『ベネデッタ』:2021、フランス&ベルギー&オランダ
17世紀のイタリア。6歳のベネデッタ・カルリーニはテアティン修道院に入るため、父のジュリアーノと母のミディアに連れられてペシアの町へ向かっていた。その途中で聖母マリア像を見つけたベネデッタは挨拶し、ミディアに促されて歌を捧げた。そこへ傭兵たちが現れて持参金を寄越すよう要求すると、ジュリアーノは「現金は無い。為替手形だ」と告げる。傭兵の1人がミディアのネックレスを奪うと、ベネデッタは「聖母の罪が下るわ。私がお願いする」と言う。すると小鳥が飛来し、傭兵に糞を落とした。仲間たちは大笑いし、隊長はネックレスを返して立ち去った。 一家が修道院に到着すると、ジュリアーノはフェリシタ修道院長に「オレンジとリンゴとワインを持参しました。今後25年間、同じ量をお届けします」と告げた。持参金について問われた彼が50エキュを用意すると、フェリシタは倍額の支払いを要求する。ジュリアーノが間を取って75で交渉するが、フェリシタな「値切るとはケチくさい」と批判されたので100エキュで承諾した。ベネデッタは部屋に案内され、服を着替えるよう命じられた。
ベネデッタは母から貰った小さな聖母像を大切にしていたが、部屋に案内した修道女に「今後は修道院の聖母像に祈りなさい」と言われる。その修道女は幼少期に酔っ払いに右手の人差し指を切られ、木製の義指を付けていた。夜中に部屋を抜け出したベネデッタは、修道院の聖母像に祈りを捧げた。聖母像は急に倒れるが、ベネデッタは傷一つ負わなかった。修道女たちは奇跡が起きたと驚くが、ミディアは娘に「奇跡は想像以上に厄介な物よ」と語った。
18年後。ベネデッタは修道院の芝居で聖母マリアを演じ、キリストに呼び掛けられる光景を幻視した。そのことを母に話した彼女は、「私はキリストの花嫁よ」と述べた。巷ではペストが流行し、ミラノの司教も亡くなっていた。アルフォンソ主席司祭はバチカンに何度も司教への就任をお願いしているが、取り合ってもらえずにいた。ある日、貧しい少女のバルトロメアが父に追われ、助けを求めて修道院に逃げ込んだ。修道院に入るには金が必要だが、彼女に支払い能力は無かった。ベネデッタは母に金を出すよう頼み、最初は渋ったジュリアーノも説得を受けて承諾した。
ベネデッタはバルトロメアに体を洗わせ、裸体に触れて戸惑った。「ウンチがしたい」とバルトロメアが言うので、彼女は便器に案内した。バルトロメアの足には幾つもの痣があり、ベネデッタに「父はペストで母を亡くし、私を身代わりにした。兄たちにもやられた。今朝、ハサミで刺そうとしたら反撃された。それで逃げてた」と説明した。「美しさが裏目に出た」とベネデッタが言うと、バルトロメアは「私、綺麗?」と尋ねた。ベネデッタは「自覚が無いの?綺麗よ」と返答し、顔を近付けたバルトロメアとキスの雰囲気になった。
フェリシタの娘のクリスティナが来たので、2人は立ち去った。バルトロメアはベネデッタにキスして、自分の部屋に戻った。ベネデッタはマリア像に祈り、「バルトロメアを指導するには値しません」と吐露した。「神が彼女を遣わした。愛と助言を必要としている」という言葉が聞こえると、彼女は「私では力不足です」と言う。すると今度は、「神の声に従え」という言葉が聞こえた。次の日、ベネデッタが他の修道女と共に讃美歌を歌っていると、背後から歩み寄ったバルトロメアが尻を刺激した。するとベネデッタは、数匹の蛇に襲われてキリストに助けられる幻視を見た。キリストは「悪魔が君を殺し、私から遠ざけようとしていた。だが生も死も私たちを引き離せない。決して離れるな」と言い、ベネデッタにキスをして去った。
