『ポセイドン・アドベンチャー2』:1979、アメリカ

嵐で積荷を失ったタグボートの船長マイク・ターナーは、借金のカタに船を銀行に奪われることを危惧していた。盟友ウィルバーと彼が酒場で助けてもらった少女セレステも、マイクのタグボートに同乗している。マイクは、フランスの沿岸警備隊のヘリコプターが飛んでいるのを見つけた。近くに沈没船があると察知したマイクは、ヘリを追跡して遭難現場に向かった。
現場に辿り着くと、豪華客船ポセイドン号が逆さになって沈没していた。マイクは船内に残った金品を運び出せば、タグボートを失わずに済むと考える。そこへ、4人の男たちが乗った船が到着した。リーダーのスヴェヴォは、自分たちが医療班で救助活動に来たという。マイクはサルベージの権利を主張し、自分たちの邪魔をしなければいいと告げた。
マイクたちとスヴェボの医療チームは、ポセイドン号の船内へと入った。マイクは、パーサーの事務室に行けば客が預けた金品が見つかると考えていた。突然、船の一部が爆発を起こし、マイクたちが入ってきたルートが塞がれてしまった。マイクたちは、浴室に閉じ込められていた看護婦ジーナ、中年男性フランク、若い婦人スザンヌの3名を発見した。
フランクは離れ離れになった娘テレサを探すよう要求し、勝手な行動を取ろうとする。しかしマイクはパーサーの事務室へ向かうことを主張し、他に道は無いということで残りの面々も同意した。マイク達が船首へ向かって歩いていると、床に大きな穴が開いていた。スヴェヴォのチームは船尾へ向かうと告げ、マイク達とは逆方向へ去った。
マイクたちは事務室から階下の貯蔵室へ落ちた金や宝石を発見し、小袋に詰め込んだ。貯蔵室の奥には、テキサスの石油王を自称するテックス、エレベーター係ラリー、そしてフランクの娘テレサが隠れていた。一方、隙を見てマイク達から離れたスザンヌは、積荷目録を発見してスヴェヴォに届けた。彼女はスヴェヴォの女だったのだ。そしてスヴェヴォは、医療チームなどではなかった。
スザンヌは「マイクたちと一緒の方が脱出できる」と告げ、戻ろうとする。スヴェヴォは手下のドイルに、スザンヌを射殺するよう命じた。スザンヌは撃たれながらも斧でドイルを殺害し、マイクたちの元へ戻ろうとする。同じ頃、マイクたちは盲目の老紳士ハロルドと妻ハンナを発見していた。フランクは足手まといだと嫌悪感を示すが、マイクは夫妻も連れて移動する。
マイクは出口を探すが発見できなかったため、スヴェヴォと合流しようとする。船首へ向かおうとしたマイク達は、スザンヌの死体を発見した。実は、スヴェヴォたちの目的は、不正に積み込まれたプルトニウムを回収することだった。船首の倉庫に辿り着いたマイクたちは、プルトニウムを発見したスヴェヴォ一味の銃撃を受ける…。

監督&製作はアーウィン・アレン、原作はポール・ギャリコ、脚本はネルソン・ギディング、製作協力はアル・ゲイル、撮影はジョセフ・バイロック、編集はビル・ブレイム、美術はプレストン・エイムズ、衣装はポール・ザストゥプネヴィッチ、音楽はジェリー・フィールディング。
出演はマイケル・ケイン、サリー・フィールド、テリー・サヴァラス、カール・マルデン、シャーリー・ジョーンズ、ピーター・ボイル、ジャック・ウォーデン、シャーリー・ナイト、スリム・ピッケンズ、ヴェロニカ・ハーメル、アンジェラ・カートライト、マーク・ハーモン、ポール・ピセーニ、パトリック・カリトン、ディーン・フランディーニ。


1972年の大ヒット映画『ポセイドン・アドベンチャー』の続編。
前作ではプロデューサーだったアーウィン・アレンが、今回は監督も務めている。
マイクをマイケル・ケイン、セレステをサリー・フィールド、スヴェヴォをテリー・サヴァラス、ウィルバーをカール・マルデン、ジーナをシャーリー・ジョーンズ、フランクをピーター・ボイル、ハロルドをジャック・ウォーデン、ハンナをシャーリー・ナイト、テックスをスリム・ピッケンズが演じている。

