『ビバリーヒルズ・チワワ』:2008、アメリカ

化粧品会社のオーナーであるヴィヴは、クロエと名付けたチワワを飼っている。ヴィヴはクロエを溺愛し、セレブな生活を送らせている。高級な服やアクセサリーを買い与え、トリミングも高級店に任せている。だからクロエは、そういう暮らしが当たり前だと思っている。ヴィヴはメキシコ人のサムという庭師に、敷地の造園を任せている。サムの飼い犬である雑種のパピはクロエに求愛するが、冷たい態度で拒絶される。しかしパピは自分がクロエの眼中に無いことに気付かず、執拗にアタックを繰り返している。
ある日、ヴィヴの豪邸を姪のレイチェルが訪ねて来た。ちょうどヴィヴは急な仕事が入ってヨーロッパへ出張することになり、困っていたところだった。ハウスキーパーに休暇を与えたため、クロエの世話をする人間がいないからだ。仕事なので連れて行くことは出来ないが、ペットホテルに預けて見知らぬ人に任せるのも嫌だった。そこでヴィヴは、レイチェルにクロエを預けることにした。彼女はスケジュールを渡し、ヨーロッパへ向かった。
レイチェルはスケジュールに従い、クロエの仲間であるデルタやセバスチャンを屋敷に招き入れる。彼女は自分の親友であるアンジェラとブレアを呼び、プールサイドで日光浴をする。行き当たりばったりで仕事が続かず、時間にルーズなレイチェルのことを、クロエは蔑んだ目で見ている。一方、レイチェルはセレブな暮らしを送っているクロエを生意気で気取り屋だと感じ、不快感を抱いている。クロエが仲間と一緒にいると、またパピが口説いて来るが、もちろん彼女は軽くあしらった。
翌日、レイチェルはアンジェラからメキシコ旅行に誘われ、喜んでOKする。彼女はクロエを引き連れ、アンジェラとブレアの車に乗ってメキシコへ向かう。ホテルにチェックインしたレイチェルは、いつものように高級な夕食を求めるクロエにドッグフードを与える。クロエはドッグフードを食べず、レイチェルの靴に擦り付けて嫌がらせをする。レイチェルたちはクロエを部屋に残して、踊りに出掛けることにした。クロエは部屋を抜け出してレイチェルの元へ行こうとするが、拉致されて車に乗せられた。
部屋に戻って来たレイチェルは、クロエの姿が見えないので焦る。翌朝になってから、彼女は動物保護施設へ行ってみた。そこにクロエはおらず、職員は闘犬の人間が来ていたことを語る。犯罪者が犬を拉致し、メキシコシティーで闘わせているのだという。その頃、クロエは犯罪者のヴァスケスが取り仕切る闘犬会場のバックヤードで檻に入れられていた。隣の檻にはシェパードのデルガドがいて、愚痴るクロエに「ピーピーと鳴くな」と告げた。
別の檻にいたラーファが、デルガドは戦いの鬼だとクロエに教える。しかしチューチョという犬は、デルガドがエル・ディアブロと戦ってズタボロに敗北したことを語る。クロエが大金持ちであることを話すと、デルガドは「それなら身代金目当てだ。闘わされることは無い」と述べた。一方、パピはクロエが屋敷にいないことに気付き、捜そうとする。サムはアンジェラが邸内にいるのを目撃し、声を掛けた。アンジェラはクロエがメキシコで行方不明になったこと、レイチェルにクロエの写真をメールするよう頼まれたことを明かした。
ヴァスケスは闘犬を開始し、無敵の王者ディアブロと対戦する相手にクロエを選んだ。闘犬場に放り込まれたクロエは、ディアブロと会話を交わして何とか戦いを回避しようとするが、無駄な努力だった。ディアブロはクロエの来ているカシミアのセーターを剥ぎ取った。クロエの首に掛けられているダイヤのネックレスを、ヴァスケスは目にした。デルガドはクロエを救うため、鍵を外して檻から抜け出した。彼は他の犬たちも脱出させ、クロエを連れて会場から逃亡した。
ヴァスケスは子分のラファティーたちに、必ずクロエを捕まえるよう命じた。彼はディアブロにGPSを取り付け、追跡を開始させる。脱走した犬たちはそれぞれ好きな方向へと走り、デルガドもクロエと別れようとする。するとクロエはホテルまで案内してほしいと頼み、「助けてくれたらビバリーヒルズの屋敷で暮らせる」と持ち掛ける。断ろうとしたデルガドだが、渋々ながらも承諾した。ただしクロエはレイチェルたちのホテルを覚えておらず、ヴィヴが良く使っているカーセイ・ホテルへの案内を頼んだ。
デルガドはディアブロが追っていることを察知し、香水の匂いを消すためにクロエを泥水に落とした。カーセイ・ホテルに到着したクロエは、デルガドを外に待たせてロビーへ入っていく。しかし薄汚れたクロエの姿を見た従業員は、裏口から追い出した。クロエは自分の格好を見てショックを受けた。クロエが戻って来ないので、デルガドは騙されたと思い込んで立ち去った。クロエが戻った時には、既に彼の姿は無かった。当てもなく街を歩いたクロエは、ベンチの下で眠りに就いた。
