『ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛』:2008、アメリカ&ポーランド&スロヴェニア&チェコ

伝説の四人の王であるピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーのペヴェンシー兄妹がナルニア国を去ってから、1300年の歳月が過ぎた 。テルマール人の侵略によって、ナルニア国は滅びていた。亡くなった先王カスピアン九世の弟である摂政ミラースと妻プルナプルスミア の間に、その日、男児が誕生した。ミラースはグローゼル将軍に、王位継承者であるカスピアン十世の抹殺を命じた。
ミラースの動きを察知していた家庭教師のコルネリウス博士は、グローゼルと兵士たちが来る前に、カスピアン王子を部屋から連れ出した 。彼はカスピアンに森へ逃げるよう指示し、本当に危ない時だけ使うよう告げて角笛を手渡した。グローゼルたちに追われたカスピアンは 、森の中でナルニアの民である赤小人トランプキンと黒小人ニカブリクの2人に遭遇した。トランプキンはグローゼルたちに戦いを挑み、 ニカブリクはカスピアンに剣を向けた。カスピアンは角笛を吹くが、その直後、ニカブリクに叩きのめされて昏倒した。
ペヴェンシー兄妹は、第二次大戦下のロンドンに戻っていた。スーザンはルーシーから「大変、すぐ来て」と言われ、地下鉄の構内へと 走った。するとピーターが数人の学生たちとケンカをしており、そこにエドマンドも加わった。ピーターはスーザンたちに、子供扱い されることへの不満を漏らした。彼は「あれから1年、いつまで待たされるんだろう」と口にする。駅にいた4人は、突風と共に魔法の力 を感じた。手を繋いだ4人の前を列車が通り過ぎると、そこはナルニアの国だった。
砂浜で浮かれた4人だが、以前には無かった廃墟に気付く。行ってみると、そこはケア・パラベル城だった。ミラースは会議に出席し、 自分に反目するソペスピアン卿からカスピアンがいなくなった事情説明を求められる。ミラースは「ナルニア人に誘拐された」と言い、 兵士が捕まえたトランプキンを引っ立てた。ペヴェンシー兄妹は、トランプキンが兵士たちによって海に沈められそうになっている現場を 目撃し、彼を救った。トランプキンは4人が伝説の王だと知り、「角笛の言い伝えは本当だったのか」と驚いた。
意識を取り戻したカスピアンは、ニカブリクがアナグマの松露とりと話している様子を目撃した。カスピアンとニカブリクが剣を交えよう とすると、松露とりが制止した。カスピアンはナルニア人が絶滅してと思っていたことを話し、自分がミラースに命を狙われている事情を 説明した。彼がニカブリクの住処を立ち去ろうとすると、松露とりは角笛を指し示し、「行かないでくれ。貴方は我々の救世主だ。これが 何なのか、知らないのか」と問い掛けた。
コルネリウスがミラースの部下たちに連行されるのを目にしたソペスピアン卿は、グローゼルに「仲間は慎重に選んだ方がいいぞ」と言う 。ルーシーは熊を見つけ、歩み寄って話し掛けた。しかし熊が何も喋らずに襲い掛かってきたので、トランプキンが弓矢で退治した。 トランプキンは「長年に渡って動物扱いされていれば、話さなくなる。ナルニアは昔より野蛮になった」と語った。
カスピアンが住処を去って森を歩き始めたので、ニカブリクと松露とりは後を追った。そこへ兵士たちが現れ、襲い掛かってきた。ネズミ の騎士リープチープが駆け付けて兵士たちを倒すが、彼はカスピアンにも剣を向ける。松露とりは「この子が角笛を吹いたんだ」と告げて 制止した。すると、そこにナルニアの民が集まってきた。セントール族の長グレンストームは、「では吹いてもらおう。そのために我々は 集まったのだから」と告げた。
ペヴェンシー兄妹はトランプキンと共に、森を移動していた。その途中、ルーシーは「アスランを見た」と言うが、ピーターたちが目を 向けると誰もいなかった。カスピアンはナルニアの民から激しく非難されるが、「僕を王座に就かせてくれれば平和をもたらそう。力を 合わせれば、奪われた物を取り戻すことが出来る」と訴えた。グレンストームやリープチープたちは、彼への忠誠を誓った。
ペヴェンシー兄妹は、ミラースの指示を受けたテルマール軍がナルニアの民を攻めるための準備を進めている様子を目撃した。その夜、 ルーシーはアスランが森に現われる夢を見た。翌朝、一行はカスピアンたちと遭遇し、砦に赴いてテルマール軍への対抗策を話し合う。 ピーターは城への先制攻撃を主張するが、カスピアンは「ここで篭城し、待ち受けて戦うべきだ」と反対した。
スーザンもカスピアンの意見に賛成するが、ピーターは「ここは城じゃない。墓だ」と強く言う。ルーシーは「白い魔女を倒したのが誰 だったか思い出して」と告げるが、ピーターは「これ以上、アスランを待っていられない」と述べる。結局、ピーターの策が決行される ことになった。ナルニア軍を外に待機させ、ペヴェンシー兄妹やカスピアンは城に潜入した。カスピアンは門を開ける役目を任されていた が、コルネリウスが拘束されていると知り、助けに行くことにした。
コルネリウスを牢から助け出したカスピアンは、「父上のように、ミラースをあなどってはいけません」と告げられる。ミラースが父を 殺害したと知ったカスピアンは、彼の寝室へ行って剣を突き付けた。しかしプルナプルスミアの放った矢を受け、その間にミラースは寝室 から逃亡した。ミラースに侵入を気付かれたため、スーザンはピーターに「もう遅いわ、撤退しましょう」と告げる。しかしピーターは 「まだ大丈夫だ」と言い、門を開けた。しかし大勢の犠牲者を出し、退却を余儀なくされた。
砦に戻ったピーターとカスピアンは、互いの失敗を批判して言い争った。ミラースは王位に就き、大軍を率いて砦へ向かう。ニカブリクは カスピアンに「古の力の1つは役に立たなかったが、もっと大きな力がある」と告げ、熊と鬼婆の元へ連れて行く。彼は「アスランを百年 に渡って寄せ付けなかった力だ」と言う。鬼婆が呪文を唱えると、大きな氷柱の中に白い魔女が出現した。
熊と鬼婆がカスピアンを捕まえ、掌から出血させた。白い魔女は、手を伸ばして自分を復活させるようカスピアンに促した。魅入られた カスピアンが手を伸ばそうとしているところへ、ペヴェンシー兄妹とトランプキンが駆け付けた。だが、ピーターも魔女に「一人ではダメ だと分かっただろう?」と言われ、魅入られてしまう。その時、エドマンドが氷柱を破壊し、白い魔女は消失した。
テルマール軍が砦にやって来たため、ピーターはルーシーとスーザンを森へ派遣してアスランを捜索させることにした。カスピアンは 「ミラースは国王として伝統には従わねばならないし、威厳を保たないといけない。そこを上手く突けば時間が稼げるかも」と告げる。 エドマンドは使者として敵の陣地へ赴き、ミラースにピーターとの一騎打ちを要求する。最初は笑って拒否しようとしていたミラースだが 、エドマンドの挑発を受け、一騎打ちを承諾した…。

