『トリプルX ネクスト・レベル』:2005、アメリカ

ヴァージニア州。農場の地下にあるNSA(国家安全保障局)支部が、武装集団の襲撃を受けた。いきなりの襲撃で、NSA職員16名が命 を落とした。トリプルXチームの責任者ギボンズは応戦し、駐車場に待機していた部下トビーと共に車で逃亡した。ギボンズはトビーに、 「敵は支部の場所を知っていた。前任者よりも殺傷能力の高いトリプルXを見つける必要がある」と告げた。
NSA支部が襲撃された事件は、デッカート国防長官からサンフォード大統領に報告された。サンフォードは内閣が集まっている会議の場 に赴き、一般教書演説で新しい軍事法案を発表することを告げた。ギボンズは軍の重犯罪人刑務所を訪れ、囚人のダリアスと面会した。 ダリアスは「アンタの下で働くのは御免だ」と反発を示すが、ギボンズは脱獄の計画を告げて去った。
襲撃された支部を調べていたNSA捜査官スティールの元に、前任のトリプルXであるザンダー・ケイジが昨晩、ボラボラ島で死んだとの 報告が届いた。ギボンズが失踪して連絡の取れない状態にあるため、スティールたちは行方を追っていた。ダリアスは看守から鍵を奪い、 刑務所の屋上へと逃げた。彼はギボンズが用意したヘリに飛び移り、刑務所から脱走した。
ダリアスはギボンズ、トビーと共にワシントンへ向かい、車窃盗グループを仕切る旧友ジークと再会した。元恋人ローラのことを尋ねると 、彼女はアップタウンの自動車販売店を仕切るようになっているという。ダリアスはローラに会い、改造車を用意してもらう。ギボンズは ダリアスに、支部へ侵入して情報の入ったハードディスクを回収するよう命じた。
ダリアスは支部に侵入してハードディスクを回収し、追跡を撒いた。スティールはダリアスのことを調べた。ダリアスはネイビーシールズ で優れた射撃の才能を発揮し、精鋭部隊を率いていたギボンズにリクルートされた。ある時、精鋭部隊は上官である将軍から、コソボで 民家に放火するよう命じられた。それを拒否して将軍を殴ったダリアスは、軍法会議で20年の実刑を受けた。その時の将軍が、現在は 国防長官となっているデッカートだった。
ギボンズは残りの情報を入手するため自宅に戻るが、待ち受けていたデッカードと手下のコッブ軍曹に捕まってしまう。支部襲撃の黒幕は デッカードだった。デッカードたちは家を爆破し、ギボンズを事故死に見せ掛けた。ダリアスはハードディスクを調べ、チャーリーという 文字が記された上院議員会の集合写真を発見した。だが、どの人物がチャーリーなのか分からない。ダリアスはギボンズの葬儀を遠くから 観察し、参列していた女性がチャーリーだと知った。
ダリアスはチャーリーに会い、彼女が以前はギボンズの諜報員で、現在は軍事委員会の補佐官をしていることを聞いた。彼はデッカードの 出席するパーティーに、ウエイター姿で潜入した。デッカードは官房会議の副議長ペティボーンと話していた。近くで耳を澄ますと、 デッカードは軍を率いて3日後に行動する意思を語り、ペティボーンはそれに反対していた。
デッカードの手下達に気付かれたダリアスは、パーティー会場から抜け出した。チャーリーが車を回し、ダリアスを乗せて逃走した。彼女 は自分の豪邸にダリアスを招いた。しかしダリアスがシャワーを浴びている間に、彼女は姿を消した。邸宅を歩き回ると、ペティボーンの 遺体があった。直後、警官隊が豪邸を包囲した。ダリアスは、チャーリーにハメられたことに気付いた。
豪邸にスティールが現れ、単独で中に入った。ダリアスはデッカードが罠を仕掛けたことを語り、スティールを追い返した。警官隊が突入 するが、ダリアスは豪邸からの逃亡に成功した。トビーは国防総省のサイトをハッキングし、デッカードが自分の部隊と戦車をポトマック 川に停泊している空母インディペンデンスに運ぶつもりだと突き止めた。
ダリアスがインディペンデンスに潜入すると、コッブと話しているチャーリーの姿があった。彼女が入った部屋に乗り込むと、そこには ギボンズと精鋭部隊の仲間2名が拘束されていた。ギボンズはダリアスに、これがデッカードの罠だと告げた。チャーリーが非常サイレン を鳴らしたため、ダリアスは彼女の持っていた国会議事堂の地図を奪って空母から脱出した。
サンフォードは、一般教書演説が明日に迫っても軍事法案がまとまっていないことに関して、デッカードに質問した。サンフォードは 兵士を減らし、基地を閉鎖しようと考えていたが、デッカードは軍の弱体化に繋がるとして反対していた。ダリアスはスティールを 呼び出し、地図を見せた。それは軍事用の物だった。ダリアスは「デッカードが国会議事堂で何かやらかし、その罪をギボンズに被せる つもりだ」と告げた。スティールは、明日の一般教書演説でデッカードが大統領の警護を担当することを説明した。
スティールはデッカードと話をして、彼がサンフォードを襲撃するつもりだと確信した。スティールはダリアスに会い、部外者の協力者が 必要だと告げた。ダリアスはジークを巧みに説得し、仲間に引き入れた。サンフォードが一般教書演説を始める中、議事堂が停電になった。 デッカードはサンフォードを連れ出し、コッブに射殺させようとする。ダリアスたちは議事堂に乗り込み、チャーリーに連行されてきた ギボンズを救出した。デッカードがサンフォードを大統領の避難用列車に連れ込んだため、ダリアスは後を追う…。

