『ベスト・オブ・ザ・ベスト』:1989、アメリカ

自動車工場で働くアレックス・グレイディーは仕事を終え、友人のスタンリーに声を掛ける。「ビールでも飲みに行こう」と誘われた彼は、「息子を迎えに行く」と告げる。アレックスは妻を亡くし、5歳のウォルターと母の3人で暮らしている。ウォルターは空手道場に通い、大勢の子供たちと一緒に練習を積んでいる。道場主のトミー・リーは喧嘩を始めた子供たちに、「人を傷付けるな」と説く。全米空手チーム選考会の招待状が届き、彼はガッツポーズを取った。
招待状はアレックスの元にも届いており、彼は母親に参加の意志を明かす。母は「その肩で出場する気なの?プラスチックと金属の棒で繋がってる。無茶だわ」と心配するが、アレックスは「今の生活には燃える物が無い」と言う。母が「まだウォルターは5歳よ。傍にいてあげて」と頼むと、アレックスは「大丈夫、俺が話す」と告げる。アレックスが選考会に参加することを打ち明けるとウォルターは応援し、「勝ってね」と口にした。
選考会の会場へ赴いたアレックスはトラヴィス・ブリックリーという男に伸縮テープを借りようとするが、荒っぽく断られた。それを見ていたトミーが、アレックスにテープを貸した。眼鏡を掛けているヴァージル・ケラーはトラヴィスから馬鹿にされた後、ソニー・グラッソと知り合った。トラヴィスはソニーと対戦して敗北し、審判に突っ掛かって椅子を蹴り飛ばした。全米チームのコーチを務めるフランク・クゾーは助手のドンから「態度が最悪だ」と言われるが、トラヴィスを「いいファイターだ」と評価した。
アレックスやトミーたちは順調に勝利を重ね、選考会は終了した。フランクは最終的に、アレックス、トラヴィス、トミー、ヴァージル、ソニーの5人を選んだ。全米空手協会のジェニングスはアレックスが含まれていることを知ると、「過去に酷くやられた男だ。肩に古傷がある」と難色を示す。しかしフランクは、「貴方は門外漢だ。選手の選考と訓練は私に任せてください」と突っぱねた。彼は5人を集め、「明日から3ヶ月間、みっちりしごく。女も酒も麻薬も駄目だ。時間を厳守し、チームとして行動しろ」と厳しい態度で語る。彼は「今夜はドンが街へ連れて行く」と言い、最後の夜を楽しむよう告げた。
ジェニングスはフランクに、「極東で知り合った、心理学や医学や動力学に詳しい人物を紹介したい」と告げる。フランクが「ある種のセンセイですな。必要ありません」と冷たく拒むと、ジェニングスは「今言ったウェイドをトレーナーとして採用する」と独断で決定した。チームの面々は酒場へ繰り出し、ヴァージルはキャロルという女性と仲良くなった。トラヴィスがケリーという女性をナンパして踊っていると、彼女に惚れているバートと仲間たちが怒って喧嘩を吹っ掛けて来た。トミーは穏便に済ませて店を去ろうとするが、バートたちの挑発が続いたので喧嘩を買う。自宅に電話を掛けていたアレックスも途中で加わり、メンバーはバートたちを叩きのめした。
翌日、合宿所にキャサリン・ウェイドが現れ、フランクの元へ赴いた。フランクは「貴方の力は要りません」と冷淡に告げるが、彼女は「失礼ですが、私の協力が無ければ最新の訓練機器も単なるガラクタです」と自信満々に告げる。フランクがチームにジョギングと腹筋をさせた後、キャサリンは自己紹介する。彼女はフランクとドンが肉体面を、自分が精神面を鍛えることをアレックスたちに語った。大会では引き分けの場合にブロックの試し割りで勝敗を決するため、その練習も行われた。
フランクは韓国チームの映像をチームに見せて資料を渡し、敵を知るよう告げる。ソニーが対戦するキムは1984年世界大会の金メダリストで、トラヴィスの戦うムーンは翌年の金メダリスト、ヴァージルが戦うチョーは1986年香港大会の金メダリストだ。アレックスの対戦相手であるクワンはクラス1位の実力者で、対戦相手が死ぬことも少なくない。トミーが戦うハンが最強の相手で、10年に渡って負けていない。対戦相手を知ったトミーは、寝室へ戻って過去を振り返る。彼が幼い頃、兄はハンと試合で対戦し、命を落としていた。
アレックスは母からの電話で、ウォルターが車にはねられて病院に運ばれたことを知る。彼はフランクに事情を説明し、病院に行こうとする。しかしフランクは冷徹な態度で、「合宿中、外部との接触は禁止だ。規則を破ったらチームから追放だ」と通告する。アレックスは「俺は父親です。息子の元へ行きます」と言い、合宿所を去ることにした。彼が荷物をまとめていると、トミーは「話は付けておく。荷物は置いていけ」と告げた。
アレックスは病院へ駆け付け、昏睡状態に陥っているウォルターに付き添った。翌朝になってウォルターが意識を取り戻したので、彼は安堵した。アレックスは合宿所へ戻り、フランクに「試合に出たいんです。俺には空手しか無いんです」と訴える。しかしフランクは彼を無視し、チームの練習を続ける。トミーはハンとの対戦に向けて心を乱され、合宿所を去ることにした。アレックスに理由を問われた彼はハンとの因縁を明かし、「奴を殺してしまう。怖いんだ」と吐露した。アレックスは「逃げたら苦しむことになる。俺と同じ羽目になる。死んだ妻の面影を、まだ追ってるんだ。お前の兄貴は死んだ。俺の妻も死んだ。今度の試合で過去を吹っ切れ。チャンスだ」と説くが、トミーはバイクで合宿所を去った。
キャサリンはトミーの資料が2ぺージだけ抜き取られているのに気付き、ドンを追及した。彼女はドンから抜き取られたページを見せられ、ハンとの因縁を知った。フランクはキャサリンから「なぜハンと戦わせるんですか。勝利が全てですか。選手を大切にしたことがあるんですか」と非難され、「全力で戦って負けたなら満足だが、力を出し切れずに負けたら私の責任だ」と語る。さらにフランクは、「彼の兄がそうだ。私はコーチだった。15年間、死の重荷を背負ってる。あの時、憎まれるほど厳しく鍛えなかった。だから死んだ。二度と同じ失敗は繰り返したくない」と述べた。
トラヴィス、ヴァージル、ソニーはフランクにアレックスをチームに戻してほしいと頼む。フランクは「言いたいことはそれだけか。明日の20時に出発だ」と冷たく言うが、アレックスをチームに復帰させた。トミーはガソリンスタンドで幼い兄弟の姿を見て、自分と兄を重ね合わせた。チームが空港で搭乗準備をしていると、トミーがやって来た。フランクは航空券を渡し、チームは韓国へ飛んだ。ソウルの会場には大勢の観客が集まり、米国チームと韓国チームの対決が開始される…。

