『ノイズ』:1999、アメリカ

宇宙飛行士スペンサー・アーマコストと小学校教師の妻ジリアンは、フロリダ州で暮らしている。ある時、スペンサーは船長のアレックスと共に、スペースシャトル“ヴィクトリー号”で宇宙へ向かった。しかしシャトル外へ出て人工衛星の修理中、爆発が発生する。
ニュースで事故を知ったジリアンはNASAの基地へ向かい、爆発で2分間だけ連絡が途絶えたものの、スペンサーもアレックスも無事だと知らされる。地球へ帰還したスペンサーは、宇宙飛行士を辞めてニューヨークの航空機会社で働くとジリアンに話す。
スペンサーもアレックスも、連絡が途絶えた2分間に何があったかを話そうとはしなかった。やがてアレックスは酒場でスペンサーの名を叫んで倒れ、そのまま死亡する。その直後、彼の妻ナタリーがラジオを抱えて自殺する。
スペンサーはジャクソン・マクラーレンの会社で働き始め、ジリアンも彼と共にニューヨークへ移り住んだ。やがて双子を妊娠したジリアンに、元NASA職員リースが接近する。リースは事故の前と後でスペンサーのサインや身体データが食い違うことを語る。そして彼はさらに、ナタリーが双子を妊娠していたことをジリアンに告げる…。

監督&脚本はランド・ラヴィッチ、製作はアンドリュー・レイザー、製作総指揮はマーク・ジョンソン&ドナ・ラングレイ&ブライアン・ウィッテン、撮影はアレン・ダヴュー、編集はティモシー・アルヴァーソン&スティーヴ・ミルコヴィッチ、美術はジャン・ロールフス、衣装はアイシス・マッセンデン、視覚効果製作はジョシュ・R・ジャガース、音楽はジョージ・S・クリントン。
出演はジョニー・デップ、シャーリーズ・セロン、ジョー・モートン、クレア・デュヴァル、ドナ・マーフィー、ニック・カサヴェテス、サマンサ・エッガー、ゲイリー・グラブス、ブレア・ブラウン、トム・ヌーナン、トム・オブライエン、ルーシー・リン、マイケル・クライダー、ジェイコブ・ステイン、ティモシー・ウィッカー、サラ・ダンフ、チャールズ・レイニヤー、カルロス・セルヴァンテス他。


宇宙で事故にあった宇宙飛行士が未知の生命体に乗っ取られ、妊娠した妻が恐怖に怯えるという映画。スペンサーをジョニー・デップ、ジリアンをシャーリーズ・セロン、リースをジョー・モートン、ジリアンの妹をクレア・デュヴァルが演じている。
セロンは、『ディアボロス/悪魔の扉』と同じようなキャラクターをやらされている。

理由は不明だが、この作品は、なぜかSFスリラーであることを最後まで頑なに守り続けようとして、そして失敗してしまった。別に事件の発端が宇宙空間で起きたからといって、SFであることを順守する必要など全く無かったのに。
実際、序盤を過ぎてしまえば、SFとしての色合いはほとんど消えてしまうのだし。

ジリアンは住み慣れた田舎の町を離れて、初めて都会で暮らすようになった。
新しい環境に馴染めず、相談できる友達もいない。
孤独な生活が続く中で、不安はどんどん大きくなるばかりだ。
そこにきて、初めての出産に対する不安も加わった。
そんな不安が、スペンサーに対する違和感へと繋がっていく。

そこへリースが現れ、「あなたの夫は宇宙で何かに乗り移られた」と告げる。
そういえば、スペンサーは嫌いだったはずのニューヨークに移ることを決めた。
ラジオのノイズに耳を傾けるという妙な行動もあった。
空白の2分間について、詳しく話してくれなかった。

ジリアンはリースから、「ナタリーが双子を妊娠していた」と聞かされる。
自分も双子を妊娠している。
そこにスペンサーの企みがあるのではないかと、ジリアンは不安になる。
不安は増幅し、スペンサーの行動や言葉が全て不審に思えるようになる。

この作品は、「本当にスペンサーが変わってしまったのか、それとも不安によるジリアンの妄想なのか」という部分を曖昧にして話を進める。
しかし演出としては、スペンサーの変貌をハッキリさせようとしているように見える。

もっと徹底的に、心理サスペンスとして作れば良かったのだ。
『ローズマリーの赤ちゃん』と同じような作品にすれば良かったのだ。
見せないこと、明らかにしないことが、この作品に恐怖を生み出すはずなのだ。
それなのに、なぜ明確にしようとしたのか。

終盤になって、スペンサーに「ジリアンの妹を殺した」とか、「ナタリーを犯して乗っ取った」とか、そんなことを言わせる必要は無い。
サイコキネシスを使わせる必要も無い。
スペンサーの中にいた生物がジリアンに乗り移る様子を見せる必要も無い。
ラストにジリアンの意味ありげな表情だけ見せた方が、よほど効果的だったのに。

 

*ポンコツ映画愛護協会