイソンから聞いた通りに「主人公の恋人が彼を元通りにする薬を作ったが、なぜか肌の色が変わるようになった。落ち込むと肌が真っ青に、怒ると髪が真っ赤になる」という映画のプロットを説明した。しかし途中で彼は、勝手に自分の思い付いたアイデアを喋り始めた。「俺たちの作品は、人々にメッセージを真っ直ぐ届ける。嘘を重ねてはいけない。今こそ真実と向き合い、魂を解放するんだ」と語ると、喝采が起きた。マーティーは警備員に電話を掛け、ジェイソンを追い払わせた…。

監督はショーン・レヴィー、原案はダン・シュナイダー&ブライアン・ロビンス、脚本はダン・シュナイダー、製作はマイク・トーリン&ブライアン・ロビンス、共同製作はマリー・カンタン、製作総指揮はマイケル・ゴールドマン、撮影はジョナサン・ブラウン、編集はスチュアート・パッペ&キンバリー・レイ、美術はニナ・ラスチオ、衣装はサーニャ・ミルコヴィック・ヘイズ、音楽はクリストフ・ベック、音楽監修はゲイリー・ジョーンズ&デイヴ・ジョーダン。
出演はフランキー・ムニッズ、ポール・ジアマッティー、アマンダ・バインズ、リー・メジャース、アマンダ・デトマー、ドナルド・フェイソン、サンドラ・オー、ラッセル・ホーンズビー、マイケル・ブライアン・フレンチ、クリスティーン・トゥッチ、ショーン・オブライアン、エイミー・ヒル、ジョン・チョー、マシュー・フラウマン、ドン・イェッソ、レベッカ・コリー、スパークル、タラン・キラム、アレックス・ブレッケンリッジ、ネッド・ブラウアー他。


TVドラマ『マルコム in the Middle』で人気者になったフランキー・ムニッズの主演作。
『ジェイソン、ハリウッドへ行く!?〜狼少年VSウルフ〜』のタイトルでテレビ放送されたこともある。
脚本は『グッド・バーガー』『天才少年ジミー・ニュートロン』のダン・シュナイダー。
TVドラマ『ファースト・ウェイブ』の演出を手掛けていたショーン・レヴィーが、映画初監督を務めている。
マーティーをポール・ジアマッティー、ケイリーをアマンダ・バインズ、ヴィンスをリー・メジャース、モンティーをアマンダ・デトマー、フランクをドナルド・フェイソン、フィリスをサンドラ・オー、ダンカンをラッセル・ホーンズビー、ハリーをマイケル・ブライアン・フレンチ、キャロルをクリスティーン・トゥッチ、ブレットをタラン・キラムが演じている。アンクレジットだが、俳優のジャリール・ホワイトが本人役で出演している。

当初、ジェイソンの相棒は男友達の設定だったが、アマンダ・バインズの出演が決まったことに伴い、女性キャラに変更されたらしい。
しかし、ここの変更はプラスに作用しているとは思えない。
ここは普通に「仲良しコンビ」として行動させた方がいい。
「ハリウッド映画は何でもかんでも恋愛劇を盛り込みたがる傾向が強いしなあ」と思っていたら、ここに恋愛要素がゼロなので、「だったら男友達の方が自然でしょ」と思っちゃうし。

それと、そこを女性キャラにするとしても、アマンダ・バインズだと童顔のフランキー・ムニッズよりも年上に見えるので(実際は1つ年下)、バランスとしても良くない。
身長もアマンダの方がずっと高いし。
ケイリーが年上っぽく見える女性なので、ジェイソンが身勝手な行動を勝手に決めても全て従うという部分にも違和感を覚えてしまう。
これが「ジェイソンの相棒っぽく見える同級生の男子」だったら、もちろん何の問題も無いのだ。

