『7つの贈り物』:2008、アメリカ

トーマスは911に電話を掛け、泣きながら「自殺者がいるんだ」と言う。「誰です?」とオペレーターに訊かれた彼は、「僕だ」と答えた。近くに置いてあるメモに、トーマスは視線を向ける。そこには「ベン。これが第5地域の候補者だ。私の名前は出すな」と書かれている。大勢の名前が列記されているリストの中で、エズラ・ターナーの箇所に丸が付けてある。トーマスは食肉会社に電話を掛け、オペレーターのをしてエズラに豚肉のことで文句を付ける。彼は侮辱的な言葉を浴びせるが、エズラは穏やかな口調で対応する。
エズラから名前を問われたトーマスは、「ベン・トーマス」と答える。名前を調べたエズラは、トーマスからの注文が無いことを知る。それを指摘されたトーマスは、エズラが盲目であることまで馬鹿にする。それでもエズラは穏やかな対応を崩さず、トーマスの挑発的な言葉には乗らない。電話を切った後、トーマスは泣きそうになるのを堪える。彼は「ケン・アンダーソン、ニコル・アンダーソン、アリー・アンダーソン、エド・ライス、スティーヴン・フィリップス、モニカ・フリーマン、サラ・ジェンセン」と数名の名前を繰り返し、室内の物を投げて荒れた。
深夜、トーマスは財務省国税庁のオフィスへ行き、コンピュータでエミリー・ポーサという女性のデータを確認する。翌日、トーマスがエミリーの家を訪れると、隣人女性が「また検査で病院へ行ってるわ」と教える。聖マシュー病院を訪れたトーマスは、体調の悪そうなエミリーとエレベーターで遭遇する。面会時間は終了していたが、トーマスは病室のベッドで休む彼女の様子を密かに観察した。
トーマスは停めた車の中で佇みながら、航空エンジンのセールスについて社員たちに講釈した時のこと、妻のサラと一緒にいた時のことを回想した。次の朝、トーマスの携帯に弟から電話が入った。自宅の電話線は抜いてある。弟はトーマスに、「少し前、ウチに泊まった時、間違えて俺の物を持ち帰らなかったか?」と尋ねる。トーマスは質問に答えず、「俺の物をお前にあげた。覚えてるか」と問い掛けた。弟は「ああ、覚えてる」と告げた。
老人介護施設を訪れたトーマスは、受付係に国税庁職員の身分証を見せる。院長のスチュワート・グッドマンは税金を滞納していたが、面会に来たトーマスに「ここの運営費は大幅に削減した。私は骨髄移植が上手く行かなかったんだ。1月にはボーナスも出るから、半年だけ支払いを待ってほしい」と頼んだ。院長室を出たトーマスは、入居している老女のアイネズを訪ね、「グッドマンが良い人かどうか教えてほしい」と求めた。アイネズが虐待されていると知ったトーマスはグッドマンに詰め寄り、「入居者に敬意を払え。支払いの猶予は無い。お前には何も与えない」と鋭く言い放った。
トーマスは弁護士をしている友人のダンと会い、「15日に連絡をくれるはずだ。もう19日だぞ」と言う。ダンは「医者から連絡が来なくて情報が無いんだ。それに、まだ心が決まってない」と釈明した。トーマスは「考えるな。計画なんだ。約束を守れ」と説いた。エミリーは病院の食堂でトーマスが自分を見ているのに気付き、声を掛けた。トーマスは国税局から調査に来たのだと説明し、税金の滞納を指摘する。エミリーが「退院になったので、家に帰りたいんだけど」と言うと、トーマスは「では、また連絡する」と告げて去った。
トーマスはモーテルにチェックインし、オーナーのラリーに「2週間ほど宿泊する」と告げた。トーマスは部屋に入ると、持ち歩いている新聞記事のスクラップをじっと眺めた。それは、ハイウェイの事故で7人が犠牲になったことを報じる記事だった。トーマスは少年アイスホッケーの練習をしている現場へ赴き、その様子を密かに見学した。コーチのジョージが、熱心な様子で子供たちに教えていた。
トーマスはエミリーの家を訪れ、彼女が先天性の心臓疾患を抱えて移植リストに掲載されていること、しかし「自分には貰う資格が無い」と医者に言っていたことを指摘した。エミリーが移植を遠慮している理由は、「パッとしない人生を送っているから」というものだった。トーマスは「当面は貴方の税金を徴収不能ということにしておく。5〜6ヶ月は追徴金が免除されるだろう」と言い、名刺を差し出す。そして「国税庁の誰かがせっついたら、連絡してくれ」と告げた。「どうして私を特別扱いしてくれるの?」とエミリーに問われた彼は、「貴方には、その資格があると感じたからだ」と述べた。
トーマスはラリーに手伝ってもらい、モーテルの部屋にハブクラゲを運び込んで飼い始めた。トーマスはハブクラゲを眺めながら、それを初めて水族館で見た12歳の頃を回想する。その時に父親は「ハブクラゲは世界で最も強い毒を持った生物だ」と解説したが、トーマスは「最も美しい生物」と感じた。トーマスはダンから、「医者と話した。お前の資料は午前中に届く」と聞かされる。トーマスは書類を確認し、約束を守るよう念を押す。ダンは揺れる感情を見せながら、「こんな頼みは普通じゃないが、約束は守る」と告げた。