翌朝、レイチェルはクロエの写真をラミレス刑事に渡すため、警察署へ赴いた。すると、そこにはサムとパピの姿があった。ラミレスは写真を受け取ると、レイチェルに「ホテルに戻って待っていて下さい」と告げる。しかしレイチェルは警察だけに任せておく気になれず、街に出てクロエを捜索することにした。パピが後を追ったので、サムも仕方なくレイチェルに協力することにした。クロエはディアブロに見つかるが、そこへデルガドが駆け付けた。彼はクロエをくわえると、その場から逃走した。
デルガドは「力になってくれる奴がプエルト・バヤルタにいる」とクロエに言い、トラックの荷台に乗って出発する。パピはクロエの靴を発見し、レイチェルに渡す。聞き込みをしていたサムは、白いチワワと黒いジャーマン・シェパードを見たという人と出会う。レイチェルやサムたちの様子を目撃したラファティーは、ヴァスケスに「他にもチワワを探している奴がいます」と報告した。ヴァスケスはネットを使い、クロエがヴィヴの愛犬だという情報を入手していた。
プエルト・バヤルタに到着したデルガドは、クロエに波止場の噴水で待つよう指示し、協力者の元へ向かう。ネズミのマヌエルは詐欺師の相棒であるイグアナのチコに、「カモがいた」と告げた。マヌエルはチコに食われそうになっている芝居をして助けを求め、狙い通りにクロエをおびき寄せた。チコが去った後、マヌエルは「豪華客船のポーターをやっているから、家へ帰してあげよう」と告げる。クロエは喜び、船長と話すというマヌエルの話を信じてネックレスを預けてしまった。
デルガドは警察犬時代の仲間であるトマスの元を訪れ、事情を説明した。「メンデス巡査にネックレスを見せてほしい」と彼が頼むと、トマスは承知した。波止場へ戻ったデルガドは、クロエがネックレスを掛けていないことに気付く。「貴方以外にも協力してくれる相手はいるのよ」と得意げなクロエだったが、話を聞いたデルガドは詐欺に遭ったのだと確信した。マヌエルがチコと一緒にいると、ディアブロが現れた。「ネックレスはどこで手に入れた?チワワはどこだ」と脅されたマヌエルは、「波止場の噴水」と教えた。
デルガドはクロエを操車場へ連れて行き、野良犬の密入国を手引きするコヨーテに預けて列車に乗せた。クロエと別れようとしたデルガドだが、クロエのことが気になってしまい、列車を追い掛けて飛び乗った。パピはクロエの香水の匂いを嗅ぎ付け、ラーファとチューチョの元に辿り着く。パピは彼らにクロエの情報を聞き、レイチェルとサムの所へ連れ帰った。2人はラーファちとチューチョをホテルの部屋に連れ帰り、体を洗ってやった。サムが犬たちを自分の宿泊先へ連れて行こうとすると、レイチェルは「私が預かるわ」と告げた。
翌朝、サムは警察署からの電話で、白いチワワと黒いジャーマン・シェパードをプエルト・バヤルタで見たという証言者が現れたことを聞かされる。マヌエルとチコは雑貨店に入り込んで休憩していたが、店主に見つかったので逃げ出した。その際、マヌエルはネックレスを床に落とし、店主がそれに気付いた。一方、列車では車掌が巡回に来たので、デルガドは「何があっても出て来るんじゃないぞ」と告げたクロエを隠れさせる。デルガドは囮になって客室を走り回り、列車から飛び降りた。するとクロエも後を追って飛び降り、「ここまで一緒に来たんじゃない。置いては行けないわ」と告げた。
店主が警察に通報したため、レイチェルとサムはラミレスに連れられて雑貨店へ赴いた。店主はネックレスをレイチェルに渡し、ネズミが頻繁に侵入して困っていることを愚痴った。そこでレイチェルは、番犬としてチューチョを彼に譲り渡した。ラミレスはレイチェルたちに、北へ向かう列車で犬が騒ぎを起こして黒いジャーマン・シェパードが飛び降りたという情報が入ったことを教えた。レイチェルとサムは車に乗り込み、プエルト・バヤルタへ向かうことにした。マヌエルはネックレスを取り戻そうと考え、チコと共に車へ忍び込んだ。
クロエとデルガドは荒野を歩き続けるが、迷子になってしまった。クロエはデルガドが臭いを感じ取っていないことに気付く。デルガドは彼女に、匂いを嗅げなくなったせいで警察をクビになったことを打ち明ける。さらに彼は、手入れ先でディアブロの不意打ちを受けたこと、その時にパートナーが怪我を負ったこと、精神的な原因で自分が嗅覚を失ったことを話した。クロエとデルガドは3頭のクーガーに包囲され、窮地に陥る。そこへ荒野で生きるチワワの群れが現れ、クーガーたちを追い払った。チワワ軍団のリーダーであるモンテは、クロエとデルガドに「死にたくなければ、一緒に来い」と告げた…。

