『トゥー・ウィークス・ノーティス』:2002、アメリカ&オーストラリア

ニューヨーク。弁護士のルーシー・ケルソンはコミュニティー・センターの取り壊しに反対し、友人のメリルとトムを伴って工事現場で 体を張って抗議する。トムが求婚してメリルが承諾するという予想外の出来事はあったものの、ひとまず現場監督は取り壊しを中止した。 警察に連行されたルーシーは、父ラリーと母ルースによって身柄を引き取られた。
両親はルーシーを責めず、むしろ賞賛した。ルーシーの環境保護運動に対する熱の入れようは、左翼活動家の両親譲りだ。ルーシーは 安アパートに一人で暮らしており、いつも中華の出前で食事を済ませている。彼女にはアンセルという恋人がいるが、彼は環境保護団体 グリーンピースのメンバーとして活動しており、ずっとニューヨークには戻っていない。
市民病院では「今年の顔」が発表され、選出されたジョージ・ウェイドがスピーチを行う。ジョージはウェイド社の社長であり、雑誌 「GQ」の表紙を飾る有名人だ。そして、コミュニティー・センターの取り壊しにもウェイド社は関わっている。ジョージは運転手トニーが ハンドルを握る車で、兄ハワードと彼の妻ヘレン、メイドのロザリオが暮らす豪邸へ赴いた。
ジョージはハワードから、ウェイド社で雇う女性弁護士に手を出してばかりいることを咎められた。そもそもジョージは、弁護士を能力 ではなく自分のタイプかどうかで選んでいた。ジョージの女癖が悪いために妻ローレンとは離婚調停中で、おまけに会社の経営も悪化して いた。ハワードはジョージに、今度は優秀な大学を卒業した弁護士を雇うよう要求した。
ルーシーはコミュニティー・センター存続のため、ジョージに直談判することにした。ジョージはルーシーがハーバード大卒の弁護士だと 知り、車に彼女を乗せた。ルーシーは、コミュニティー・センターを存続させてくれれば、ウェイド社が狙っているTタワー建設権の落札 に手を貸すと述べた。それに対してジョージは、顧問弁護士になってくれればコミュニティー・センターを残すと持ち掛けた。慈善事業を 担当させてもらうことを条件に、ルーシーは誘いを承諾した。
しかし実際に顧問弁護士の仕事を始めると、ルーシーにはストレスの溜まることばかりだった。それは、ジョージが封筒やネクタイ選び など、私生活のことまで相談してくるからだ。それも時間を問わず、夜中でも電話で呼び出すのだ。ローレンとの離婚調停も任された ルーシーだが、ジョージが勝手に慰謝料を増額してしまう。「弁護士としての仕事をさせてほしい」と訴えるルーシーだが、ジョージは 「君のおかげで離婚できた。仕事はしている」と全く気にしていない様子だ。
ルーシーはジョージに、緊急事態以外は電話を掛けてこないよう要求した。ウェイド社に入ってから、1年が過ぎていた。メリルとトムの 結婚式に出席したルーシーの元に、ジョージから電話が入った。すぐホテルに来てほしいと言われ、慌ててルーシーは赴いた。だが、 ジョージの緊急事態とは、パーティーに着ていく服を選ぶことだった。
とうとう耐え切れなくなったルーシーは、「あと2週間で辞める」とジョージに宣言した。ルーシーは次の就職先を探すが、是が非でも 引き止めたいジョージが手を回して採用しないよう圧力を掛けていた。そこでルーシーは、客の前で無礼な態度を取り、クビにしたくなる よう仕向ける。だが、そんなことでクビにしようとジョージは考えなかった。ジョージは私生活の全てをルーシーに委ねるようになって おり、去られては困るのだ。しかしルーシーが説得し、ジョージは後任が見つかれば辞職しても構わないと認めた。
ルーシーはアンセルから電話で別れを告げられ、落ち込んだまま出社した。それを知ったジョージは、彼女をクルーザーのディナーに招待 した。ルーシーが泥酔したため、ジョージは自分が暮らすホテルの部屋へ連れ帰った。翌朝、目を覚ましたルーシーは、気付かぬ内に何か されたのではないかと考える。だが、ジョージは「何も無かった」と彼女に告げた。
2人は後任弁護士の面接を行うが、ジョージは太った婦人ポリーに「おめでたですね」と声を掛けて怒らせる。そんな中、ハーバード大 出身の若い女性弁護士ジューンが飛び込みで面接を希望してきた。ジューンはルーシーに会い、大学では伝説の人だと褒め称えた。仕事が 入ったルーシーは改めて面接しようとするが、ジューンを見たジョージは即座に採用を決めた。
ジョージやジューンと共にテニスコートへ出掛けたルーシーは、2人の親密な様子を見てクッキーを食べ過ぎてしまう。自分の車に ジョージを乗せて戻る途中、ルーシーは腹痛に襲われるが、渋滞に巻き込まれてトイレに行くことが出来ない。ジョージがRV車を見つけ、 ルーシーを車から連れ出した。ジョージはRV車に乗っていた家族に頼み、トイレを貸してもらう。だが、その間に渋滞が解消され、2人 の車はレッカー移動されてしまった。ジョージは自家用ヘリを呼び、ルーシーと共に空を移動した。
ジョージはジューンを誘い、ニューヨーク子供連盟のパーティーへ行く。そこでジョージはハワードから、Tタワー建設資金も考えて コミュニティー・センターを取り壊すよう指示された。ドレスアップして現われたルーシーは、ジョージの元へ出向いた。だが、ジョージ がコミュニティー・センターを取り壊すとルーシーが知ったため、2人は口論になってしまう…。