『ポセイドン・アドベンチャー』のラストで、わずかに残った生存者は脱出に成功し、救助されている。つまり、もはやポセイドン号は死者を乗せて沈んでいくだけなのである。
にも関わらず続編を作ろうとするとは、あまりにも無謀すぎる。
しかしアーウィン・アレンには、そんな無謀な所業に手を出さざるを得ない理由があった。
前年に監督と製作を手掛けた『スウォーム』がコケていたからだ。
なので、「大ヒット映画の続編なら間違いないだろう」と考えても仕方が無い。
いや、明らかに間違いなんだが、アーウィン・アレンのセンスというのは所詮、その程度だったのだ。

前述したように、『ポセイドン・アドベンチャー』は既に完結しており、そこから話を続けることなど不可能なはずだ。
しかし、そこは無理を通せば道理が引っ込むのである。
ってなわけで、「実はプルトニウムが積み込まれてまして」という前作では全く触れられていなかった設定を用意し、おまけに「救助じゃなくて金品目当ての奴らとプルトニウム目当ての奴らが戦う」というアクション映画として仕立て上げられた。
「もはや舞台がポセイドン号である意味は全く無いんじゃないか」というツッコミは、大正解である。

それでもアクション映画として面白ければ、「パニック映画の続編がアクション映画ってどういうことよ」などの文句も引っ込めようという気になったかもしれない。
しかし、これがアクション映画としても全くワヤなのである。
というか、一応はパニック映画としての意識もゼロではなかったようで、たまに爆発音を鳴らしてカメラをグラグラと揺らしてみたり、穴を飛び越えたりハシゴを登ってみたりという脱出パニック映画らしきシーンも登場する。
ただし、そのパニックシーンはショボい。
というか、船内に閉じ込められていたメンツはともかく、マイクたちは金目当てで自分から沈没船に乗り込んできたわけだから、そいつらが脱出できようができまいが、「そんなの知らんがな」って話だし。

基本的に人間ドラマ(というよりも立ち止まってグダグダと喋っているシーンと表現した方が正しい)は、スリル&サスペンスを失わせることにしか繋がっていない。
単なる数合わせだけで、何の見せ場も無いキャラが何名もいる。
ごく限られた少人数しか登場しないのに、その中で数合わせでしかないキャラがいるってのはキツいね。
前作では天地が逆さになったセットが面白い効果を生んでいたが、今回は事務室や貯蔵室など地味な場所を通っていき、大食堂やホールといった場所を通らないので、そこが逆さになっているという印象は乏しい。
というか、ホントに逆になってんのか分からないような場所が大半だぞ。
まあ、仮に天地逆転が分かりやすい場所ばかり通ったとしても、二番煎じではあるんだけど。

これ、アーウィン・アレンがボンクラ魂で勝手に作った続編なのかと思っていたのだが、実はポール・ギャリコの原作からして続編が存在していたのだ(『海底の怒り』という邦題でサンリオから出版されていたが、どうも絶版のようだ)。
ただし私は未読だが、どうやら原作小説とは大幅に内容が違うようだ。小説版では、前作にも登場したロゴ刑事が主人公になっているらしい。

不確定の情報だし、それが原作通りなのかどうかも不明だが、この続編映画の初期スクリプトは「沈没したポセイドン号には金塊が不正に積み込まれており、そのことが明るみに出るのを恐れた荷主達は、海難裁判所に行く途中で生き残った面々を殺害しようと企む。列車ごとトンネルに閉じ込められた面々が脱出しようとする」という内容だったらしい。
ただし、このスクリプトで映画を作ったとしても、やっぱり『ポセイドン・アドベンチャー』の続編である意味は皆無だと思うけれど。


第2回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:作品賞


1979年スティンカーズ最悪映画賞<エクスパンション・プロジェクト>

ノミネート:【最悪の続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会