『ノウイング』:2009、アメリカ&イギリス&オーストラリア

1959年、マサチューセッツ州レキシントン。ウィリアム・ドーズ小学校に通う少女ルシンダは、教室に入るよう担任のミス・テイラーに 言われても、無表情で太陽を見つめ続けていた。小学校では創立記念日にイベントを催すことになり、クラーク校長が生徒からアイデアを 募集していた。選ばれたのはルシンダのアイデアで、タイムカプセルを埋めることになった。50年後の未来を想像し、生徒たちが絵を描く 。タイムカプセルを開けた50年後の小学生たちが、それを見るというものだ。
生徒たちが絵を描く中、ルシンダだけは何かに憑依されたかのように数字の羅列を書き殴った。ホームルームが終わってもルシンダが手を 止めなかったため、テイラーは彼女から紙を回収した。創立記念日の式典が進む中、ルシンダは現場から姿を消した。テイラーが捜すと、 ルシンダは体育館の下の物置に隠れていた。ルシンダは爪から血を流しており、壁には血で数字が書かれていた。ルシンダは震えながら、 テイラーに「やめさせて。囁くのを、やめさせて」と懇願した。
現在。マサチューセッツ工科大学(MIT)の宇宙物理学者ジョン・ケストラーは妻を亡くして以来、小学生の息子ケイレブと2人で生活 していた。ジョンもケイレブも、まだ心の傷を抱えて暮らしていた。大学の講義で、ジョンは「宇宙や生命の存在は全て偶然であり、我々 の存在は全て無意味だ」というランダム理論について説明した。授業が終わると、親友の宇宙論学者フィル・ベックマンがやって来た。 彼は妻キムの妹がディナーに誘っていることを告げるが、ジョンは消極的な態度を示した。
ケイレブが通うウィリアム・ドーズ小学校で創立50周年記念式典が行われ、元教師のテイラーがテープカットを担当した。タイムカプセル が開けられ、生徒たちに50年前の封筒が配られた。ケイレブが受け取ったのは、ルシンダの封筒だった。開封したケイレブが数字の羅列に 目をやると、補聴器に囁くような声が聞こえてきた。ケイレブは、通りの向こうにある木の近くに立っている謎の男に気付いた。
その夜、ルシンダの紙を見ていたジョンは、「911012996」という数列に着目した。それが同時多発テロの日付と犠牲者数に合致することを 知った彼は、他の数列を囲いながら調べてみた。すると多くの数列は、この50年に世界各地で発生した大惨事の日付と犠牲者数に合致して いた。数列の中には、未来の日付と犠牲者数が3つ含まれていた。その内の1つは「10270881」で、「2008年10月27日、世界のどこかで 大惨事が発生し、81人の犠牲者が出る」という風に解釈できた。
翌日、ジョンはフィルの働くヘイスタック天文台へ行き、数列のことを話して「明日、世界のどこかで81人が死ぬ」と言う。信じようと しないフィルに、ジョンはホテル火災で48人が死亡したことを報じた記事を見せた。その出来事も数列に記されていた。そして、その火災 でジョンの妻も亡くなっていた。しかしフィルは、「じゃあ囲っていない数字の意味は?」と懐疑的な考えを変えなかった。
ジョンはテイラーの家を訪れ、ルシンダのことを訊く。テイラーは50年前の式典当日、ルシンダが爪でドアを引っ掻いていたことを話す。 ジョンはルシンダに会いたいと考えるが、既に亡くなっていた。ジョンが自宅で電話をしていると、庭にいたケイレブは車で現れた男たち から何かを受け取っていた。ジョンが外に出ると、車は走り去った。ケイレブはジョンに、彼らから渡された黒い石を見せた。
翌日、ジョンはケイレブを迎えに行く途中で事故による渋滞に巻き込まれた。カーナビを見ていたジョンは、囲っていない数列が座標を 示していることに気付く。「10270881」の後に記されていた座標は、ちょうどジョンがいる辺りを示していた。ジョンは車を降り、警官に 事故のことを尋ねた。その時、旅客機がすぐ近くに墜落した。帰宅したジョンは、テレビのニュースで犠牲者が81人だと知った。
ジョンはフィルに再び数列のことを語り、自分の考えを信じるよう求めた。「科学的根拠は無い」と言うフィルに、ジョンは「あと2つの 大惨事が起きる。あの数字は警告だ。俺が止めなければ」と告げる。ケイレブの寝室に謎の男が出現し、窓の外に広がる大火事のイメージ を見せた。悲鳴を耳にしたジョンが寝室へ駆け込むと、男の姿は消えており、ケイレブは部屋の隅で膝を抱えて怯えていた。
翌日、ジョンはケイレブを連れて、ルシンダの娘ダイアナと孫娘アビーの家へ赴いた。ジョンは外出するダイアナたちを尾行し、博物館に 入った。アビーはダイアナと離れ、ダイアウルフの剥製を見学する。ジョンはケイレブに、ダイアウルフを見に行くよう促した。ケイレブ がアビーと話し始めた後、ジョンはダイアナに話し掛けた。ジョンは「ルシンダの予言通り、81人が死んだ。明日はニューヨークで170人 、3日後の10月19日には33人が死ぬ」と切羽詰まった表情で言うが、ダイアナから「私たちに近付かないで」と拒絶された。
ジョンはニューヨークの惨事が起きる座標を調べ、FBIに電話を入れて「明日、ワース通りとラフィエット通りの角が襲撃される。道路 を封鎖してくれ」と警告した。彼は妹グレースにケイレブを預け、ニューヨークへ向かう。道路が封鎖されていなかったため、ジョンは 交通警官に「なぜ封鎖していない?FBIに電話があったはずだ」と詰め寄った。そのことで怪しんだ刑事たちが追って来たため、ジョン は慌てて逃げ出した。地下鉄構内に入ったジョンは不審な男を見つけ、彼を追って列車に乗り込んだ。だが、男はただの万引き犯だった。 それが判明した直後、ジョンが乗っていた地下鉄は脱線事故を起こした。
ジョンがケイレブを連れて自宅に戻ると、ダイアナとアビーが待ち受けていた。ダイアナはジョンに、「母は口癖のように、私に言って いた。10月19日は貴方が死ぬ日だって」と告げる。ジョンはダイアナの案内で、自殺したルシンダが「準備」のために住んでいた森の奥の 家に赴いた。ダイアナはルシンダの紙の最後に書かれた33という字を見て、「それは逆文字で、EEと読むのよ」と教えた。
ジョンとダイアナは車の中にケイレブとアビーを残し、家の中に入る。すると壁を埋め尽くすように、世界中の大惨事の記事が貼られて いた。その中に、エゼキエル書のイラストもあった。ダイアナによると、ルシンダはそれを食い入るように見つめていたらしい。寝室に 入ったジョンは、床に落ちている黒い石に気付く。ベッドを持ち上げると、裏側に「EVERYONE ELSE」という文字が書かれて いた。それを見たジョンは、10月19日に人類が滅亡する予言だと悟った。
一方、車に残っていたケイレブは、謎の男と仲間たちが近付いて来るのに気付いた。謎の男はケイレブとアビーに、「一緒に行こう」と 囁いた。アビーがドアを開けようとしたので、ケイレブは慌ててクラクションを鳴らした。その音を耳にしたジョンとダイアナは、急いで 家から飛び出してきた。ジョンは立ち去る男を追い掛け、銃で脅して「息子に何の用だ?」と尋ねた。すると男は口を大きく開けて閃光を 放ち、ジョンの目が眩んでいる間に姿を消してしまった…。