監督&脚本はマーク・ローレンス、製作はサンドラ・ブロック、製作協力はスコット・エリアス、製作総指揮はメアリー・マクラグレン& ブルース・バーマン、撮影はラズロ・コヴァックス、編集はスーザン・E・モース、美術はピーター・ラーキン、衣装はゲイリー・ ジョーンズ、音楽はジョン・パウエル、音楽監修はローラ・ワッサーマン。
出演は出演はサンドラ・ブロック、ヒュー・グラント、アリシア・ウィット、ダナ・アイヴィー、ロバート・クライン、ヘザー・バーンズ、 デヴィッド・ヘイグ、ドリアン・ミシック、ノラ・ジョーンズ、ドナルド・トランプ、マイク・ピアザ、シャロン・ウィルキンス、ジェイソン・アントゥーン、シャーロット・ マイアー、フランシー・スウィフト、ベッキー・アン・ベイカー、アダム・ルフェーヴル、ジョナサン・ドクチッツ、ヴィエンヌ・ コックス、マリーナ・ラッツ、イライダ・ポランコ、ホセ・ラモン・ロザリオ、シャノン・フィールダー他。


『恋は嵐のように』『デンジャラス・ビューティー』などの脚本家マーク・ローレンスが、初めて映画監督を務めた作品。
ルーシーをサンドラ・ブロック、ジョージをヒュー・グラント、ジューンをアリシア・ウィット、ルースをダナ・アイヴィー、ラリーを ロバート・クライン、メリルをヘザー・バーンズ、ハワードをデヴィッド・ヘイグ、トニーをドリアン・ミシックが演じている。
他に、ルーシーとジョージがメジャーリーグを見に行くシーンでは、メッツの捕手マイク・ピアザが出演。アンクレジットだが、ヒット を打つのは当時サンフランシスコ・ジャイアンツの一員だった新庄剛志。ニューヨーク子供連盟のパーティー会場では、不動産王ドナルド ・トランプと歌手のノラ・ジョーンスが本人役で出演している(ノラはピアノを弾きながら一曲披露する)。

タイトルの「トゥー・ウィークス・ノーティス」とは、「あと2週間で辞める」という意味。
アメリカでは、辞職を決めたら2週間前に告知する必要があるらしい。
とりあえず、この原題そのままのカタカナ邦題を付けた配給会社の担当者には、猛省を求める。
こんなタイトルじゃ何の訴求力も無いだろうに。もっと頭を使って邦題を考えなさいよ。
かつての配給会社は、そりゃあ大きく外すこともあったが、もっと日本語による邦題を懸命に考えていたぞ。
どう考えても手抜きでしょ、このタイトルは。

分かりやすいロマンティック・コメディーである。
ヒュー・グラントはロマコメの帝王と呼んでもいいぐらいロマコメ映画に染まっているし、サンドラ・ブロックは「色気が無くてサバサバ している活動的な女性」が良く似合っている(まあ他の人の方がもっと良いだろう、いっそアリシア・ウィットならいいんじゃないかと 思ったりもするけれど)。
奇をてらったこと、変な捻りは求めない。
予定調和の不和と和解、ベタなハッピーエンドへの物語で構わない。
だから、この映画に対して私が言いたいことは、「もって丁寧にやってくれ」という一言に集約される。

