『バットマン』:1966、アメリカ

ゴッサムシティに暮らす億万長者ウェイン・ブルースは相棒ディック・グレイソンとドライブ中、警察からの連絡を受けて大邸宅へと戻った。ビッグベン社の社長シュミドラップと彼の発明品を狙う悪党が、シージャックを企んでいるというのだ。
ウェインとディックはバットマンとロビンに変身し、海へと向かった。だが、船は目の前で消滅し、バットマンは鮫に襲われる。バットマンが鮫を振り落とすと、鮫は爆発した。
バットマンとロビンは、警察のゴードン総監とオハラ署長から、手配中の危険人物の情報を得る。最も危険とされている4人は、キャットウーマン、ジョーカー、ペンギン、リドラーだ。バットマンは、その4人が手を組んでいるのではないかと推測する。
バットマンとロビンは調査のため、再び海へと向かった。2人は潜水艦で待ち構えていたジョーカー達に魚雷で狙われるが、何とか脱出した。キャットウーマン達は、バットマンを誘い出すために金持ちを誘拐しようと考え、ターゲットにウェインを選んだ。
キャットウーマンはロシアの記者キトカとなって、ウェインに接触した。ウェインはキトカから、リドラーのなぞなぞが届けられたと聞かされる。ウェインはリドラーのなぞなぞを解き、キトカが命を狙われていると考える。ウィンはキトカに夢中になってしまい、ジョーカー達に誘拐されるが、監禁されたアジトからの脱出に成功した。
ペンギンは、シュミドラップの発明品である水分吸収装置を使い、手下を粉末にした。彼はシュミドラップに変装し、バットマンとロビンに接触する。バットマン達は、相手がペンギンだと気付き、正体を暴くために秘密基地に連れて行く。ペンギンは粉末に水を掛けて手下を元に戻そうとするが、使った水が重水だったため、失敗に終わる。
キャットウーマン達は、各国首脳が集まる安全保障会議を狙っていた。リドラーのなぞなぞを解いたバットマンとロビンは、会議が開かれる世界連邦ビルへと向かう。キャットウーマン達は各国首脳を粉末にして誘拐するが、バットマンとロビンが後を追う…。

監督はレスリー・H・マーティンソン、原作はボブ・ケイン、脚本はロレンツォ・センプルJr.、製作はウィリアム・ドージア、撮影はハワード・シュワルツ、編集はハリー・W・ガースタッド、美術はサージ・クリッツマン&ジャック・マーティン・スミス、音楽はネルソン・リドル。
出演はアダム・ウェスト、バート・ウォード、リー・メリウェザー、シーザー・ロメロ、バージェス・メレディス、フランク・ゴーシン、アラン・ネイピア、ニール・ハミルトン、スタッフォード・レップ、マッジ・ブレイク、レジナルド・デニー、ミルトン・フロム、ギル・パーキンス、ディック・クロケット、ジョージ・サワヤ他。


人気コミックを映像化した同名TVシリーズの劇場版。
ビデオタイトルは『バットマン/オリジナル・ムービー』。
バットマンの映画化は今回が初めてではなく、1943年、1949年、1964年に、それぞれ別のスタッフ&キャストによって映画化されている。
今回の劇場版は、バットマン役のアダム・ウェスト、ロビン役のバート・ウォードの他、執事アルフレッド、ゴードン総監、オハラ署長、ハリエット叔母さんのキャストはTV版と同じ。他に、ミスキャットをリー・メリウェザー、ジョーカーをシーザー・ロメロ、ペンギンをバージェス・メレディス、ナゾラーをフランク・ゴーシンが演じている。

おそらく『バットマン』と言って多くの人が最初に思い浮かべるのは、ティム・バートン監督の作品だろう。あの作品は、ダークな世界観のヒーロー映画だった。しかし、この映画は、ノーテンキで、ダークのダの字も無い。ヒーロー・コメディーと言った方がいいかもしれない。
とにかく、出てくる連中は揃ってバカ。昔の日本語吹き替え版だと、そのバカバカしいテイストが、さらにアップする。リドラーは「ナゾラー」だし、バット・ラダーは「バット梯子」と訳されている。妙な翻訳だけど、そっちの方が合っている気もしたりして。

