『トゥルース・オア・デア 〜殺人ゲーム〜』:2018、アメリカ

メキシコ国境付近のガソリンスタンドに、ジゼルという女性が車で立ち寄った。彼女が買い物を済ませて去ろうとすると、店の電話が鳴る。受話器を取った店主は、ジゼルに「真実か、挑戦か?」と問い掛けた。ジゼルは「もうそのゲームはやりたくない」と泣きそうになるが、店主は構わず同じ言葉を繰り返した。ジゼルは店内にあったオイルを床に撒き、客の女性にも浴びせた。彼女がマッチに火を付けたので、女性客は狼狽する。ジゼルは「こうするしかないの」と釈明し、火だるまになった女性客は絶叫した。
ユーチューバーとして活動する大学生のオリヴィア・バロンは、同居している親友のマーキーから春休みの旅行に誘われる。オリヴィアはハビタットへの参加を決めていたので断るが、マーキーは嘘をついて登録を抹消したことを明かす。同居人のペネロピ・アマリとタイソン・カランにも「夏休みに家を建てるのを手伝うから」と言われ、オリヴィアは呆れながらも旅行への参加を承諾した。他にマーキーの恋人であるルーカス・モレノと友人のブラッド・チャンも加わり、6人は車に荷物を積んでメキシコ旅行へ出発した。
メキシコに着いた6人は、大いにバカンスを満喫する。一行は最後の夜にクラブへ繰り出し、同性愛者のブラッドは目を付けた男にキスをする。マーキーが悪酔いして男と踊っているのを見たオリヴィアは、歩み寄って注意した。カウンターに赴いたオリヴィアは、知り合いのロニーと遭遇した。ロニーは下品な言葉で口説き、オリヴィアが不快感を示しても全く気にしなかった。するとカウンターで飲んでいたカーターという男がロニーを諌め、一触即発の雰囲気になる。オリヴィアが慌ててロニーをなだめ、その場から去らせた。
カーターはオリヴィアと一緒に飲み、彼女の仲間に「面白い場所がある」と持ち掛けた。オリヴィアたちはカーターの案内で立入禁止区域に侵入し、廃墟となった教会へ足を踏み入れる。奥へ進んだオリヴィアはスマホで動画を撮影し、神父と尼僧の写真が落ちているのを発見した。壊れた壷から漂う異臭に彼女が顔をしかめた直後、ロニーが現れた。オリヴィアは嫌悪感を示し、酒を飲んでいるルーカスたちの元へ戻る。ロニーも付いて行き、カーターから酒を受け取った。
マーキーが「私たち、明日が早いから」と去ろうとすると、カーターは「まだ来たばかりだよ。ゲームをしよう」と告げる。彼が「真実か挑戦か?」を提案すると、全員が承諾した。最初に指名されたオリヴィアは真実を選び、ロニーは挑戦を選んでセクターダンスを披露した。タイソンはマーキーを指名し、彼女が真実を選ぶと「オリヴィアが君の彼氏に恋してるって気付いてるか?」と質問する。ルーカスが「どうかしてるぞ」と諌めると、タイソンは「みんながここにいるのは、オリヴィアがお前に焼きもちを焼かせるためだ」と声を荒らげた。2人が口論になると、ブラッドが「やめろよ、次は僕の番だ」と仲裁に入った。
ブラッドは真実を選択し、ペネロピが「性別は問わず、ここにいる誰かとキスするなら?」と質問するとカーターを指名した。オリヴィアはタイソンを指名し、挑戦を選んだ彼に「新入生に偽の処方箋を売り付けるのはやめて」と告げる。「いつも正義の味方気取りだな」と嫌味を浴びせ、「いいぜ。上の学年から金を稼ぐ」と言い放った。ペネロピは挑戦を選び、オリヴィアとキスした。ペネロピに指名されたカーターは、真実を選んだ。
ペネロピはカーターに、「オリヴィアをどうする気なの?」と質問した。するとカーターは、「友達を連れて来られる人を見つける必要があった。オリヴィアは騙しやすそうだから狙った。こでゲームをさせたのは、自分を守るためだ。知らない人が死んでも心が痛まない」と語る。カーターが廃墟を去ろうとすると、オリヴィアが困惑しながら後を追う。カーターは「ゲームは本物だ。質問されたら始まる。どこで何をしていようが見つけられる。真実を言わないと死ぬし、挑戦しないと死ぬ。ルールに従え」と告げ、その場を後にした。
オリヴィアたちは旅行から戻り、大学生活に戻った。教室に入ったオリヴィアは、机に書かれた「Truth or Dare?」の文字に気付くが無視した。帰宅したオリヴィアが郵便物を見ると、チラシの裏にも同じ文字が書いてあった。マーキーからギクシャクした関係の修復を持ち掛けられたオリヴィアは、「ルーカスにやましい気持ちは持ってないわ。誓ってもいい」と告げた。自分の車に「Truth or Dare?」の文字を見つけたオリヴィアは、近くにいたロニーの仕業だと確信して非難する。ロニーは「何のことだ?車には何も無いぞ」と戸惑いを示すが、オリヴィアは彼を責めて立ち去った。
