『フライングハイ2/危険がいっぱい月への旅』:1982、アメリカ

20世紀の最後を飾る偉業として、月の植民地化が進められていた。宇宙時代の幕開けである。その象徴として、一般の搭乗客を乗せたスペース・シャトル「メイフラワー1号」の処女飛行が決まった。未来のヒューストン空港では、大勢の人々が搭乗手続きを済ませてシャトルに向かっていた。バド・クルーガー所長は委員長に、打ち上げを1ヶ月猶予してほしいと持ち掛けた。しかし委員長は「延期など無理だ。政治家たちにはシャトル打ち上げが希望の星だ。連中は選挙のことしか考えていない」と告げた。
メイフラワー1号でコンピューター・オフィサーを担当するイレイン・ディッキンソンは、婚約者で同僚のサイモン・カーツから婚約指輪を贈られて幸せな気分だった。しかし彼女は、元恋人のテッド・ストライカーが提出した報告書が気になっていた。メイフラワー1号の安全性を疑問視する内容が綴られていたからだ。そんな彼女に、サイモンは「あいつは神経が参って飛ばされたんだ。もう過去の男さ」と気にしないよう告げた。
ロナルド・レーガン精神病院に収容されていたテッドはストーン医師から新聞を渡され、メイフラワー1号が翌日に出航することを知った。「入院は奴らの罠だ。出航を止めなきゃ」と言うテッドに、ストーンは「まずは病気だと認めるんだ」と促す。彼は「イレインが君の恋敵のサイモンと結婚すると言っていたぞ」と告げ、何があったのか詳しく話すよう求める。テッドはストーンに、戦争で中隊の部下をほとんど死なせたことを語る。戦後は翼ノイローゼに陥ったが、シカゴで遭難した飛行機を無事に着陸させて仕事の注文が次々に舞い込んだ。しかし墜落事故を起こして裁判に掛けられ、この病院に入院させられたのだという。
飛行場長はシャトルの電線が火花を散らして使えなくなったという作業員の知らせを受け、所長に報告した。すると所長は、すぐに修理して発射させろと命じた。飛行場長はテッドの言う通りだったと気付いた。テッドは病院を脱走し、空港へ赴いた。ジョーという男は時限爆弾をスーツケースに入れ、メイフラワー1号に向かった。テッドはイレインを見つけ、「打ち上げを中止しろ」と告げる。だが、イレインは「きっと考え過ぎよ」と告げ、メイフラワー1号に乗り込んだ。
サイモンはメイフラワー1号の操縦室へ行き、船長のクレンス・オーヴァーに挨拶する。2人の他に、ナビゲーターのデイヴ・アンガーと一等航海士のダンが操縦室で業務を担当する。テッドはチケットを入手してメイフラワー1号に乗り込み、目撃した飛行場長は「嫌な予感がしてきた」と漏らした。シャトルは離陸し、テッドは裁判のことを回想する。テスト・パイロットのテッドはシャトルが不時着した責任を押し付けられ、裁判に出廷した。彼は「シャトルが原因だ」と主張するが、サイモントン判事は精神治療を命じた。
コンピューターのコアが過熱状態にあることを示す警告ランプが点灯し、オーヴァーはイレインに対処するよう指示する。しかしイレインがコンピューターに命令を出しても、「コアに異常はありません」という答えが返って来た。テッドはイレインを見つけて「あの電線だとシャトルが爆発する」と警告するが、イレインは信じようとせず、「貴方は病気なのよ」と告げて立ち去った。加熱が酷くなり、アンガーとダンが調べに行く。彼らと入れ違いで、乗客のジミー少年が操縦席の見学にやって来た。
アンガーとダンはコンピューター室の火災を発見し、慌てて消火する。2人はオーヴァーに報告してコンピューターを修理しようとするが、ハッチが開いて外へ放り出されてしまった。シャトルは針路を外れ、小惑星群に突っ込んだ。イレインはオーヴァーに、指令システムを分離してはどうかと提案した。オーヴァーはコンピューターを取り外そうとするが、ガスを噴射されて気を失った。緊急事態を受けて、引退した元管制官のマクロスキーが空港に呼び出された。
シャトルは太陽へと向かい、それを知ったサイモンはイレインに「脱出しよう」と持ち掛ける。イレインは「針路を元に戻さないと」と主張するが、サイモンは「乗客のことなど放っておけ」と冷たく告げる。イレインは愛想を尽かし、「やっぱりテッドが頼りだわ」と口にして立ち去った。テッドはイレインから助けを求められるが、すっかり自信を失っていた。マクロスキーは無線で操縦室と通信するが、応答したのがイレインだったので困惑した。
ジミーと話したテッドは勇気を取り戻し、操縦室へ向かう。彼は操縦桿を握るが、針路はコンピューター次第だとイレインから知らされた。テッドはマクロスキーに、コンピューターが故障していること、針路が太陽に固定されていることを報告する。テッドはコンピューターに爆弾を仕掛けようと考えるが、イレインは「自衛システムがあるから殺されるわ」と止める。マクロスキーたちが対策を練る中、刑事がやって来た、彼はマクロスキーたちに、ジョーという自殺願望の男が爆弾をシャトルに持ち込んだことを教える…。