監督はボブ・ラドラー、原案はフィリップ・リー&ポール・ルヴァイン、脚本はポール・ルヴァイン、製作はピーター・E・ストラウス&フィリップ・リー、製作協力はデボラ・スコット、製作総指揮はマイケル・ホルツマン&フランク・ギストラ、撮影はダグ・ライアン、編集はウィリアム・ホイ、美術はキム・リース、衣装はシンシア・バーグストロム、スタント・コーディネーターはサイモン・リー、音楽はポール・ギルマン。
出演はエリック・ロバーツ、ジェームズ・アール・ジョーンズ、サリー・カークランド、クリストファー・ペン、サイモン・リー、ルイーズ・フレッチャー、フィリップ・リー、ジョン・P・ライアン、ジョン・ダイ、デヴィッド・アグレスタ、トム・エヴェレット、イーダン・グロス、マスター・チョー・ヘイル、ジェームズ・リュー、ケン・ナガヤマ、パク・ホーシク、チャン・デイキュー、ダイアン・ミズラヒ、カル・バートレット、アフマッド・ラッシャッド、エドワード・バンカー、ヘレン・フナイ、ユージーン・チョー他。


日本で公開された時には「『ロッキー』『ベスト・キッド』に続く感動のスポーツ・バトル巨編」として宣伝された作品。
監督のボブ・サドラー、脚本のポール・ルヴァインは、いずれも本作品が映画デビュー。
アレックスをエリック・ロバーツ、フランクをジェームズ・アール・ジョーンズ、キャサリンをサリー・カークランド、トミーをクリストファー・ペン(クリス・ペン)、ダエをサイモン・リー、アレックスの母をルイーズ・フレッチャー、トミーをフィリップ・リー、ジェニングスをジョン・P・ライアン、ヴァージルをジョン・ダイ、ソニーをデヴィッド・アグレスタ、ドンをトム・エヴェレットが演じている。
『13日の金曜日』シリーズの7〜10作目でジェイソン・ヴォーヒーズを演じたケイン・ホッダーが、バート役で出演している。