ベネデッタはパオロ・リコルダティー神父の元へ行き、キリストを見たと告白する。「夢で?」と問われた彼女は、「いいえ、神父のように肉体がありました」と答えた。彼女は何を感じたのか訊かれ、恐怖だと返す。リコルダティーが「では疑わしい。聖なる幻視は幸福感がある」と話すと、ベネデッタは「真偽を知る方法は?」と尋ねる。リコルダティーは「キリストを知る唯一の方法は痛みだ」と述べ、不安を漏らすベネデッタに助言を送った。
1人の修道女が作業中にバルトロメアとぶつかり、持っていた糸巻を全て熱湯の中に落とす出来事が起きた。非難されたバルトロメアは「私のせいじゃない」と反論するが、ベネデッタは糸巻を拾うよう命じて脅した。バルトロメアは熱湯に右手を突っ込み、火傷を負った。フェリシタに呼び出されたベネデッタは、与えたのは罰ではなく痛みだと主張した。「彼女に恨みが?」と問われたベネデッタは否定し、「では愛情を抱いている?」と質問されると「彼女の痛みに対して同情を抱いています」と答えた。
フェリシタが「貴方が与えた痛みよ」と指摘すると、ベネデッタは「リコルダティー神父が、痛みは神への道だと」と反論した。「他者ではなく自分の痛みならね」とフェリシタは説き、「罰として1週間はパン無し、2週間はシスター・ヤコパの夜の支度を」と命じた。ヤコパは病を患っており、ベッドのシーツが酷く汚れていた。ヤコパは「この病は私のプライドよ」と言い、「プライドは大罪だわ」とベネデッタが告げると「私の罪はユダヤ人であること。シスター・ペトラは元娼婦よ。でも誰も気にしない。神の言葉は形も様々よ。必要なのは受け入れる勇気」と述べた。
翌朝、ベネデッタは激しい痛みを訴え、フェリシタはベッドに縛り付けて医者を呼んだ。ベネデッタはケシの搾り汁で眠りに落ち、他に人がいなくなるとバルトロメアがベッドに近付いた。彼女は「一緒にいたい?私は一緒にいたい」と囁き、キスをして去った。ベネデッタは夢の中で傭兵たちに襲われ、駆け付けたキリストに救われた。しかし、それはキリストを装った別人だった。ベネデッタは犯されそうになり、そこで目を覚ました。
バルトロメアは奉仕に立候補し、ベネデッタは2人部屋で養生することになった。ベネデッタは「悪魔に惑わされて貴方を傷付けた。でも戻ってくれた」と話し、バルトロメアに感謝を伝えた。就寝時にベネデッタが着替えようとすると、バルトロメアは「見てちゃダメ?」と尋ねる。ベネデッタは「裸を見せるのは禁止よ」とたしなめるが、バルトロメアは悪戯という形を取って裸を見た。ベネデッタは夜中に磔のキリストに声を掛けられ、目を覚ました。彼女はキリストに命じられ、服を脱いで裸になった。キリストは自分の布を外させ、手と手を密着させるよう指示した。ベネデッタはキリストの手に自分の手を合わせ、体をピッタリと重ねた。
痛みに悶えるベネデッタの声で、バルトロメアは目を覚ました。バルトロメアは部屋に倒れ込んでいるベネデッタに駆け寄り、両手に深い傷が付いているのを目にした。翌朝、ベネデッタは他の修道女たちの元へ行き、「昨夜、キリストが私に傷を与えた」と両手足と脇腹に付いた傷を見せた。修道女たちが「聖痕よ」と騒ぐ中、フェリシタは疑念を抱いて「祈っていた時に起きたの?」と質問する。ベネデッタは「ベッドで眠っていました」と答え、フェリシタは茨の冠による頭の傷が無いこともあって聖痕とは信じなかった。
アルフォンソは修道院に多くの巡礼者が押し寄せて財政的に潤うことを期待し、ベネデッタの傷を聖痕と認めることにした。マリア像に祈っていたベネデッタが悲鳴を上げたので、修道女たちが現場に集まった。ベネデッタは頭から血を流し、別人のような声色で「ペストが国を襲うが、この町は我が花嫁のおかげで助かる。なのにお前たちは、その女を苦しめている」と大声で叫んだ。ベネデッタが失神した後、クリスティナはフェリシタに「ベネデッタは聖人じゃない。倒れてガラスを割り、傷を付けた」と話す。しかしクリスティナが現場を目撃していなかったため、フェリシタは「だったら分からない」と述べた。
