『秘密への招待状』:2019、アメリカ

インドで孤児院を運営するイザベル・アンダーセンは、支援者がニューヨークまで来てほしいと言っていることを助手のブリーナから聞く。使い道の説明に来てくれれば、20万ドルを出すと言っているらしい。子供たちを置いて行けないと考えるイザベルに、恋人は自分が行くと申し出た。しかし相手が自分を指名していると知らされたイザベルは、ニューヨークへ行くことにした。ニューヨーク。テレサ・ヤングは帰宅しても電話で仕事の指示を出し、双子の息子たちに声を掛けた。テレサの娘のグレイスは、個展の準備をしている父のオスカーに電話を掛けて結婚式のことを話した。
イザベルがニューヨークに着くと、高級ホテルのペントハウスが宿泊先として手配されていた。そこへジョナサンが迎えに来て、彼女を車に乗せた。ジョナサンは支援者のテレサについて、「22年前にホライズン社を設立し、今や全米一のメディア代理店に」と説明する。彼は4年前に入社したこと、今週の土曜日にグレイスと結婚することを話した。イザベルは会社に到着し、テレサと会った。テレサは娘の挙式のことや、双子の息子たちがいることを笑顔で語った。
イザベルが資料を見せて孤児院に関する計画を説明すると、テレサは「他にも有望な候補があるから、少し精査させて」と告げる。彼女は「月曜のランチで知らせるから」と言い、結婚式に来るよう誘う。イザベルは困惑するが、テレサは秘書のグウェンに「彼女を招待して」と指示した。グウェンはテレサに、健康診断の用意が出来たことを伝えた。テレサは結婚式の準備をしている邸宅の庭へ行き、オスカーに招待者が1人増えたことを話す。彼女はグレイスと会い、深い愛情を伝えた。
土曜日、イザベルはテレサがグウェンたちに用意されたドレスに身を包み、結婚式に出席した。オスカーに気付いた彼女は驚き、その場を離れた。オスカーはイザベルを見つけ、「なぜここに?」と話し掛ける。そこへテレサが現れ、「寄付を考えてる孤児院の経営者よ」とオスカーにイザベルを紹介した。パーティーでスピーチしたグレイスは、自分がオスカーの連れ子であること、1歳の頃にテレサと会ったことを話した。それを聞いたイザベルは動揺し、会場を離れた。
イザベルはオスカーと2人になり、「どういうこと?」と詰め寄った。オスカーは「今は話せない。明日、電話する」と言い、逃げるようにグレイスたちの元へ赴いた。翌日、オスカーからの出羽が無いので、イザベルは彼の家へ押し掛けた。オスカーがイザベルをキッチンへ連れて行くと、テレサが同行した。イザベルはオスカーに、「どうして私の娘があそこにいるの?育てるのは無理と判断したはず。養女に出すと決めたのは、あの子を考えての結論よ」と批判の言葉を浴びせた。テレサが「貴方を捜したのよ」とオスカーを擁護すると、彼女は「嘘よ。本気で捜そうともせず、ヒーローのに収まった」と告げた。
オスカーが「そんな言い方はよせ。退院してすぐ姿を消したくせに」と怒ると、イザベルは「辛かったからよ。知ってるでしょ」と反論する。「君は心を閉ざし、ゾンビにしか見えなかった」とオスカーが告げると、彼女は「18歳の私が母親として葛藤してたから、子供を奪ったの?」と質問する。2人が激しい口論になると、テレサが仲裁に入った。「なぜ黙って育てたの?」とイザベルが訊くと、オスカーは「思い直した時、君は姿を消してた。何の負い目も無いから弁解はしない」と述べた。
イザベルは「あの子に話して」と要求し、その場を後にした。グレイスはオスカーから真実を告白され、ショックを受けた。「こんなことになるとは思わなかった。母親に捨てられたと思わせたくなくて、死んだと嘘をついた。傷つけたくなかった」とオスカーが弁明すると、グレイスは「今は傷付けていいの?パパは間違ってた。私に許しを求めないで」と非難した。彼女はオスカーからイザベルの宿泊先を聞き出し、ジョナサンにホテルまで送ってもらった。
グレイスはイザベルを訪ね、会話を交わした。「いつまで会えるの?また会える?」と彼女が訊くと、イザベルは「もちろん」と答える。グレイスが「電話するわ」と言うと、イザベルは「私からも掛ける」と告げた。2人はレストランへ出掛け、「私に弟か妹はいるの?」とグレイスが尋ねる。イザベルは「いえ、でも孤児院には息子同然の子がいるわ」と言い、ジェイという孤児のことを話す。ジェイは1歳の時に捨てられ、現在は8歳になっていた。グレイスはイザベルに、自分のアルバムを見せた。
テレサはイザベルと会い、「正式に会社を売却した。孤児院に寄付するわ」と話した。寄付の話が白紙に戻ったと思っていたイザベルは、「どうして?」と問い掛ける。テレサが「好意よ。受け止めて」と告げると、彼女は「私の素性を知って呼び寄せたの?」と訊く。テレサは「いいえ、寄付すべき施設があると勧められた」と話すが、イザベルは彼女の行動に疑念を隠せなかった。グウェンが来て電話会議の時間が過ぎていることを伝えると、テレサは「延期して。調整できないなら辞めていいわ」と冷淡に言い放った。
夜、自宅で酒を飲んだテレサは、オスカーに孤児院への援助を決めたことを話す。テレサは「責任から逃れるには、いい手だわ」と言い、オスカーに苛立ちをぶつけた。次の日、彼女はイザベルを会社に呼び、「1回限りの寄付では終われない。弁護士と相談して決めた。貴方とグレイスの名で基金を設立し、6年で2千万ドルを出す」と語った。イザベルが「何が狙い?」と警戒心を示すと、テレサは「貴方って人は」と口にする。彼女はグレースに会うよう勧め、「私は双子を連れて姉の家へ行く。ウチに来てもらっても構わないわ。オスカーと話して」と促した。
グレイスはオスカーと会い、「許してくれるのか」と問われて「仕方ないでしょ。その代わり、全て話して」と言う。オスカーは「子供を養子に出す時、30日の猶予期間がある。出産が済んだら2人とも去ると約束した。だが、1時間だけ会いたくて、29日目に戻った」と説明した。テレサは双子を連れて、姉の家へ向かった。イザベルはオスカーを訪ね、「貴方の妻は信用できない」と述べた。オスカーは彼女に、「金を出すと言ってるのに疑うのか。貧しくなくても善意に満ちた人間はいる」と話す。しかし「テレサは孤児院なんかに興味は無い。彼女は商売人よ。何を狙ってるの」と言われると「僕も最近は彼女が分からない」と漏らした。
グレイスはジョナサンに、新婚旅行でインドへ行こうと持ち掛けた。ジョナサンが「コスタリカでサーフィンだろ」と軽く返すと、彼女は「両方行くのはどう?」と提案する。「インドは遠すぎる。休暇は1週間しか無い」と言うと、グレイスは「貴方は1週間で戻って、私は残る」と話す。ジョナサンは少し苛立った様子で、「捨てられは事実は消えない」と鋭く告げる。ハッとした彼はすぐに謝るが、グレイスのショックは消えなかった。
オスカーはテレサの引き出しを勝手に開けて、複数の薬を発見した。テレサが双子を連れて帰宅すると、彼は「医者と話した。3ヶ月も内緒に?」と口にする。テレサが「守秘義務違反ね。あの医者を訴えるわ」と言うと、オスカーは「結婚式の後で話す約束だったんだろ」と告げる。オスカーが話し合いを求めると、テレサは「忙しいの。後にして」と去ろうとする。オスカーが「僕は夫だ」と強く告げると、彼女は「グレイスと息子たちには黙ってて」と頼む。オスカーが「治そう」と話すと、テレサは「手遅れよ」と述べた…。

