『鉄ワン・アンダードッグ』:2007、アメリカ

そのビーグル犬は警察犬として活動し、その日は市長が犯罪件数の多さについて演説する議会に来ていた。箱の匂いを嗅いだ彼が危険を察知して吠えたので、市長を含む人々は慌てて避難した。爆弾処理班が警戒しながら箱を開けると、中には全米豚肉協会から贈られたハムが入っていた。警官隊は大笑いし、他の警察犬は彼を馬鹿にした。ビーグル犬は落胆した様子で、建物の外へ出た。彼がヘマをするのは今に始まったことではなく、これまでに何度も繰り返していた。
ビーグル犬は男に捕まり、車で連れ去られた。ビーグル犬はGPSという巨大企業の本社ビルへ連行され、地下研究室の檻に収容された。サイモン・バーシニスター博士が深夜にビルへやって来ると、新入りの夜警であるダン・アンガーが制止した。しかし博士が常時入室許可のIDカードを見せたため、ダンは謝罪した。博士は夜警のキャドと共に、研究室へ赴いた。博士はキャドを助手に従え、動物を使った極秘の研究を行っていた。
博士はキャドに、市長とあったことを話す。博士は「警察権の訓練など無くても、遺伝子操作を利用すれば一瞬で治安を解決できる」と説明したが、市長からは相手にされなかった。そのことに腹を立てた博士は、新しい実験台であるビーグル犬に薬を注射して実証しようと考える。しかしビーグル犬は抵抗し、研究室の装置を壊しながら逃げ回る。ビーグル犬は棚を倒したため、薬品を体に浴びた。火事が発生する中、博士は「成功だ」と呟いた。ビーグル犬は研究室から脱出し、博士とキャドは慌てて消火に当たる。ダンは駆け付けた警官隊に指示を出そうとして、「もう刑事じゃないんだから」と笑われた。
ビーグル犬は路地裏で野良犬のリフ・ラフと仲間たちに見つかり、慌てて逃げ出した。ちょうど帰宅途中だったダンの車に、ビーグル犬は思い切り激突した。ダンはビーグル犬を拾い、車に乗せて家に戻った。翌朝、彼は息子のジャックにビーグル犬を紹介し、シューシャインと名付けた。「少しはお前の気が紛れると思って」とダンが言うと、ジャックは「僕は大丈夫だって言ってるだろ」と声を荒らげた。電話が入って仕事へ行くことになったダンは、ジャックにシューシャインの世話を任せた。
ジャックは医者の手紙を偽造して学校へ赴き、病気を装う。しかし校長は簡単に嘘を見抜き、彼を叱責した。シューシャインは郵便配達が来たので吠えるが、その衝撃で窓に亀裂が入った。テニスボールを取ろうとした彼は、ソファーを弾き飛ばしてしまった。「何か変だ」と彼が感じていると、ジャックが帰宅した。派手に散らかった室内を見て焦るジャックに、シューシャインは話し掛ける。彼が人間の言葉を話したので、ジャックは仰天した。
ジャックは困惑しながらも、シューシャインを連れて公園へ赴いた。そこへ学校新聞の記者である同級生のモリーが来たので、ジャックはシューシャインに「バレたら大変だ。犬語だけにしろ」と指示した。モリーが連れているスパニエル犬のポリーに、シューシャインは心を奪われた。彼はアタックしようとするが、ポリーは「ときめくような恋がしたいの。友達ならいいけど」と告げた。モリーとポリーが立ち去った後、ジャックはゴミ箱にあったフリスビーを何気なく投げた。するとシューシャインは、驚異的なスピードで走ってキャッチした。ジャックはシューシャインの能力をチェックし、穴掘りは凄いが匂いを嗅ぐのは苦手だと知った。
シューシャインは遥か遠くの音も聞き分ける聴力を発揮し、モリーが2人組の強盗に襲われていることを知った。シューシャインが現場へ急ぐと、途中で空に浮かび上がった。しかし彼はパワーを上手くコントロールできず、色んな物を壊しながら飛行する。彼がブレーキが掛からず現場に突っ込むが、偶然が重なって強盗2人組は昏倒した。シューシャインは強盗が奪ったカメラを奪還すると、その場から飛び去った。モリーは警官の事情聴取を受けて「犬が飛んで来て助けてくれた」と証言するが、もちろん信じてもらえなかった。
シューシャインはジャックから「君はヒーローだ」と言われるが、「ヒーローなんて無理だ。俺は家さえあればいいんだ。みんなには内緒にしてくれ」と告げる。キャドがシューシャインを捜しに来ると、ジャックは「知らない」と嘘をついて追い払った。博士は下水道に臨時の研究室を構えるが、研究用の資金が必要だった。するとキャドが、「刑務所を出たばかりの仲間が手伝ってくれる」と告げた。博士とキャドは、全焼したビルの研究室から必要な装置を密かに運び出した。
ジャックはシューシヤインに、「パパは警察にいた頃、市長から2回も表彰された。ママが死んで僕を一人に出来ないからって辞めたのに、今も仕事だ」と漏らす。テレビのニュース番組では、宝石店強盗が立て籠もっていることが報じられている。シューシャインはジャックから「お前がやっつければいい」と言われ、「俺は普通の犬になりたいんだ」と返す。しかしジャックに懇願され、「今回だけだ」と渋々ながら承諾した。
宝石店を襲った覆面強盗団の正体は、博士の指示を受けたキャドと仲間2人だった。そこへシューシャインが飛び込み、仲間2人をKOする。キャドは逃走し、シューシャインは店を出て飛び去った。翌朝のニュースで、その出来事は「スーパードッグが宝石店強盗を阻止した」と大々的に報じられた。しかしシューシャインは「俺だとバレたら連れ戻される」と、浮かない顔だった。ジャックは彼にアメコミを見せ、コスチュームを用意した。シューシャインはヒーロー犬「アンダードッグ」となり、人を助けたり犯罪を阻止したりして活躍するようになった。
博士はシューシャインがマスコミに大きく取り上げられる状況を悔しがり、「本当なら、私が取り上げられているはずなんだ」と苛立った。博士は別の犬で実験したが失敗に終わり、シューシャインのDNAサンプルを入手しようと企む。彼はキャドに女装させ、高層ビルから転落しそうになっている芝居でシューシャインをおびき出させた。キャドはシューシャインを鎖を繋いで連れ去ろうとするが、猛スピードで引きずり回される。シューシャインに逃げられたキャドだが、名前と住所の書かれた首輪を手に入れた。
ジャックは図書館でモリーとデートし、シューシャインを外へ繋いでおく。シューシャインがポリーと話していると、リフ・ラフたちが現れた。リフ・ラフはシューシャインを挑発し、馬鹿にして去った。ポリーは言われっ放しのシューシャインに、「アンダードッグなら、あんな奴に負けないわ」と告げる。彼女がアンダードッグへの羨望を語ったので、シューシャインは「助けを求めれば駆け付けるっていう噂だよ」と述べた。
その夜、ポリーが「アンダードッグ、助けて」と叫ぶと、シューシャインはアンダードッグの格好で駆け付けた。「いつでも好きな場所に行けていいわね」とポリーが言うので、シューシャインは彼女を空の散歩へ連れ出した。次の日、ジャックはダンに頼んで、下水道の地図を書いてもらう。彼はシューシャインを連れてモリーの元へ行き、「強盗は下水道を通って店に入ったのかもしれない」と告げる。同じ頃、博士とキャドはダンを捕まえ、地下研究室へ連行して縛り上げていた。
博士はシェパード3匹を使ってダンを脅し、シューシャインを呼ぶよう要求した。ダンの声を耳にしたシューシャインは、ジャックに状況を知らせる。ジャックが「僕も行く」と言ったので、シューシャインは彼を連れて研究室へ赴いた。シューシャインはダンとジャックを解放してもらうため、博士にDNAを採取させる。さらに彼は博士の用意した錠剤を飲み、普通のビーグル犬に戻った。博士はジャックを縛り上げ、シューシャインを檻に閉じ込めた。彼はシェパードに薬を与えてスーパードッグへと変貌させ、議事堂へ乗り込む…。