監督はラジャ・ゴズネル、原案はジェフ・ブシェル、脚本はアナリサ・ラビアンコ&ジェフ・ブシェル、製作はデヴィッド・ホバーマン&トッド・リーバーマン&ジョン・ジェイコブス、製作総指揮はスティーヴ・ニコライデス、共同製作総指揮はリカルド・デル・リオ・ガルナレス、撮影はフィル・メヒュー、編集はサブリナ・プリスコ、美術はビル・ボーズ、衣装はマリア・エステラ・フェルナンデス、視覚効果監修はマイケル・J・マカリスター、音楽はヘイトール・ペレイラ、音楽監修はバック・デイモン。
出演はパイパー・ペラーボ、マノロ・カルドナ、ジェイミー・リー・カーティス、ホセ・マリア・ヤスピク、ヘスス・オチョア、声の出演はアンディー・ガルシア、ドリュー・バリモア、ジョージ・ロペス、プラシド・ドミンゴ、エドワード・ジェームズ・オルモス、ポール・ロドリゲス、チーチ・マリン、ルイス・ガスマン、エディー・“ピオリン”・ソテロ、ロレッタ・デヴァイン、マイケル・ユーリー、モーリー・スターリング、ユージニオ・デルベス、オマー・レイヴァ、ナオミ・ロモ、アリ・ヒリス他。


『ビッグ・ママス・ハウス』『スクービー・ドゥー』のラジャ・ゴズネルが監督を務めた作品。
レイチェルをパイパー・ペラーボ、サムをマノロ・カルドナ、ヴィヴをジェイミー・リー・カーティス、ヴァスケスをホセ・マリア・ヤスピク、ラミレスをヘスス・オチョアが演じている。デルガドの声をアンディー・ガルシア、クロエをドリュー・バリモア、パピをジョージ・ロペス、モンテをプラシド・ドミンゴ、ディアブロをエドワード・ジェームズ・オルモスが担当している。

まず序盤、クロエのセレブ生活の描写が雑だと感じる。
オープニングでヴィヴがクロエを連れて高級店を巡る様子を描いているのだが、最初に掴みとしてそういうのをアピールしたいのは分かる。
しかし、そこはヴィヴのセレブぶりをアピールするだけに留めて、「クロエの世話を任されたレイチェルが、犬には行き過ぎたセレブ生活に触れる」というところでクロエの暮らしを存分に描写する流れにした方が良かったんじゃないかと。
レイチェルがアンジェラとブレアに「スケジュールがとんでもないのよ。指圧でしょ。犬の誕生パーティー、服の仮縫い。一日に4回も着替えるのよ」と話すシーンがあるが、それを実際の映像で見せた方が効果的なはずだ。

