『ナイト&デイ』:2010、アメリカ

ロイ・ミラーはウィチタの空港に現れ、ボストン行きの飛行機が飛ぶ時間を確認した。空港に来る人々を観察した彼は、キャリーケースを 引っ張るジューン・ヘイヴンズに目を付けた。ロイはわざと彼女にぶつかり、ロイは紳士的な態度で謝った。荷物検査を終えたジューンは 、またロイとぶつかった。搭乗手続きに赴いた彼女は、係員からリストに掲載されていないことを告げられる。「妹のエイプリルの結婚式 があるの」とジューンは言うが、次の飛行機を待つよう指示された。ロイはロイは手続きを済ませ、飛行機に乗り込んだ。
イザベル・ジョージは、政府の研究室が爆破されて12人が負傷し、機密が盗まれた事件を追っている。彼女はロイをマークしていた部下の フィッツジェラルドから連絡を受け、「ゼファーは彼が持っているの?」と確認を取る。フィッツは「そう思います。ボストンに到着した 時に回収します」と告げ、空港の監視カメラをチェックする。ロイがジューンとぶつかる映像を見た彼は、相棒のブラセスに「彼女が何者 か調べろ」と指示し、「いい考えがある」と口にした。
ジューンは係員から「席が用意できました」と言われ、ロイのいる飛行機に乗り込んだ。ロイは「フィッツの奴、どういうつもりだ」と 漏らす。ジューンは中古車のレストアを仕事にしていること、10年以上前に父が死んだこと、自分たちが子供の頃に父が車体だけを購入 した66年型GTOを完成させて妹へのプレゼントにしたいと思っていることを語った。ジューンはロイが語る「いつか叶えたいこと」の 数々や立ち振る舞いをロマンティックだと感じ、心を惹かれた。
ジューンがトイレに入っている間に、客と乗務員に化けた連中がロイに襲い掛かる。ロイは全員を次々に始末し、操縦席から出て来た 副操縦士も射殺する。その際、副操縦士が発砲しようとした弾丸が、誤って機長に命中してしまう。ジューンがトイレから出て来ると、 ロイは何事も無かったように振る舞う。思わずジューンは彼にキスをするが、慌てて我に返った。操縦席の扉が開いていたため、彼女は 怪訝に感じる。ロイは誤魔化し切れないと考え、「僕が副操縦士を撃ち、副操縦士の弾丸が機長に命中した」と説明した。だが、ジューン は冗談だと思って笑った。
ロイは「着陸方法を調べて来るよ」と言い、操縦席へ行く。ジューンは着席していた面々が全て死んでいることを知り、悲鳴を上げる。 彼女が操縦席へ行くと、ロイは操縦桿を握っていた。彼は「奴らが待っているから空港には着陸しない」と言い、ハイウェイに飛行機を 着陸させる。ロイは飛行機を降りると、ジューンを騙して睡眠薬を飲ませた。そして「悪い連中が君の所へ来る。何も知らないと言うんだ 。そして何があっても奴らの車に乗るな。奴らは自分がFBIで、僕が危険人物だと説明する。だが、奴らが安全だと口にしたら、君は 殺される。そうでなくても監禁される。だから車に乗らず、走って逃げろ」と指示した。
眠りに落ちたジューンが目を覚ますと、ボストンの自宅にいた。室内には、ロイの残した幾つかのメモがあった。テレビを付けると、 飛行機事故は乱気流による墜落として処理されていた。ジューンは家を出て、エイプリルのウェディングドレスの試着に付き合った。彼女 は妹から、「パパのGTOを売ろうと思ってる。私たち、家が欲しいのよ」と告げられる。そこへフィッツたちが来て、ジューンは車に 乗せられた。フィッツは「ロイは危険人物だと。安全な場所へお連れします」と言い、別の車にジューンを移した。
ジューンは同乗した面々に行き先を尋ねるが、教えてもらえない。その時、背後から近づいた車が発砲し、運転手たちが死ぬ。ジューンが 慌ててハンドルを握ると、ロイが駆け付けた。ロイが襲ってきた連中と銃撃戦を繰り広げている間に、ジューンは逃げ出した。しかし彼女 がバスに乗り込むと、ロイが追い掛けて来る。ジューンは自分に好意を寄せる消防士ロドニーの元へ行き、レストランで事情を話す。だが 、ロドニーは全く信じてくれなかった。
レストランにロイが現れ、ジューンに手錠を掛けた。彼は拳銃を構え、店内の人々に「みんな動くな」と怒鳴った。ロイはジューンを外に 連れ出し、車に乗せて発進させる。ロイが「レストランに入ったのは君を人質にするためだ。そうすれば君の身の潔白が明らかになる」と 語ると、ジューンは激しく非難した。ロイは彼女を車から降ろし、「もしも君が一人でいたら、生存率はゼロに近いぞ。帰ってもいいが、 決めるのは君だ。君を救おうとしたのは無駄だったよ」と手錠を外した。
ロイが別の車を見つけて乗り込むと、ジューンは彼に同行した。ロイはバーガーキングのオマケ人形を見せ、「みんなが追っている物は、 これだ。中を開けてごらん」と指示する。ジューンが人形を開けると、バッテリーが入っている。ロイは「暗号名はゼファー。詳しくは 知らないが、それを使えばハイパワーが永遠に持続する。サイモン・フェックという男が発明した。僕ともう一人のFBI捜査官が彼を 護衛していた。フィッツジェラルドだ」と語る。
さらにロイは、「2週間前、フィッツはサイモンを殺してバッテリーを売ろうとした。そこで僕はサイモンを救出し、安全な場所に移した 。バッテリーを取りに戻った時、フィッツの罠にハメられた。僕は犯人に仕立て上げられた」と述べた。「これから、どうするの」と質問 したジューンに、ロイは「サイモンと合流し、君を結婚式に戻す」と答える。ロイはジューンを伴い、ニューヨークのブルックリンへ行く 。ロイは港湾の隠れ家にいるサイモンと会おうとするが、彼の姿は無く、壁に行き先を示す暗号が残されていた。