図書館へ赴いたオリヴィアは、そこにいた人々に「真実か挑戦か?」と言われて包囲される。同じ言葉を何度も繰り返されたオリヴィアは、真実を選ぶ。親友の秘密を話すよう要求された彼女は、「マーキーは浮気してる」と叫んだ。オリヴィアが目を開けると、誰も彼女を包囲していなかった。利用者の面々が視線を向ける中、オリヴィアはルーカスとマーキーの姿に気付いた。ルーカスは腹を立てて立ち去り、マーキーが慌てて後を追う。オリヴィアが釈明しようとすると、マーキーは彼女を罵って去った。
プールバーで女性を口説こうとしたロニーは、「真実か挑戦か?」と質問された。不気味な笑みで尋ねる女性に困惑しながらも、彼は挑戦を選んだ。客の前でペニスを露出させるよう要求されたロニーは快諾し、ビリヤード台に飛び乗った。しかし「前に見たから嬉しくない」などと馬鹿にする声が上がったため、ロニーは「やめとくよ」と言う。するとロニーは何かに憑依されたように、不気味な笑みを浮かべた。彼はビリヤードボールで足を滑らせ、隣の台に頭を打ち付けて死亡した。
オリヴィアはブラッド、ペネロピ、タイソンに自分が図書館で体験した出来事を説明するが、誰も信じてくれなかった。オリヴィアたちのスマホには、ロニーの死ぬ様子を撮影した動画が店にいた友人のベスから送られて来た。オリヴィアは「まだゲームは続いてる。ゲームは本物なのよ」と訴えるが、そこに来たルーカスも含めた全員が相手にしなかった。夜道を歩いていたルーカスは、どこからか自分を呼ぶ不気味な声を耳にした。彼が無視して歩いていると、壁の落書きに「TRUTH OR DARE LUCAS?」の文字があった。その直後、ルーカスの左腕に痛みが走り、「TRUTH OR DARE?」の文字が浮かび上がった。
ルーカスはオリヴィアに電話を掛け、「信じるよ。誰かが左腕に真実か挑戦かと焼き付けた。今は消えたけど」と話した。オリヴィアは「見えてる物が現実じゃないの。結果だけが現実よ」と教え、ゲームに答えるよう促した。するとルーカスは、「ずっとオリヴィアのことが気になってた」と真実を打ち明けた。彼は壁の落書きで、オリヴィアへの本当の気持ちを教えるよう要求されていたのだ。オリヴィアは全員を集め、ルーカスと一緒に事情を説明する。また誰も信じなかったが、オリヴィアはマーキーに「次は貴方の番」と教える。するとマーキーのスマホに知らない番号から「Truth or Dare?」のメッセージが届き、オリヴィアは返事をするよう促した。
マーキーはオリヴィアへの敵意を剥き出しにしながら、挑戦を選択した。メールで「オリヴィアの手を折れ」と命令されると、オリヴィアはハンマーを渡して「やるのよ」と指示する。マーキーが「出来ない」と躊躇すると、オリヴィアは彼女を口汚く侮辱してハンマーを振り下ろさせた。オリヴィアは左手を骨折し、マーキーは怖がって走り去った。ペネロピとタイソンも逃げ出し、ルーカスとブラッドは治療を受けさせるためにオリヴィアを病院へ連れて行った。
ブラッドは病院の自販機を使おうとした時、老婆の患者から「真実か、挑戦か?」と迫られた。すぐに老婆は姿を消すが、怯えたブラッドは咄嗟に「真実だ」と答えた。そこに警察官として働く父のハンが現れ、不気味な笑みを浮かべて真実を答えるよう要求した。ブラッドはオリヴィアとルーカスの元へ戻り、父にカミングアウトしたことを告げた。次はタイソンの番なので、オリヴィアは警告のメールを送信した。しかし医学部の面接試験を控えているタイソンは、まるで相手にしなかった。
オリヴィアやルーカスたちはタイソンの危機を感じ、彼の元へ急いだ。しかし試験官は彼女たちの前で面接室のドアを閉めて施錠すると、タイソンに「真実か挑戦か?」と不気味な笑みで尋ねる。タイソンは真剣に受け取らず、軽い気持ちで「真実」と答えた。すると面接官は、いつから処方箋を偽造しているのかと問い掛けた。タイソンが声を荒らげて偽造を否定すると、面接官は正気に戻った。タイソンは憑依され、不気味な笑みを浮かべた。彼はペンを取り出して自分の右目を突き刺し、ドアに頭を打ち付けて絶命した。
オリヴィアたちは集まって話し合い、ルーカスは「真実を選べ。本当のことを話せば生き残れる」と告げる。次の番が迫っているペネロピは泥酔し、マーキーはオリヴィアたちに「カーターを捜して。始めたなら終わらせることも出来る」と告げた。オリヴィアはカーターが通っていると話していた南カリフォルニア大学のサイトを調べるが、該当者はいなかった。マーキーはネットで検索し、ジゼル・ハモンドという大学生が春休みに失踪した事件の記事を見つけた。ジゼルが店で火を放つ監視カメラの映像が残っており、彼女のフェイスブックを調べるとカーターや仲間たちと撮影した写真があった。