監督はフレデリック・デュショー、原案はジョー・ピスカテッラ&クレイグ・A・ウィリアムズ&アダム・リフキン、脚本はアダム・リフキン&ジョー・ピスカテッラ&クレイグ・A・ウィリアムズ、製作はゲイリー・バーバー&ロジャー・バーンバウム&ジェイ・ポルステイン&ジョナサン・グリックマン、共同製作はエリン・スタム&レベッカ・ラッド、製作総指揮はエリック・エレンボーゲン&ボブ・ヒギンズ&トッド・アーノウ、撮影はデヴィッド・エグビー、美術はギャレス・ストーヴァー、編集はトム・フィナン、衣装はゲイリー・ジョーンズ、視覚効果監修はホイト・イェットマン、音楽はランディー・エデルマン。
出演はジム・ベルーシ、ピーター・ディンクレイジ、パトリック・ウォーバートン、アレックス・ニューバーガー、テイラー・モンセン、ジョン・スラッテリー、サマンサ・ビー、ティモシー・クロウ、ラリー・ヴィガス、マリオ・マリアーニ、ベイツ・ワイルダー、アレクサンダー・“アレックス”・ギャルド、クリストファー・バーンズ、ジョセフ・シリアーニ、スジョイ・デー、ミシェル・プラウド、アルバート・M・チャン他。
声の出演はジェイソン・リー、エイミー・アダムス、ブラッド・ギャレット。