監督はリー・タマホリ、脚本はサイモン・キンバーグ、製作はニール・H・モリッツ&アーン・L・シュミット、製作総指揮はトッド・ ガーナー&ロブ・コーエン&デレク・ドーチー、撮影はデヴィッド・タッターサル、編集はマーク・ゴールドブラット&スティーヴン・ ローゼンブルム&トッド・E・ミラー、美術はギャヴィン・ボケット、衣装はサーニャ・ミルコヴィッチ・ヘイズ、音楽はマルコ・ベルトラミ。
出演はアイス・キューブ、サミュエル・L・ジャクソン、ウィレム・デフォー、スコット・スピードマン、ピーター・ストラウス、 イグジビット、マイケル・ルーフ、サニー・メイブリー、ノーナ・ゲイ、ジョン・G・コノリー、 ラモン・デ・オカンポ、バリー・シギスモンディー、マイケル・ドン・エヴァンス、デヴィッド・ラウンツリー、ネッド・シュミッケ、 スコット・マイケル・モーガン、クリス・ジョンソン、トム・ゴッソムJr.スタン・セラーズ他。


2002年の映画『トリプルX』の続編。
当初は前作と同じく、ザンダー・ケイジをヴィン・ディーゼルが演じ、ロブ・コーエンが監督を務める予定だった。
しかし2人とも降板したため、監督はリー・タマホリ、主演はアイス・キューブになり、新たなトリプルXが活躍する話に変更された。
キャスティングの決定はクランクインの1ヶ月前で、撮影期間は1ヶ月にも満たなかったらしい。
ギボンズ役のサミュエル・L・ジャクソン、トビー役のマイケル・ルーフは、前作からの続投。デッカートをウィレム・デフォー、 スティールをスコット・スピードマン、サンフォードをピーター・ストラウス、ジークをラッパーのイグジビット、チャーリーをサニー・ メイブリー、ローラをノーナ・ゲイが演じている。

冒頭、サミュエル・L・ジャクソンは武装集団に応戦し、一人だけ見事に支部から逃走している。
「もうアンタが主役をやればいい」と思うぐらいだ。
アイス・キューブに主演させるぐらいなら、渋いオッサンが陰謀に立ち向かって華麗に活躍する企画の方が、まだ魅力は あると思うんだよな。
どうせスポーツ・アクションは捨て去っているんだから、そこの心配も無いし。

なぜギボンズがNSA本部に報告を入れないのか、なぜ派手にヘリまで飛ばして囚人を脱獄させるという違法行為に出なきゃならんのか、 それがサッパリ分からない。囚人を起用するにしても、NSA本部に連絡を入れて、裏から手を回せば、あんな脱獄劇で目立つことも 無かったんじゃないのかと。
派手に違法行為をやったら、マークされて動きにくくなるだろうに。
スティールたちは同じNSAの仲間なのに、なぜ攻撃しなきゃならんのか。
ギボンズはスティールたちに捜索されているが、そりゃ連絡せずに失踪したからだ。ギボンズは「内部に敵がいる」と思っているのかも しれんが、こっちにしてみれば、スティールたちが敵じゃないのはバレバレなので、ギボンズが無駄にリスクを負う愚かなことをやって いるとしか思えない。