マーキーは偽のアカウントを作成し、ジゼルに面会を要求する脅迫メッセージを送信した。洗面所で顔を洗っていたペネロピは、鏡に映る自分からゲームへの参加を迫られた。ペネロピが真実を選ぶと、鏡の彼女は「このゲームには特別ルールがある」と告げた。マーキーはオリヴィアに、「貴方のせいよ。誰もあんな場所に行きたくなかった。ゲームなんてやりたくなかった」と非難の言葉を浴びせた。するとオリヴィアは「私が旅行に行ったのは、貴方が強引に誘ったからよ」と反発し、マーキーは「絶対に許さない」と睨み付けた。
家の外に出た一行は、ペネロピが屋根の縁を歩いている姿を目撃した。彼女はオリヴィアたちに「真実を選んだのに挑戦にされた」と言い、持っている瓶の酒を飲み干すまで屋根の縁を歩けと要求されたことを話す。オリヴィアは時間を掛けて歩くよう指示し、ルーカスたちは落下した時に備えてクッションを用意した。オリヴィアたちは危険物を除去し、酒を飲み切ったペネロピは転落するが、オリヴィアたちが無事に受け止めた。
ジゼルから返事が来たので、オリヴィアたちは指定された場所へ会いに行く。ジゼルはカーターについて問われると、少し戸惑いを示してから「彼は単なる友達。彼がゲームを始めたわけじゃない」と告げる。彼女は「友達とメキシコへ旅行に行って、酔っ払って古い教会に入った。パーティーをしていたら友達がゲームを始めて、それは家に帰ってルームメイトが死んでも続いた」と言い、友人のサムが教会で物を破壊した罰ではないかと考えたことを話した。
真実しか選べなくなった理由を訊かれたジゼルは、「私が決めた。真実は2回まで。2回連続で真実を選んだら、次は挑戦しか選べない。その方が面白いから」と答えた。彼女は「サムは新しいグループを参加させることに挑戦した。場所は教会」と語り、カーターの居場所をマーキーから問われると、彼女は「彼がメキシコに戻ってから話してない。新しいグループが参加したら抜けられると思っていたのに、たった5人なんて」と苛立った。その様子を見たオリヴィアは、再びジゼルの番が来たことを悟った。
ジゼルは挑戦を選んだと話し、オリヴィアを始末しようとする。しかし彼女が拳銃を発砲すると、ペネロペがオリヴィアを庇って殺された。ジゼルは挑戦に失敗したために憑依され、自らのこめかみを拳銃で撃ち抜いた。オリヴィアは警察署へ出向き、クラニス警部にジゼルの行動を説明した。クラニスはジゼルの友人5名が全て死亡していることを教え、「関連性がありそうだ」と言う。しかしオリヴィアは「何も知りません」と告げ、殺人ゲームについては明かさなかった。
オリヴィアたちは父に呼ばれたブラッドと別れて家に戻り、教会についてネットで調べる。オリヴィアは充電器を取りに2階の寝室へ行き、ルーカスとマーキーは過去に教会で大殺戮があったこと、イネス・レイエスという若い尼僧だけが生き延びたことを知る。オリヴィアは侵入者の男に首を絞められ、ゲームを要求された。彼女が挑戦を選択すると、男はルーカスと寝るよう命じた。オリヴィアの悲鳴を耳にしたルーカスとマーキーが駆け付けると、男は正気に戻って逃走した。
マーキーはオリヴィアが要求された内容を知り、腹を立てて立ち去った。ルーカスはオリヴィアにキスされて挑戦の内容を理解し、彼女とセックスを始めた。すると途中でオリヴィアが憑依され、ルーカスの首を絞めてゲームを要求した。ルーカスが真実を選ぶと、「本当に愛しているのは誰?」と問い掛けられた。彼が「君が気になってるけど、マーキーのことも愛してる」と答えると、正気に戻ったオリヴィアはセックスを切り上げて寝室を去った。
スマホで父の動画を見ていたマーキーは、ゲームを要求された。憑依された父から「私が自殺に使った銃を、なぜ取っておく?」と質問された彼女は、「使いたくなることがあるから」と答えた。すると父は、「手に持ってみろ」と指示した。オリヴィアとルーカスは老いたイネスが存命だと知り、彼女の元へ向かった。事情を知ったイネスは、神父の性的虐待に耐えていたこと、ケイラックスという悪魔を召喚したこと、その悪魔が遊びに憑依したことをオリヴィアとルーカスに教えた。イネスが助かったのは、スペイン語の呪文を使った簡素な儀式で封印したからだった。呪文を7度唱えて捧げ物をして壷に入れ、蝋で蓋をすれば閉じ込められるのだと彼女は説明した。オリヴィアが壷が割れていたことを思い出すと、イネスは割った者の舌を切る必要があると教えた…。