最初にいじめっ子として登場したブレットが、ジェイソンがケイリーの家を訪れた時に彼女と話していたり、女装してケイリーの身代わりを務める仕事を引き受けたりしているのは、どうにも違和感が強いぞ。
ジェイソンがケイリーの恋人という設定なのかと思ったら、そういうわけでもないんだよな。
どうやらケイリーに気がある設定らしいが、伝わりにくいし。
それに、「代わりに宿題をやる」という取引条件があるとはいえ、なぜジェイソンの頼みを引き受けちゃうのかと。

そんな風にブレットを動かしてしまうもんだから、いじめっ子キャラが序盤で崩壊しちゃってるじゃねえか。
だったら最初から、ブレットをいじめっ子キャラにしておかなきゃいいのよ。
いじめっ子として物語に貢献している部分は皆無に等しいんだから。
ただし、実はもっと重大な問題は、「ボケていて女装に全く気付かないパールと、ケイリーとして振る舞わなきゃいけないブレット」の様子をメインに描いた方が、ジェイソンの話より面白くなるんじゃないかと思ってしまうことなんだよな。

「ティーンズ向けの映画だから」ということを頭に叩き込み、かなり頑張って自分のティーンズの感覚になって観賞しようとしたんだが、やっぱり無理だった。
ジェイソンが次から次へと嘘をつきまくる導入部の段階で、「ああ、こりゃダメな映画だ」という印象を強く持ってしまった。
何がダメって、これっぽっちも笑えないってことなんだよな。
それと、いじめっ子グループに絡まれるシーンに関しては、「ジェイソンが適当な嘘を並べ立てて、その場をやり過ごす」というパターンから外れてるでしょ。そこは同じパターンを繰り返すべき箇所じゃないのかよ。

ジェイソンが学校を出る時に両親の前で適当な嘘をつくシーンは、笑えるポイントは無いけど、それは別に構わない。そんなに笑いを要求したくなるような箇所でもないし。
しかし父親のフリをして喋るシーンで「すげえ陳腐だなあ」と感じてしまい、おまけにフィリスが嘘に騙されるという展開で完全に止めを刺された。
「そんなわけねえだろ」と。
せめて、そこは「ジェイソンの嘘は簡単に見抜かれる」ということなら、まだギリギリで踏みとどまっていたかもしれんけど。
その後にはバレているけど、一度はまんまと先生を騙している。でも、そんなバレバレの嘘でフィリスが騙されるってことにしちゃうと、安っぽさが強くなってしまう。

っていうかさ、ジェイソンはいつも適当な嘘ばかりついて、その場を取り繕うってことを繰り返しているんでしょ。
だったら、周囲の人間は、そのことを理解しているはずじゃないのか。クラスメイトはジェイソンが嘘の説明を始めると「また始まったよ」みたいな表情で見ているし、ハリーは「作り話はお前の得意分野だろ」と言っているんだから。
それなら、フィリスもそんなバレバレの嘘で騙されちゃダメだよ。巧妙な嘘なら騙されても仕方が無いけど、すげえ幼稚な騙し方だぞ。
で、それなのにフィリスが騙される展開が序盤にあるから、「陳腐な映画」という印象を受けてしまうのよ。
そこで彼女がすぐに嘘を見抜いていたら、それなりに印象は違ったはず。

マーティーは作文を拾い上げた際、眉の片方を吊り上げてリアクションを取る。
でも、すぐに車を出発させて新作撮影の現場へ行き、そこで俳優と喋る展開に行ってしまうと、「その作文を読んで、映画のアイデアに使えると感じた」ということは伝わりにくい。
そのシーンは、もっとハッキリした形で「このアイデアを映画に使ってやろう」と彼が決めたことを示すべきだ。
作文を読んだ時点でのリアクションをその程度に留めるなら、例えば新作撮影現場でマーティーが「この映画も当たらないな」と感じ、改めて作文を読んで「次はこれを使って映画を作ろう」と決める様子を描いておくとかね。

そういうのが無いままジェイソンが予告編を見る展開に移ることで、ティーンズの観客は彼と同じタイミングで「作文のアイデアが映画に使われている」と知ることになるから、そこにサプライズの効果を期待したのかもしれない。
そんで実際、サプライズを感じるティーンズも、いないわけではないだろう。
ただ、それほど大きな効果があるとも思えないし、むしろ先にマーティーが作文をパクることを決める様子を描いておいた方が、差し引きで考えるとプラスになるんじゃないかなと。