1964年から1974年までアメリカで放送されていたTVアニメ『ウルトラわんちゃん』を基にした実写映画。
監督は『キャメロット』『レーシング・ストライプス』のフレデリック・デュショー。
脚本は『マウス・ハント』『スモール・ソルジャーズ』のアダム・リフキンと、これが映画デビューとなるジョー・ピスカテッラ&クレイグ・A・ウィリアムズの共同。
ダンをジム・ベルーシ、博士をピーター・ディンクレイジ、キャドをパトリック・ウォーバートン、ジャックをアレックス・ニューバーガー、モリーをテイラー・モンセン、市長をジョン・スラッテリー、校長をサマンサ・ビーが演じている。
シューシャインの声をジェイソン・リー、ポリーをエイミー・アダムス、リフ・ラフをブラッド・ギャレットが担当している。

冒頭、アニメ版の映像が写し出され、シューシャインによる「これがサイモン・バーシニスター博士。手下のキャドと組んで世界征服を企んでいるが、いつも俺にコテンパンにされている」といった語りが入る。そして「俺は世界最高のスーパーヒーロー、アンダードッグ」という語りに合わせて、シューシャインがアンダードッグとして活躍している様子が写し出される。
この映画の見る人の大半は、どうせ最初からアンダードッグのことを知っている。
だから冒頭でアンダードッグの姿を見せても、ネタバレもクソも無いだろう。
しかし、それでも最初にアンダードッグとしての活躍は見せず、「シューシャインがアンダードッグに変身して活躍するようになるまで」を順を追って描いた方が良かったと思うよ。

アニメ版を見せた後、「順を追って説明しよう」ってことで実写の本編映像に切り替わり、議会で市長が話す様子が写し出される。そこでシューシャインが「俺が育てられた目的は、人々の安全を守ること。誰にも邪魔させない」と勇ましく語り、箱に向かって吠えるので人々が逃げ出す。で、緊迫した中で爆弾処理班が箱を開けると、豚肉だったというオチが付く。
緊張と緩和で笑いを取りに行っていることは分かるけど、あまり上手く行っていない。
そこは笑いの作り方が上手くないってことじゃなくて、「今まで何度も失敗しているんだから、そこも信じてもらえないんじゃないの」ということが引っ掛かる。
また、シューシャインは外へ出てから失敗した事例の幾つかをモノローグで語るんだけど、それを映像として描写した方がダメ犬としてのアピールに繋がる。
それと、外へ出た途端に捕まるので、ものすごく慌ただしい印象を受ける。目先の笑いを取りに行った代償として、大きな損を被っているんじゃないかと。

シューシャインが棚を倒して薬品を体に浴びた時点で、博士は「成功だ」と口にする。
だが、それは実際に薬品の効果が出た時に、観客が初めて感じるべきことじゃないのか。
で、野良犬に追われたシューシャインが逃亡するトコでスーパーパワーが発揮されるのかと思いきや、ダンに拾われて車に乗せられる。
車で出発する際、シューシャインが車に激突した跡をカメラが写し出すけど、「犬がスーパーパワーの持ち主に変貌した」ってのをアピールする最初のシーンとしては、かなり残念な形だわ。
そこはシューシャイン本人も全く気付かない「何となく」の形でボンヤリと見せるのではなく、もっとハッキリした形で変貌を示すべきだわ。