監督はジェフ・ワドロウ、原案はマイケル・ライス、脚本はマイケル・ライス&ジリアン・ジェイコブズ&クリス・ローチ&ジェフ・ワドロウ、製作はジェイソン・ブラム、製作総指揮はクーパー・サミュエルソン&ジャネット・ヴォルターノ&ジェフ・ワドロウ&クリス・ローチ、共同製作はリック・オーサコ&ジェームズ・モラン&ライアン・タレク&フィリップ・ダウ、製作協力はローラ・アルトマン、撮影はジャック・ジューフレ、美術はメラニー・パイジス=ジョーンズ、編集はショーン・アルバートソン、衣装はリサ・ノーシア、音楽はマシュー・マージェソン。
出演はルーシー・ヘイル、タイラー・ポージー、ヴァイオレット・ビーン、ヘイデン・セットー、ランドン・リボイロン、ソフィア・アリ、ノーラン・ジェラード・ファンク、サム・ラーナー、オーロラ・ペリノー、トム・チョイ、グレッグ・ダニエル、アンドリュー・ハワード、ブレイディー・スミス、ヴェラ・テイラー、エズミー・ガルシア、オマー・レイヴァ、レスリー・ストラットン、チェイセン・バンクス、マーシー・アイコヴィーノ、アレクサンダー・ロバーツ、エリー・ラウファー、モーガン・リンドホルム、ジェイク・デラニー、マイロン・ナットウィック、ネフェタリ・スペンサー、アレクシス・ジャックナウ他。