武装した連中が隠れ家に現れ、ロイとジューンを銃撃してきた。ジューンが「フィッツの部下たち?」と尋ねると、ロイは「いや、もっと 悪い奴らだ。スペインの武器商人アントニオの手下たちだろう。彼もバッテリーを欲しがってる」と言う。彼はジューンを騙して、睡眠薬 を飲ませる。ジューンが朦朧とする意識の中で目を開くと、ロイと共に捕まっていた。「脱出するぞ」というロイの声が聞こえ、次に目を 開くと飛行機からパラシュートで脱出することろだった。また意識を失い、次に目を開くとモーターボートにいた。
ジューンが完全に意識を取り戻すと、そこは南の島だった。ロイは「僕の島だ。誰にも見つかったことは無い。だが長居は出来ない。 オーストリアでサイモンと合流しないと」と言う。ジューンはビキニ水着に着替えさせられていたので、ロイに激怒して去ろうとする。 森を歩いているとバッグから音が鳴ったので、ジューンはロイのスマートフォンを取り出した。すると、画面にはアマポーラ5826という 住所の場所が表示された。そこは小さな島だったので、ジューンには逃げ場所が無かった。
アントニオはジューンに電話を掛けて、島の場所を特定する。戦闘機の攻撃を受けたロイは、怖がるジューンを気絶させてヘリコプターに に乗せる。ジューンが意識を取り戻すと、アルプスを走る列車の個室にいた。ロイは別の車両でサイモンと話している。食堂車に移動した ジューンに、一人の男が話し掛けて来た。ジューンが「サイモン・フェック?」と尋ねると、彼は「そうだ」と答える。そこでジューンは 「私はジューン、ロイ・ミラーの友達よ」と告げる。だが、その男はアントニオが差し向けた暗殺者のバーンハードだった。
話している相手がサイモンだと思い込んでいたジューンは、靴の裏側にあった「部屋の外に出るな。僕はサイモンと一緒にいる」という メモに気付いた。彼女は適当な理由を付けて食堂車を去るが、厨房に追い詰められる。バーンハードが「アントニオがバッテリーのありか を知りたがっている。どこだ」と凄んでいるところへ、ロイが現れた。だが、バーンハードはロイを捕まえ、軽く投げ飛ばした。
ジューンはバーンハードに殴り掛かるが、羽交い絞めにされる。ジューンが島でロイに教わった護身術で振りほどくと、その弾みで飛んだ ナイフがバーンハードの胸に突き刺さった。バーンハードはナイフを抜いて、ジューンに襲い掛かろうとする。だが、ロイが彼を列車の外 に蹴り落とした。ロイたちは列車を降りて、ザルツブルグのホテルにチェックインした。ロマンティックな雰囲気に浮かれるジューンだが 、ロイがナオミという女性と電話をしている声を聞き、心が穏やかではなくなった。
ジューンはロイに声を掛け、ディナーに誘う。ロイは「部屋で待ってて。その方がいい」と告げる。ロイはサイモンに「部屋を出るな」と 言い、ホテルから出掛けて行く。密かに尾行したジューンは、ロイがナオミと合流してレストランへ入るのを目撃した。ジューンは店の 外から、様子を窺う。それにロイもナオミも気付いていた。「あの女性は誰なの?」とナオミに訊かれたロイは、「途中で拾っただけだ。 そんなことより取り引きするのか、しないのか」と告げた。
ロイはナオミが装着しているイヤモニに顔を近付け、「アントニオ、僕はバッテリーを持ってる。時間切れになるぞ」と交渉を持ち掛けた 。ジューンがホテルに戻ろうとすると、イザベルが現れて「私はCIA諜報部の部長よ」と自己紹介する。彼女は「ロイ・ミラーは ゼファーを武器商人のアントニオに売ろうとしている」と言い、空港の監視ビデオをジューンに見せた。そこには、ロイがジューンに ぶつかった時にゼファーをキャリーケースに忍ばせ、再び回収する様子が撮影されていた。
イザベルは「彼は貴方を運び屋として利用したのよ。貴方を騙していたの」とジューンに告げる。同席していたフィッツはペン型送信機を ジューンに渡し、「ミラーより先にホテルへ戻り、ゼファーを見つけたらボタンを押すんだ」と指示する。ジューンがホテルで待っている と、ロイが戻って来た。ジューンはボタンを押し、「家に帰るわ」と告げる。フィッツと特殊部隊が部屋に突っ込むが、ロイはゼファーを 持って逃走した。
フィッツとCIAはロイを見つけ、追跡する。ジューンはイザベルの車に乗り込んだ。銃撃を受けたロイは河に転落した。ジューンは ボストンに戻り、妹の結婚式に参列した。フィッツとブラセスは、捕まえたサイモンを車に乗せてドイツを移動していた。だが、フィッツ は目的地へのルートを外れ、ブラセスを射殺する。彼はアントニオに電話を入れ、「もうバッテリーは無いが、次の策がある。2日後に スペインで会おう」と告げた。
ジューンはアマポーラ5826のことを思い出し、そこがロイの隠れ家だと確信する。その住所へ行くと、フランクとモリーという老夫婦が 暮らしていた。40年前から住んでいるという。勘違いかと思ったジューンだが、飾られているモリーの息子マシューの写真に目を留める。 モリーは「息子はクウェートでヘリコプター事故に遭って死亡した」と説明するが、その写真は紛れもなく若き日のロイだった。
ジューンは電話を掛け、「盗聴している面々へのメッセージよ。私がゼファーを持ってる。取引しましょう」と場所を指定する。彼女は アントニオの一味に囲まれて拉致され、スペインのセビージャにある彼の屋敷に連行された。ジューンがゼファーを持っていなかったため 、アントニオはジューンに自白剤を飲ませて隠し場所を吐かせようとする。もちろんジューンはゼファーを持っていなかったが、彼女は 全く怖がる様子を見せなかった。彼女が一味に取引を持ち掛けて捕まったのは、ロイが生きていると確信し、彼に会うためだった…。

