『ネバーセイ・ネバーアゲイン』:1983、アメリカ&イギリス&西ドイツ

ジェームズ・ボンドは上司Mの指示を受け、シュラブランド療養所へ出向いた。看護婦とベッドインした彼は、1人の患者の不審な行動を目撃する。その患者ジャック・ペタチ大尉は、ブロフェルドが率いる世界的犯罪組織スペクターの協力者だった。ペタチの右目の眼球は、手術によって大統領と一致するようになっていた。
スペクターの殺し屋ファティマはボンドに気付き、刺客を差し向けた。ペタチは基地へ行き、大統領として核ミサイルの発射命令をコンピューターに命じた。スペクターは発射された核ミサイルを誘導し、海中に降下させて回収した。
スペクターはNATO諸国に対し、年間石油購入予算の25パーセントの金を渡さねば、7日後にミサイル2機を爆破すると脅迫した。Mからミサイル回収を命じられたボンドは、新兵器開発担当者のQから秘密兵器を受け取った。
ラルゴの豪華ヨットが停泊しているバハマへ飛んだボンドは、大使館員スモール=フォーセットに迎えられた。ボンドの到着を知ったファティマは彼に近付き、鮫や爆弾を使って命を狙う。何とか回避したボンドは、ラルゴを追って南フランスへと向かった。
ニースに入ったボンドは、CIA局員フェリックス・ライターと英国情報部員ニコールに会う。ボンドは、ラルゴの愛人ドミノがペタチの妹だと知った。ボンドはラルゴが開く慈善パーティーに出向いてドミノに接触し、「君の兄はラルゴに殺された」と告げる。
ボンドはニコールを殺害したファティマを追跡し、万年筆銃で倒した。ボンドはラルゴのヨットに忍び込むが、アフリカのパルマイラにある島で拘束される。ラルゴは「ミサイルの1つはワシントンにある」と言い残し、その場を立ち去った。
脱出したボンドは、ドミノを救出した。ボンドの連絡で、ワシントンのミサイルは発見された。ボンドは、「アラーの涙」という場所の地形が、ドミノのペンダントの模様と同じだと気付く。ボンドは、残り1つのミサイルが「アラーの涙」にあると確信する…。

監督はアーヴィン・カーシュナー、原作はイアン・フレミング、映画原案はケヴィン・マクローリー&ジャック・ホイッティンガム、脚本はロレンツォ・センプルJr.、製作はジャック・シュワルツマン、製作協力はマイケル・ドライハースト、製作総指揮はケヴィン・マクローリー、撮影はダグラス・スローカム、編集監修はロバート・ローレンス、美術はフィリップ・ハリソン&スティーヴン・グライムス、衣装はチャールズ・ノード、音楽はミシェル・ルグラン。
主演はショーン・コネリー、共演はクラウス・マリア・ブランダウアー、マックス・フォン・シドー、エドワード・フォックス、バーバラ・カレラ、キム・ベイシンガー、バーニー・ケイシー、アレック・マッコーエン、パメラ・セイラム、ローワン・アトキンソン、ヴァレリー・レオン、ミロウ・キレク、パット・ローチ、アンソニー・シャープ、プルネラ・ギー、ギャヴァン・オハーリヒー他。


007シリーズの番外編。
なぜ番外編かというと、シリーズを作っていたイオン・プロが製作した映画ではないからだ。原作『サンダーボール』は、かつて『007/サンダーボール作戦』として映画化されているが、この小説の映画化権を持つケヴィン・マクローリーが、その権利をジャック・シュワルツマンに売って出来たのが、この映画。

ジェームズ・ボンドを演じるのは、ショーン・コネリー。
彼はシリーズ5作目『007は二度死ぬ』で降板した後、6作目『女王陛下の007』のジョージ・レーゼンビーが不人気だったため、7作目『ダイアモンドは永遠に』で1作だけ復帰して、ボンド役を降りている。

そもそもは3代目ボンドのロジャー・ムーアがシリーズ第12作『007/ユア・アイズ・オンリー』で降りた後、この映画に出演するという話だったらしい。しかし、そのムーアは今作品には出演せず、シリーズ第13作『オクトパシー』に出演している。

ラルゴをクラウス・マリア・ブランダウアー、ブロフェルドをマックス・フォン・シドー、Mをエドワード・フォックス、ファティマをバーバラ・カレラ、ドミノをキム・ベイシンガー、ライターをバーニー・ケイシー、Qをアレック・マッコーエン、スモール=フォーセットをローワン・アトキンソンが演じている。
アンクレジットだが、まだ俳優として売れる前のスティーヴン・セガールが、マーシャル・アーツのインストラクターを担当している。
ちなみに、番外編なので、御馴染みのテーマ曲は流れない。使いたくても、権利の関係で使えないのよ。

ボンドがロールカーテンを開けてしまって敵に見つかるなどのマヌケっぷりを見せるとか、スーツケースの中身がキャビアやフォアグラだというバカなシーンがあったりとか、万年筆銃やレーザー付き時計のような秘密兵器が登場するとか、楽しめる要素が無いわけではないが、全体としては凡庸な出来映えというところか。
ヒロインはキム・ベイシンガーだが、典型的ボンド・ガールらしく、ただのセクシー要員で終わる。一方、バーバラ・カレラは活躍。大蛇を使ってペタチを事故死させ、ボンドを脅して「キミのとセックスは最高だった」と書かせようとする。いいねえ。
わざわざブロフェルドにマックス・フォン・シドーを持って来ているが、ラルゴが悪役なので、そんなに出番は多くない。あと、そのラルゴがボンドとコンピュータ・ゲームで戦うシーンは、ゲーム画面を見ても何がどうなって勝ちなのか全く分からない。

さて、12年ぶりにボンド役に復帰したショーン・コネリーだが、「なんで復帰しちゃったのよ」というのが正直な感想。既に頭髪が淋しくなっていたコネリーは、ヅラまで装着して張り切っているのだが、頭は隠せても、体の衰えは隠し切れない。巨漢の男とトレーニング室で戦う時の姿なんて、「日曜日のお父さん」みたいに見えちゃう。
大体、『ダイアモンドは永遠に』の時点で既に完全なるオジサン状態だったのに、それから12年も経過しているのだから、もっと老けているのは当然だ。
「やっぱりボンド役はコネリー」という熱烈なファンの声を受けての復帰らしいが、う〜む。たぶん、ボンドを降板してから仕事が思ったほど上手く行ってないとか、事情はあったんだろうけどさ。

 

*ポンコツ映画愛護協会