脚本&監督はケン・フィンクルマン、製作はハワード・W・コッチ、製作協力はメル・デラー、撮影はジョー・バイロック、編集はデニス・ヴァークラー&ティナ・ハーシュ、美術はウィリアム・サンデル、衣装はロザンナ・ノートン、音楽はエルマー・バーンスタイン、追加音楽はリチャード・ハザード。
出演はロバート・ヘイズ、ジュリー・ハガティー、チャド・エヴェレット、ロイド・ブリッジス、レイモンド・バー、チャック・コナーズ、リップ・トーン、ソニー・ボノ、ジョン・デナー、チャド・エヴェレット、ピーター・グレイヴス、ケント・マッコード、ジェームズ・A・ワトソンJr.、ウィリアム・シャトナー、スティーヴン・スタッカー、ジョン・ヴァーノン、アル・ホワイト、ローレン・ランドン、ウェンディー・フィリップス、ジャック・ジョーンズ、アート・フレミング、フランク・アシュモア、リチャード・H・ジャッケル、リー・ブライアント、、ジョン・ラーチ、ジョン・ハンコック他。


1980年の映画『フライング・ハイ』の続編。
『グリース2』の脚本を担当したケン・フィンクルマンが、初監督を務めている。
前作で監督と脚本を務めたジム・エイブラハムズ&ザッカー兄弟は、全く関わっていない。しかし『フライング・ハイ』のプロデューサーだったハワード・W・コッチが本作品にも携わっており、バッタモンの続編というわけではない。あと、音楽の担当も前作に引き続いてエルマー・バーンスタインだ。
テッド役のロバート・ヘイズとイレイン役のジュリー・ハガティー、マクロスキー役のロイド・ブリッジス、オーヴァー役のピーター・グレイヴス、裁判に証人として出廷するハメン夫人役のリー・ブライアントは、前作と同じ役柄での続投。
フランク・アシュモア(管制官のジェイコブズ)、スティーヴン・スタッカー(裁判所前のリポーター)、クレイグ・ベレンゾン(終盤にヒゲを剃る乗客)も前作からの続投だが、役柄が異なる。サイモントンをレイモンド・バー、飛行場長をチャック・コナーズ、クルーガーをリップ・トーン、ジョーをソニー・ボノ、委員長をジョン・デナー、サイモンをチャド・エヴェレット、アンガーをケント・マッコード、ダンをジェームズ・A・ワトソンJr.、月基地のマッコード指令官をウィリアム・シャトナーが演じている。

前作は旅客機内が主な舞台で、航空パニック映画のパロディーになっていた。
今回はスペース・シャトルが主な舞台になっており、当然のことながら『スター・ウォーズ』『E.T.』『2001年宇宙の旅』『スタートレック』など宇宙関係の映画のパロディーが色々と盛り込まれている。
出演者の過去作品を使ったネタもあって、ピーター・グレイヴスには『スパイ大作戦』、ウィリアム・シャトナーには『スタートレック』のネタが用意されている。
例えばシャトナーの場合、月基地のドアの開閉音が『スタートレック』と同じだったり、彼が潜望鏡でエンタープライズ号を目撃したりする。

冒頭、状況を説明する文字が下からスクロールしてくるのは、『スター・ウォーズ』のパロディー。
「メイフラワー1号の処女飛行が決まった」という部分まではマトモな内容だが、そこから「その頃、銀河系ではアモーラ姫がベッドに横たわり、ハンサムで若い騎士を待ち受けていた。騎士が近付くと姫はローブを脱ぎ捨て、騎士は彼女に覆い被さり……」と官能小説になり、メイフラワー1号が文字を破壊して飛んで行く。
ヒューストン空港のゲートでは警備員がモニターをチェックしており、男性客は服を着たままの姿で写るが、女性客は裸で写し出される。
公衆電話には画面下からE.T.の下が伸びて「家に帰りたい」と言うが、交換手から通話料金を入れるよう要求される。
ジミー少年が月旅行に犬を連れて行こうとすると、職員が「犬はダメだ、射殺しなきゃ」と言って発砲する。ジミーがショックを受けていると職員は「空砲さ」と言い、犬が起き上がって、ジミーの両親がバカみたいに甲高い声で笑う。