トーマスは役所の児童福祉課を訪れ、旧知の仲である職員のホリーと久々に再会した。トーマスはホリーに、「頼みがある。データにある名前を知りたい。酷く辛い目に遭って助けが必要なのに、施しを求めない人だ」と告げた。「何がしたいの?」とホリーが訊くと、彼は「人助けだ」と口にした。ホリーはトーマスに、コニー・ティポスという女性の存在を教えた。コニーは別れ話を切り出して恋人から暴力を振るわれ、殺されそうになっていた。しかしコニーが怯えて告訴しないため、何も手を打てないのだという。
トーマスは2人の子供を育てているコニーの元を訪れ、「貴方を助けたい」と持ち掛けた。コニーが「出て行って。誰も信用しない」と強い拒絶反応を示すので、トーマスは「ホリーから君のことを聞いた」と言う。彼は「君たちを逃がしてやる」と持ち掛けるが、コニーは「出て行かないと警察を呼ぶわよ」と声を荒らげる。トーマスは名刺を置き、「ここに連絡してくれ」と告げて立ち去った。トーマスは弟からの電話で「すぐに話したいことがある」と求められるが、「今は無理だ」と告げて切った。
人工透析を受けているジョージが手術を受ける日、トーマスは病院を訪れる。ジョージは寄付者を募り、選手を大学に通わせる奨学金の資金を集めていた。トーマスはジョージから「何度も尋ねるが、なぜ私なんだ?」と問われ、「誰も見ていない所でも、貴方がいい人だからだ」と答えた。トーマスはエミリーの家に電話を掛けるが、何も言わなかったので切られてしまった。エミリーは飼い犬デュークの散歩から戻った玄関先で倒れ、目撃していた隣人が救急車を呼んだ。
トーマスは休日のエズラを尾行し、その行動をチェックした。コーヒーショップに立ち寄ったエズラの様子を見ていたトーマスは、彼がウェイトレスのスーザンに好意を寄せていると見抜いた。トーマスはエズラに声を掛け、「デートに誘えば成功するかも」と促す。しかしエズラは、「私なんか眼中に無いよ」と消極的だった。トーマスはエミリーからの電話を受け、彼女が呼吸困難で倒れて病院へ運ばれたことを知った。エミリーが「何か話して」と頼むので、彼はティムという少年のことを語る。ティムが幼い頃に弟から紙飛行機作りを何度もせがまれたこと、木に登って飛ぼうとしたこと、やがて宇宙船を作ることに人生を捧げるようになったことを話しながらトーマスが病室へ行くと、エミリーは眠りに落ちていた。
翌朝、エミリーが目を覚ますと、ベッドの傍らでトーマスが眠っていた。トーマスが目を覚ましたところへ、エミリーの主治医ブライアーがやって来た。ブレアはエミリーに、心臓が肥大していて余命が長くないことを宣告した。弱気になったエミリーは、トーマスに「何も用が無ければ一緒にいてくれない?」と頼む。トーマスは「いいよ」と穏やかに告げた。彼はデュークの世話を引き受けてモーテルに連れ帰り、ラリーに文句を言われても聞き流した。
トーマスの元に、コニーが泣きながら電話を掛けて来て助けを求めた。トーマスはコニーに「弱気になるな。新しい人生を見つめるんだ」と告げて車を渡し、指示した住所へ行くよう促した。コニーが子供たちを車に乗せて向かうと、そこは海辺の大きな家だった。トーマスが彼女に渡しておいた封筒には、契約書と手紙が入っていた。手紙には「契約書にサインすれば、その家は君の物だ。誰に貰ったかは秘密にして、二度と僕には連絡するな」と書かれていた。
トーマスは退院したエミリーを車に乗せ、自宅まで送り届けた。エミリーが故郷や出身大学について尋ねるとトーマスは答えるが、「恋愛の経験は?」という質問を受けると顔を強張らせた。トーマスが急に拒絶姿勢を示したので、エミリーは不愉快そうに車を降りた。翌日、庭の草むしりをしているトーマスを見つけたエミリーは、離れの作業部屋に案内する。そこには古い印刷機械が幾つか置いており、彼女はグリーティング・カードの凸版印刷をしていたことを話した。しかし機械の1つは故障して使えないのだという。
エミリーはトーマスと散歩に出掛け、長く生きられたら叶えたい夢が幾つもあることを語った。トーマスとエミリーは、互いに恋心を抱くようになっていた。トーマスはエミリーに気付かれないように作業部屋へ舞い戻り、機械を修理した。トーマスは黒人少年のニコラスに骨髄を提供し、衰弱してモーテルへ戻った。エミリーから電話で「家に来ない?」と誘われ、トーマスは出掛けて行く。エミリーは彼にシャツをプレゼントし、ディナーを振る舞った。
夕食を終えた後、エミリーは好きな曲を掛けてトーマスをダンスに誘った。トーマスは「驚かせることがある」と言い、彼女を作業部屋へ連れて行った。修理された機会を見て感激したエミリーは抱き付き、トーマスは彼女とキスを交わす。トーマスは「すぐに戻る。ちょっと待ってて」と言い、車に戻る。そこへ弟が現れ、「説明しろ。国税庁税収員の照会記録は全て残るんだぞ。役人に成り済ますのは重罪だ」と詰め寄った。彼はトーマスを「ティム」と呼び、トーマスは弟を「ベン」と呼んだ…。

