『トワイライト』:1998、アメリカ

元警官で私立探偵のハリー・ロスは、俳優のジャック&キャサリン・エイムズ夫妻の依頼を受け、2人の娘メルを捜索した。ハリーはメキシコのプエルト・ヴァラルタで、恋人ジェフ・ウィリスと一緒にいるメルを発見するが、彼女に誤って足を撃たれてしまった。
それから2年後、探偵のライセンスを失効したハリーは、エイムズ夫妻の豪邸に居候している。ある日、ハリーはジャックから、グロリア・ラマーという女性に封筒を届けてほしいと頼まれる。ハリーはグロリアの家に行くが彼女はおらず、中にいた男が発砲した後、死亡する。免許証から、男は元警官レスター・アイヴァーだと分かった。
レスターのアパートを訪れたハリーは、そこで新聞記事の切り抜きを発見する。そこには、ハリーとキャサリンの記事が書かれてあった。その昔、キャサリンにはビリー・サリヴァンという俳優の恋人がいたが、ジャックと付き合い始めた。ビリーは失踪し、自殺と断定された。その後、ジャックとキャサリンは結婚したのだった。
ハリーは切り抜きを燃やしてアパートを立ち去ろうとするが、かつての同僚ヴァーナ・ホランダー警部補と警官隊に包囲される。ハリーは警察時代に対立していたフィル・イーガン警部に幾つかの質問を受けるが、すぐに釈放された。
エイムズ邸に戻ったハリーは、キャサリンにレスターのアパートを訪れたのではないかと詰め寄った。ハリーはアパートで、キャサリンの香水と同じ匂いを嗅いでいたのだ。キャサリンは否定した後、ハリーとキスを交わし、そして2人は肌を重ね合った。
ジャックが心臓発作を起こして病院へ運ばれた直後、ハリーはグロリアからの電話を受ける。指定された場所に行ったハリーは、グロリアにレスターのことを聞こうとするが、封筒を渡すよう銃で脅される。銃を奪い取ったハリーだが、グロリアと組んでいたジェフが現れる。ハリーはジェフに殴り付けられ、封筒を奪われてしまった。
ハリーは、彼の元相棒を自称するルーベン・エスコバルに助けられる。ハリーはヴァーナから、レスターがビリーの失踪事件を担当していたことを聞かされる。ハリーは、自分をエイムズ夫妻に紹介してくれた旧友レイモンド・ホープに会って、話を聞く…。

監督はロバート・ベントン、脚本はロバート・ベントン&リチャード・ルッソ、製作はアーレン・ドノヴァン&スコット・ルーディン、製作協力はリチャード・ファーガソン、製作総指揮はマイケル・ハウスマン、撮影はピオトル・ソボチンスキー、編集はキャロル・リトルトン、美術はデヴィッド・グロップマン、衣装はジョセフ・G・オーリシ、音楽はエルマー・バーンスタイン。
主演はポール・ニューマン、共演はスーザン・サランドン、ジーン・ハックマン、ストッカード・チャニング、ジェームズ・ガーナー、リース・ウィザースプーン、ジャンカルロ・エスポジート、リーヴ・シュレイバー、ジョン・スペンサー、M・エメット・ウォルシュ、マーゴ・マーティンデイル、ピーター・グレゴリー、レネ・ムジカ、ジェイソン・クラーク、パトリック・Y・マローン、ルイス・アークエット、マイケル・ブロックマン、エイプリル・グレイス、クリント・ハワード他。


『クレイマー、クレイマー』のロバート・ベントンが監督と脚本を務めた作品。
ハリーをポール・ニューマン、キャサリンをスーザン・サランドン、ジャックをジーン・ハックマン、ヴァーナをストッカード・チャニング、レイモンドをジェームズ・ガーナー、メルをリース・ウィザースプーン、ルーベンをジャンカルロ・エスポジートが演じている。

このスタッフと出演者で、日本で劇場未公開なのは扱いが悪いんじゃないかと思っていたが、観賞したら納得した。そりゃあ、未公開にして正解だ。
冒頭にあるリース・ウィザースプーンのヌードが、映画のハイライトだろう。
冗談でも何でもなく、本気でそう思う。
ただ、間違い無くリースのヌードが最大の見せ場だが、物語のバランスを考えれば、冒頭シーンは失敗だ。エイムズ夫妻との関係を説明するために過去の出来事を描いておきたかったのかもしれないが、その事件に大きな意味があるのではないかと勘違いさせることに繋がる。
実際は、冒頭のシーンには大した意味は無いのに。

メルがハリーに発砲したことは、後に繋がるわけではない。警官達が「ハリーはアソコを撃たれて不能になったのでは」と噂しているが、その噂自体が大きな意味を持っていない。ジェフは後になって再登場するが、無理にメインストーリーに絡ませているという感じが否めない。正直、彼は再登場しなくてもいいし、邪魔に思える。
ハリーとエイムズ夫妻の関係については、わざわざ過去を映像で見せなくても、語らせるだけで充分だ。それよりは、現在のハリーとエイムズ夫妻の信頼関係を描く方が重要だろう。それと、冒頭でメルのことを描くぐらいなら、ビリー失踪事件やジャックトキャサリンの過去について描く方が、後のことを考えれば適していたはず。

グロリアの家でレスターの死体と遭遇した後のハリーの行動は、奇妙に思える。普通、警察に連絡するか、それが無理ならジャックに連絡するか、どちらかが普通だろう。いきなりレスターのアパートに行くというのは、良く分からない。
ハリーが簡単にキャサリンと寝るのは、避けるべきだった。ジャックとは友情で結ばれているはずだから、簡単に裏切るような行為を取るべきではない。ハリーがキャサリンに思いを寄せているとしても、プラトニックな関係を貫くべきだ。どうせ、ハリーがキャサリンと寝たことは、後の展開に重要な意味を持って来るわけでもないのだし。

ハリーとジャックの間に信頼関係があってこそ、終盤にハリーがジャックに疑いを掛けざるを得なくなる展開において、主人公の心の葛藤が生じて、話が面白くなるはず。ところが、最初から、この2人の友情は崩れているから、それが成立しない。
実行犯が終盤になって分かるが、そいつの出番がそこまでに少なすぎるので、「お前じゃダメだろ」と言いたくなってしまう。そいつを実行犯とするような伏線も無いし。その場になって、急にハリーがピンと来て、実行犯がベラベラと喋るというのは、どうなのよ。

前述したように、ジェフは邪魔な存在になっているが、それ以外にも数名のキャラクターが、出てきたはいいが居所を上手く見つけられずにウロウロしている。多くのキャラクターを登場させたものの、さばき切れていないのだ。ヴァーナやフィル、ジェフにルーベン、さらにメルも、出て来ない方が、もしくは出てきても存在をアピールしない方が良かった。
話を無闇に広げすぎて、まとめられなくなっている。エイムズ夫妻を巡る事件だけでも手に負えなくなっているのに、ハリーの過去の交友関係やら、メルとジェフのことまで絡ませようして、無理が生じている。取り繕うのに精一杯なのか、ハリーは事件に巻き込まれているはずなのに、緊張感を生み出す所まで手が行き届かない。

たぶんね、昔懐かしいハードボイルドを作りたかったんじゃないかと思うのよ。
ただ、けだるい感じを出したかったのかもしれないが、話がユルユルで締まりが無いのは、それとは全く意味が違う。ポール・ニューマンの、いい感じにくたびれた存在感や、渋い脇役陣の個性で引っ張ろうとしても、それだけでは厳しいものがある。

 

*ポンコツ映画愛護協会