『ナイル殺人事件』:1978、イギリス

巨額の資産を相続したリネット・リッジウェイの大豪邸を、リネットの友人ジャッキー・ベルフォールが訪れていた。ジャッキーは婚約者サイモン・ドイルを雇って欲しいと言う。リネットはサイモンがケンブリッジ大学で経営管理学を専攻したことを聞き、面会したいとジャッキーに告げる。
しばらく経って、リネットとサイモンが結婚するという話題が新聞を飾った。2人は新婚旅行でエジプトに向かった。サイモンを奪われたジャッキーも2人を追ってやって来た。そして名探偵エルキューロ・ポワロもやって来ていた。
ポワロはサイモンに頼まれ、ジャッキーに過去を忘れて生きるように言うが、彼女は銃を取り出してリネットを殺してやりたいと口にする。彼らはナイル川を下る観光船カルナック号に乗り合わせ、旅をすることになった。
旅の途中、泥酔したジャッキーはサイモンの足を撃ってしまう。サイモンは治療を受け、ジャッキーはモルヒネを打たれて沈静化したが、現場からはジャッキーの銃が消えていた。そして同じ夜、リネットがその銃によって殺された。
乗り合わせた乗員には、全てリネットを殺す動機があった。作家サロメ・オッターボーンはリネットを題材にした小説を書いたため、名誉毀損で訴えられていた。サロメの娘ロザリーは母親を助けたいと思っていた。
リネットのメイドは5年も仕えたのに約束の給金を貰えず、婚約者と結婚できずにいた。名門の老女バン・スカイラーはリネットの宝飾品を欲しがっていたし、スカイラーのお付きの看護婦バワーズは家をリネットの父に破滅させられた。
リネットの伯父で管財人のペニントンは財産の横取りを考えていたし、ペスナー博士は自分の病院の悪評をリネットに言いふらされていた。ジム・ファーガスンは社会の寄生虫であるリネットを抹殺したいと口走っていた。
足を負傷して満足に歩けないサイモンと、鎮静剤で眠っていたジャッキーを除けば、どの人物にもジャッキーの銃を盗んでリネットを殺すチャンスはあった。ポワロは旧友の弁護士レイス大佐と共に、事件の捜査を開始する…。

監督はジョン・ギラーミン、原作はアガサ・クリスティー、脚本はアンソニー・シェーファー、製作はジョン・ブラボーン&リチャード・グッドウィン、製作協力はノート・ナッチバル、撮影はジャック・カーディフ、編集はマルコルム・クック、美術はピーター・マートン、衣装はアンソニー・パウエル、音楽はニーノ・ロータ。
出演はピーター・ユスティノフ、ジェーン・バーキン、ロイス・チャイルズ、ベティ・デイヴィス、ミア・ファロー、ジョン・フィンチ、オリヴィア・ハッセー、ジョージ・ケネディー、アンジェリカ・ランズバリー、サイモン・マッコーキンデイル、デヴィッド・ニーブン、マギー・スミス、ジャック・ウォーデン、ハリー・アンドリュース、I・S・ジョハール、サム・ワナメイカー他。


推理作家アガサ・クリスティーが生み出したベルギー出身の名探偵、“灰色の脳細胞”エルキューロ・ポワロが活躍するミステリー映画。
オールスター・キャストの作品だ。単独で主演映画が作られるような俳優達をどっさり集めて、大金を使って、エジプトで長期ロケを敢行した。ポワロ役と言うとデヴィッド・スーシェが思い浮かぶのだが、今回はピーター・ユスティノフが演じている。

オールスター映画というのは、豪華な俳優がたくさん出演していることが重要である。
その点、この映画は申し分無いと言っていいだろう。
ジェーン・バーキンにロイス・チャイルズ、ベティ・デイヴィスにミア・ファロー、オリヴィア・ハッセーにジョージ・ケネディー、デヴィッド・ニーブンにマギー・スミス、ジャック・ウォーデンと、オールスターを名乗れる役者は揃っている。

出演者が豪華だということで、満足すべきだ。
物語の面白さを期待してはいけない。
しかも、監督はジョン・ギラーミンである。
スターをたくさん集めて、そして大金を使いながら、それを存分に生かし切れない映画を作らせたら、ギラーミンに対抗できる監督はいないかもしれない。

アガサ・クリスティー原作の映画化なので、推理劇としてはちゃんと成立している(当たり前だが)。ただし、演出がダラダラしているので、ハラハラとかドキドキは無い。
でも、オールスター映画というのは、そういうものを期待してはいけないのである。

ちなみに、それぞれの人物にはリネットを殺す動機があるのだが、ジム・ファーガスンの動機は非常に弱いと思う。「リネットが社会の寄生虫だ」と言って憎んでいるのだが、それだけでは殺す動機としては弱いだろう。
そう考えると、原作からして、あまり出来が良くないということなのだろうか。
原作を読んでいないので、断定は出来ないが。

 

*ポンコツ映画愛護協会