監督はガブリエレ・ムッチーノ、脚本はグラント・ニーポート、製作はトッド・ブラック&ジェームズ・ラシター&ジェイソン・ブルメンタル&スティーヴ・ティッシュ&ウィル・スミス、共同製作はモリー・アレン&クリシー・ブルメンタル、製作総指揮はデヴィッド・クロケット&デヴィッド・ブルームフィールド&ケン・ストヴィッツ&ドメニコ・プロカッチ、製作協力はトレイシー・ナイバーグ、撮影はフィリップ・ル・スール、編集はヒューズ・ウィンボーン、美術はJ・マイケル・リーヴァ、衣装はシャレン・デイヴィス、音楽はアンジェロ・ミッリ。
出演はウィル・スミス、ロザリオ・ドーソン、ウディー・ハレルソン、バリー・ペッパー、マイケル・イーリー、エルピディア・カリーロ、ビル・スミトロヴィッチ、ロビン・リー、ティム・ケルハー、ジョセフ・A・ヌネス、ジーナ・ヘクト、アンディー・ミルダー、ジュディアン・エルダー、サラ・ジェーン・モリス、マディソン・ペティス、アイヴァン・アングロ、オクタヴィア・スペンサー、シンシア・ルーブ、ジャック・ヤン、クインティン・ケリー、ルイーザ・ケンドリック他。


『幸せのちから』のガブリエレ・ムッチーノ監督とウィル・スミスが再びタッグを組んだ作品。
グラント・ニーポートは本作品が映画初脚本。
トーマスをウィル・スミス、エミリーをロザリオ・ドーソン、エズラをウディー・ハレルソン、ダンをバリー・ペッパー、ベンをマイケル・イーリー、コニーをエルピディア・カリーロ、ジョージをビル・スミトロヴィッチ、サラをロビン・リー、スチュワートをティム・ケルハー、ラリーをジョセフ・A・ヌネスが演じている。 他に、ブライアーをジーナ・ヘクト、ジョージの担当医をアンディー・ミルダー、ホリーをジュディアン・エルダー、スーザンをサラ・ジェーン・モリスが演じている。

最初の内、トーマスがどういう人物なのかはボンヤリしているし、何を目的として動いているのかは良く分からない。
そんな中で、7人の名前を口にして荒れるとか、国税庁職員の身分証を持っているのに回想シーンでは航空エンジンのセールスについて会社で喋っているとか、妻のサラについて回想するとか、7人が死亡したハイウェイ事故の記事を持ち歩いているとか、幾つかのヒントを散りばめつつ、彼が数名の人物と接触する様子が描かれていく。
3分の1ほど経過した辺りで、理由は分からないが、彼が人助けをしようとしていることは何となく見えてくる。そして、その助ける相手は知り合いではなくて「困っているのに助けを求めようとしていない人」の中からランダムに選んでいること、助けるにふさわしいかどうかをチェックするためにトーマスが対象と会っていることも分かって来る。
それが見えてから遡ることで、エズラに対して侮辱的な言葉を浴びせたのも彼の反応を確かめるためだったんだろうってことが推測できる。