監督はジェームズ・マンゴールド、脚本はパトリック・オニール、製作はキャシー・コンラッド&スティーヴ・ピンク&トッド・ガーナー 、製作協力はマーシャ・L・スウィントン、製作総指揮はジョー・ロス&アーノン・ミルチャン&E・ベネット・ウォルシュ、撮影は フェドン・パパマイケル、編集はマイケル・マカスカー&クインシー・Z・ガンダーソン、美術はアンドリュー・メンジース、衣装は アリアンヌ・フィリップス、視覚効果監修はエリック・ダースト、音楽はジョン・パウエル。
出演はトム・クルーズ、キャメロン・ディアス、ピーター・サースガード、ヴィオラ・デイヴィス、ジョルディー・モリャ、ポール・ダノ 、マギー・グレイス、マーク・ブルカス、セリア・ウェストン、フォーク・ヘンチェル、レニー・ロフティン、リッチ・マンリー、 デイル・ダイ、ガル・ギャドット、ジャック・A・オコンネル、トレヴァー・ルーミス、ニラジャ・サン、トミー・ノヒリー、テイラー・ トリードウェル他。


『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』『3時10分、決断のとき』のジェームズ・マンゴールドが監督を務めた作品。
ロイをトム・クルーズ、ジューンをキャメロン・ディアス、フィッツをピーター・サースガード、イザベルをヴィオラ・デイヴィス、アントニオを ジョルディー・モリャ、サイモンをポール・ダノ、エイプリルをマギー・グレイス、ロドニーをマーク・ブルカス、モリーをセリア・ ウェストン、フランクをデイル・ダイが演じている。