監督&脚本はバート・フレインドリッチ、原案はスサンネ・ビア、脚本はスサンネ・ビア&アナス・トマス・イェンセン、製作はジョエル・B・マイケルズ&ジュリアン・ムーア&バート・フレインドリッチ&シルヴィオ・ムラグリア&ハリー・フィンケル、製作総指揮はニック・バウアー&ディーパック・ナヤール&アンドレア・スカルソ&ピーター・トゥーシェ&ヴァイシャーリ・ミストリー&ウィリアム・バイアリー&アリソン・トンプソン&マーク・グーダー&アナス・キーアハウゲ&シシ・グラウム・ヨアンセン&ピーター・オールベック・イェンセン&マイケル・ケイトン=ジョーンズ&ジェフ・サックマン&ビル・コーニグスバーグ&デヴィッド・ブラウン&ハヤー・マスターズ、共同製作総指揮はシドニー・スウェイベル&ノーム・バカル&エリカ・ベンソン、撮影はジュリオ・マカット、美術はグレース・ユン、編集はジョセフ・クリングズ、衣装はアージュン・バーシン、音楽はマイケル・ダナ、音楽監修はローラ・カッツ、主題歌はアビー・クイン。
出演はジュリアン・ムーア、ミシェル・ウィリアムズ、ビリー・クラダップ、アビー・クイン、アレックス・エソラ、スーザン・ブラックウェル、ウィル・チェイス、エイサ・デイヴィス、アジー・ロバートソン、トレ・ライダー、アンジュラ・ベディ、ヴィール・パチシア、カイザード・ガンジー、グレタ・クイスペ、アレックス・クランマー、ロン・シモンズ、ジェフ・キム、ジル・ロード、アメリア・ワークマン、ティーア・ロレアル、ニヒル・カムコルカル、ハンク・H・キム、カルロス・ヴァレ、ルーファス・コリンズ、ヴィヴィエンヌ・レーニー、クリスティーナ・ロギー、エリック・D・ヒル、ティーンナパン他。


