『ナイスガイ』:1997、香港&アメリカ&オーストラリア

香港からオーストラリアに移住してきたジャッキーは、テレビの料理番組に師匠バッジオと共に出演している人気シェフ。ある日、彼は黒服の男達に追われている女性・ダイアナを助けた。ダイアナは報道記者で、ジャンカルロが率いるマフィアとサンディが率いる麻薬シンジケートとの取引と、ジャンカルロの殺人現場をスクープしていた。
だが、ダイアナの撮影したビデオテープは、ジャッキーの番組を収録したテープと入れ替わってしまった。ジャンカルロの部下達は、公開料理ショーに出演中のジャッキーを襲撃する。だが、ジャッキーはテープが入れ替わったことに全く気付いていなかった。しかも、テープはバッジオの息子の刑事ロメオの子供達が持ち去っていた。
ジャッキーが香港から来ていた恋人ミキを連れてマンションに戻ると、テープを探しに侵入していたダイアナがアシスタントのラキーシャと揉めていた。仲間をジャンカルロに殺された麻薬シンジケートの連中が襲ってきたため、ジャッキー達は逃走する。だが、サンディ達はミキを誘拐し、テープを渡すようジャッキーを脅迫してきた…。

監督はサモ・ハン・キンポー、脚本はエドワード・タン&フィービー・マー、製作はチャイ・ラン、製作総指揮はレナード・ホー、撮影はレイモンド・ラム、美術はホレス・マー、編集はピーター・チュン、音楽はピーター・カム。
主演はジャッキー・チェン、共演はリチャード・ノートン、ミキ・リー、カレン・マクリーモント、ガブリエル・フィッツパトリック、ヴィンス・ポレット、バリー・オットー、サモ・ハン・キンポー、エミール・チョウ、ジョイス・コウ、ピーター・ホートン、ピーター・リンゼイ、デヴィッド・ノー、レイチェル・ブレイクリー、ジュディ・グリーン他。


オーストラリアでフル・ロケーションを行った、ジャッキー・チェンの初の全篇英語セリフ作品。ジャッキーの他、ジャンカルロ役でリチャード・ノートン、ミキ役でミキ・リー、ラキーシャ役でカレン・マクリーモント、ダイアナ役でガブリエル・フィッツパトリック、ロメオ役でヴィンス・ポレット、バッジオ役でバリー・オットーが出演している。

シナリオは香港アクション映画にありがちなグダグダっぷりをさらけ出しており、作りは思いっきり雑。ジャッキーが料理人という設定が全くの無意味だったり、固定された場所から撮影したはずのビデオテープの映像のアングルが切り替わったりと、荒っぽいったらありゃしない。
最初から、細かい配慮をする気はゼロなんだろう。

ヒロインの役割を1人に与えず、3人の女優に分散させている。ジャッキーはこの映画以前にも『プロジェクト・イーグル』や『シティハンター』など幾つかの作品で、ヒロイン複数制を採用している。主人公はモテモテじゃないとダメってことなんだろう。
しかも複数というだけではなく、アジア系(ミキ・リー)、黒人(カレン)、白人(ガブリエル)と色分けもバッチリだ。おそらく世界市場でのヒットを狙ってのことだろう。他の作品では、人気の高い日本のマーケットを考えて、日本のタレントを起用したりもしているし。
スッキリまとめるためには、ダイアナだけで充分だ。ミキは敵に捕まってキャーキャー言ってるだけだし、ラキーシャは適当にウロウロしてるだけ。この2人を削除して、ダイアナの出番を増やした方が絶対に内容が良くなるはず。しかし、最もヒロインにふさわしいダイアナが、終盤は病院でおネンネしており、物語から消えているという始末。

役割が分散しているのはヒロインだけでなく、敵も同じく。ストーリーは単純なのに、そんな余計な部分でややこしくしている。しかも、シンジケートのサリーはジャッキーと戦う前に、なし崩し的に悪役のポジションを放棄してしまう。
敵の行動にしても、例えば麻薬シンジケートはマンションを爆破するんだから、いったいテープを取り戻したいのか、ジャッキーを殺したいのか、何がしたいんだか良く分からない。ジャンカルロにしても、終盤になって「テープはもういい。ジャッキー達を始末しろ」とか言い出す始末。とりあえず、頭はあんまりよろしくないようだ。

で、やはり最大のセールスポイントはアクションシーンになるわけだが、さすがにシャッキーも何作も映画を撮っているので、街を舞台にしたアクションのバリエーションも尽きてきたのか、どこかで見たようなシーンの焼き直しになってしまう。
クライマックスを巨大トラックの迫力や原因不明の爆破に頼らなければならないというのは、そろそろジャッキーも肉体を酷使したアクロバットや格闘アクションが辛くなってきているってコトだろうか。どうやらスタントマンも使ってるようだし。

実は今作品の見せ場は、ゲスト出演者の登場シーンかもしれない。
料理ショーの場面では、観客席にジョイス・コウがいる。エミール・チョウはアイスクリーム売りで登場。そしてサモ・ハンは自転車で登場し、ちょっとしたアクションも見せている。

 

*ポンコツ映画愛護協会