オープニング・クレジットではエリック・ロバーツ、ジェームズ・アール・ジョーンズ、サリー・カークランドの名前が最初に表記されるが、実際は原案と製作も兼ねているフィリップ・リーが自分を売り込むために作った映画である。
それまでもチョイ役として映画に出演していた彼は、1988年に『サイレント・アサシン』という映画を製作し、4番手で出演した。
この時はサム・ジョーンズが主演でリンダ・ブレアがヒロインだったが、本当ならばフィリップ・リーが自ら主演を務めたかったはずだ。
しかし「無名のアジア系俳優が主演の映画」という企画ではスポンサーが付かないため、そこそこ知名度のあるアメリカ人俳優を主演に据えたわけだ。

この作品も同じで、1978年に『キング・オブ・ジプシー』で映画デビューし、いきなりゴールデン・グローブ賞の主演男優賞にノミネートされたエリック・ロバーツを主演に据えることで、製作や配給をスムーズに進めようという狙いがあるわけだ。
1987年にはコカインとマリファナ所持で逮捕されているエリック・ロバーツだが、それでも知名度はあるし、少なくともフィリップ・リーの主演作よりは企画が通りやすいわけで。
ただ、表面的にはエリック・ロバーツが主役でも、フィリップ・リーがプロデューサー兼任なので、映画は彼のコントロール下にある。
なので「ホントは主演を務めたいんだ」ってのがハッキリと中身にも表れており、それが作品のバランスを壊している。

最初はアレックスを主人公として登場させたはずなのに、すぐにトミーのターンへ移り、彼の元へ招待状が届く展開を描く。
普通に考えれば、アレックスに届くのを先に見せるべきでしょ。なのにトミーの方が先。
っていうか、他の3人はまだ登場もしていないんだから、トミーがアレックスと同じ程度の特別扱いを受けているってことだ。
酒場の喧嘩シーンでも、明らかにトミーが主役として扱われている。他の面々も参加しているが、トミーの格闘だけ描写が多い。主人公であるはずのアレックスは自宅に電話を掛けており、最初は喧嘩に全く参加していない。それどころか、喧嘩が勃発していることも知らず、「トミーの戦い」と「アレックスの電話」が交互に描かれるという構成になっている。
電話を終えたアレックスは喧嘩に加わるが、チラッと戦って終わりだ。そんなの、彼がピンで主役の扱いだったら絶対に有り得ない。

それ以外でも映画の構成には難があって、何しろ始まってすぐに韓国の空手チームの面々が大勢で練習する風景が写し出されるのだ。
どういうセンスだよ。それは。
アレックスがスタンリーに挨拶し、「ウォルターを迎えに行く」と言うシーンも全くの不要。
スタンリー役がエドワード・バンカーなので、彼を見せたかったのか。理由は分からんが、そんなことよりも、妻を亡くしていることをさっさと示せよ。
チーム宿舎でアレックスとトミーが話すシーンまで、それを明示しない意味が無いわ。

トミーはウォルターの空手の先生なのに、なぜかアレックスは彼のことを知らないという謎。
道場に通わせるなら、普通は道場主に挨拶するでしょ。
そんな道場でトミーが教えているのは、明らかにテコンドーであって空手ではない。しかし当時のアメリカでは空手がブームだったので、仕方なく「空手」ってことにしたんだろう。
それに、「全米のテコンドーチームを選ぶ」という設定だと、テコンドーの動きをこなせる俳優を探すのが大変だろうし。

アレックスがウォルターに選考会への参加を明かすシーンの直後、韓国メンバー5人が選ばれる様子が写し出される。
この時点では、何の意味があるのかサッパリ分からない。後で全米チームが決定するシーンにおいて、「全米チームと韓国チームの対抗戦」という説明があり、ようやく理解できるようになっている。
ただ、アメリカと韓国の代表チームが空手の対抗戦で戦うって、どんな大会だよ。
ジェニングスは「理事も本腰を入れてる。欲しい物は何でも手に入る」と言うけど、そんな大会に理事会が熱を入れるかね。

選考会のシーン、アレックスは投げを放って倒れた相手にパンチを入れるが、これも有効な攻撃として認められている。
あまり知られていないかもしれないが、実は空手って投げ技もあるのだ。流派によってルールは異なるが、その投げ技も倒れた相手への打撃も、全米空手ではOKってことなのだろう。
だから、その描写は別にいい。トミーの動きが空手じゃなく明らかにテコンドーだったりするのも、別にいい。
ただ、他のトコも含めて適当なのよね。
会場には複数のマットが敷いてあり、それぞれに円が描いてある。しかし、その円から出ると減点されるわけではない。選手はグローブを装着している者もいれば、バンデージだけの者もいる。
ルールがメチャクチャだ。