ギボンズは自宅で捕まり、デッカードが黒幕だったことが明らかにされる。
どうやらギボンズはデッカードの不審な動きを察知し、それを探っていたら襲撃を受けたということのようだ(だからハードディスクと 自宅にデッカード関連の情報があるんだろう)。
でも、その辺りが分かりにくいんだよな。単純な話のはずなのに、なんかゴチャっとしている感じ。全体的に説明が上手くない。
ギボンズが死んだ後、ダリアスはデッカードが黒幕だと決め付けているが、その証拠は何も無い。ギボンズから「デッカードを探れ」と 言われていたわけでもないし。
っていうか、そういう設定にしておけよ。
あと、デッカードが黒幕なのを早々に明かすのなら、彼が何の目的で動いているのか、何をしようとたくらんでいるのかも、さっさと バラせばいい。そこだけミステリーにしたまま進行したところで、何のメリットも無いと思うぞ。

終盤になって「デッカードがクーデターを起こし、ギボンズと昔の部下たちに罪を被せようとする」という企みが出てくる。
でもさ、そんな計画があるのなら、ギボンズが自宅で爆死したように見せ掛けるのは、むしろ避けた方がいいんじゃないのか。
別にやってもいいけど、あまり意味が無いぞ。後で「クーデターを起こして死んだ」という風に見せ掛けるんでしょ。だったら「失踪中」 と見せ掛けておいたって構わないでしょ。
大規模な計画にしては、行き当たりバッタリな感じが強い。

もうさ、ヴィン・ディーゼルが降板した時点で、企画を潰すべきだったんだよ。
そもそもトリプルXってのは、前作でザンダー・ケイジが入れていた「xXx」のタトゥーから来ているネーミングだったんじゃないの。
それはNSAの特殊エージェントの総称ではなく、ザンダー・ケイジだけが唯一、トリプルXと呼ぶにふさわしい存在のはずだ。
必要不可欠な看板のヴィン・ディーゼルが抜けたのに、強引に企画を推し進め、慌ててキャスティングを決めて、突貫工事で仕上げたモン だから、当然の如くアメリカでは大コケして、日本ではDVDスルーになった。

そりゃ突貫工事の請負人としては、職人監督であるリー・タマホリは適任だったかもしれない。
しかし、主役がアイス・キューブってのは無いだろ。
まあ配役も大慌てで決めたらしいから、ロクな人間が残っていなかったのかもしれない。だけど、もうちょっと何とかならなかったのか。
黒人に変更するにしても、マイケル・ジェイ・ホワイトとか、デブじゃなくて動ける人は見つけられなかったのか。
どうせスタントを起用するから本当に動けなくてもいい。DMXとかでもいいよ。とにかく「動けそうな人」を使おうよ。
おデブなラッパーを起用しても、動けそうにないもんな。
スタント・ダブルがバレバレのシーンもあるし(明らかに体格が違うので)。

で、なんせアイス・キューブを起用したもんだから、主人公のキャラ設定も変更された。
前作のザンダーはXスポーツの有名人だったが、今回は射撃の得意なネイビーシールズになった。Xスポーツを得意にしているところに キャラの特徴があったのに、それをバッサリと切り落としてしまったわけだ。
で、前作のザンダーについては「ボラボラ島で死んだ」の一言で処理。
おいおい、あのザンダーが、なんでボラボラ島で死ぬんだよ。殺すにしても、もうちょっと意味のある死なせ方にしようぜ。
たぶんソニー・ピクチャーズとしては、ヴィン・ディーゼルが降板したことに恨み骨髄で、だから、そんな感じで処理しちゃったんだろう と思うけど。

前作は、旧ソ連の生化学兵器を巡ってチェコで活躍する内容だった。
今回はアメリカ政府内部のクーデター計画で、だから当然、舞台もアメリカ国内で、大半はワシントンDC。
前作の脚本家リッチ・ウィルクスが書いた、東南アジアの海賊と戦うシナリオもあったらしいが、プロデューサーはサイモン・キンバーグ のシナリオを選択した。
主人公が変わったことで大きなダメージを受けているのに、話の中身までスケール・ダウンさせて、ますます勝ち目が無くなっている。
そこまでして続編を作る意味があったのかね。

(観賞日:2009年3月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会