早い段階で舞台がメキシコへ移動するのは、「ビバリーヒルズからメキシコ」というところでギャップを作るためだというのは理解できる。
ただ、「恵まれた金満生活から野良犬暮らしへ」という落差を付けるだけなら、メキシコへ行く必要性は無い。
ひょっとするとメキシコを舞台にしたのは、「闇で闘犬が行われている」という設定を持ち込むためなのかもしれない。
ただ、その設定が効果的に作用しているとも思えないし、必要性が高いとも思えない。

クロエがメキシコではぐれてしまう展開にしたいのなら、レイチェルを挟まず、ヴィヴがメキシコ旅行へ出掛けてクロエとはぐれる設定にした方がいい。
レイチェルが連れて行く設定にしたことで、彼女を見下して嫌っている上、「ここには5つ星ホテルは無さそう」と連れて行かれた場所にも満足していない様子のクロエが、なぜレイチェルが踊りに出掛けた時に追い掛けるのか、という部分で引っ掛かる。
自分の世話をマトモにしようとせず、嫌っている相手を、なぜ頼ろうとするのか、という部分で違和感を覚えるのだ。
また、全く知らない場所で、しかもクロエが好きではないような環境が広がっている場所で、外へ出て行くのも違和感があるし。

前述した「闘犬」の要素を持ち込んだのは、「金持ちと貧乏」だけでなく「チワワが闘犬」というギャップも使おうという狙いがあるのかと思ったのだが、すぐに逃げ出してしまう。
なので、何のために「クロエが闘犬場へ拉致され、出場させられる」という展開を持ち込んだのかと思ってしまう。
そもそも、ヴァスケスが闘犬にチワワを出場させるのも不可解だ。
どう考えたって賭けが行われているはずだが、チワワなんか出場させたら賭けが成立しないでしょ。だから、そもそもチワワを捕まえている時点で不自然なのだ。

例えば、「クロエはチワワなのに異常に戦闘能力が高い」という設定だったり、「ヴァスケスや手下の誰かが、クロエがチワワなのに戦闘能力が高いと誤解した」という流れがあったりすれば、闘犬に使うのは理解できるのよ。
でも、そういうことじゃないんだからさ。
だからデルガドの言う通りに身代金目当てで誘拐したのかと思ったら、違うんだよな。ネックレスを見て、初めて金目当てで捕まえようとする。
でも、セーターが脱げてネックレスを見た時に、ヴァスケスが初めて金持ちの犬だと気付くってのも不自然。
クロエは高い服や靴を身に付けているわけで、その時点で「金になるかも」と考える方が自然だろうに。

デルガドはクロエを助けるために鍵を開けて檻から脱出し、仲間たちも出してやるのだが、そんなに簡単に檻から出られるのなら、今まで逃げずに留まっていた理由は何なのかと。
もしもディアブロに報復してやりたいという気持ちがあったのなら、それまでにもチャンスはあったはずだし。
でもディアブロが追って来ると逃げ出すんだから、ずっと戦って復讐したいという意欲があったわけでもなさそうだ。
だから、その気になればいつでも逃げられたのに、ずっと逃げなかった理由が全く分からない。

この映画、困ったことに、クロエがなかなか魅力的な犬に思えない。
それは見た目の問題ではない。
「俗世間を知らないブルジョア犬がマイペースを貫き、そのせいでデルガドを困らせたり怒らせたりする」ってのを笑って下さいという作りになっているのだが、そこに笑いを見出すのが難しいんだよな。
そんなクロエを列車に乗せて別れようとしたデルガドは、思い直して飛び乗るのだが、筋書きとしては理解できるものの、そんなにクロエとデルガドの関係性を厚く描写できていないため、デルガドの行動に引っ掛かりを覚えてしまう。