ジェイソンがマーティーへの仕返しを決めてからの展開は、ザックリ言っちゃうと『ホーム・アローン』の亜流だ。
もちろん、向こうは泥棒退治で本作品は復讐だから、普通に考えれば全く異なる。だけど見ていると、何となく『ホーム・アローン』を連想するんだよな。
目的を果たすための手段として相手への攻撃を仕掛けているのに、それが実質的には目的化している辺りが似ているし。そもそも、最初は「マーティーに盗作を認めさせたい」と言っていたのに、途中で「仕返し」とか言っちゃうし。
でも悪戯を仕掛けた後で「パパに電話してくれたら止める」とも口にしているし、仕返しが目的なのか、観念させてパパに電話してもらうのが目的なのか、どっちなのかと。
そこがボンヤリしちゃってるのは、好ましいことではないよ。

それまで強気一辺倒だったマーティーが、ジェイソンに「新作のプレゼンを考えてあげようか」と持ち掛けられた途端、低姿勢で頼るというのは、キャラの動かし方として引っ掛かる。
もちろんマーティーの「助けてくれたらパパに盗作のことを明かす」という口約束が嘘ってことは分かるけど、それでもジェイソンにヘコヘコするのはいかがなものかと。
そこまで来たら、ずっと生意気な態度を貫いた方が良かったんじゃないかと。
映画のアイデアを作文から貰ったのは確かだけど、だからってガキに「プレゼンのアイデアを出してあげよう」と言われて、そのアイデアを聞かない内に「お願いします」ってのも違和感があるし。

その後、マーティーがジェイソンの指示を無視して自分の言葉でプレゼンし、パーティー客の喝采を浴びるという展開は違うだろ。
ってことは、ジェイソンの力を借りたとは言え、マーティーも客の心を掴むアイデアを思い付いたってことになるでしょ。
それは「ジェイソンのおかげでマーティーが助かったのに、また裏切った」という展開を無意味に弱くしてしまう。
あと、そこで「嘘を重ねてはいけない。今こそ真実と向き合い、魂を解放するんだ」と言っちゃうけど、それを嘘つきが言っているという皮肉もイマイチ活きていない。

ジェイソンが急に弱気になってマーティーに盗作を認めさせることを諦め、モンティーが味方になって背中を押すという展開も、ベタではあるんだけど、なんか違うなあと思ってしまう。
物語に変化を付けたいってことなんだろうけど、そもそも「ジェイソンのアイデアでマーティーがパーティーの窮地を脱する」という展開自体、果たしてどうだったのかなと。
改めてマーティーの悪辣ぶりをアピールするとか、モンティーが彼を見捨てて寝返るとか、そういうことにするのは別に悪くない。
だけど、ジェイソンが彼を手助けするのではなく、他の形で物語に変化を付ける方が良かったかなと。

フランクは協力を申し出た後、ほとんど何もしていない。ジェイソンとケイリーをリムジンに乗せて目的地まで送っている程度だ。
それで「協力している」というのでは、あまりにも弱すぎる。
そんで終盤、モンティーが寝返ると、他にもマーティーに恨みを抱いている大勢の面々が急に集まり、ジェイソンの作戦に協力する。
そのメンツはジャリールやヴィンスなど、そこまでにチラッと顔を見せているメンツだから、まあOKとしよう。ガキが考えた大掛かりな作戦に大勢の映画スタッフが協力するってのは荒唐無稽だが、まあOKとしよう。
ただ、最初に協力を申し出たフランクが、他の協力者と同列扱いってのはどうなのよ。むしろフランクを排除して、ジェイソンがヴィンスやジャリールたちと前半から絡んでいる形にしておいた方が良かったんじゃないかと思っちゃうぞ。

(観賞日:2014年8月15日)

 

*ポンコツ映画愛護協会