ソニーに負けたトラヴィスが審判に詰め寄ったり椅子を蹴り飛ばしたりしても、フランクは「いいファイターだ」と高く評価し、メンバーに入れる。
だが、その後で5人を集めた時、フランクは「チームとして行動しろ。お互いを思いやる行動を持て」と諭す。
そういうルールの順守を要求するくせに、それに全く合わない行動を取っていたトラヴィスを選ぶのは間違ってるだろ。
なんでテメエの定めるルールから外れた性格の人間を選ぶのよ。

大会に向けた特訓は女性抜きで続くので、ずっと男だけのシーンが続くことになる。しかし少なくとも当時のハリウッド映画では「ヒットさせるにはヒロインが必須」という暗黙のルールがあったので、どうしてもヒロインは欲しい。
そこでトレーナーとして、キャサリンを配置している。
彼女は「極東で育ち、東洋の哲学を学んだ。仏教やヨガ、瞑想を学び、テコンドーも出来る」という設定だ。しかし、その設定は、ほぼ無意味。トレーニングのシーンは大半がダイジェスト処理だし、彼女の指導でチームが強化される様子は見えない。
ブロック割りの見本を披露するシーンはあるが、そこで「テコンドーが出来る」という設定を活用しているとも言えない。テコンドーは蹴り技が主体のはずなので、手刀でブロックを割られてもね。あと、割る時の構えも変だし。

全米チームの練習が始まると、韓国チームの練習風景も平行して描かれる。
だが、例えば「近代的な施設と原始的な特訓」みたいに、それほどクッキリとした違いがあるわけでもない。練習している場所は異なるが、分かりやすい違いは韓国チームが雪原を歩くシーンぐらいだ。
そもそも、韓国チームの練習風景を挿入されても、まるで意味が無いんだよね。
まだ韓国チームのメンバーは誰一人として紹介されていないし、全米チームとの因縁は生じていないんだから。

全米チームの練習風景では、トラヴィスの動きが明らかに鈍い。なので、「落ちこぼれ集団が特訓して強くなる」というシーンのようにも見えるほどだ。
フランクは「みっちりしごく」と言っていたが、ちっとも厳しい練習には見えない。付いていけない奴が罰を受けるとか、フランクが「そんなことで勝てるのか」と怒鳴り付けるとか、そういう様子も全く無い。
練習の過酷さや動きの質を見ている限り、明らかに全米チームは劣っているぞ。
韓国チームが雪原で上半身裸になって木に手刀を打ち込んでいる一方、全米チームは食堂でノンビリと食事を取っているし。

フランクが韓国チームのビデオを見せるシーンでキャサリンは「私たちの訓練は、まだ甘いわ」と言う。
それが分かっているなら、もっと早い段階で指摘しろよ。
これまでダラダラした軽い練習を続けてた日々は、ものすごく無駄な時間でしょ。ちっとも気合が入っておらず、真剣味が足りないとしか思えないぞ。
しかも、韓国チームのビデオを見せられて相手について解説されても、まだアレックスは余裕の態度でヘラヘラしているんだよね。

トミーはハンと対戦することを知らされても、全くリアクションを見せない。ところが寝室へ戻ってからの回想シーンで、過去の因縁が示される。
目の前で兄を殺した相手だったら、対戦相手だと聞かされた時点で、もっと驚けよ。なんで無反応なんだよ。
その後、トミーはトラヴィスとのスパーリングについて、フランクから「手心を加えただろ。何を恐れてる?」と指摘される。だけどハンを意識したのなら、むしろ復讐心で我を忘れちゃうぐらいの方が納得できるわ。
どうやら「相手を殺すかもしれないからビビってる」という設定らしいけど、それはキャラの動かし方を間違えているとしか思えん。

韓国チームの選手について「命を落とす選手も多い」とフランクは解説するけど、もはや大会に出ちゃダメな奴だろ。試合であろうと殺人を繰り返していたら、公式大会から追放されるだろ。空手って、そういう武道じゃないからね。
で、そんなことを聞かされてもお気楽な様子だった全米チームだが、その後の練習風景では、急に動きがピリっとして態度も引き締まっている。
それは唐突で違和感が強いわ。
ビデオを見て気持ちを入れ替えたのなら、その段階で態度の変化があるべきだし。

フランクを「冷徹な鬼コーチ」に造形したいのは分かるが、アレックスが車にひかれたウォルターを心配して病院へ行こうとした時、それを却下するのは度を超えている。
息子が昏睡状態なのに、「甘ったれるな」と叱責するのは違うだろ。それは鬼コーチとかじゃなくて、ただのクズ野郎だわ。
アレックスが合宿所へ戻ってチーム復帰を懇願しても無視するけど、彼の代役を用意するわけでもないし、どうするつもりなのかと。
最終的にはアレックスを復帰させるけど、自然な流れが欠如しているから単なる段取りになっちゃってるし。