監督はアレックス・プロヤス、原案はライン・ダグラス・ピアソン、脚本はライン・ダグラス・ピアソン&ジュリエット・スノードン& スタイルズ・ホワイト、製作はトッド・ブラック&ジェイソン・ブルメンタル&スティーヴ・ティッシュ&アレックス・プロヤス、 共同製作はライン・ダグラス・ピアソン、製作総指揮はスティーヴン・ジョーンズ&トファー・ダウ&ノーマン・ゴライトリー& デヴィッド・ブルームフィールド、共同製作総指揮はアーロン・カプラン&ショーン・パーロン、撮影はサイモン・ダガン、編集は リチャード・リーロイド、美術はスティーヴン・ジョーンズ=エヴァンズ、衣装はテリー・ライアン、視覚効果監修はアンドリュー・ ジャクソン&エリック・ダースト、音楽はマルコ・ベルトラミ。
主演はニコラス・ケイジ、共演はローズ・バーン、チャンドラー・カンタベリー、ベン・メンデルソーン、 ララ・ロビンソン、D・G・マロニー、ナディア・タウンゼンド、アラン・ホップグッド、エイドリアン・ピッカリング、ジョシュア・ ロング、ダニエル・カーター、アリシア・マクグラス、デヴィッド・レニー、タマラ・ドネラン、トラヴィス・ワイト、ギャレス・ユエン 、レスリー=アン・ミッチェル、リアム・ヘムズワース、レイモンド・トーマス他。


『ダークシティ』『アイ,ロボット』のアレックス・プロヤスが監督を務めた映画。
ジョンをニコラス・ケイジ、ケイレブを チャンドラー・カンタベリー、ダイアナをローズ・バーン、アビー&ルシンダをララ・ロビンソン、謎の男をD・G・マロニー、グレース をナディア・タウンゼンド、フィルをベン・メンデルソーン、ジョンの父をアラン・ホップグッド、1959年のテイラーをダニエル・ カーター、2009年のテイラーをアリシア・マクグラス、クラークをデヴィッド・レニーが演じている。

