『2999年異性への旅』:2000、アメリカ

宇宙の彼方に、男たちの星がある。高度な技術は人間社会を超越している。クローンによる増殖で個体を増やし、生殖器は退化して消滅。彼らは一切の感情を持たず、野心と征服欲のみが世代を追うごとに増大した。全宇宙を支配するため、彼らは新たな計画を実行することにした。指導者のグレイドンは次の標的が地球だと言い、1人が生殖のために赴くことを継げた。訓練が行われ、1人がテストに合格した。グレイドンは彼にハロルド・アンダーソンという名前を与え、男性器を装填させてシアトルに向かわせた。
フェニックス行きの旅客機は、飛来する光球と激突して激しく揺れた。光球に入っていたハロルドは旅客機のトイレに出現し、乗客に成り済ました。ハロルドは客室乗務員のレベッカを口説き、平手打ちを浴びせられた。旅客機が無事に着陸すると、連邦航空局のローランド・ジョーンズがやって来た。彼は新入りの職員に、「あまり張り切るな。どうせ大したことは無い」と告げた。
ハロルドは手当たり次第に女性を口説くが、まるで相手にされなかった。タクシーを拾った彼が銀行に行くと、融資部のペリー・ゴードンが「融資部の新任だね。推薦状が来てる」と声を掛けた。ハロルドが総務部のリタに目を付けると、ペリーは自分の女だと言う。ハロルドが「今すぐ女と寝たい。やる気満々なんだ」と言うと、ペリーは困惑した。頭取のドン・フィスクがハロルドを呼び出し、リタは自分の愛人だと告げた。彼はハロルドに、ペリーは女のことしか考えていないので注意するよう助言した。ジョーンズは旅客機の乗客が撮影したビデオを確認し、光球が接近する超常現象に驚いた。
夜、ハロルドはペリーの案内でナイトクラブへ出掛け、ストリッパーのシェリルを口説いた。彼がセックスを始めようとすると、シェリルはコンドームの装着を求めた。ハロルドは嫌がりながらも応じるが、コンドームが弾け飛んでガラスが割れ、セックスできずに終わった。翌日、ハロルドはペリーに連れられて、断酒会を訪れた。アルコール依存症を克服したスーザンは壇上に立ち、生まれ変わろうと誓ったことをスピーチした。ペリーはハロルドに、弱みに付け込んで女を口説くテクニックを教えた。
スーザンが買ったばかりの新車で会場を去ろうとすると、女をナンパしたペリーが誤って車をぶつけてきた。スーザンは車の損傷に憤慨し、弁償を要求した。ペリーは軽い口調で、「どこかで会ったかな?」と告げた。ハロルドは断酒会に来ていたレベッカと再会し、口説いてセックスに持ち込もうとする。しかしセックスに至る前に、レベッカが愛人のパイロットから電話を受けて話し始めた。ハロルドは不用意な言葉で彼女を怒らせてしまい、部屋から追い出された。
翌朝、飛行機事故の調査に熱を入れているジョーンズは、妻のナディーンから浮気を疑われた。ジョーンズは超常現象について説明するが、ナディーンは浮気だと決め付けた。ハロルドが銀行にいるとペリーの妻のヘレンが来て挨拶し、夫を捜しに行った。その直後にスーザンが現れ、ペリーに弁償させるための見積書をハロルドに託して渡してもらおうとする。ハロルドが夕食に誘うと、彼女は弱みに付け込もうとする手口を批判した。
そこにペリーが来たのでスーザンは見積書を渡し、弁償を要求した。彼が妻帯者だと知り、スーザンは呆れ果てた。またハロルドが口説くと、彼女は冷淡に断った。しかしハロルドが簡単に諦めると、スーザンは変わった人だと感じて興味を抱いた。ハロルドが改めて夕食に誘うと、スーザンは承諾した。彼女はレストランで食事を取りながら、不動産の販売員として働いていることを話す。「人生の目標は?」と問われたハロルドは、「子供を作りたい」と即答した。
ハロルドの明確で正直な答えにスーザンは引き付けられ、「君と寝たい」と口にした彼を自分の部屋招いた。しかしハロルドがセックスを求めると、彼女は「別の人生を歩むと決めたの。結婚するまで誰とも寝ない」と断る。困ったハロルドは水を飲みに行くと嘘をついて席を外し、グレイドンに相談した。するとグレイドンは「結婚しろ」と命じ、姿を消した。ジョーンズはレベッカに事情聴取してハロルドの存在を知り、乗客名簿に載っていなかったことから疑いを抱いた。
次の日、スーザンが銀行を訪れると、ハロルドはいきなりプロポーズする、スーザンは当惑し、「考えさせて」と返答した。彼女はペリーと妊娠中のヘレンに、新居の候補となる不動産を紹介した。スーザンは友人たちにプロポーズされたことを相談し、答えは固まった。彼女はハロルドに電話を掛け、「申し込みを受けるわ」と告げた。2人は礼拝堂で結婚式を挙げてラスベガスへ新婚旅行へ行き、ホテルで何度もセックスした。
ハロルドが新婚旅行から戻ると、銀行にジョーンズが訪ねて来た。飛行機事故について質問された彼は、「少し揺れた覚えはあります」「搭乗券は捨てました」と答えた。ハロルドが妊娠に異常なほど固執するため、スーザンは「妊娠しなかったら私は役立たず?」と言う。彼女が「妊娠できないかもしれない」と口にすると、ハロルドは「大丈夫だ」と告げる。しかし「無理なら養子を貰えばいい」という言葉に、彼は「本当に産めないのか」と述べた。
スーザンはハロルドの冷たさに不満を吐露し、「妊娠のことで私を責めないで」と声を荒らげた。困ったハロルドはグレイドンに相談し、「他の女を探せ」と指示された。ハロルドがバーで飲んでいると、ヘレンが現れた。ハロルドは彼女に口説かれ、ゴードン家でセックスに及ぼうとする。しかし男性器が上手く動かず、未遂に終わった。ハロルドを異星人だと確信したジョーンズはゴードン家を窓から覗き込み、全裸で男性器を確認する姿を盗撮した。帰宅したハロルドは、スーザンから妊娠を打ち明けられて大喜びする。しかし妊娠してから全く体に触れなくなったため、スーザンはハロルドに苛立ちをぶつけた…。