レイチェルがクロエを必死になって探すのは、決して犬を大切に思っているからではなく、「ヴィヴの愛犬だから見つけ出さないと大変なことになる」というモチベーションだ。ところが、いつの間にか、それが「本気でクロエを心配している」という感じの描写に変化している。
ただ、いつ頃からそんな風に彼女の心境が変化したのか、変化した理由は何なのか、その辺りはイマイチ伝わって来ない。
だから、そこに関連するのだが、なぜ彼女がラファとチューチョを引き取るのか、という部分も説得力が無い。
サムが引き取ることにして、最初は嫌がっていたレイチェルが少しずつ慣れて行く、という流れになっているなら、スムーズに受け入れられたかもしれないけど。

しかも、引き取って間もない内に、彼女は知り合った店主や老女にラファとチューチョを譲るのだ。
無理に押し付けたわけではなく、必要としていた人に譲り渡しただけとは言え、「テメエで飼う気も無いのに引き取っただろ」と思ってしまうし、そんなに簡単に犬を欲しがる人が見つかる安易な御都合主義もどうかと思うし。
それと、最後に「それぞれの動物の、その後」が説明されるのだが、その中にチューチョが入っていないのはダメだろ。

クロエは荒野で出会ったモンテから、「チワワの故郷はアステカ。チワワは偉大であり、小さくても強い」と教わる。そして彼は「チワワは単なるペットではない。我々はオモチャでもアクセサリーでもない。変な帽子を被らされたり、バッグに入ったりするために生まれて来たのではない。赤ちゃん言葉で話し掛けられたりするのは、もうゴメンだ」と語り、ここで一緒に暮らそうとクロエに持ち掛ける。
しかし、クロエは「自分のセレブ生活が本当に幸せなのか」などと考えたりしたことは全く無い。
だからモンテが熱い弁舌を振るっても、それに賛同することも無い。そして、そういう言葉を受けて、改めて自分の暮らしを見つめ直したり、揺らいだりすることも無い。
そこでモンテが熱く語った「チワワとは本来、こうあるべきだ」という考えは、クロエの心には全く響かないのだ。
だったら、そんなことを彼に喋らせている意味が全く無いでしょうに。

まるで心に響いていないので、クロエはモンテから「一緒に暮らそう」と誘われても、これっぽっちも悩まずに「ビバリーヒルズへ戻る」と告げる。
で、戻りたい理由について「待っている犬がいるから」と言うのだが、それはパピのことだ。
だけど、いつの間にクロエはパピに惚れたんだよ。メキシコに来てからも、拉致されたり逃げ出したりしている間も、パピのことを思い起こすようなシーンは全く無かったでしょうに。
そこに来て急に「パピへの恋心に目覚めた」という展開を用意されても、まるで腑に落ちないぞ。

っていうかさ、そこまでの流れで行けば、もしもクロエの恋愛劇が絡んで来るにしても、どう考えたってデルガドとの関係を使うべきじゃないのかよ。
ずっと一緒に行動していたのに、そこの恋愛感情は芽生えずに、まるで心の中に存在していなかったはずのパピの存在を唐突に挙げるって、どういうことだよ。
デルガドだと犬種が違うから、そこで恋愛劇を作るのを嫌ったのか。
だったら、そんなコンビの道中劇もやらなきゃいいんだよ。もしくは、それをやるなら、中途半端な恋愛劇なんて持ち込まなきゃいいんだよ。

モンテは「チワワは単なるペットではない」などと熱く語った時、「ノー・マス(もうゴメンだ)」という合言葉を仲間と共に唱えている。そして「真の声で吠えろ。その声が君を強くする」とクロエに言う。クロエは上手く吠えることが出来ないが、モンテは「必要な時が来れば、吠えることが出来る」と述べる。
で、モンテの「チワワとはこうあるべき」という言葉は全く心に響かなかったクロエだが、ノー・マスの教えに関しては、ピンチでそれを思い出し、凄みのある声で吠えてヴァスケスを脅かすという展開が用意されている。
そのくせ、「オモチャやアクセサリーのように扱われ、変な帽子を被らされたりバッグに入ったりする」という生き方は受け入れるんだよな。
ホント、都合がいいことで。

(観賞日:2014年6月9日)

 

*ポンコツ映画愛護協会