『ベートーベン2』:1993、アメリカ

ニュートン家は父ジョージ、母アリス、長女ライス、長男テッド、次女エミリーの5人家族。セントバーナード犬のベートーベンも、すっかり家族の一員となっている。ジョージとアリスは新商品の消臭剤を売ろうと懸命だが、銀行からは家を担保にすれば金を出すと言われる。ライスは、同級生のテイラーに熱を上げている。
家族の留守中、ベートーベンは外に出た。公園に出掛けたベートーベンは、雌のセントバーナード犬ミッシーに出会う。ミッシーを連れていた男性グリロは、別れた妻のレジーナから慰謝料に5万ドルを要求され、裁判を起こされている。
そこへ、レジーナが情夫のフロイドと共に現れる。レジーナはミッシーを連れ去り、返して欲しければ5万ドルを払えとグリロに言い放つ。ミッシーに一目惚れしたベートーベンは、レジーナの車を追い掛ける。そしてベートーベンは、ミッシーを密かに連れ出した。
それから10週間後、ベートーベンが毎日のように出掛けることに気付いたテッドとエミリーは、恋人が出来たのだろうと考える。ベートーベンを尾行したテッドとエミリーは、ミッシーの元に辿り着いた。そこには、4匹の子犬の姿もあった。
そこは、レジーナのマンションの地下倉庫だった。管理人からミッシーがいると聞かされたレジーナは、倉庫へ向かう。テッドとエミリーはベートーベンと共に、慌てて身を隠す。レジーナはミッシーだけを捕まえ、4匹の子犬は放置して戻って行った。
テッドとエミリーは、4匹の子犬を箱に隠して連れ帰ることにした。一方、管理人から子犬が金になると聞かされたレジーナは引き返すが、既に子犬の姿は消えている。すれ違ったテッド達が連れて行ったことに気付いたレジーナは、必ず奪い返すと誓った。
テッドとエミリーは自宅の物置に子犬を隠し、ライスだけに事実を伝えた。3人は両親に内緒で、子犬達の世話を始めた。だが、しばらくしてアリスに知られ、さらにジョージにもバレてしまう。子犬を飼うことに大反対のジョージだが、結局は承諾することになった。
ライス達は、4匹の子犬にドリー、チャイコフスキー、チャビー、モーと名付けた。ニュートン家は6匹の犬を連れて、湖畔のコテージへ出掛けた。ライスはテイラーの別荘に行こうとするが、途中で出会ったセスにも惹かれる。楽しいバカンスが続く中、近くの別荘に泊まっていたレジーナとフロイドが4匹の子犬を発見する…。

監督はロッド・ダニエル、キャラクター創作はエドモンド・ダンテス&エイミー・ホールデン・ジョーンズ、脚本はレン・ブラム、製作はマイケル・C・グロス&ジョー・メジャック、共同製作はゴードン・ウェッブ、製作協力はシェルドン・カーン、製作総指揮はアイヴァン・ライトマン、撮影はビル・バトラー、編集はシェルドン・カーン&ウィリアム・D・ゴーディーン、美術はローレンス・ミラー、衣装はエイプリル・フェリー、音楽はランディー・エデルマン。
出演はチャールズ・グローディン、ボニー・ハント、ニコール・トム、クリストファー・カスティル、サラ・ローズ・カー、デビ・メイザー、クリス・ペン、アシュレイ・ハミルトン、ダニー・マスターソン、モーリー・チェイキン、キャサリン・ライトマン、ヘザー・マッコーム、スコット・ウォーラ、ジェフ・コーリー、ヴァージニア・ケイパーズ、デヴォン・ガンマーサル、ジェイソン・パーキンス他。


1992年の作品『ベートーベン』の続編。スタッフが大幅に入れ替わり、監督もブライアン・レヴァントからロッド・ダニエルにバトンタッチ。ロッド・ダニエルは、刑事と犬のコンビが活躍する映画『K−9 友情に輝く星』を1988年に撮っている。
キャストに関しては、父チャールズ・グローディンや母ボニー・ハントを始めとするニュートン家の面々は前作から変わらず。新しくレジーナ役のデビ・メイザー、フロイド役のクリス・ペン、アンクレジットだがブリロ役のケヴィン・ダンらが加わっている。

序盤でベートーベンがミッシーと出会い、次のシーンではレジーナが現れてミッシーを連れ去り、ベートーベンが追い掛けて連れ出す。かなり展開としては早い。ベートーベンとミッシーがじゃれ合うような時間を与えず、一気に話を進めてしまう。しかし、この映画は犬を見せることが目的だと考えると、あまり賢明なやり方とは思えない。
そこでは、しばらくベートーベンとミッシーがデートを楽しむ時間を与えておきたい。出来れば、ニュートン家とミッシー、グリロを知り合いにさせておきたいところだ。ベートーベンがミッシーを連れ出した後で街をデートる場面があるが、ここに人間を絡ませたいし。

ベートーベンがミッシーを連れ出すシークエンスでも、ベートーベンが巧みに隙を見て連れ出す部分を見せることも無ければ、レジーナが事実に気付いてヒステリックに反応することもない。あっさりと連れ出して、あっさりと10週間後に飛んでしまう。
最初にベートーベンがミッシーを連れ出すが、次にミッシーが連行された後は、探すこともなく普通に過ごしている。まあ探そうとしても無理だろうが、ちょっとヘンな感じがする。ようするに最初に連れ出したのが間違いで、構成としておかしいということだ。

序盤では、ライスの恋、ジョージの仕事、テッドが野球チームでダメ扱いされていること、そういった各人のサブストーリーが描かれる。どうだっていい時間稼ぎにしか思えないが、後でベートーベンがに絡んでくるのであれば構わない。
しかし、ちゃんと絡むのはライスの話だけで、ジョージやテッドの話はフォローが全く無い。それならば、それぞれバラバラのドラマを描くよりも、一緒になってグリロやミッシーと絡めてストーリーを作っていった方がいいだろう。そういうことを考えても、グリロが最初と最後しか登場しないのは、話を作る上で苦しいのではないだろうか。

ライス達が子犬の世話をする下りに、それほど面白さはない。そこで子犬の愛くるしさではなく、ライス達にスポットを当てているし。あと、ジョージが知ってから反対するのも、あまり面白味が無い。結局、すぐに賛成しているのだし。それなら、すぐバレた方がいい。それと、反対すると思っていたら賛成した方が面白いだろう。
たまに、何の意味も無く犬の姿がインサートされるポイントがある。それぐらいしないと、犬が活躍したり暴れたりするシーンが少ないのだ。特に旅行に出掛けた後は、残り約15分でレジーナが子犬を見つけるまで、ほとんど犬がいる意味が無い。せっかく場所を変えても、ライスの恋愛とか、まるで犬と無関係なことを描いてしまう。

何のために犬がいるのか、何のために『ベートーベン2』というタイトルなのか、それを考えないシナリオになっている。ベートーベンが関わらない話が大半を占めるのであれば、『ベートーベン2』である意味が無い。
ニュートン家と犬の絆、もしくはベートーベンとミッシー、子犬達の絆を軸に展開すればいいのに、明らかに描くポイントを外している。

 

*ポンコツ映画愛護協会