監督はアンドリュー・アダムソン、原作はC・S・ルイス、脚本はアンドリュー・アダムソン&クリストファー・マルクス&スティーヴン ・マクフィーリー、製作はマーク・ジョンソン&アンドリュー・アダムソン&フィリップ・ステュアー、共同製作はダグラス・グレシャム 、製作総指揮はペリー・ムーア、撮影はカール・ウォルター・リンデンローブ、編集はシム・エヴァン=ジョーンズ、美術はロジャー・ フォード、衣装はアイシス・マッセンデン、視覚効果監修はディーン・ライト&ウェンディー・ロジャース、音楽はハリー・グレッグソン =ウィリアムズ。
出演はジョージー・ヘンリー、スキャンダー・ケインズ、ウィリアム・モーズリー、アナ・ポップルウェル、ベン・バーンズ、セルジオ・ カステリット、ピーター・ディンクレイジ、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ワーウィック・デイヴィス、ヴィンセント・グラス、 ダミアン・アルカザール、アリシア・ボラッチェロ、ティルダ・スウィントン、コーネル・S・ジョン、サイモン・アンドリュー、 ページャ・ビエラク、デヴィッド・ボウルズ、ファン・ディエゴ・モントーヤ・ガルシア、ダグラス・グレシャム、アッシュ・ジョーンズ 、クララ・イソヴァ、シェーン・ランギ他。
声の出演はリーアム・ニーソン、ケン・ストット、ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ、シム・エヴァン=ジョーンズ、デヴィッド・ ウォーリアムズ、ジョシュ・キャンベル、エディー・イザード。


C・J・ルイスによる全7巻のファンタジー小説『ナルニア国物語』(もしくは『ナルニア国ものがたり』)を基にしたシリーズ第2作。 監督は前作に引き続いてアンドリュー・アダムソン。
ルーシー役のジョージー・ヘンリー、エドマンド役のスキャンダー・ケインズ、ピーター役のウィリアム・モーズリー、スーザン役のアナ ・ポップルウェルは、前作から引き続いて登場。
カスピアンをベン・バーンズ、ミラースをセルジオ・カステリット、トランプキンをピーター・ディンクレイジ、グローゼルをピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、 ニカブリクをワーウィック・デイヴィス、コルネリウスをヴィンセント・グラスが演じている。

ミラースは男児が誕生するとカスピアンを抹殺しようとするのだが、王位を狙う自分にとってカスピアンが邪魔になることぐらい以前から 分かっていたはずなのに、なぜ、そのタイミングで始末しようとするのか。
男児の誕生と同時って、それは「ワシが殺しました」と言っているようなモンじゃないか。
っていうか、男児に王位を継がせようと思っているのかと思ったら、自分が継いでいるし。
だったら尚更、そのタイミングまで暗殺を待っている必要性が無いぞ。