2006年のデンマーク映画『アフター・ウェディング』をリメイクした作品。
監督&脚本は『NOセックス、NOライフ!』『理想の彼氏』のバート・フレインドリッチ。
テレサをバート・フレインドリッチ夫人のジュリアン・ムーア、イザベルをミシェル・ウィリアムズ、オスカーをビリー・クラダップ、グレイスをアビー・クイン、ジョナサンをアレックス・エソラ、グウェンをスーザン・ブラックウェルが演じている。

根本的にキャラクター設定、というか配置を間違えているとしか思えない。
テレサが真実を明かさずにイザベルを呼び寄せてオスカーと対面させるのは、2人への嫌がらせにしか見えない。
だって、「オスカーとイザベルがグレイスを養女に出すと決めたが、オスカーが内緒で養育していた」という真実において、テレサは当事者じゃないからね。
後でイザベルを呼び寄せた理由は明らかにされるけど、「それなら仕方が無いよね」とは全く思わないよ。
「アンタが死んだ後、オスカーの判断に委ねりゃいいだろ」としか思わないよ。

オスカーは養女に出す約束を破ってグレイスを育てたことについて、イザベルに「負い目は無いから弁解しない」と堂々と言い放つ。でもグレイスが指摘するように、彼は間違った行動を取ったのだ。
「思い直した時にイザベルは姿を消しており、捜したが見つからなかった」という説明が事実だとしても、「イザベルとの約束を破り、今まで教えていなかった」ということに対する罪悪感は抱くべきだろ。
そして、「グレイスに真実を教えていなかった」ということに関しても、負い目を感じるべきだろ。
だから、そこでイザベルを非難するのは完全にお門違いであり、反省して詫びるべきなのだ。

っていうか、「ホントならテレサじゃなくてオスカーがイザベルを呼んで自ら真実を打ち明け、謝罪すべきだろ」と言いたくなる。
まあテレサから居場所を教えてもらっていないから、どうしようもないんだけどさ。
なので、ここは「オスカーが余命わずかの会社経営者で、イザベルに寄付を提案してニューヨークへ呼び寄せる」という話なら多くの問題は解消されるはず。
イザベルは出資者の正体を知らないままニューヨークへ来て、そこで初めて相手がオスカーだと知るという展開にしておけばいい。

ただ、それでも「イザベルとの約束を破ってグレイスを育てた」という部分に関しては、非難される問題が残っている。
ここを少しでも軽減するためには、オスカーのポジションを女性にした方がいい。
それに伴って、イザベルのホジションは「彼女が過去に付き合っていた男性」になる。
自分の腹を痛めて出産した母親であれば、「養女に出すことを決めたが、やはり離れたくないので育てると決める」という心の動きには、同情できる部分が大きくなるはずだ。

