『バットマン・フォーエヴァー』:1995、アメリカ

ゴッサム・シティーの検事ハーヴェイ・デントは法廷で硫酸をかけられ、怪人トゥー・フェイスに変貌した。トゥー・フェイスはバットマンに強い憎しみを抱き、彼を呼び出すために高層ビルで暴れる。ゴードン警察長官や犯罪心理学者チェイスが現場で見守る中、大富豪ブルース・ウェインが正義の味方バットマンとなって駆け付け、大惨事を未然に防いだ。
フルースの会社には、彼を崇拝するエドワード・ニグマという研究員がいた。ニグマは脳にダイレクトにイメージを投射する装置を発明するが、上司のフレッド・スティックリーから研究中止を命じられる。工場を視察したブルースはニグマから装置を見せられるが、マインド・コントロールに繋がる危険な装置だと一蹴した。ブルースに怒りを覚えたニグマは、スティックリーを実験台にして彼の知識を全て吸い取った。ニグマはスティックリーを殺害し、自殺に見せ掛けた。
ブルースはチェイスに心を惹かれ、彼女を誘ってサーカス見物に出掛けた。そこにトゥー・フェイスの一味が現れ、爆弾を仕掛けた。空中ブランコ乗りのグレイソン一家が行動を起こし、人々を救った。だが、息子のディックを残し、残る家族は死亡した。責任を感じたブルースは、復讐心を燃やすディックを引き取ることにした。
トゥー・フェイスが愛人シュガーとスパイスを伴って次の作戦を練っている所へ、怪人リドラーに変身したニグマが現れた。リドラーはトゥー・フェイスに「バットマン退治の協力をする」と持ち掛け、自身の装置への出資を求めた。ニグマは会社を設立して装置を発売し、大ヒットする。しかし、それを使った人々の知識は、全て秘密裏にリドラーが吸い取っているのだった。
ディックはブルースの屋敷に秘密の部屋があることを知り、隙を見て忍び込んだ。そこでディックはバット・モービルを発見し、ブルースがバットマンだと知る。ディックはバットマンの相棒として戦おうとするが、ブルースは「復讐は虚しいだけだ」と承知しない。しかしディックはアルフレッドの協力で「ロビン」となり、バットマンと共にトゥー・フェイスやリドラーに立ち向かう…。

監督はジョエル・シューマッカー、キャラクター創作はボブ・ケイン、原案はリー・バチェラー&ジャネット・スコット・バチェラー、脚本はリー・バチェラー&ジャネット・スコット・バチェラー&アキヴァ・ゴールズマン、製作はティム・バートン&ピーター・マクレガー=スコット、製作総指揮はベンジャミン・メルニカー&マイケル・E・ウスラン、撮影はスティーヴン・ゴールドブラット、編集はデニス・ヴァークラー、美術はバーバラ・リング、衣装はボブ・リングウッド&イングリッド・ファーリン、音楽はエリオット・ゴールデンサール。
出演はヴァル・キルマー、トミー・リー・ジョーンズ、ジム・キャリー、ニコール・キッドマン、クリス・オドネル、マイケル・ガフ、パット・ヒングル、ドリュー・バリモア、デビ・メイザー、エリザベス・サンダース、ルネ・オーベルジョノワ、ジョー・グリファシ、フィリップ・ムーン、ジェシカ・タック、デニス・パラディノ、キンバリー・スコット、マイケル・ポール・チェン、ジョン・ファヴロー、グレッグ・ローレン、ラムゼイ・エリス他。


DCコミックスの人気漫画を基にしたシリーズの第3作。
1作目と2作目のメガホンを執ったティム・バートン監督が降板し(製作には携わっている)、さらにバットマン役のマイケル・キートンも降板。前作から引き続いて出演する主要キャストは、アルフレッド役のマイケル・ガフと、ゴードン警察長官役のバット・ヒングルだけだ。
新たな監督候補にはサム・ライミなどの名前が挙がったが、結局はジョエル・シューマッカーという無難な選択に落ち着いた。バットマン役には、トム・ハンクスやアレック・ボールドウィンの名前も候補として挙がったが、ヴァル・キルマーが演じることに決まった。

