『ファングルフ/月と心臓』:1997、アメリカ
アメリカ人青年アンディ・マクダーモットは、友人のクリス、ブラッドと共に、パリ旅行にやって来た。夜中にエッフェル塔からのバンジー・ジャンプに挑戦しようとしたアンディは、飛び降り自殺を図った美女を救うが、彼女は姿を消してしまった。
彼女に一目惚れしたアンディは、現場に残された紙切れからセラフィーヌという名前と住所を知る。彼女の家に行ったアンディだが、すぐに追い返されそうになる。アンディはしつこく食い下がり、明日の4時にコンサートホールの前で会う約束を取り付けた。
セラフィーヌとデートした夜、アンディはクリスとブラッドと共に、彼女の家に出向いた。しかし家から出て来たのは彼女ではなく、クロードという男だった。クロードはセラフィーヌが留守だと告げ、3人をクラブ・デ・ラ・ムーンでのパーティーに来るよう誘った。
セラフィーヌもパーティーに来ると言われ、アンディはクリスとブラッドを連れてクラブに行った。だが、それはクロードが率いる狼人間の集会で、彼らは参加した人間の心臓を食べようと企んでいた。クロード達が狼人間に変身し、会場はパニックに陥った。
狼人間に噛まれながらも逃げ延びたアンディは、気が付くとセラフィーヌの家にいた。アンディはセラフィーヌから、彼女が狼人間であり、噛まれたアンディもやがて狼人間になることを告げる。それを防ぐには、噛んだ狼人間の心臓を食べるしかないという…。監督&製作総指揮はアンソニー・ウォラー、脚本はティム・バーンズ&トム・スターン&アンソニー・ウォラー、製作は リチャード・クラウス、共同製作はアレクサンダー・ブックマン、撮影はエゴン・ウェルディン、編集はピーター・R・アダム、美術はマティアス・カメルマイヤー、衣装はマリア・シッカー、視覚効果監修はジョン・グロワー&ブルース・ウォルターズ、音楽はウィルバート・ハーシュ。
出演はトム・エヴェレット・スコット、ジュリー・デルピー、ヴィンス・ヴィーラフ、フィル・バックマン、ジュリー・ボーウェン、ピエール・コッソ、ティエリー・レルミット、トム・ノヴァンブル、マリア・マチャド、ベン・サレム・ブーブダラー、セルジュ・バッソ、シャルル・マキニョン、ヨッヘン・シュナイダー、アラン・マッケンナ、ハーヴ・ソーニュ、エドガー・カーン、イザベル・コンスタンティーニ他。
ジョン・ランディス監督の『狼男アメリカン』の続編的な作品。ビデオタイトルは『ファングルフ/狼男アメリカンinパリ』。アンディをトム・エヴェレット・スコット、セラフィーヌをジュリー・“仕事を選ばない女優”・デルピー、クリスをヴィンス・ヴィーラフ、ブラッドをフィル・バックマン、クロードをピエール・コッソが演じている。
序盤、高さ3000メートルのエッフェル塔からダイブするシーンは、やや暗いという難点は抱えているものの、なかなかの見せ場となっている。しかし、そこでエナジーを使い果たしたのか、それが映画のピークになっており、それを越えるシーンが無い。ラストにも似たようなシーンがあるが、ただバンジーを見せたかっただけなのか?
コミカルなメインキャラクターのアンディと、シリアスなメインストーリーが、上手く噛み合っていないように思える。善玉のセラフィーヌと悪玉のクロード達という対立構造が成立している話の中で、主人公のアンディが流れに乗っていってくれないのだ。アンディとセラフィーヌのラブロマンスは、かなり性急。アンディの方は一目惚れだからともかく、セラフィーヌも最初のデートでアンディに惹かれる。そんなに急激にアンディに惚れるようなポイントは、特に無かったように思えるのだが。
まだ出会ってからほとんど時間が経っていないはずなのだが、セラフィーヌは恐るべき尻軽っぷりを見せている。まあ、最初の部分が強引でも後から取り戻せばOKなのかもしれないが、残念ながら2人の恋愛劇は、そんなに盛り上がらないのよね。ホラー映画としての怖さは感じない。前作を意識して、ブラック・ユーモアを効かせたホラーとして作りたかったのかもしれない。殺されたクリスやブラッド達が幻影となって現れる辺りは、そういう意識を感じる。ただ、ブラック・ユーモアとしての存在というより、物語の展開のサポートという役目を背負わされている印象がある。
また、コミカルなアンディ&死体の存在が、マジなクロード達と上手く噛み合っていない。クロード達がマジでありながらバカっぽく見えるという演出になっていれば、徹底したバカ・ホラーとなったのだろうが、そういうわけでもない。後はCGを使った狼人間の映像に期待を寄せるしか無いが、これもパッとしないんだよなあ。
第20回スティンカーズ最悪映画賞
ノミネート:【最悪の続編】部門