その夜、ベネデッタはベッドで「キリストが心臓をくれた。私の胸には大きすぎる」とバルトロメアに言い、自分の乳を触らせた。次の朝、アルフォンソは修道女たちを集め、ベネデッタを修道院長に任命した。フェリシタが役職を外されることになるため、クリスティナは激しく抗議した。フェリシタは娘を諫め、ベネデッタに院長の座を譲った。ヤコパが倒れて余命わずかになり、フェリシタとクリスティナは最期を看取るための付き添いを志願した。クリスティナは母の理不尽な扱いに対する憤りを吐露するが、フェリシタは「誰も損をしない道に落ち着いただけ」と穏やかに述べた。
ヤコバを看取ったクリスティナはリコルダティーの元へ赴き、ベネデッタの聖痕は自作自演だと告解した。彼女は「ベネデッタはガラスを使い、自分で頭に傷を付けた」と主張し、その現場を目撃したと偽証した。一方、ベネデッタはバルトロメアとキスを交わし、性的関係を持った。翌朝、リコルダティーはクリスティナに対し、修道女たちの前で心の葛藤を話すよう要求した。クリスティナは昨晩の告解と同じ内容を説明し、フェリシタにも報告したことを話した。
フェリシタはリコルダティーから質問を受け、クリスティナは現場を目撃していないと証言した。ベネデッタは激怒し、「悪魔の仕業だ。罰を与えよ」と口にする。クリスティナはリコルダティーの命令を受けて服を脱ぎ、泣きながら自分の体を何度も鞭で打ち据えた。その夜、バルトロメアはベネデッタのマリア像をディルドに作り替え、彼女に見せた。ベネデッタは喜び、それを自分の陰部に挿入させて快楽に悶えた。その様子を、院長室の覗き穴からフェリシタが見ていた。
修道院の上に彗星が出現し、ベネデッタたちは外へ出て眺めた。クリスティナは修道院の屋根に上がり、飛び降り自殺した。フェリシタが駆け寄って嘆いていると、ベネデッタは「魂を神に取り成すために手を置きます」と声を掛けた。自殺した者を天国へ送るための対応だと彼女は説明するが、フェリシタは「娘に触らないで」と声を荒らげた。彼女はベネデッタに掴み掛かり、周囲の面々に引き離された。彼女はベネデッタを睨み付け、「薄汚い売女め」と罵った。
フェリシタはジリオーリ教皇大使に訴え出るため、フィレンツェに向かった。それを知ったバルトロメアは焦るが、ベネデッタは落ち着き払っていた。「頭の傷は自作自演だと思ってるんでしょ?」と彼女が問い掛けると、バルトロメアは「そうなんでしょ」と返答を求めた。ベネデッタは「分からない。全ては神の行い。私は道具に過ぎない。この体はキリストの物」と述べ、「この関係を告げ口されるのが怖いのね。神の愛に守られた物に恥など無い」と述べた。
ベネデッタは股を大きく開いて陰部を見せ付け、「胸を見せて」とバルトロメアに指示する。彼女は急に泣き出して祈りを捧げ、「ああ、イエス様。お墓を掘らないと」と言い出した。一方、フェリシタはフィレンツェに到着し、ジリオーリと面会してベネデッタの罪を訴えた。彼女はジリオーリに、ペシアへ来て確認するよう要請した。ベネデッタはペストを恐れる市民に対し、「この町にペストは来ない。花嫁である私にキリストが約束してくれた」と宣言した。彼女は兵士たちに「町の門を閉めて誰も中に入れないで」と要求し、神の御意思だと告げて従わせた…。監督はポール・ヴァーホーヴェン、原案はジュディス・C・ブラウン、脚本はデヴィッド・バーク&ポール・ヴァーホーヴェン、製作はサイード・ベン・サイード&ミヒェル・メルクト&ジェローム・セドゥー、製作総指揮はコンチータ・アイロルディー、共同製作はパトリック・ヴァンデンボッシュ&ジェローム・デ・ベテューヌ&ファブリス・デルヴィル&クリストフ・トゥールモンド&アーノルド・ヘスレンフィールド&フランス・ヴァン・ゲステル&ローレット・シリングス&テウン・ヒルテ&アルダヴァン・サファイー、製作協力はケヴィン・シュネヴァイス&ヨープ・テル・ブルフ&カテリナ・メルクト、撮影はジャンヌ・ラポワリー、美術はカーチャ・ヴィシュコフ、編集はヨープ・テル・ブルフ、衣装はピエール=ジャン・ラロック、音楽はアン・ダッドリー。