イザベルはインドで瞑想にハマッており、冒頭シーンではジェイに瞑想への参加を促す。ニューヨークへ発つ前にはジェイに自分の代役として瞑想のリーダーを任せ、ニューヨークのホテルでも瞑想をしている。
何度も触れるぐらいだから、イザベルが瞑想にハマッている設定は物語にとって大切な要素なんだろう。
ただ、最後まで映画を見ても、その設定に何の意味があるのかは全く見えて来なかった。
別に瞑想シーンがあってダメだとは思わないが、そこまで強調している意味は不明だ。

イザベルにとってジェイは特別な存在で、インドでも彼と話すシーンだけを粒立てている。孤児院を離れたくないと思ったのは「ジェイを残していけない」ってことだし、出発前もジェイとだけ個人的に話している。
ニューヨークに来てからもジェイとだけは電話で話すし、グレイスにもジェイのことだけは話している。テレサの会社へ向かう途中ではジェイを思い出し、市場を歩く時もジェイを回想する。
彼女にとってジェイは息子同然だし、心配するのも当然っちゃあ当然だろう。
ただ、そこまで「イザベルがジェイを特別扱いしている」という設定を強調して、何の効果を狙っているのか良く分からない。

「テレサが援助を約束してニューヨークに呼び寄せる」という展開が必要なので、イザベルがインドで孤児院を経営している設定は別に構わない。
ただ、ジェイを特別扱いしていることを強調するのは、ちょっとノイズになってないか。久々に会ったグレイスが目の前にいるのに、そっちよりジェイばかり気にしているのも、どうかと思うし。
あと、他の孤児が大勢いる中、ジェイだけ特別扱いしているのも、いかがなものかと思うし。
それと、「グレイスを育てることを諦めて養女に出した」という過去と、「孤児院を経営している」という現在に、上手く関連性を持たせることも出来ていないし。

イザベルはテレサが多額の援助を約束しても素直に感謝せず、「何か企んでいるに違いない」と怪しむ。
そりゃあ大金だし、ちょっと変に思うのも分からなくはない。ただ、それにしてもテレサを悪人扱いし過ぎじゃないか。
素直に善意として受けて取れないのは、どれだけ根性がねじ曲がっているのかと言いたくなる。
自分だって何の裏も無く善意だけで孤児院を経営しているはずなのに、他人の善意は全く信用しないって、嫌な感じだぞ。
テレサが「いかにも裏がありそう」と思える人ならともかく、そうじゃないんだから。

ネタバレだが、終盤、テレサはイザベルに、基金を管理するためにニューヨークで暮らすよう要求する。
イザベルが「人身売買よ」と非難すると、彼女は「子供を捨てても善行で帳消しだとでも?」と言い放つ。
そんな愚かしい言葉を平気で吐くのは呆れるが、テレサが怒って立ち去ると追い掛けて「グレイスとオスカーには貴方が必要なの」と訴える。彼女は「病気で死ぬの。息子たちは8歳よ」と言い、助けてほしいと頼む。
でも、冷たいかもしれないけど、そんなの「知らんがな」って話でしょ。

あと、「グレイスとオスカーには貴方が必要なの」とテレサは言うけど、そう思っているのは彼女だけでしょ。
グレイスとオスカーからしてみれば、テレサが死んだら「母が死んだ、妻が死んだ」というだけであって。
いや「だけ」という表現は冷淡かもしれないけど、「だからイザベルが必要」という理屈は全く分からない。
今までグレイスはイザベルの存在なんか知らなかったし、オスカーも完全に忘れていた。
なのでテレサが呼び寄せなかったら、彼女が死んでも「イザベルがいてくれたら」なんて絶対に思わないわけでね。

あと「息子たちは8歳よ」とテレサは言うけど、これこそ「知らんがな」の極致だろ。
それを依頼するテレサも、助けてほしいと頼まれる双子の息子たちも、イザベルからすると完全に赤の他人なわけで。
まだ「オスカーが病気で余命わずかになり、グレイスのことをイザベルに託す」ということなら、分からんでもないのよ。でも、テレサが双子のことをイザベルに頼むのは、無視が良すぎる話じゃないかと。
あと、自分の死後に残される家族が心配なら、なぜ近しい人間に頼まないのか。
わざわざインドから呼び寄せた、何の面識も無いテレサに頼むのは筋違いにしか思えないのよ。

(観賞日:2022年12月31日)

 

*ポンコツ映画愛護協会