『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』『なりすましアサシン』のジェフ・ワドロウが監督を務めた作品。
原案&共同脚本はTVドラマ『ボストン・リーガル』『クライアント・リスト』のマイケル・ライス。
オリヴィアをルーシー・ヘイル、ルーカスをタイラー・ポージー、マーキーをヴァイオレット・ビーン、ブラッドをヘイデン・セットー、カーターをランドン・リボイロン、ペネロープをソフィア・アリ、タイソンをノーラン・ジェラード・ファンクが演じている。
ちなみに、『トゥルース or デア 密室デスゲーム』という似たような邦題の付いた2012年のイギリス映画があり、原題は全く同じ「Truth or Dare」なのだが、何の関係も無い。

カーターが「真実か挑戦か?」を提案した時、ルーカスたちは「中学生のゲームだ」と消極的な態度を示すものの、結局は前向きになる。
「ちゃんとやれば友達の秘密をさらけ出せる。それに、したくないこともさせられる」とカーターは言っているが、それで「そうだな」と簡単に全員の態度が変化するのは、なかなか分かりやすい御都合主義だ。
ゲームを始めないと話が進まないことを観客は分かっているから、そこは甘受できてしまう人も少なくないだろう。
ただ、強引であることは紛れも無い事実だ。

カーターがゲームを提案した時に「それって中学1年生のお泊まりでやるゲームだろ」という否定的な台詞があるように、主要キャラを中学生の設定にしちゃえば、そこは何の問題も無くクリアできちゃうんだよね。「中学生なら当たり前に通過するゲーム」ってことになるからね。
ただ、「中学生が次々に殺される」という内容にしちゃうと、レーティングに引っ掛かることは確実だ。残酷描写にも色々と制約が掛かってしまう。
なので、大学生グループにしておくのは仕方がない。
ハリウッドのスラッシャー映画って基本は大学生グループだけど、それは「若者の方がいいけど、若すぎると色々と面倒」ってことがあるんだろう。

廃墟でゲームを始めると、タイソンが「オリヴィアはルーカスに惚れてる」と暴露したり、偽の処方箋を下級生に売り付けるタイソンの行為をオリヴィアが指摘したりする。
まだホラー的なことは何も起きていない段階で、ギスギスした雰囲気になる。
ここで少し感じるのは、「オカルト的な要素を持ち込まなくても、実は怖い映画に出来そうだよね」ってことだ。
「表面的には仲良しだったグループが、ゲームを通じて真実を暴かれ、それが強い恨みや殺人に発展して」みたいな話でも、ホラーとしては成立しそうなんだよね。

そんな風に感じたからって、決してオカルト風味がダメというわけではない。
ただ、その後でオカルト的な要素が入って来るのなら、その前の段階でグループをギスギスさせちゃうのは無い方がいいんじゃないか。どうせ後から回避不能なゲームに突入し、そこでギスギスした関係になるんだから、廃墟のゲームでの描写が、後の展開に必要不可欠だとも追わないし。
例えばオリヴィアがルーカスに惚れていることは、そのゲームが無くても何となく伝わってくる。それで足りないと思ったら、ゲームが始まる前の段階で描写を増やしておけばいい。
っていうか、後の展開に絡む要素って、それぐらいだし。

カーターが廃墟を去った後、オリヴィアが振り向くと仲間の姿が無い。彼女が周囲を見回すと、不気味な表情の仲間が並んでいる。
ここで大きな音を出して観客を脅かし、ルーカスがオリヴィアの後ろから肩を叩いて「大丈夫?」と告げる。オリヴィアが振り向くと、全員が立ち去る準備をしている。
つまりオリヴィアが見た「不気味な仲間」ってのは、幻覚ってことになる。
でも、このタイミングで怪奇現象は早い。まだ「カーターの言葉なんてバカバカしい」と全員が感じている状態にしておいた方がいい。

メキシコから帰国した後、オリヴィアは机やチラシの裏、自分の車に「Truth or Dare?」の文字を見る。
ただ、これが「誰かの落書き」にしか見えないんだよね。
車の時は、疑われたロニーが「車には何も書いてない」と言うが、「オリヴィアが確認したら何も書いてない」ということもない。そのまま文字は残っている。
だけど、それらは全て実際に誰かが書いたわけじゃなくて怪奇現象のはずでしょ。だったら、それを明確に表現した方が絶対に得策でしょ。

ロニーは挑戦を選んでおきながら中止し、死に至る。ここの死に様が、まるで怖くないんだよね。
「台にあったボールで足を滑らせ、隣の台で頭を打って死ぬ」という内容なんだけど、それってアクシデントの印象が強いのよ。ちっとも呪いとか怪奇現象の匂いがしないのよ。
それに、恐怖よりもマヌケっぽさが圧倒的に強いのよ。
そこは「ケレン味のある殺人ショー」になっているべきであって、味付けの方法を完全に間違えているとしか思えない。

帰国後、オリヴィアがゲームを要求される時は、まず何度か文字が出て、それを無視しても何も起きない。ロニーの時はゲームの前の文字だけが出る前フリが無く、ルーカスの時は左腕の文字が一時的に浮かぶだけで消える。
マーキーの時は、いきなりスマホでゲームを要求される。ブラッドの時は、患者の老婆が背後に立って不気味に笑うが、振り向くと誰もいない。
そして老婆らしき声が響き、ゲームを持ち掛ける。そして老婆が前方に現れてブラッドに掴み掛かり、彼を脅かす。
なんかねえ、統一感が無いように感じるのよね。
変化を付けてマンネリズムを回避することは必要かもしれないけど、あまりにもルールが不鮮明だわ。