アメリカ国内の興行収入では赤字が出てしまい、興行的には失敗作という烙印が押された作品だ。
そして、コケてしまった最大の要因はトム・クルーズの人気が落ちたからだというのが、多くのメディアの見方であった。
ただ、北米向けの宣伝ポスターではトム・クルーズとキャメロン・ディアスの姿が写らずにシルエットだけというデザインであり、それで トムだけに責任を押し付けるのも、どうかとは思う。
とは言え、トム・クルーズがオプラ・ウィンフリーの番組で“jumping the couch”した2005年ぐらいから、スターとしてのパワーが次第に 落ちてきていることは否めないだろうけど。

興行的には失敗した映画だけど、そんなに悪くない出来栄えだと思う。
ロイが運転していたバイクを捨ててジューンの車に張り付く一連の描写とか、ロイがボンネットに乗りながら涼しげな態度でジューンに 指示を出す様子とか、そういう荒唐無稽なアクション、超人的なキャラ造形も、そこまでバカバカしくやってくれたら面白い。
ダニエル・クレイグが主演になってリアル路線に舵を切ったボンド映画はつまらなくなったけど、ロイはワシが好きだった頃のジェームズ ・ボンドを何となく連想させてくれるようなキャラだ。

ただ、常に余裕を持って危険に対処し、どんな時でもキザに決めるダンディー野郎というのを、もっと徹底した方が良かったんじゃないか と思うんだよなあ。
例えば飛行機にジューンが乗り込んで来た時、ロイはフィッツが想定外のことを仕掛けて来たことに少し焦りを示して いるけど、もっとクールに受け流した方がいい。
そもそも冒頭でロイが想定外のことをやられるというシナリオ自体がどうかと思うが、そうだとしても、そこも余裕で対処してほしいん だよな。

飛行機のシーンでは、ロイはトイレから出て来たジューンに何事も無かったように振る舞って誤魔化そうとしているけど、そこは最初から クールに明かした方がいいんじゃないか。
あと、機長が死んでいるけど、それもロイのミスじゃなくて、ジューンが銃撃戦の最中にトイレから出て来て何か余計なことをしたせいで 撃たれてしまうとか、そういう形にした方がいいかな。
とにかく、ロイは何事にも動じず、常に余裕で対処するスーパーマンに徹底しておいた方がいいと思う。

レストランのシーンにしても、もうちょっとスマートにやれんかと。
人質にすることでジューンが潔白だと証明するためだと説明しているけど、そうだとしても、「いかにも芝居ですよ」という感じを露骨に 出すとか、客に対してジェントルマンな態度を取るとか、そういう風にすればいいでしょ。
ロドニーの太腿を撃って「これで昇進だ」って言うのもさ、無駄に人を傷付けているとしか思えないのよ。

ロドニーを撃って怪我させているのもそうなんだけどさ、彼が人を殺しすぎているのも引っ掛かるんだよなあ。
もちろん敵との銃撃戦はあってもいいんだけどさ、やたらと人殺しのシーンが多くないかと。
なんせ冒頭シーンからして、大量殺人をやらかしているんだもんな。
そういうのは、ちっともクールじゃない。そこは、この映画にとって大きな欠陥だと思う 。どれだけ主人公がクールに行動しても、クールに見えない。

隠れ家のシーンでも、ロイは警戒した様子で入って行くし、銃撃戦では緊迫した面持ちになっているけど、もっとご陽気でもいいのかなと 。
どうせ絶対に撃たれないんだから、中途半端にシリアスにやるよりも、開き直って「思い切り無防備に姿をさらしているのに、なぜか 弾丸が当たらない」というぐらいメチャクチャな描写でもいいぐらいだ。
まあ、そこまで行くとジェームズ・ボンドというより、デレク・フリントに近いかな。

戦う相手がFBIやCIAってのも、ちょっと痛いかな。色々と問題のある組織として使われることも多いけど、一応は政府機関だしねえ。
犯罪組織のように、分かりやすい悪党連中だったらいいんだけどね。
あと、CIAとは別口でアントニオの組織も関与して来るんだけど、これが無駄に話をややこしくしている。もっとシンプルでいいのに。
そう考えると、CIAを削った方がいいかな。
もし絡めるのなら、組織として大勢で来るんじゃなくて、1人か2人ぐらいにして、そいつらはロイがマジで戦う敵というよりも、 コメディー・リリーフ的なポジションにしておけばいいんじゃないかな。