翌朝のシーンになると、ジャックは学校を休むために医者の手紙をパソコンで偽造している。
その後でダンからシューシャインの世話を任されるので、「学校を休んでシューシャインの面倒を見る」という手順になるのかと思いきや、登校して校長から注意されている。
普通に学校へ行っちゃうのなら、医者の手紙を偽造した意味が無いわ。
そもそも彼が学校に行きたがらない理由が良く分からないし、その設定は全く機能していないんだよな。ただの冴えない少年ってことでも、充分に事足りるのよ。

シューシャインはオープニングから饒舌に喋っているのだが、博士が実験しようとする時やダンに拾われた時は全く言葉を発しない。
何か不自然だなあと思っていたら、「シューシャインの言葉でジャックが驚く」というシーンが訪れて、ようやく理解できた。
ようするに、犬の言葉を人間の台詞として表現しているわけじゃなくて、実際に人間の言葉を喋っている設定ってことだ。
ただ、シューシャインは研究室で猫と会話を交わしていたし、野良犬とも喋っていた。それは人間の言葉じゃなくて、犬語ってことでしょ。
なのでジャックが驚くシーンで「シューシャインは人間の言葉を喋っている」という設定を急に提示されても、違和感が強いのよ。

「シューシャインが薬品を浴びたことによって人間の言葉を話せるようになった」という設定のはずなんだから、それ以前から彼を普通に喋らせておいて、それと同じように表現しちゃったら、そりゃあ違和感が生じるのは当然で。
だったら、そこまでは一言も喋らせずに話を進めて、ジャックが驚くシーンで初めて言葉を発する形にでもしないと。
ただ、その後でシューシャインがポリーと話すシーンがあって、そこは犬語という設定のはずなので、ますます統一感が無くなるんだよな。
もうメチャクチャだよ。

82分という短い上映時間の中で多くの情報を詰め込まなきゃいけないという事情があるのは分かるけど、それにしてもバタバタしている。
「シューシャインが話せることを知ってジャックが驚く」「シューシャインの能力を知ってジャックが驚く」「シューシャインが自分の力を認識する」「シューシャインが空を飛んで強盗を退治する」ってのを立て続けに処理するのは、あまりにも乱暴で大雑把だ。
そこを解消する方法は幾つか考えられるが、例えば「映画が始まった時点で既にシューシャインがスーパーパワーを持っている」という形にするのも1つの策だろう。

オープニングでシューシャインと組んでいた警官の存在が完全に無視されているのは、大いに引っ掛かる。
他の警官たちが嘲笑する中で、彼だけは同調していなかった。そもそも、ずっとシューシャインと組んでいたわけだから、そこには絆が芽生えているんじゃないのかと。
だから、シューシャインが建物の外へ出た時に、追い掛けて来ないのは不可解だ。
また、シューシャインが失踪したのに捜索している気配も無いし、アンダードッグになってからも接触しようとする様子が無い。そもそも、全く姿を見せないしね。
一方で、シューシャインにしても、その警官のことを全く気にせず、完全に忘れ去っているのは引っ掛かるし。

組んでいた警官とシューシャインとの絆がゼロであるならば、そもそも「元々はシューシャインが警察犬」という設定すら無意味なのではないか。
そこを外すと、「警察犬としてヘマを繰り返していたシューシャインが、スーパーパワーでヒーロー犬に」という展開は作れなくなる。
だけど何かを犠牲にしないと、この映画はゴチャゴチャしていて収拾が付かなくなっている。
それに、その要素を削ったところで、大したマイナスには繋がらないと思うぞ。

博士の目的が、ものすごくボンヤリしている。
冒頭ではシューシャインが「世界征服を企んでいる」と説明するが、そんな様子は皆無だ。
「遺伝子操作で動物を変貌させる」ってのは目的ではなく、手段だ。
で、シューシャインがマスコミに大きく取り上げられると悔しそうな態度を見せるので、たぶん「自分の偉大さをアピールしたい」ってのが目的なんだろう。
ただ、やっぱりボンヤリしていると言わざるを得ない。なんで冒頭の説明通り、「世界征服を企んでいる」という設定にしておかなかったんだろう。