ペネロピがゲームを要求されて真実を選ぶと、「このゲームには特別ルールがある」と言われる。
ここで急に出て来た新たなルールなので「卑怯だなあ」とは思うけど、そもそもゲームに強制参加させている時点で卑怯なので、そこで今さら文句を言っても仕方がない。
最初に提示していなかったルールを後から説明するのは、話の作り方としても決して上手いとは言えないよ。だけど、そこで変化を付けないと、「真実を選んで正直に話せば死を回避できる」ってのが確定しちゃうからね。それで実質的に、ホラーとしては終わっちゃうからね。
まあ、その程度で終わっちゃう話、途中でルールを変えなきゃ怖くならない話を用意している時点で、どうかとは思うけどさ。

そんなペネロピが命じられた挑戦は、「酒を飲み切るまで屋根の縁を歩く」という内容。
そりゃあ死ぬ危険性はあるけど、なんかゲームとしての色が濃いんだよね。ちょっと過激でバカなユーチューバー辺りだと、そういう無茶をやりそうな気もしちゃうのよ。
もちろん恐怖のシーンとして緊迫感を高める演出はしているし、オリヴィアたちは焦っている。だけど「死のゲーム」としての面白味はイマイチ。しかも、ペネロピは死なないしね。
いや、せめて死なないとダメでしょ。そこは。

オリヴィアは侵入者にゲームを要求されて挑戦を選び、ルーカスと寝るよう命じられる。もはやゲームでもないよね。
オリヴィアの欲求を満たすための行動であり、むしろ彼女からすりゃ大歓迎でしょ。大好きなルーカスとセックスできる名目が出来たんだから。もちろん死のリスクなんて全く無いし。
「挑戦の内容を知ったマーキーが腹を立てて」という展開があるけど、どうでもいいわ。なんで「オリヴィアとマーキーが険悪な関係に」という筋をダラダラと引っ張るのよ。そこで粘っても、何も面白いモノなんて生まれないぞ。
そんでオリヴィアがセックスを始めるとルーカスがゲームを要求される展開になるけど、本当に愛しているのは誰か言うよう要求されるだけなので、恐怖は微塵も無い。中途半端に人間模様を描こうとしているけど、陳腐でバカバカしいだけなのよ。

「Truth or Dare」は、アメリカでは広く知られているゲームだ。そもそもは中高生の教育目的で作られたが、今ではパーティーゲームとして使われるようになっている。
日本での知名度はそんなに高くないかもしれないが、例えば『君の膵臓をたべたい』では取り上げられていた。
有名なゲームをホラーの素材にしようってのは、アイデアとしては悪くない。
日本だと、『リアル鬼ごっこ』や『王様ゲーム』というホラー作品があったよね。そんな感じだと思えばいいんじゃないかな。

ただし問題は、どういう肉付けをして、どんな風に調理するかってことだ。その部分で、この映画は大きな失敗をやらかしている。
致命的な欠陥は、オカルトの要素を持ち込んだことだ。
「Truth or Dare」をホラーの題材として使うにしても、例えば「恨みによる連続殺人」とか「愉快犯の殺人ショー」みたいな要素なら、すんなりと馴染ませることが出来るだろう。だけど「悪魔の召喚」とか「呪いの伝播」みたいな要素って、ものすごく食い合わせが悪いのよね。
「Truth or Dare」がどういうゲームなのか、いつ頃に誕生したのかを、きっとアメリカでは多くの観客が何となく知っているはずで。「こっくりさん」とか「ウィジャボード」じゃないんだから、そこに「昔の悪魔が云々」みたいな要素って入り込む余地が無いでしょ。

あと、悪魔が「父親にカミングアウトしろ」とか「本当に愛しているのは誰か言え」とか要求するのって、「それを答えさせて、テメエは何が得られるんだよ」と言いたくなるんだよね。
悪魔からしたら、何の意味も無い行為でしょ。それを繰り返しても、悪魔が誰かの体を奪って現世に復活できるわけでもないしさ。
もしも大量虐殺が目的なら、そんな無駄な手間は省いて次々に始末すればいいだけだ。
しかも、そこの不可解さは恐怖を煽るための不条理とは全く無関係な箇所、遠く及ばない箇所で生じている。なので、ただシンプルに「悪魔が意味不明な行動を繰り返している」ってだけになっている。

(観賞日:2021年8月4日)

 

*ポンコツ映画愛護協会