アレックスはトミーの事情を聞いた時、「俺と同じ羽目になる。妻の面影を追っている」ってなことを言う。
だけど、そこで急に妻の面影が云々とか言われても、取って付けたような印象しか受けないわ。
寝室に家族写真を飾るシーンはあったけど、妻を回想するシーンは一度も無かったし、完全に吹っ切っているようにしか見えなかったぞ。引きずっていることを示す描写はゼロだったぞ。
あと、アレックスは妻に対する思いを重ねてトミーに「今度の大会は兄の死を吹っ切るチャンス」と話すけど、それはズレているとしか思えん。

フランクはキャサリンからトミーとハンの対戦について非難された時、「15年間、死の重荷を背負ってる。あの時、憎まれるほど厳しく鍛えなかった。だから死んだ。二度と同じ失敗は繰り返したくない」などと粗筋にも書いたようなことを話す。
まるで今回の自分は正しいかのような態度だけど、やっぱり間違ってるぞ。
甘い考えだと相手に勝てないから厳しく鍛えるってのは、理解できるよ。だけど、トミーをハンと戦わせるのは、それとは全く別の問題であって。
あと、厳しく鍛えるのはいいとして、それと「アレックスが病院に行くのを却下する」ってのも、これまた別の問題であって。

ソウルの会場に舞台が移ると、実況アナウンサーが「伝統的な強さを誇る韓国チーム」と口にする。空手の伝統を韓国が持っているわけないので「完全に空手とテコンドーを混同しているな」と感じていたら、入場シーンではついに「テコンドーは韓国で発祥した武道で」と言い出す。
もはや完全に、「韓国は空手じゃなくてテコンドーの代表チームです」と言っちゃってるのだ。
そして試合のルールについても、「空手とテコンドーの混合スタイル」と解説している。
ただ、実際に試合が始まると組みついてから腹にパンチを浴びせたり、背中に肘打ちを入れたりするので、そこまで徹底してテコンドーをやっているわけでもない。
「テコンドーをベースにした格闘アクション」って感じだ。

試合は1試合3ラウンドのポイント制で、総合得点で勝敗が付けられる。なので全米チームは第1試合と2試合に負けて、第3試合も引き分けからのブロック割りで敗北するが、それでも勝つチャンスが残っているという都合の良さだ。
ただ、そもそも総合得点で勝敗を付けるのなら、引き分けからのブロック割りは要らないでしょ。引き分けのままでいいでしょ。
それと、ムーンはブロック割りで変な構えからの手刀を使うが、そこはテコンドーらしさを見せないのね。
あとさ、そこはトラヴィスに勝たせておいて、続くアレックスも勝って「トミーとハンの戦いで決着が付く」という形にしておけばいいんじゃないのか。ヴァージルとソニーが何の見せ場も無いまま「ただの数合わせ」で終わるのは仕方が無いにしても、トラヴィスまでもが負けて終わりって、どういう扱いだよ。

フィリップ・リーは中国系ではなく韓国系のアメリカ人で、テコンドーとハプキドーの黒帯を持っている。ダエを演じるサイモンは彼の兄で、スタント・コーディネーターも務めている。
この2人は格闘家だが、全米チームの他の面々は、格闘能力で起用されたわけではない。なので当然のことながら、アクションには難がある。
それを考えると、他の連中の扱いが雑なのは分かるっちゃあ分かるのよ。
ただ、それなら最初から、5対5の対抗戦なんかじゃなくて、ホントに戦える奴だけが戦う話を作れば良かったんじゃないのかと。

韓国チームが卑怯な手段を使うわけじゃないので、トラヴィスやアレックスが無闇に相手を挑発したり乱闘を始めたりする全米チームの方が行儀が悪く見えるぞ。ようやくハンが反則を使うけど、取って付けたような印象が強いし。
しかも、こいつに中途半端な反則をさせておきながら、最終的にはトミーに「お兄さんは立派な武道家だった。自分のやったことを深く後悔している。俺を兄弟と思ってくれ」と涙で語り、抱き合うのよね。
そういう着地にさせるなら、反則なんかさせるなよ。
あと、「トミーの兄を平然と殺したわけじゃなく、ずっと罪悪感を抱いて苦悩していた」という設定にでもしておけばいいでしょ。

(観賞日:2018年7月15日)


第12回スティンカーズ最悪映画賞(1989年)

ノミネート:作品賞

 

*ポンコツ映画愛護協会