あと、博士はGPSという会社の研究室を使っているんだから、表向きにやっている実験があるはず。でも、そういうのは全く見えない。
そもそも、GPSという会社の全容がサッパリ見えない。CEOも幹部も誰一人として登場しないし、本筋の展開には全く絡まないのだ。
だったら、博士はフリーで活動している設定にすれば良かったんじゃないのか。
そうするとダンが博士やキャドと序盤で絡む部分は消えるけど、そんなのは後の展開に何の影響も与えないんだから。

ジャックがシューシャインをスーパーヒーローとして活躍させたい動機が、イマイチ分からない。自分が何かを得るためにスーパーパワーで助けてもらうとか、そういうことなら分かりやすいんだけどさ。
あと、それまでに「スーパーヒーローやアメコミが大好きだった」という設定が示されていれば、そこを動機に繋げることも出来ただろうけど。
彼はシューシャインが「俺は普通の犬になりたいんだ」と口にした時、「僕だって両親がいる子供になりたいけど、人生は思ったようには行かないんだ」と語る。でも、それって何の説明にもなっていないでしょ。
だから、それで承諾しちゃうシューシャインの感覚も意味不明だし。
会話の方程式がメチャクチャだ。

シューシャインがコスチュームを着てアンダードッグになった途端、活躍を描くダイジェスト映像になる。だけど、まずは1つぐらい、アンダードッグとしての活動を粒立てた方がいいんじゃないかと。
それを考えると、アンダードッグになるタイミングも、もう少し早めにした方がいい。
最初からシリーズ化を想定して、これを「アンダードッグ誕生篇」と割り切って作っているわけでもないでしょ。
それに、シューシャインがアンダードッグになるまでの経緯が、そんなに面白いわけでもないんだし(だからってアンダードッグになってからの展開が面白いわけでもないけど)。

アンダードッグはスーパーマンを意識したキャラクターだ。ジャックが彼に見せるアメコミは『スーパーマン』だし、コスチュームも似せてある。シューシャインがモリーを空の散歩に連れ出すシーンは、1978年の映画『スーパーマン』でスーパーマンがロイス・レインのアパートを訪れたシーンを模倣している。
博士に脅されたシューシシャインが錠剤で力を失うのも、同作品でレックス・ルーサーの罠に落ちたスーパーマンが鉛の箱を開けてしまうシーンを意識しているんだろう。
しかしシューシャインが力を失う展開に関しては、「まあ意識しているんだろうな」という程度だし、内容としては随分と異なっている。それと、変に欲張ったせいで、話が薄くなっている&駆け足になっていると感じる。
その要素を持ち込むってことは、「シューシャインが力を失い、脱出し、力を取り戻す」という手順を踏まなきゃいけなくなるわけで。
そのせいで時間の余裕が無くなり、クライマックスまでに用意されるアンダードッグの活躍シーンが薄くなっているように思えるのだ。

そんでシューシシャインが脱出して議事堂へ乗り込むと、あっさりとスーパーパワーが復活する。そして彼はシェパードを説得し、博士を襲わせる。
いやいや、仲間なんて要らんよ。1匹で敵に立ち向かう形にしておこうぜ。
っていうかジャックは野次馬に紛れているだけで、まるで関わらないんだよな。
一方でダンは議事堂へ乗り込み、博士に注射を打って簡単に退治しているが、それはそれで「急にダンが活躍する見せ場を作られてもなあ」という感想だわ。取って付けた感じしか無いわ。

モリーは議事堂へ忍び込み、キャドに捕まって時限爆弾を仕掛けた場所に縛られているんだけど、そういうのも全く要らないなあ。
彼女が捕まっていることをジャックは全く知らないままだし、助けに行くのはシューシャインだし。
クライマックスの事件解決にジャックを全く関与させず、傍観者のままで終わらせるのなら、何のために「ジャックがシューシャインの飼い主となり、仲良くなる」という展開を用意したのかと。
そこに来て「要らない子」にしたらダメでしょ。

(観賞日:2016年9月23日)

 

*ポンコツ映画愛護協会