『ダーティファイター 燃えよ鉄拳』:1980、アメリカ

腕っ節に自信のあるファイロ・ベドーは、友人オーヴィルとオランウータンのクライドをマネージャー役にして、ストリート・ファイトで金を稼いでいる。だが、警官の用意したジョーという男に勝利した後、ファイロはオーヴィルに引退することを告げた。
ファイロは、かつてリンというカントリー歌手と付き合い、大金まで渡した。姿を消したリンを追い掛けたファイロは、行く先々で男を騙していた彼女から冷たく突き放された。しかし、そのリンが町に戻り、ファイロは近付いてきた彼女とヨリを戻した。ファイロはYMCAに泊まっていたリンを、自分の家の空き室に住まわせることにした。
組織の顔役ビークマンは、様々な賭けを主催して金を儲けていた。子飼いのケンカ屋ウィルソンの相手を探していた彼は、ファイロの名を聞き付けた。ビークマンは子分を使いに出し、試合の話を持ち掛けた。引退したことを告げて断ろうとしたファイロだが、高額な報酬を聞いて態度を変え、前金の1万ドルを受け取った。
ウィルソンに殺人の過去があることを知ったオーヴィルは、ファイロの試合出場に反対する。ウィルソンもファイロの前に現れ、気が進まないと告げる。それでも試合出場の意志を変えなかったファイロだが、リンに反対され、前金を返して試合を辞退することにした。
ビークマンはリンを誘拐し、ワイオミングのジャクソンで試合に出ることをファイロに要求した。ファイロはジャクソンに向かい、ウィルソンと協力してリンを救い出した。ファイロとウィルソンは試合出場を取り止めるが、どちらが強いか勝負は付けることにした…。
監督はバディー・ヴァン・ホーン、脚本はスタンフォード・シャーマン、製作はフリッツ・メインズ、製作総指揮はロバート・デイリー、撮影はデヴィッド・ワース、編集はフェリス・ウェブスター&ロン・スパング、美術はウィリアム・J・クレバー、音楽指揮はスティーヴ・ドーフ、音楽監修はスナッフ・ギャレット。
主演はクリント・イーストウッド、共演はソンドラ・ロック、ジェフリー・ルイス、ウィリアム・スミス、ハリー・ガーディノ、ルース・ゴードン、マイケル・カヴァナー、バリー・コービン、ロイ・ジェンセン、ビル・マッキニー、ウィリアム・オコンネル、ジョン・クエイド、アル・ルシオ、ダン・デイヴィス、カミーラ・アシュレンド、ダン・バロウズ、マイケル・ブロックマン、ジュリー・ブラウン他。


1978年の『ダーティファイター』の続編。前作や『ダーティハリー』などでスタント・コーディネイターを務めていたバディー・ヴァン・ホーンの初監督作品。前作の主要キャストの他、ウィルソンをウィリアム・スミス、ビークマンをハリー・ガーディノが演じている。また、歌手のファッツ・ドミノが本人役で出演し、クラブで歌を披露している。

前作と同じ主要キャストが集まり、同じようなテイストで作られている。
そりゃあ、続編が全く違うシロモノになっていたら、それは続編としての意味が失われるわけで、前作と同じようなテイストを残すのは当然だ。
だが、何の変わり映えもしないのは、もっとイカンだろう。
何か新しいモノも加えないと、やはり続編の意味は無いはずだ。
これは、まだ2作目だ。偉大なるマンネリに陥るには、あまりにも早すぎる。
まあ、たとえ2作目でも、十数年後に作られた続編というのなら、同窓会のように前作の焼き直しになってしまうのも分からないではない。
だが、これは前作から2年後の作品だ。

前作の主要キャラクターが再登場するのは、いいことだろう。
だが、リンだけは要らなかった。前作の終盤で、リンは男を騙すクソ女として姿を消している。にも関わらず、今回もノコノコと登場し、しかもファイロはあっさりとヨリを戻す。だが、前作でイヤな女だということを存分にアピールしているので、リンが何を言っても説得力が無い。
リンが「あなたを愛している」とファイロに告げても、「何を言ってやがる、このクソ女」としか思えない。ヒロインとしての存在価値を前作で完全に消失しており、それは取り戻せない。
まあ、イーストウッドは、どうしても自分のスケを出したかったんだろうけどさ。

薄い話を引き延ばしたかのように、ノンビリした展開になっているのは、前作と同じ。取って付けたようなアクションがあるのも(まあアクションと呼ぶほどのモノではないが)、前作と同じ。ウダウダしながら、ゆっくりと時間が過ぎて行くのも同じ。
前作で銃を撃ちまくって暴走族を撃退したオーヴィルのママは、今回は組織の連中を前にしてビクビクしているだけ。そこは前作よりダウンしている。ただ、後半に入ると姿を消してしまうのは、前作と同じだが(ダメじゃん)。あと、完全な寄り道をして時間を浪費し、そこで笑いを取ろうとする意識は、前作よりもアップしている(ダメじゃん)。

クライドをコメディーリリーフとして使おうとする意識は。前作よりは上がっているようだ。ただ、やはり、そこを詰め切れていない。車を短時間で解体してしまうのは、ムチャすぎて、笑うというより呆れる。車と言えば、カーアクションが無いのも前作と同じ。

ファイトシーンに面白味が無いのも、相変わらず。監督が変わっても、演出のしょっぱさは変わらない。一方的に殴りまくり、パンチは全て命中する。かわしてパンチを打つとか、ワンツーからアッパーとか、型のある格闘の面白さは全く見られない。
最後のファイトシーンは、前作よりも観客が多いし、店を壊したりしているし、相手も強くなっているので、一応は前作よりレヴェルが上がったということになるだろうか。
ただ、ファイトの内容は、ただダラダラと長く続くだけで、別に面白いわけではない。
というか、ハッキリと言ってしまえば、この映画そのものがダラダラと続くだけなのだが。


1980年スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会