チェイス役は、まだマイケル・キートンが降板を決める前はレネ・ルッソの起用が確定的になっていたが、バットマン役者の交代に伴ってニコール・キッドマンに変更された。
リドラー役は、1作目でジョーカー役の候補にもなったロビン・ウィリアムズや、ブラッド・ドゥーリフなどが候補に挙がる中、ジム・キャリーに決定。トゥー・フェイスはハーヴェイ・デントが変身した姿だが、そのデントを1作目で演じていたのはビリー・ディー・ウィリアムズ。しかし、今回の作品でトゥー・フェイスを演じるのはトミー・リー・ジョーンズだ。ロビン役はレオナルド・ディカプリオとの争いの結果、クリス・オドネルが獲得した(スタント・ダブルは元五輪選手ミッチェル・ゲイロード)。
他に、シュガーをドリュー・バリモア、スパイスをデビ・メイザー、記者のゴシップ・ガーティーを原作者ボブ・ケインの未亡人エリザベス・サンダース、スティックリーをエド・ベグリーJr.、ギャングのリーダーをドン・“ドラゴン”・ウィルソンが演じている。

まだティム・バートンが降板する前、彼が3作目で登場させようとしていた怪人はリドラーだけだった。しかし新しい監督&脚本になった時、新たな怪人トゥー・フェイスが加わっていた。
だが、これは失敗だったと断言していい。なぜなら、トゥー・フェイスの扱いは軽く、そのキャラクター造形も雑になっているからだ。だったら、最初から出さない方がいい。
まずデントがトゥー・フェイスになった経緯が、ザックリと省略されている。そこからして大きなマイナスを抱えている。さらには、何のポリシーや美学も無い。ただデタラメに暴れているだけだ。二重人格だからトゥー・フェイスのはずなのだが、一面性しか見せない。しかも、トゥー・フェイスもリドラーもケタケタと笑うキャラで、ちょっと被っている。

なぜトゥー・フェイスがバットマンを狙うのか、その理由も全く分からない。目的が不鮮明という意味では前作のペンギンやキャットウーマンだって似たようなモノだったが、その分、ティム・バートンには強い作家性があった。しかしジョエル・シューマッカーという人は、いわゆる職人監督なのである。しかも、職人としての資質が決して高いとは言えない。
リドラーはブルースを恨んでおり、トゥー・フェイスはバットマンを憎んでいる。だから本来ならば、ブルースがバットマンだと判明するまで、2人の目的や利害は一致しないはずなのだ。しかし、そこを曖昧にしたまま、何となく2人が協力している。そこを乗り越えるための弊害として、トゥー・フェイスが意味不明な男になってしまっている。

とにかくキャラクターが多く、インフレのような状態が生じている。おのずと、1人1人の描写は薄いものになってしまう。シュガーとスパイスなどは、「ただ出てきただけ」「無駄に名前のある女優を起用しただけ」という感じ。ドリュー・バリモアとデビ・メイザーは、あまりに扱いが小さいのでカメオ出演なのかと最初は思ったが、そういうことでもないようだ。
「ロビン誕生」という物語が含まれているのだから、本来ならば彼の扱いを大きくしなければならない。しかし前述したような問題があって色んなところに目配りするため、中途半端な扱いになっている。おまけに、家族を殺されて同情されるべきキャラなのに、浮かれポンチな行動ばかり取るために、ただのバカな甘ちゃん坊やと化している。簡単に敵に捕まってしまうし。

バットマンは、リドラーとトゥー・フェイスが手を組んで暴れ始めても登場しない。ブルースとして、チェイスとのデートを楽しんでいたりする。ではチェイスの扱いが大きいのかというと、そういうわけでもない。ハッキリ言って、彼女は特に必要の無いオマケだ。
1作目がジャック・ニコルソンの映画、2作目がティム・バートンの映画だとすれば、これはジム・キャリーの映画ってことだろう。


第16回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低オリジナル歌曲賞
「Hold Me, Thrill Me, Kiss Me, Kill Me」


第18回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の続編】部門[ジョン・ヴォイト]

 

*ポンコツ映画愛護協会