ルーシーが顧問弁護士になった後、すぐに6ヶ月後、4ヶ月後、2ヶ月後と、どんどん話が飛ぶなんて以ての外だ。
ルーシーが辞職を決意するまでの展開が、バタバタと慌ただしすぎる。どんどん時間がワープするので、その度に気持ちが散漫になる。
就職して数日や数週間で辞めさせるわけにはいかないってことなんだろうけど、せめて一繋がりの流れるようなものとして描けなかったのか。
それと、ルーシーが辞職を決めるきっかけが弱いと感じる。もっと「堪忍袋の緒が切れた」という大仰な描写があってもいい。
そのルーシーが辞職を決めるまでの場面で「6ヶ月後」などとテロップを入れる感覚があるのなら、ルーシーが辞職する日がいつなのかが 分かるように、なぜ日付を入れたり「辞職まであと*日」と表示したりしないのか。タイムリミットのサスペンスは要らないけど、観客に 「辞職がいつなのか」を意識させることは必要な作業じゃないのか。

セリフで説明するほどには、ジョージとルーシーが正反対だということはアピールされていない。性格や思想はともかく、生活格差に ついては弱い。
ジョージとトニーを友人関係にしたのは失敗だろう。専属の運転手は、ジョージより年配なのにうやうやしい態度を取るような男にして、 そこでジョージのブルジョアぶりをアピールすべきだ。他にジョージのブルジョアをアピールするためのキャラが見当たらないんだし。
ロザリオというキャラがいるが、ほとんど出番は無いし。
っていうか、トニーの出番も少ないけど。

ルーシーが耐えかねて辞職を宣言した後、後任を探せば認めるとジョージに言われてトイレで嬉しそうに抱き付いたり、アパート屋上で 仲良く豆腐ケーキを食べたり、そういうシーンは考えものだ。
クルーザーのシーンまでは、もっとルーシーがジョージを嫌悪している態度を打ち出した方がいいんじゃないのか。
辞職を宣言して早々に、「顧問弁護士としてでなければ良い付き合いが出来る」というレベルに落ち着いているが、ルーシー側からすれば 、そうじゃないはず。
恋人にフラれた後にジョージに優しくされて、クルーズでの一件をきっかけに変化への舵を切るべきじゃないかと思うんだが。
ジューンの採用が決まった途端、ルーシーがジェラシーを露骨に見せるのも、タイミングとしては早すぎると感じた。
そうではなく、最初は後任が決まって喜ぶが、ジョージとジューンの親密な態度を見て心が騒ぎ出し、次第にジューンへの対抗心を露骨に 見せるようになっていくという手順を踏んだ方がいい。

子供連盟のパーティー会場でルーシーと言い争った後、ジョージがジューンとストリップ・チェスに興じるのは違うなあ。
そこは既に、他の女の誘惑に乗ったり、他の女を口説いたりしてはいけない段階に来ていると思うのよ。
あとラスト、ルーシーがジョージを追い掛けて抱き付くシーンは、コケたり誰かにぶつかったりすべきじゃないの。
そこは彼女の天然キャラを生かす場面だと思うが。

この映画に関して1つ誉めるところがあるとすれば、ほんのりではあるが、ニューヨークへの愛やエールが感じられることだ。
ただし、それを感じさせるシーン、ルーシーとジョージがヘリコプターでニューヨーク遊覧をするシーンは、かなりギクシャクしたものが あるけどね。
せめてルーシーが自家用ヘリに驚くリアクションぐらい見せるべきだろう
ともあれニューヨークへの愛やエールは感じるが、それはマーク・ローレンス監督の力ではない。当初は予算削減のためにトロントでの ロケが決まっていたものを、サンドラ・ブロックが「ニューヨークが舞台だから、ニューヨークで撮影すべき」と主張したのだ。
撮影の時期は、2001年9月11日のテロが発生した後だった。
サンドラ・ブロックとしては、ニューヨークを元気付ける手助けになればという考えだったのだろう。

(観賞日:2007年10月13日)

 

*ポンコツ映画愛護協会