『バッドボーイズ フォー・ライフ』:2020、アメリカ

マイアミ市警戦術麻薬捜査部隊「TNT」のマイク・ラーリーは相棒のマーカス・バーネットを助手席に乗せ、大量のパトカーや白バイから追われながら猛スピードで車を走らせた。マイクはパトカーの追跡をかわし、総合病院に辿り着いた。2人が病室へ駆け込むと、マーカスの娘であるメーガンが産んだばかりの男児を抱いていた。マーカスの妻のテレサやメーガンの恋人のレジーも、病室に来ていた。マーカスは初孫を抱き、感動に包まれた。
メキシコのサンタマリア刑務所では、女囚のイサベル・アレタスが隠し持っていた包丁で刑務官を刺した。彼女は仲間の囚人たちに周りを包囲してもらい、刑務官に化けた。駆け付けた看守たちは全く気付かず、イサベルを救急車に乗せた。イサベルの息子であるアルマンドは手下たちと共に救急車を襲撃し、護衛の刑務官を始末した。メキシコシティーに移動したイサベルは、アルマンドに「父さんは収監される前に何百万ドルも隠した。その金を取り戻し、復讐を果たす」と告げて金の隠し場所と復讐相手を教えた。イサベルが復讐を目論む対象には、マイクも含まれていた。
アルマンドはマイアミ港を訪れ、売人のタグリンたちに協力させて父が隠した金を手に入れる。タグリンたちが銃を向けて裏切ろうとすると、アルマンドは手下たちと共に始末する。彼は生き残ったタグリンの手下のズウェイローに、「俺の一家が街を仕切る。俺がボスだ」と宣言した。マーカスはマイクやハワード警部たちにバーで祝賀会を開いてもらい、酒を飲む。マイクはマーカスから「もう警察を辞める。孫の成長を見ていたい」と言われ、「俺は死ぬまで続ける」と告げた。
バーにはマイクの元恋人で特殊エリート部隊(AMMO)のリタも来ており、マーカスを祝福して去った。マイクはマーカスから「何人の女を逃がしてる?一度でも人を愛したこととがあるのか?」と呆れられ、「ずっと昔に一度だけ」と答えた。マーカスはマイクに体力勝負を持ち掛け、2人は店を出て徒競走で対決することにした。走り出した直後、フルフェイスでバイクに乗った男がマイクを撃って逃走した。マイクは病院に搬送され、緊急手術を受けた。
AMMOのリタやケリー、ドーン、レイフたちはハワードの指示を受け、捜査を開始した。AMMOは使用された銃弾を調べ、P90のカスタム弾であることを突き止めた。イサベルはマイクを撃ったアルマンドに連絡を入れ、「最後に殺せと言った」と勝手な行動を諌めた。アルマンドは全く悪びれず、自身の犯行を誇った。彼は同じ格好でバイクに乗り、元検事のヴァーガス、麻薬取締局のウェバー、判事のソレンソンを次々に射殺した。AMMOの捜査により、同一犯の犯行であることが確定した。
半年後、回復したマイクはメーガンとレジーの結婚式に出席した。彼はAMMOをガキ呼ばわりし、マーカスと2人で捜査を担当させてほしいとハワードに申し入れた。しかしハワードは「自分の事件は担当できない」と却下し、AMMOに任せるよう告げた。マーカスもマイクに協力することを拒み、「辞めると言っただろ」と告げた。マイクが反論すると、マーカスは「お前が動くと誰かが死ぬ」と批判した。マイクが生きていると知ったアルマンドは、麻薬王だった父のベニートを思い出す。彼はイサベルと電話で話した後、マイクを襲撃した時の動画をネットにアップした。
リタはマイクの家を訪れ、自分たちに任せるよう頼む。しかしマイクは裏社会と通じている肉屋のマニーを拷問して脅し、P90カスタム弾の売人がブッカー・グラッシだと聞き出した。彼はハワードに報告し、捜査に加えるよう要求した。ハワードは仕方なく、相談役という形で捜査に参加することを了承した。AMMOが車で任務に出掛ける時、マイクも同行した。AMMOは取引の行われる工場を張り込み、ドローンを飛ばす。マイクは突入して一味を逮捕するよう主張するが、リタは「監視だけ」と釘を刺した。
ブッカーがギャングにP90カスタム弾を売り込む様子を見ていたマイクは、「罠だ。ブッカーが殺される」と言う。彼はリタの指示を無視し、工場へ向かう。リタは止むを得ず、ケリーに同行を指示した。リタは「応援が来るまで動かないで」と告げるが、工場で銃撃戦が勃発するとマイクは勝手に撃ち始めた。彼はブッカーを脅して連れ出そうとするが、すぐに逃げられてしまう。マイクは捕まえようとするが、ブッカーは命を落とした。マイクはハワードに叱責されるが、まるで悪びれなかった。
マーカスは情報屋のカーヴァーから電話を受け、「マイクを撃った男に狙われてる。保護してくれ」と要請される。彼はマイクを車に乗せ、カーヴァ―のいるホテルへ向かう。するとカーヴァーは殺害されており、部屋に乗り込んだマイクはアルマンドと格闘になる。マイクはアルマンドの顔を見るが、逃げられてしまった。アルマンドはイサベルとの電話で「殺せたのに。なぜだ?」と憤りを吐露し、「父さんを奪った男を楽は殺さない。もっと苦しめて。それから殺す」と告げられた。
ハワードは娘のキャリーが出場するストリート・バスケの試合観戦にマイクを連れて行き、無茶をするなと忠告した。ハワードは車に戻る時、ビルからの狙撃を受けて死亡した。葬儀に参列したマイクは、マーカスに「お前の言う通りだ。俺が動けば誰かが死ぬ」と口にした。アルマンドは電話でイサベルと話し、「奴が最後だ」と告げた。イサベルは「いいわ。殺して」と言い、ある言葉を言ってから殺すように指示した。マーカスは「これが最後だな」と確認した上で、マイクとのバッドボーイズを復活させた。
マイクとマーカスはブッカーの会計士であるピカンテ・ジェンキンスの家へ乗り込み、帳簿を手に入れようとする。マーカスは穏便に交渉を試みるが、ヤク中のピカンテは全く耳を貸さなかった。マイクがピカンテを攻撃しようとすると、マーカスが内緒で呼んでいたAMMOが駆け付けた。AMMOはピカンテを制圧し、マーカスは不満そうなマイクに「AMMOと組む」と告げた。帳簿の記録はデタラメだったが、AMMOはキーチェーンを入手した。ピカンテのSNSを見たマイクとマーカスは、ズウェイローが絡んでいることを知った。
ズウェイローがクラブ「ジリオン」で誕生日パーティーを開催すると知ったマイクたちは、潜入して乗り込むことにした。リタはマイクに「目的は逮捕。殺傷は禁止」と告げ、実弾ではなくゴム弾を渡した。マイクたちはジリオンでズウェイローを捕まえようとするが、バイクで逃走される。マイクとマーカスは車を飛ばして後を追い、ズウェイローを失神に追い込んだ。彼らはズウェイローを車で連れ去ろうとするが、そこへアルマンドの手下たちが来て包囲する。AMMOも到着して銃撃戦が勃発し、ズウェイローが再び逃亡したため、マイクたちは追跡する。アルマンドはヘリコプターから梯子を出し、ズウェイローを救出しようとする。マイクも梯子を掴み、アルマンドは障害になるズウェイローを射殺した。彼はイサベルに言われた通り、「アスタ・エル・フエゴ」と口にしてからマイクを射殺しようとする。しかし地上からマーカスが発砲して妨害し、マイクは海に飛び降りてAMMOの捜査本部へ戻った…。