バットマンとロビンは、全身タイツに毛の生えたようなコスチュームで、愉快に活躍する。バットコプターで海に向かったバットマン、ヘリを自動操縦した後、バット梯子で下へと降りる。操縦席のロビンは、船に近づくように高度を変える。おいおい、バットマンよ、操縦席にロビンが残るのなら、自動操縦にした意味が無いような気が。
さて、梯子で海に足を突っ込んだバットマン、足を上げるとサメが食い付いている。もちろん、作り物なのはバレバレだ。ヘリには都合良く、サメ退治用スプレーが置いてある。他にクジラ用、バラクーダ用、マンタレイ用のスプレーが置いてあるが、違いは何だろう。というか、用途が狭すぎ。例えばシャチに襲われたら、どうするつもりなのよ。

バットマン&ロビンにゴードン総監とオハラ署長は、4人の危険人物の内の誰が犯人なのかを考える。「サメは魚だから、犯人はペンギンか」「いや、魚と言えば猫だから、キャットウーマンかも」「サメが爆発したのは手品のようだから、ジョーカーだ」「まるで謎だらけの事件だから、リドラーでは」などと、みんなでマジに相談する。
海で潜水艦の魚雷に狙われたバットマンとロビン、エネルギー逆転装置で攻撃を防ぐが、途中でバッテリーが上がってしまう。ちゃんと充電しておけよ。でも、そんなピンチからは、たまたまイルカが魚雷に突っ込んでくれたおかげで脱出する。おいおい、お前らヒーローだろうが。そんなラッキーに頼らず、自力で脱出しなくていいのかよ。

キトカに化けたキャットウーマンの誘惑を受けたウェインは、すぐにコロッといかれてしまう。「アパートに行ってもいいか」と、スケベ根性丸出しである。で、口説きモードに入っていたら、ジョーカー達にボコボコにされて誘拐されるという情けなさ。でも、キャットウーマン達も情けないので、せっかく捕まえたウェインに、あっさりと逃げられる。
悪党達のアジトに潜入したバットマン、仕掛けられていた爆弾を見つける。人のいない場所に爆弾を捨てようとするが、行く所には必ず人が現れてしまい、右往左往するバットマン。爆弾を掲げたままバタバタと走る様子は、見事にカッコ悪い。

バットマンの秘密基地にある機械には、それぞれプレートがあって、そこに機械の名前が書いてある。で、なぜか飲料水の機械まで置いてある。ペンギンの変装を見破ったバットマン、「正体を暴くため」と言って、秘密基地へ連れて来る。いやいや、わざわざ敵を秘密基地に案内してどうすんのよ。アンタのオツムは空っぽなのかと。
バットマンとロビンは、バットコプターで世界連邦ビルへ向かうが、墜落する。でも、都合良くマット売り場に落ちたので、助かる。そしてバットマン、「今日は渋滞だ」という理由で車は使わず、「足には自信がある」と言って、なんと走って世界連邦ビルへ向かう。

バットマンとロビンは粉末にされた各国首脳を助けるが、シュミドラップがつまづいて粉末の入った試験管を倒し、おまけにクシャミをしたので粉末が散らばって混ざってしまう。困ったバットマンとロビン、遠心分離機で元に戻そうとする。コスチュームの上から白衣を着てマスクをしたバットマンとロビンの姿は、なかなか滑稽である。
さて、分離した粉末に水を掛けて、各国首脳の姿は元に戻った。しかし、アメリカの首脳がフランス語を喋ったり、日本の首脳がイタリア語を喋ったりする。
そこでバットマン、「各国の心が混ざり合えば、人類に対する最大のプレゼントだ」と冷静に言い放ち、「任務は終わった」と告げて去って行く。
おいおい、逃げるのかよ。

 

*ポンコツ映画愛護協会