オープニングでルシンダが数列を書き殴る1959年のシーンが描かれるが、これは最初に見せない方が良かったのではないか。
それを最初に見せてしまうと、ジョンが小学校の記念式典に出向くシーンが来た段階で、「ああ、ルシンダの数列をジョンが見て、その謎 を解くために行動を開始するんだろうな」という風に、展開の先読みが出来てしまう。
それよりも、ケイレブが封筒を開いた時に、「それだけは絵じゃなくて謎の数列だった」という驚きを観客に与えた方がいいと思うんだが。

数列の中で、なぜジョンが「911012996」という部分だけに注目するのか、それが良く分からない。
それと、「その数列が同時多発テロの日付と犠牲者数に合致していると気付いて愕然としたジョンが他の数字も調べる」という展開が、 かなり性急に思えてしまう。
あと、48人の死亡者数でも「この50年間に世界中で起きた大惨事」に含まれているのなら、あの数列に書かれた分だけじゃなくて、 もっと多く発生しているような気もするんだけどね。

ジョンはケイレブを迎えに行く前日の深夜からテレビのニュースを見て、世界のどこかで予言通りの大惨事が起きていないかを調べようと する。しかし、様々な事件や事故は報じられるものの、その犠牲者数が予言通りかどうかは分からない。
そりゃあ当然で、事件や事故が発生しても、その直後に犠牲者数が確定するケースばかりじゃないもんな。
それを考えても、その時点でジョンがマジになって予言のことを考えているってのは、得策とは思えない。
それよりも、「半信半疑だったジョンだが、翌日になってニュースを見たら予言通りの事故が報じられていたので、真剣に調べる気になる 」という流れの方がいいんじゃないかな。

ジョンはダイアナの家に行っても、その場で声を掛けようとはしない。
博物館まで尾行し、まずケイレブがアビーと仲良く喋るのを待って、それをネタにしてダイアナに話し掛ける。
そういう回りくどくて怪しげなアプローチ方法を取る意味が良く分からない。
「ダイアナがルシンダのことを質問されるのを嫌がっている」という情報が事前に入っていたわけでもないんだし、真摯な態度で真正面 から質問するというアプローチ方法を取らないのは不可解だ。

ジョンがダイアナにルシンダのことを質問する時の態度も、落ち着きが無くて、何となくヤバい人のように見えてしまう。
なぜ、そんな不審者丸出しのようなキャラの動かし方をしているのか理解に苦しむ。
その落ち着きのない態度は、「妻の死も予言されていた」ということが影響しているのかもしれないが、そうだとしても、「だったら 分かるわ」とはならないよ。やっぱり納得しかねるよ。
そりゃあ、そんな怪しげな態度で質問したら、拒否反応を示されても仕方が無いぞ。

ジョンはニューヨークへ赴いた際、女性警官に「どうして通りを封鎖していないんだ。FBIに電話があったはずだ」と詰め寄るのだが、 いやいやアホなのかと。
そんなことをしたら、警察に怪しまれるに決まってるじゃねえか。
ジョンの行動がボンクラすぎて、どうにもゲンナリさせられてしまう。
で、そこから「ジョンが不審人物として警察やFBIに追い回される」というところでサスペンスを作っていくのかと思いきや、それは 地下鉄シーンでオシマイになっちゃうし。

で、もう途中からバレバレになっていたが、ナンダカンダとあった後には『宇宙からのツタンカーメン』オチが待っている。
どういうことかっていうと、「全ては宇宙人の仕業でした」というオチである。
ルシンダに大惨事を予言する数列を書かせたのも、ケイレブに囁いたのも、彼とアビーに誘いを掛けて連れ去ったのも、全ては謎の男たち 、すなわち宇宙人がやっていたことだったのだ。

宇宙人の目的は、地球が滅亡する前に、選ばれし少数の人々をノアの方舟である宇宙船に乗せて連れ出すことだ。
で、本来は「数列や小石や囁きの意味に気付き、指定した場所(ルシンダが住んでいた家)に来た連中を選ばれし人として認定し、方舟に 乗せる」ということのはずが、ルシンダは自殺しちゃうし、他には誰一人として該当する人物が現れない。
そこで宇宙人は困ったのか、ケイレブとアビーを拉致するという強硬手段に出る。
テメエらで設定したルール、テメエらで破ってどうすんのよ。
あと、囁きは聞こえたけど謎を解けなかったケイレブとアビーは方舟に乗れるのに、謎を解いたジョンが不合格ってのは、判定基準として どうなのよ。

(観賞日:2011年12月9日)

 

*ポンコツ映画愛護協会