赤ん坊を駕籠に入れ、バッグを持った婦人は荷物係に「手荷物は1つだけです」と言われ、赤ん坊が入っている駕籠の方を渡してシャトルへ向かう。
案内係は列を作っている客から「旅行者の休憩室は?」「車の駐車時間は?」と次々に質問され、「コンコースCの4階です」「2時間」と答える。3人目と4人目で質問の内容がおかしくなり、「最も速い動物は?」「夫と寝た夜はどうすれば?」と訊かれるが、案内係は事務的に「チーター」「声を出して下さい」と返答する。
革ベルトを付けてスーツケースを引きずっている男女がすれ違うと、そのスーツケースが犬のようにワンワンと鳴き、勝手に動いて喧嘩を始めようとするので、その男女は必死で引き離そうとする。
場所が管制室に切り替わると、カメラがパンしながら仕事をしている連中の様子を写し、ある男性職員がラジオDJのように「次は1960年代最大ののヒット曲、『ムーン・リバー』です」と喋るのを見せる。

見学ツアーで管制室に来た少年は担当女性が席を外した隙に席へ座り、コンピュータの画面を見ながら着陸準備に入っていたシャトルをゲーム感覚で勝手に操作する。最終的には爆破に追い込み、「シット」と軽く悔しがって立ち去る。
武器を所持した男がゲートに来ても警備員は平然と通過させるが、その後ろからやって来た老女を「怪しいぞ」と取り押さえる。
通常のパニック映画であれば、空港のシーンで搭乗の準備をしている客は主要キャラクターであり、覚えておくべき面々だ。
しかし本作品の場合、ネタをやるために出て来た連中が大半なので、覚えておくのはイレインとサイモンぐらいで充分だ。

テッドが収容されているのは「ロナルド・レーガン病院」で、看板には「古き良き治療法で有名」と書かれているが、当時の大統領であるロナルド・レーガンが保守主義者であることを皮肉ったネタだ。
病室が写ると、スーツ姿でスーツケースを持った男が、患者服の男に「会社の業績は順調だ」などと話している。
医者が来て「面会時間は終わりです」と言うと、患者服の男が立ち上がって「弟はすぐに退院できますか」と尋ねる。
スーツの男が患者だった、というネタである。

テッドの病室が写ると、彼はキャンバスに向かって絵を描いている。描かれているのは花瓶の花だが、「もういいよ」と声を掛けてカメラが切り替わると、ヌードの女性がポーズを取っている。
ストーンがテッドに「君は病気だ」と言うと、「Sick」という最後の言葉にエコーが掛かって何度もリフレインされる。
シャトルの準備が進む中で、窯焚きがスコップで石炭をシャトルに放り込んでいる。
葉巻を吸っていた飛行場長は所長の命令に腹を立て、オイルのドラム缶に向かって唾を吐き、大爆発が起きる。

病院を脱走したテッドが患者服を脱いで投げ捨てると、すぐに戻って来る。ライトが当たる中で彼が逃げようとすると、歌手のジャック・ジョーンズがマイクを持って歌っている。
書店の壁には映画『ロッキー』シリーズ第38作のポスターが貼られており、ヨボヨボのジジイがボクサーの格好で写っている。
ジョーは書店で『タイム』と『ニューズウィーク』とキャンディーを購入し、店員に「それと、あそこの時限爆弾を」と告げる。店員は笑顔を浮かべ、後ろの棚に置いてある時限爆弾を売る。

少女は「おばあちゃん」と笑顔で手を振り、それに気付いた老女が手を振って迎えようとするが、少女は彼女を突き飛ばして後ろにいた別の老女に抱き付く。
シャトルのチケットは売り切れているが、空港の中で普通にダフ屋が商売をしている。
シャトルの操縦にいる面々はシステムをチェックし、オーヴァー船長は窓を開けて風をチェックする。「温度はどうだ」と彼が訊くと、体温計をくわえたダンが自分の熱を言う。
管制官がオーヴァーに「滑走の準備をしろ」という意味で「Taxi」という言葉を告げると、オーヴァーは操縦席にあるタクシーのメーターを動かす。

