『ベイブ 都会へ行く』:1998、オーストラリア&アメリカ

牧羊犬コンテストで優勝した豚のベイブは、飼い主のアーサー・ホゲットと共に牧場に戻ってきた。イベントへの出演以来が次々に舞い込むが、静かな生活を望むアーサーは全て断る。だが、ベイブの不注意からアーサーは大怪我を負ってしまう。
収入が途絶えたことで、農場は銀行に差し押さえられそうになってしまう。アーサーの妻エズメは、夫と農場を守るために、イベントの出演料で借金を返そうと考える。エズメに連れられて、ベイブは都会へと旅立つことになった。
ところが、空港でエズメが麻薬の運び屋と間違われて足止めを食らい、イベント出演には間に合わなくなってしまった。エズメはホテルを探すが、動物を泊めるのは違法ということで、なかなか見つからない。
豚にそっくりな顔の男に紹介されて、エズメは運河沿いのホテルに宿泊することになった。女主人が経営するそのホテルには、動物ばかりが暮らしていた。ベイブは猿や犬にバカにされ、女主人の叔父ファブリーには動物マジックのショーに出演させられる。
エズメは行方不明になったベイブを探して街に出て、警察に捕まってしまった。ファブリーが倒れて病院に運ばれ、女主人も付き添って出て行った。世話をしてくれる人がいなくなり、動物達は腹ペコになってしまった。
猿達が食料を手に入れる手助けをさせられたベイブは、2匹の猛犬に追い掛けられる。しかし、溺れそうになったピット・ブルを助けたことから、ベイブは動物達のリーダーになった。そんな中、姿を現した衛生局員によって、動物達が捕らわれてしまう…。

監督はジョージ・ミラー、脚本はジョージ・ミラー&ジュディ・モリス&マーク・ランプレル、製作はジョージ・ミラー&ダグ・ミッチェル&ビル・ミラー、製作総指揮はバーバラ・ギブス、撮影はアンドリュー・レスニー、編集はジェイ・フリードキン&マーガレット・シクセル、美術はロジャー・フォード、衣装はノーマ・モリソー、アニメーション&視覚効果はリズム&ヒューズ、アニマル・アクションはカール・ルイス・ミラー、音楽はナイジェル・ウェストレイク。
出演はマグダ・ズバンスキー、ジェームズ・クロムウェル、メアリー・ステイン、ミッキー・ルーニー他。声の出演はE・G・デイリー、ダニー・マン、グレン・ヘッドリー、スティーヴン・ライト、ジェームズ・コスモ、ネイサン・クレス、マイルス・ジェフリー、スタンリー・ラルフ・ロス、ルッシ・テイラー、アダム・ゴールドバーグ、エディ・バース、ビル・カピーシ他。


1作目で製作と脚本に携わったジョージ・ミラーが、監督を務めた第2作。
前作の監督だったクリス・ヌーナンはドキュメンタリー出身だったが、ジョージ・ミラーは完全な娯楽映画の人。
というわけで、様相は1作目とは全く違っている。

都会に行くという形にはなっているが、エズメとベイブが到着した場所は、都会というよりも「どこか分からない場所」という感じだ。
だから都会の冷たさよりも、幻想空間の不可思議な雰囲気の方が強く伝わってくる。

前作にあったエッセンスやテイストは、徹底的に排除されている。
例えば、前作ではアーサーとベイブとの絆が描かれたが、今回はアーサーの出番がほとんど無い。
前作の面白さの一端を担ったアーサーを削るというのは、思い切った作戦だ。
だが、失敗だろう。

前作はホノボノとした動物映画だったが、今回はドタバタ・コメディーの匂いが強い。
ただし、脳天気に笑えない雰囲気が漂っている。
どこか冷たい印象を受けるのだ。
ドタバタのシーンでも、突き抜けた明るさを感じないのだ。
しかも、ドタバタの中心に動物が存在しない。

今回は、動物がかなり苛められているという印象がある。
前作でも動物が苛められるシーンが無かったわけではないが、そこはなるべくソフトに処理されていた。
しかし、今回は「ジョージ・ミラーは動物が嫌いなのか?」と思ってしまう状態になっている。

街に出たエズメはチンピラと争いになり、警察に連行されてしまう。
しかし、ベイブはエズメが帰ってこないことに対して何の行動も起こさない。ベイブは全く別の方向で物語を進行させ、終盤までエズメの存在は完全に忘れ去られてしまう。
全体を見ても、幾つかのエピソードが1本のストーリーにまとまらず、バラバラになっている。

とにかく本物も作り物も合わせて、動物達は動きまくっている。
その動きは素晴らしい。
だが、動きを見せることを最優先にしたせいなのか、物語はヘロヘロ。
人間のキャラも死んでいる。
前作とは全く違うものを見せようとして、完全に裏目に出てしまったようだ。


第21回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【誰も要求していなかった続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会