出演はヴィルジニー・エフィラ、シャーロット・ランプリング、ダフネ・パタキア、ランベール・ウィルソン、クロティルド・クロー、オリヴィエ・ラブルダン、ルイーズ・シュヴィヨット、エルヴェ・ピエール、ギレーヌ・ロンデス、デヴィッド・クラヴェル、ガエル・ジャンテ、ジュスティーヌ・バシュレ、ローリアンヌ・リケ、エレナ・プロンカ、エロイーズ・ブレスク、ジョナサン・クジニエ、ヴィンシアン・ミレルー、ジェローム・シャパット、エルワン・リバール、ニコラス・ベギノット、ペロ・ラディチッチ他。
ジュディス・C・ブラウンのノンフィクション『ルネサンス修道女物語:聖と性のミクロストリア』を基にした作品。
監督は『ブラックブック』『エル ELLE』のポール・ヴァーホーヴェン。
脚本は『エル ELLE』のデヴィッド・バークとポール・ヴァーホーヴェンによる共同。
ベネデッタをヴィルジニー・エフィラ、フェリシタをシャーロット・ランプリング、バルトロメアをダフネ・パタキア、ジリオーリをランベール・ウィルソン、ミディアをクロティルド・クロー、アルフォンソをオリヴィエ・ラブルダン、クリスティナをルイーズ・シュヴィヨット、リコルダティーをエルヴェ・ピエールが演じている。さすがはポール・ヴァーホーヴェン、年老いても全くブレずに下品で悪趣味な映画を作り上げた。
修道院を舞台にして、表面的には高尚で芸術的な映画の雰囲気を醸し出している。しかし実際にやっていることは、ザックリ言うと『ショーガール』と大して変わらない。一言で言うならば、「エログロ」である。
しかも、ポール・ヴァーホーヴェンがキリスト教に否定的なのか、無神論者なのかというと、そうではない。彼はキリスト教の研究会に入っているような人なのだ。
それでエログロのナンスプロイテーション映画を作っちゃう辺りが、ポール・ヴァーホーヴェンという人物なのである。ベネデッタは何度もビジョンを見るが、その内容はハッキリとした形で欲にまみれており、「聖なる幻視」とは到底言い難い。
「聖」ではなく、「性」のビジョンなのだ。
キリストに対しても、ずっとベネデッタはエロいことばかり考えている。だから彼女はビジョンの中でキスされたり、レイプされそうになったりしている。
キリストと精神的に繋がろうとしているんじゃなくて、肉体的に繋がりたいのだ。自分の欲を満たすことばかり考えているのだ。ベネデッタはビジョンの真偽を確かめる方法をリコルダティー神父に質問し、痛みが唯一の道だと言われている。すると彼女は、なぜかバルトロメアが悪くない出来事で批判し、熱湯の中から糸巻を回収するよう命令する。
なんで自分がビジョンの真偽を確かめるために、バルトロメアに痛みを与えるというトンチキな方法を取るのか。メチャクチャである。
強引に解釈するならば、「バルトロメアに神の道を教えるため」ってことだろうか。
ただ、それだと「ビジョンの真偽を確かめる方法をリコルダティー神父に質問する」という行動から完全に外れちゃってるので、どっちにしてもトンチキだ。ひょっとするとベネデッタも最初の内は、本当に聖なるビジョンを見ていたのかもしれない。しかし少なくとも途中からは、彼女にとって都合のいいビジョンばかりを見るようになっている。