シャトルが離陸すると、オーヴァーたちは激しく揺れて風を受けている。テッドが「危険な掃除機」と書かれた棚を見つけて開けてみると、中から掃除機のノズルが現れて彼に襲い掛かる。彼が席に戻ると、隣の老女が「顔色が悪いけど大丈夫?私は絶対に酔わないの」と言う。しかしテッドがイレインに関する悩みを語り始めると、老女は汚物袋を取り出してゲロを吐く。
航空ネタや宇宙ネタだけでは持たないと思ったのか、それとも裁判ネタがやりたかったのか、テッドが回想する形で法廷のシーンが挿入される。
そこでも色々とネタはあるが、宇宙を扱った映画のパロディーは見当たらない。
で、長すぎる回想が終わると、テッドの隣の老女は白骨化している。

イレインはジョーがスーツケースを抱えているのを見つけ、上の棚に入れるよう促す。「自分で持っていたい」と頑なに言う彼のケースには、長崎と広島とパール・ハーバーとドレスデンのシールが貼ってある(爆弾に引っ掛けたネタだが、こりゃマズいだろ)。
ジミーが見学に来ると、オーヴァーは笑顔で歓迎する。ジミーの連れて来た犬を抱いた彼は「こいつはオスだな」と言った後、ジミーに「こいつの体でアソコを擦られると気持ちがいいか?」とセクハラ発言をする。
テッドがヘッドホンを装着すると『青き美しきドナウ』が流れており、シャトルの外に放り出されて死体になったアンガーとダンが組み合ってワルツを踊っているようなポーズになる。
オーヴァーは乗務員のテストからアンガーとダンが消えたことを聞かされ、「落ち着け、他に消えた物は?」と冷静に尋ねる。そこへ乗務員のメアリーが来て「コーヒーが無くなりました」と知らせると、「だから余分に積めと言ったのに」と声を荒らげる。「客が騒ぎ出したら、どうします?」と質問された彼はボードを取り出して乗務員の動きを指示するが、それはバスケットボールの試合のような指示。

乗客はイレインからシャトルが針路を外れて元に戻せなくなったことを知らされても冷静だが、「コーヒーが切れました」と言われると大騒ぎする。
オーヴァーがコンピューターを取り外そうとすると、『スパイ大作戦』のテーマ曲が流れる。
マクロスキーが管制官に「太陽に関するホットなデータです」と資料を渡されると、熱くて持てない。
イレインはオーヴァーがジェスチャーで何か伝えようとしても全く理解できず、ようやく「毒ガスが出た」と分かって大喜びするが、そこでオーヴァーは力尽きて再び気を失う。

イレインがサイモンに「コースを外れてるわ」と告げてモニターを指差すと、カーレースのゲーム映像が写し出されている。
若い女性客は隣りの男に「出会ったばかりで変だと思うでしょうけど、まだ男性経験が無いの」と告げてセックスに誘う。しばらくして、今度は別の男にも同じことを言っており、女性には男たちの列が出来ている。しばらくして同じ女が写ると、今度は馬をセックスに誘っている。
客の看護婦はイレインに「重傷者が大勢います。あるだけの薬やガーゼを」と求めるが、大怪我で血だらけの男性客が声を掛けると尿瓶を渡して「ここに小便を」とトイレへ行くよう促す。
イレインは無線でマクロスキーから「君は誰だ」と問われ、名前だけじゃなくて身長と体重、髪の色や好きな男性のタイプまで喋る。
無線でテッドの名前を聞いたマクロスキーが「ストライカー」と叫ぶと、後ろにいた管制官は「Strike her(彼女を殴れ)」と聞き違え、隣にいた女を殴る。

無線が途絶えたのでイレインは操縦室に設置されている緊急無線用の電話を使うが、「今は休憩時間です」というテープの音声が流れる。
危機的状況に陥る中、シーンが切り替わって再び操縦室が写ると、テッドとイレインの背後には死神が立っている。
何の手も打てなくてテッドが「神に祈るしか無い」と漏らし、シーンが切り替わると乗客の牧師が「私は神に仕える身です。皆さんに言いますが、誰一人として絶対に助からない」と断言する。

正直に言うと、何のパロディーなんだか良く分からない箇所が幾つもあった。だから私は、本作品を充分に楽しめているとは言い難い。
パロディーよりも、そうではないネタの方が多いようにも思えたが、それは単に見逃しているだけなのかもしれない。
だから、この映画が面白いとはまるで思えなかったけど、それは本当の中身を分かっていないだけで、パロディーが全て理解できていれば、面白いと感じたのかもしれない。
っていうのは嘘で、それが分かっても、たぶんそんなに笑えなかったと思う。
だって、パロディー以外のネタは幾つも気付いたけど、そこで大して笑えなかったんだから。

(観賞日:2014年1月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会