監督はマイク・ニコルズ、原案はギャリー・シャンドリング&マイケル・リーソン、脚本はギャリー・シャンドリング&マイケル・リーソン&エド・ソロモン&ピーター・トラン、製作はマイク・ニコルズ&ギャリー・シャンドリング&ニール・マクリス、製作総指揮はブラッド・グレイ&バーニー・ブリルスタイン、共同製作はミシェル・インペラート=ステイビル、製作協力はマイケル・ヘイリー、撮影はミヒャエル・バルハウス、美術はボー・ウェルチ、編集はリチャード・マークス、衣装はアン・ロス、音楽はカーター・バーウェル。
出演はギャリー・シャンドリング、アネット・ベニング、ジョン・グッドマン、グレッグ・キニア、ベン・キングズレー、リンダ・フィオレンティーノ、リチャード・ジェンキンス、キャロライン・アーロン、ジュディー・グリア、ノーラ・ダン、アン・キューザック、カムリン・マンハイム、ダニー・ゾーン、ハーモニー・スミス、クリッキー・ロング、ジェーン・リンチ、リチャード・ミンチェンバーグ、ドリンダ・ラルミア、J・C・マッケンジー、ウィリー・ガーソン、マージョリー・ラヴェット、ビル・ドワイヤー、キャシー・ラドマン、アレクサンダー・ライラス、アナスタシア・サケラリス他。


コメディアンのギャリー・シャンドリングが原案&脚本&製作&主演を務めた作品。
監督は『バードケージ』『パーフェクト・カップル』のマイク・ニコルズ。
ハロルドをギャリー・シャンドリング、スーザンをアネット・ベニング、ローランドをジョン・グッドマン、ペリーをグレッグ・キニア、グレイドンをベン・キングズレー、ヘレンをリンダ・フィオレンティーノ、ドンをリチャード・ジェンキンス、ナディーンをキャロライン・アーロン、レベッカをジュディー・グリアが演じている。

ナンセンスなコメディーなので細かいことを気にするのは野暮なのかもしれないけど、異星人に関する冒頭の解説からして引っ掛かるぞ。
「クローンによる増殖で個体を増やし」とあるが、クローンのはずなのに集まった面々は全員の容姿が大きく異なっている。
「一切の感情を持たず、野心と征服欲のみが世代を追うごとに増大した」とあるが、感情が無いのに野心や征服欲があるってのは矛盾してないか。感情が皆無なら、なぜ「宇宙を征服したい」という欲が生じるのか。
「地球を侵略するために地球人と生殖する」ってのも、ちょっと意味が分からない。そこは何かしらの説明が必要なトコじゃないのか。

異星人に感情は無いはずなのに、テストに合格したハロルドは明らかに嬉しそうな表情を浮かべている。地球に飛来して女性を口説く時も、表情が変化しているし、ニヤニヤと笑みを浮かべている。
それは「訓練の成果」ってことなのかもしれないが、とても一切の感情が無いようには思えない。異星人のキャラ設定が、のっけから破綻しているようにしか思えない。
「旅客機が墜落しそうでカリカリする乗務員や怯えている乗客をハロルドが能天気に口説く場違いな態度」という部分で、笑いを取りに行っているのかもしれない。
だけど、それよりは「遊び人っぽくナンパするけど無表情で、言葉と表情が合致しない」というギャップで笑いを作った方がいいんじゃないか。