観客に対してビジョンの内容を見せているってことは、「本当は何も見ていないのに、ベネデッタがビジョンを見たと主張している」というシンプルな嘘つきではない設定と解釈していいだろう。「自分はキリストの花嫁に選ばれた」という思い込みで、妄想をビジョンだと信じているってことだろう。
自分が超能力者だと信じ込んでいるとか、宇宙人と交信していると思い込んでいるとか、そういうのと同じ類だ。
フェリシタが口にした「狂女」という端的な言葉で評してもいいだろう。ただしベネデッタは思い込みで妄想に浸っているだけじゃなくて、完全に意図を持って行動することもある。
例えば頭に傷を付けて茨の冠による傷だと見せ掛けるのは、明らかに聖痕だと主張するための策略だ。また、こちらはボカしてあるが、そもそも聖痕だと主張する体の傷にしても、自身で付けた可能性がある。
ただ、そういう狡猾な策略が見えても、キャラの整合性が取れないわけではない。
狂った思想に毒された人間も、その思想を実現するために策を講じることはある。例えばカルト宗教なんかも、そういうことをやるよね。クリスティナが自害すると、フェリシタはベネデッタに激怒して激しく罵る。だけど、クリスティナを自殺に追い込んだのはベネデッタだけじゃなくて、フェリシタにも原因がある。
むしろ自殺に直結する行動を取ったのは、フェリシタと言ってもいいぐらいだ。フェリシタはリコルダティーから質問を受けた時、娘を守ろうとせず、冷たく突き放すような対応を取っているのだ。
そりゃあ「偽証は大罪」ってことはあるかもしれないが、何の迷いも見せず、堂々たる態度で「娘は嘘つき」と告白しているわけで。
それは母親として、あまりにも酷すぎるんじゃないかと。そんな対応を取ったら、クリスティナがどんな酷い目に遭わされるのかは知っているはずで。
しかも、クリスティナが泣きながら自分の体で鞭で何度も打ち据える時にも、フェリシタは済まなそうな様子を微塵も見せていない。そして鞭打ちの罰を受けたクリスティナに対し、後からフォローを入れることも無い。
それで放置していたらクリスティナが自殺したわけだから、それでベネデッタを「お前が悪い」と責めるのは、どうにも引っ掛かる。その前に、まずは自分を責めるべきじゃないかと言いたくなるわ。
ここって本来は「クリスティナがベネデッタを追い落とそうとして自殺に追い込まれた」というエピソードのはずなんだけど、それよりも「フェリシタに問題がある」ってことを強く感じてしまうんだよね。ベネデッタの証言が全て嘘だったのかどうか、この映画ではハッキリさせていない。
しかし、どちらかと言えば「本当にビジョンを見てキリストの言葉を聞いていた」という形で描いている。
実際、ベネデッタの指示に従っていれば、ペシアの町にペストが入り込むことは無かった。彼女が感染したフェリシタを懐柔して市民を焚き付け、蜂起させたことによって、町はペストの大流行かを免れたことになっている。
ただ、市民を蜂起させるのは、自分が火あぶりを逃れて脱出するための策略なんだよね。決して市民をペストから救うため、町を守るための行動ではない。ともかく、この映画だと「ベネデッタはエロいことばっかり考えて嘘もついているけど、それが何か?」ってことになっている。
ビジョンを見ているのは確かなので、性欲にまみれていても別にいいじゃねえかってことだね。どうせ教会も聖職者も、欺瞞や腐敗だらけなのだ。
粗筋で触れたように、アルフォンソは巡礼者の金目当てでベネデッタを聖女に仕立て上げようと目論んでいる。明確にはされていないが、ジリオーリも売春宿に通っていたことが示唆されている。
そんな風に薄汚れた宗教界において、「エロエロだけど聖女」であるベネデッタは、充分に立派な人物じゃないのかってことだね。(観賞日:2024年12月25日)