監督はアディル&ビラル、原案はピーター・クレイグ&ジョー・カーナハン、脚本はクリス・ブレムナー&ピーター・クレイグ&ジョー・カーナハン、製作はジェリー・ブラッカイマー&ウィル・スミス&ダグ・ベルグラッド、製作総指揮はチャド・オマン&マイク・ステンソン&バリー・ウォルドマン&ジェームズ・ラシター、製作協力はメリッサ・リード、撮影はロブレヒト・ハイファールト、美術はジョン・ビリングトン、編集はピーター・マクナルティー&ダン・レーベンタール、衣装はデイナ・ピンク、VFX監修はアラン・マグレド、音楽はローン・バルフ。
出演はウィル・スミス、マーティン・ローレンス、ヴァネッサ・ハジェンズ、ジョー・パントリアーノ、アレクサンダー・ルドウィグ、チャールズ・メルトン、パオラ・ヌニェス、ケイト・デル・カスティーリョ、ニッキー・ジャム、ジェイコブ・スキピオ、テレサ・ランドル、ハレド・[DJキャレド]・ハレド、ハッピー・アンダーソン、ビアンカ・ベトゥーン、デニス・マクドナルド、マイケル・ベイ、ジゼット・ヴァレンティン、ローズ・ビアンコ、エディリア・メリダ、ジャスミン・ローレンス、シャカイ・オニール、カルロス・ゲレーロ、マッシ・ファーラン、チック・バーンハード、ジェニファー・バッジャー、ジェフ・オーザーズ他。


前作から17年ぶりとなるシリーズ第3作。
ベルギー映画『ギャングスタ』のアディル&ビラルが初めてハリウッド映画を手掛けている。
マイク役のウィル・スミス、マーカス役のマーティン・ローレンス、ハワード役のジョー・パントリアーノ、テレサ役のテレサ・ランドルは、シリーズのレギュラー。メーガン役のビアンカ・ベトゥーンは前作からの続投だが、レジー役はデニス・グリーンからデニス・マクドナルドに交代している。
他に、ケリーをヴァネッサ・ハジェンズ、ドーンをアレクサンダー・ルドウィグ、レイフをチャールズ・メルトン、リタをパオラ・ヌニェス、イサベルをケイト・デル・カスティーリョ、ズウェイ=ローをニッキー・ジャム、アルマンドをジェイコブ・スキピオ、マニーをDJキャレド、ジェンキンズをハッピー・アンダーソンが演じている。