タクシーに乗ったハロルドが建物に入って行くと、ペリーが「融資部の新任だね」と声を掛ける。この時点では、ペリーが誰かと勘違いしているのだろうと思った。ハロルドは否定しないが、それは「話を合わせている」ってだけなのかと思った。
だが、しばらく見ていると、「最初からハロルドは銀行に潜入する手はずだった」ってことが分かって来る。
でも、それならグレイドンが任務を指示する時に、そこも説明しておいた方がいい。
あと、当初は2日で任務を終える予定だし、地球人の女性と生殖したら終了のはずでしょ。だったら、銀行員として潜入する必要は無いんじゃないの。

断酒会を去ろうとしたスーザンはペリーに車をぶつけられ、弁償を要求する。ペリーが「どこかで会ったことが?」と問い掛けると、そこでシーンが切り替わる。
断酒会でスーザンが「知らない家で目覚めて、隣の男のことも分からなかった」と話しているので、そこを前フリに使い、「ペリーに口説かれて簡単に寝ちゃう」というギャグにするのかと思ったが、そうではなかった。
翌日のシーンで、スーザンはペリーに弁償を求めて憤慨している。
だったら、シーンを切り替えるタイミングが変でしょ。

っていうかさ、そのエピソードって、まるで要らないよね。断酒会でハロルドをスーザンと遭遇させるなら、そこで口説く流れにした方がいいんじゃないのか。
そんで「弱みに付け込んで口説こうとするハロルドをスーザンが非難する」→「簡単に諦めるので逆に興味を持つ」という手順を消化すれば、それで成立しちゃうでしょ。
ペリーとのトラブルでスーザンが銀行へ行き、そこでハロルドが彼女を口説く流れにしてあるのは、無駄な手順に感じてしまうのよ。
「ペリーとヘレンの夫婦関係を描く」という意味はあったのかもしれないけど、そこに重要性も見出せないし。

スーザンがペリーとヘレンに新居を紹介するシーンは、「スーザンがハロルドの求婚を受け入れるきっかけ」として用意されているんじゃないかと思う。
でも、あまり上手く連動していない。
ペリー&ヘレンにしろ、ジョーンズ&ナディーンにしろ、夫婦関係を描くシーンは、そんなに必要性を感じないが、艶笑コメディーの中で「夫婦の在り方」というテーマを描き出そうとしているのかもしれない。
だとしても、それを上手く表現できているわけではないが。

スーザンはハロルドからプロポーズされたことを友人たちに相談するシーンで、「私には時間が無いの」と言っている。
なので余命わずかな重病でも患っているのかと思ったりもしたが、そういう設定は無い。他の事情が用意されているわけでもない。
そうなると、なぜ「一刻も早く子供が欲しい」と熱望するのか、それが良く分からない。
後半に入ってから「実は」という形で明らかにされて、それがハロルドの変化に繋がるようなドラマでもあれば作品の質を向上させる力にもなっただろうが、そんな展開など無い。

ハロルドはスーザンを妊娠の道具としか捉えておらず、冷たい態度に腹を立てた彼女に責められても態度を改めない。グレイドンから他の女を探すよう指示され、すぐに従う。スーザンが妊娠した途端に喜ぶが、もうセックスする必要が無いので触らなくなる。
そういうのをコメディーとして描いているのは分かるのだが、ちっとも笑えない。
それどころか、だんだん不愉快になってくる。
ハロルドが「一切の感情を持たず、生殖のためだけに地球へ来た異星人」という設定なのは分かっているが、上手く笑いに落とし込めていない。

スーザンが妊娠すると、ハロルドは彼女に触らなくなる。
スーザンはハロルドに腹を立てるが、そこから夫婦が不仲になるような展開に入るわけではない。シーンが切り替わると、普通に仲良くしている。
その後、ハロルドがペリーに激怒して殴り付け、スーザンの前で我を失ったことを後悔するシーンがある。
でも「ハロルドが人間的な感情を表現する」という変化を示すのなら、それはスーザンとの関係を描く中でやるべきだろ。なんで「スーザンへの恋愛感情が芽生えた」ってトコじゃなくて、同僚への怒りなんだよ。

ハロルドはスーザン&産まれてくる子供との生活のため、新居を購入する。ってことは「地球に残ってスーザンとの結婚生活を続けよう」という気持ちに変化したのかと思ったら、スーザンが出産した直後に地球を去ってしまう。
どういうことなのかサッパリ分からんぞ。
母星に戻った彼は仲間に「地球人を征服するよりも学ぶべき」と説いているが、ってことは完全に感情が芽生えて大きく変化しているんでしょ。なのにスーザンとは暮らさないのかよ。
ハロルドの動かし方が、まるで腑に落ちないモノになっているぞ。

(観賞日:2021年5月29日)

 

*ポンコツ映画愛護協会