『ネバーエンディング・ストーリー』:1984、西ドイツ&アメリカ

空想癖のあるバスティアン少年は母を亡くし、父と2人で暮らしている。ある日、いじめっ子3人組に追われたバスティアンは、書店に駆け込んだ。老店主は相手が子供と知ると追い払おうとするが、たくさんの本を持っていると聞き、態度を変えた。
老店主は、『ネバーエンディング・ストーリー』という特別な本を読んでいた。バスティアンは強い興味を抱くが、それは子供には向かない本だと老店主は告げた。バスティアンは老店主が電話で席を外した隙に、その本を持って書店を飛び出した。
学校に行ったバスティアンは授業も受けず、屋根裏部屋に入って『ネバーエンディング・ストーリー』を読み始めた。それは、ティーニー・ウィーニーやナイト・ホブ、ロックバスターといった不思議な者達が暮らす、ファンタージェンという世界の物語だった。
ファンタージェンでは虚無が広がり、国が滅びようとしていた。人々は象牙の塔に住む女王に助けを求めるが、彼女は重い病に伏せっていた。治療法を見つけ出せるのは、アトレーユという少年だけだ。彼は女王の代理の印“アウリン”を受け取り、旅に出た。
アトレーユは生きた化石モーラに会い、南のお告げ所に行くよう告げられる。悲しみの沼で意識を失ったアトレーユは、ドラゴンのファルコンに助けられた。お告げ所に到着したアトレーユは、女王の病を治療するには、新しい名前が必要だと告げられる。ただし、新しい名前を女王に与えることが出来るのは、人間の子供だけだというのだ…。

監督はウォルフガング・ペーターゼン、脚本はウォルフガング・ペーターゼン&ヘルマン・ヴァイゲル、製作はベルント・アイヒンガー&ディーター・ガイスラー、共同製作はギュンター・ローバッハ、製作協力はクラウス・ケーラー、製作総指揮はマーク・デイモン&ジョン・ハイド、撮影はヨスト・ヴァカーノ、編集はジェーン・ザイツ、美術はロルフ・ツェートバウアー、衣装はディームート・レミー、コンセプチュアル・アーティストはウル・デ・リコ、特殊効果監督&視覚効果監督はブライアン・ジョンソン、音楽はクラウス・ドルディンガー&ジョルジョ・モロダー、主題歌はリマール。
出演はノア・ハサウェイ、バレット・オリヴァー、タミー・ストロナッハ、モーゼス・ガン、パトリシア・ヘイズ、シドニー・ブロムリー、ジェラルド・マクレイニー、ドラム・ギャレット、ダリル・クックセイ、ニコラス・ギルバート、トーマス・ヒル、ディープ・ロイ、ティロ・プルックナー他。


ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』を映画化した作品。
ただし、ミヒャエル・エンデは、この映画を見て「原作を全く理解していない」と激怒し、裁判まで起こしている。
そのため、原作者ミヒャエル・エンデの名前は映画のクレジットから外されている。

バスティアンは終盤まで、ただ本を読んでいるだけで、つまり単なる傍観者に過ぎない。苦難の旅を続けるのは、アトレーユだ。
せめて中盤辺りでバスティアンがファンタージェンに入り込み、冒険に参加しないと、彼の主人公としての存在価値は無いのではないか。
そこは、別に自分の意志ではなく、巻き込まれてしまった形でいいから。

女王は「ずっとアトレーユと共に旅をしていた」と言うが、そうじゃない。
バスティアンは終盤に女王と出会うまで、ただ本を読んで騒いでいるだけだ。
彼は空想に浸っていただけで、生身の体で冒険の苦しみ、痛みを体験したわけではない。

バスティアン本人は空想癖が強いので、冒険に参加している気持ちになっているが、実際は何もしていない。
サンドウィッチを食べかけて「まだ旅は長い。残しておこう」とか言われても、アンタは旅なんかしてないっつーの。
完全に、おバカさんにしか見えない。

アトレーユの旅は、実は「人間の子供を引き寄せるためのもの」だったことが終盤に明かされる。
つまり、苦難の旅を続けて必死になって国を助けようとしたのに、彼は単なるエサに過ぎなかったわけだ。
なんか、アトレーユって哀れだよなあ。

で、結局、ファンタージェンは救えていない。
そんで、「またファンタージェンを誕生させるために何か願い事をしなさい」と言われて、バスティアンが取った行動が、ファルコンに乗っていじめっ子3人組を追い掛けること。
どこに夢や希望があるのよ。
最低じゃん。

バスティアンが、自分と同じぐらいの少年アトレーユが困難に立ち向かう様子に感銘を受け、自分も現実社会で勇気を持って一歩前に踏み出すという形になるべきではないのか。
それが、ファルコンでいじめっ子を追い掛けて大喜びって、んなアホな。

自分の力で何かを解決しようとするのではなく、空想の産物に完全に頼って報復するなんて、全く何も成長していないではないか。
むしろ考え方が退化しているんじゃないか。
たぶん、話なんてどうでもよくて、ただファンタジー世界や生物をSFXで見せたかっただけなんだろうな。
そうじゃなかったら、あんなエンディングは作れないよ、普通。

 

*ポンコツ映画愛護協会