1作目から続いていることだから今さら言っても始まらないんだけど、マイクの身勝手で高慢なキャラが不愉快なんだよなあ。
彼は捜査をAMMOに任せるようハワードやリタに頼まれても、まるで耳を貸さない。
そして彼はマニーを脅してブッカーの情報を聞き出すが、AMMOも既に掴んでいることなので、まるで無意味な行動でしかない。
なので、その情報を知らされたハワードがマイクを捜査に加えるのは、かなり無理のある展開だと感じる。

工場でブッカーが死ぬのは、マイクのせいだ。もちろん激しい銃撃戦が起きているので、マイクが何もしなくてもブッカーが死んだ可能性はある。でも結果として、マイクが動いたことでブッカーが死んでいるのは紛れもない事実だからね。
なのでマイクは何の役にも立っていないわけだが、ハワードから叱責されても彼は全く悪びれない。正当性を主張し、それだけでなくドーンを馬鹿にする。
そういう言動が、ただの傲慢なクズ野郎にしか見えないんだよね。
マイクが勝手なことを繰り返すたびに諌める相棒が近くにいれば、もう少し印象はマシになっていたかもしれない。でも今回はマーカスが引退しているので、マイクだけで行動する時間帯があるんだよね。

このシリーズって表面的には「マイクとマーカスのコンビ」という設定だけど、実質的には「マイクが主人公でマーカスがサポート役」という力関係だった。
それは1作目からだが、この3作目では、さらにマイクの重視が強くなっている。
まあ役者としてのランクを考えると、それも仕方がないのかもしれないけどね。
TVドラマ『相棒』で、タイトルは「相棒」だけど実質的には「右京が主人公で相棒は助手」ってのと似たようなモンだ。

マイクはマーカスから「何人の女を逃がしてる?一度でも人を愛したこととがあるのか?」と呆れられ、「ずっと昔に一度だけ」と答える。
そうなると、1作目のジュリーや2作目のシドはどうなるんだよ。本気の愛じゃなかったってことなのか。
まだジュリーはともかくシドに関しては、マーカスの妹だぞ。相棒の妹と交際していたのに、ただの遊びで本気じゃなかったってことなのかよ。その不誠実さはシャレにならんだろ。
そして、そんなことを言われてマーカスが全く気にしないのも、どういうことなのかと。

マイクが「自分が狙われたから復讐する」という個人的な感情だけで身勝手な行動を繰り返すってのも、まるで乗れない理由になっている。
これが「誰かのために」ってことなら、ある程度は暴走しても許せたり共感したり出来たかもしれないよ。
でもマイクは義侠心や使命感で突っ走っているわけじゃなくて、「俺を狙うなんて許せねえ。絶対にやり返す」と怒っているだけだからね。
殺されそうになった奴が復讐心に燃えるのは当然の感情だけど、それで他人に迷惑を掛けまくっているのはダメだわ。

ハワードが殺されると、そこからは「弔い合戦」という理由が生じる。そして、ここでマイクとマーカスは再びバッドボーイズとして組むことになる。
でも、そこが気持ちの高まりを与えてくれないんだよね。
ハワードが殺されているので、ワクワクが無いのは別にいいのよ。でも、「これが最後か」「最後だ」という会話からのグータッチで再結成ってのを見せてはいるけど、手順として弱いんだよなあ。
もっと燃えさせるための肉付けが欲しいんだよなあ。

アルマンドはハワードを狙撃した後、立て続けにマイクも始末しようと目論む。しかし女性がハワードに駆け寄って障害になると、狙撃を断念する。
でも、そもそもアルマンドはイサベルからの命令を受けており、勝手にマイクを殺しちゃダメなはずで。
なので、そこを「女性を巻き添えにするのを避けるために射殺を断念する」という形にしてあるのは、いかがなものかと。
そこでアルマンドの弱点みたいなモノを見せたつもりかもしれないけど、そういうの要らないし。

リタはジリオンへ乗り込む際、「目的は逮捕。殺傷は禁止」とゴム弾を渡す。でも、ズウェイローに逃げられたのは、決して実弾の使用を禁じたからではない。実弾の有無に関わらず、ただ逃げられているだけだ。
ズウェイローの動きは機敏だけど、そこは単純にマイクたちがボンクラなだけにしか思えない。
どう考えても、綿密に作戦を立てて利口に動いていれば逮捕できたはず。
「カーチェイスから銃撃戦を経て」という展開を作りたいがために、マイク&マーカス&AMMOをボンクラにしているように感じるなあ。

(観賞日:2021年11月23日)


2020年度 HIHOはくさいアワード:第14位

 

*ポンコツ映画愛護協会