導入部分で謎が多すぎるってのは、得策とは思えない。ロイの正体も、それを追っている連中の正体も、ゼファーってのが何なのかも、 ロイがジューンに目を付けた理由も、彼女にぶつかった理由も、とにかく分からないことが多すぎる。
とは言え、ロイが何かスパイ的な仕事をしているってのも、イザベルやフィッツがFBIやCIAのような組織の人間であることも、ロイ がジューンにぶつかった理由はゼファーと呼ばれる物をキャリーケースに隠すためってのも、薄々は分かるんだよね。
で、分かるからこそ、そこを隠していることは、無意味じゃないかと。
むしろ、ロイが何かをケースに忍ばせるシーンはハッキリと描くとか、フィッツたちの正体は最初から明確にしておくとか、そういう形の 方がいいんじゃないか。

ロイがジューンを眠らせたり気絶させたりするネタを何度も繰り返すんだけど、ちょっと回数が多すぎるなあ。
ジューンを眠らせることでアクション描写を省略するのは上手いやり方だと思うけど、「移動する時は必ずジューンが気絶し、その経緯を 省略する」ってのは、何度も続くと「またかよ」と思って来るんだよな。
そんなことしなくても、経緯の省略は可能だしね。
天丼ネタとして面白いと思えるのも、せいぜい3度ぐらいだろうし。

ロイが列車でジューンにメモを残す場所は、なんで靴の裏なのよ。そんなの、すぐに気付かなくても仕方が無いぞ。部屋を出ようとする時 に必ず見る場所、つまりドアの部分にでも貼っておけば良かったんじゃないのか。
その辺りは、「ジューンが部屋を出てバーンハードに追われる」という展開を作るための御都合主義のせいで、ロイがマヌケな奴になって しまっている。
あと、ジューンが羽交い絞めを解いてバーンハードにナイフが突き刺さったら、もうオチは付いてるでしょ。
ジューンを人殺しにしたくなかったのかもしれないけど、ナイフを抜いたバーンハードが襲い掛かってくるという展開にしてしまうと、 「羽交い絞めにされたジューンがロイに学んだ術で振りほどき、その時にナイフが飛んで突き刺さる」という仕掛けの意味が無くなって しまう。

しぱらく消えていたロイが再登場するシーンは、余計なカットを入れてしまったせいで、間延びしている。
アントニオがジューンを尋問して「ロイ・ミラーは死んだ」と怒鳴り、ジューンが「違うわ。だって長時間、息を止めていられるもの」と 言い返し、アントニオが「奴は死んだ」と再び怒鳴ったところで、すぐに「いや、生きてる」とでも言いながらロイを登場させりゃいい のよ。どうせ彼が生きているのは、誰だって分かっていることなんだからさ。
それなのに、「ロイ・ミラーは死んだ」というアントニオの台詞の後、屋根の上を歩くロイの姿を写している。
で、そこから部屋に突入するのかと思ったら、屋敷にフィッツが来るとか、また拳銃を向けてアントニオがジューンを脅すとか、 アントニオが庭に出てフィッツと会うとか、そういうシーンを入れる。
そういうのは要らないのよ。

そこから取引のためにフィッツやアントニオたちが車で出て行くという展開になるので、その行動をロイが待たなきゃいけないという構成 になっているけど、それがネックなんだよな。
だったら、ジューンを脅して「ロイ・ミラーは死んだ」と怒鳴っている奴は、アントニオの手下にしておけばいい。で、アントニオは既に 別の場所でフィッツと会っているとか、そういうことにしておけば、ロイが良いタイミングでジューンの救出に現れ、そこから取引現場へ サイモン救出へ向かう、という流れに出来るでしょ。
ただ、ロイは屋敷にジューンが捕まっていることさえ、彼女が処刑のために別の場所へ連行されていく時の声を聞くまで知らないん だよな。
そりゃ筋書きとしてダメだろ。

それと結局、フィッツやブラセスたちは本当にFBIだったのか、その辺りが良く分からんのよな。
ロイはFBIかと思ったらCIAのエージェントであることが最後に判明するけど、それはCIAとしてFBIに潜入していたってこと じゃないよね。
だったら、その相棒だったフィッツもFBIじゃなくてCIAなのか。
イザベルが指示を出しているんだから、そういうことなのかな。
って、そんなに悪くない出来栄えだと評したのに、なんか文句ばかり書き並べてしまった気がするぞ。

(観賞日:2012年7月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会