ナルニアに移動したペヴェンシー兄妹は、廃墟がケア・パラベル城だと気付く。
だけど、こっちは前作の内容なんかボンヤリとしか覚えてないし、「ケア・パラベル城って何だっけ?」という状態なのだ。
そりゃあ原作を読んでいれば何の問題も無いんだろうけど、原作を読んでいない観客にも「以前のナルニアとすっかり変わった」という ことを感じさせるためには、1年前にペヴェンシー兄妹が来た時の映像を回想として挿入した方が分かりやすかったんじゃないかな。

カスピアンの「僕を王座に就かせてくれれば平和をもたらそう。力を合わせれば、奪われた物を取り戻すことが出来る」という言葉を 聞いたナルニアの民は、彼に忠誠を誓うのだが、ものすごく安易だなあと感じる。
それまでは激しく糾弾していたのに、なんでだよ。角笛を持っていたから王子として認めた、というわけでもないし。っていうか、角笛を 持っていると分かっていても、批判していたもんな。
そのスピーチでカスピアンを認めたとしか受け取れないが、そこに圧倒的な説得力があるとも思えない。
カスピアンが何かを成し遂げたとか、ナルニアの民の誰かを救ったとか、そういう「信じようと感じさせる行動」があって、ナルニアの民 が受け入れるわけじゃないんだよね。スピーチだけだ。
だけど、それまでテルマール人に虐げられてきたのに、そんなに簡単に信じてしまうのかと。

前作のラストで大人になっていたペヴェンシー兄妹が再び子供に戻っている時点で引っ掛かりはあるのだが、それより何より、外見は ともかく、中身の成長がほとんど見られないのは、いかがなものか。
女性2人はともかく、ピーターとエドマンドは、前作のナルニアでの経験が、人間的成長に全く繋がっていないぞ。
ピーターがリーダーシップを取りたがり、カスピアンと意見対立する辺りなんて、ホントに子供じみているよなあ。

城に侵入した際、エドマンドが懐中電灯を弄んでいたら落としてしまい、兵士と戦わざるを得なくなるのはボンクラすぎる。
カスピアンが門を開ける任務を放棄するのも、タイミングが遅れたのにピーターが門を開放して戦いに突入させるのも、どっちも 愚かしい。
そんで、ピーターのせいで大勢のナルニア人が犠牲になっているんだよな。でも、彼が反省したり落ち込んだりすることは無い。
なんだかなあ。
っていうか、ピーターだけでなく4兄妹って、今回の物語の中で、成長したような様子は全く見えないんだよな。
あと、そんなボンクラな王子と王が仕切っているのに、よくナルニアの民は城の失態の後も付いて行ったよな。反乱が起きてもおかしく ないぞ。

ミラースがピーターに敗北した後、ソペスピアン卿がミラースを殺害してナルニア人の仕業にするのだが、そこでソペスピアン卿が悪玉に なるのは、かなり唐突に感じられる。
そこから集団戦闘に突入するのも、強引だと感じるし、気持ちは乗らない。
スケールとしては大きくなっているけど、物語のテンションとしては、その前のピーターとミラースの一騎打ちで終わっているん だよなあ。

ルーシーがアスランと再会して「どうして早く助けてくれなかったの?」と尋ねると、アスランは「同じことは二度起きない」と言うが、 それって何の答えにもなってないぞ。
「もっと早く来てくれれば、みんなも死なずに済んだ?」という質問には「過ぎてしまったことは分からない」と答えるが、テメエが早く 来ていれば、みんな助かったんだよ。
なんせ、軽く吠えただけでテルマール軍を退治できてしまう力があるんだからさ。
だったら、「それまで来なかった理由」は、ちゃんと説明しろよ。それが無いのは不誠実だぞ。

あと、最後に「もうピーターとスーザンは二度とナルニアには戻れない」ということになるが、その理由が良く分からないぞ。
「もう充分に成長したから」とか、説明になってないし。
大体、スーザンはともかく、ピーターは全く内面的には成長してないぞ。ボンクラのままだぞ。
「ある程度の年齢になったらナルニアには来られない」ということなのかな。
その辺りは、原作を読んでいれば理解できるのかもしれんが、そのために原作を読む気は全く無い。

この映画に私は乗れなかったのだが、その大きな原因は、ペヴェンシー兄妹の行動のモチベーションが良く分からないということにある。
カスピアンは「王位に就くため」という動機があるし、ナルニアの民は「奪われた土地を取り戻す」という動機がある。
だけど、兄妹がテルマール軍と戦う理由って、特に無いんだよね。
「角笛で呼ばれたから」というわけでもないでしょ。

王としての使命感とか、そういうこともあるのかもしれないが、こっちが感情移入しにくい動機であることは確かだ。
それに、ナルニアは彼らにとって大切な国かもしれないが、だからって命懸けで戦うほど思い入れがある場所とは思えない。
でも、「命懸けの戦いにしては、何となく軽いなあ」とか思っていたら、前作でルーシーは何でも治癒してしまう万能薬を手に入れて いたんだよなあ。
死んだらアウトだけど、瀕死の重傷で踏ん張っていたら、それで回復しちゃうんだよなあ。
それって、強力すぎないか。

(観賞日:2011年2月26日)

 

*ポンコツ映画愛護協会