トーマスの行動にはハイウェイでの事故が絡んでいること、どうやら彼が加害者であること、その事故でサラも死んでいることも推測できる。トーマスが国税庁のオフィスでコンピュータを操作するのは深夜であり、他の職員はいないことから、それが不法侵入であることも何となく推測できる。弟が「俺の物を間違えて持ち帰らなかったか」と尋ねていることから、その弟が本物の国税庁職員であること、トーマスが弟の身分証を盗み出したことも推測できる。
もちろん製作サイドはとしては意図的に、色んなことを内緒にしたままミステリーとして進めているわけだ。
ただ、それが効果的に作用しているかというと、そこは微妙なところだ。
最初から陰気な雰囲気が充満しているし、あまり起伏も付けずに淡々と進んでいくということも手伝って、むしろ観客の興味を惹き付けるよりも、退屈を誘うことに繋がる可能性が高いんじゃないかと思ったりもする。
ネタを明かさずに進めているせいで、トーマスの苦悩や葛藤に全く入り込めないし。

冒頭、「神は7日間で世界を救った。僕は7秒で人生を叩き壊した」というトーマスのナレーションが入るが、その言葉には重要な意味が込められていて、それが終盤になって明らかにされる。
「7」という数字がポイントで、トーマスは脇見運転で7人を殺してしまい、7人の人々に対して贈り物をする。
まず弟のベンに肺葉、ホリーには肝臓、ジョージに腎臓、ニコラスに骨髄、エズラに角膜、エミリーに心臓。コニーには臓器ではないが、自分の住んでいた家をプレゼントしている。
贈り物の全てが臓器じゃないってのは、ちょっと中途半端に感じる。それと、「7人を殺したから贈り物の対象も7人に」ということをトーマスが最初から決めていたのか、それとも結果的に7人なのか、説明が無いのでボンヤリしているってのはどうかと思う。
ただし、それらの問題は、大して重要なことじゃない。軽くスルーしても一向に構わない。
それ以前の問題が、本作品には含まれている。

トーマスは一応、人助けをするために行動しているわけだ。
単純に「事故で7人を死なせた罪滅ぼし」というのが動機なのか、それとも「妻が死んだので生きている意味が見出せず、半ば自暴自棄になっている」とか「妻の後を追って死にたい」という意識が強く含まれているのか、それは分からない。
いずれにせよ、自殺して臓器を提供したトーマスの行動は、「素晴らしい自己犠牲の精神」とか「慈愛に満ちている振る舞い」と称賛する気になれない。
むしろ、違和感と嫌悪感しか抱くことが出来ない。

トーマスの行動を「事故の贖罪」として捉えると、「なぜ被害者遺族に対してではなく、無関係の人々に奉仕するのか」と言いたくなる。
彼が何よりも取るべきなのは、被害者遺族に対する罪滅ぼしの行動ではないかと。
それをやった上で「まだ自分の犯した罪を償うには不足している」と考えて、他の人々を助けるための行動に走るなら分からんでもないけどさ。
で、「贖罪とは無関係にやっている慈善活動」として捉えた場合、「その前に被害者遺族に対して何か行動しろよ」と言いたくなるし。

それと、事故の贖罪と人助け、どっちの気持ちで動いているにせよ、奉仕する対象を7人に限定する意味が無いんだよね。
もちろん「自分が死なせた相手が7人だから、助ける相手も7人で」ということなんだろうとは思うけど、「困っている人を助けたい」ということならば、7人に限定せず、もっと多くの人々を助けるべきでしょ。
そして、そのためには、簡単に自殺なんかしちゃダメでしょ。
生きていれば、もっと多くの人々を救うことが出来るはずなんだから。

人助けの方法が「自ら死を選ぶことで臓器を提供する」ってのは、「なんでやねん」と言いたくなる。
そうなると、やはり人助けというのは建て前であり「自殺するための言い訳」に過ぎない、単なるエゴイスティックな行動にしか思えないのだ。
確かカトリックだと自殺者は天国へ行けないことになっているが、「こういう自殺なら天国へ行ってもいいんじゃないか」という提起のつもりなんだろうか。
どういうつもりかは知らないけど、精神的に追い詰められて自殺する奴より、偽善が入っている分、トーマスの方が遥かにタチが悪い。

エミリーとエズラは、どうやらトーマスが自殺したことで臓器を自分たちに提供したのだと知っている様子だ。そもそもトーマスは手紙を残していたしね。
で、「自分に臓器を提供した相手が、そのために自殺していた」と知ったら、どう思うだろうか。素直に感謝する気持ちになれるだろうか。
それよりも、罪悪感を抱いたり、気持ちが悪いと感じたりするんじゃいだろうか。
あと、ハブクラゲの風呂に入って毒で死亡するという自殺の手口に関しては、「そんなヘンテコな方法を取る意味は何なのか」と言いたくなる。

(観賞日:2014年4月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会