『トリプルクロス』:1966、イギリス&フランス&西ドイツ

エディー・チャップマンはロンドンの金庫を爆破して宝石を盗み、「ゼリングナイト・ギャング参上」と書かれたカードを残して去った。彼はロンドンと周辺の州で犯行を重ねており、映画協会の金も盗んだ。警察のマークが厳しくなったと感じたエディーは、行楽客が集まるジャージー島を訪れた。女性を口説いてセックスに持ち込んだエディーだが、部屋に突入した警官に捕まった。独房で9ヶ月を過ごした彼は、島がドイツ軍に占領されたことを知った。彼は刑務所長に対し、ドイツ軍司令官と会わせるよう要求した。
エディーは「刑務所に火を付けるぞ」と脅しを掛け、司令官と面会すると「ドイツ情報部に俺の存在を知らせろ。イギリス人が協力を申し出てる」と述べた。情報部から来たヘルガ・リンストーン伯爵夫人とシュタインヘイガー中佐は、犯罪歴の資料に目を通した。エディーは「俺は刑務所から出たい。戦争に勝つ方に乗る」と言い、高額で雇うよう持ち掛けた。シュタインヘイガーは側近のケリー中尉に、司令官を呼んでエディーを独房へ戻すよう指示した。
面会を終えたエディーは、ロマンヴィルにある外国人の一時収容施設へ移送された。ストックホルム出身のラーシュ・バーグマンという男は書類の不備で捕まっており、「ほとんどの捕虜は射殺される」とエディーに語った。マルタ人も後から収容される中、エディーは女性拘置所にいるポレットに目を付けた。深夜に部屋を抜け出した彼はポレットの元へ行き、口説いて肉体関係を持った。マルタ人の密告で捕まったエディーは、ポレットと共に銃殺刑の処分が下った。
しかしエディーは射殺されずに解放され、ヘルガやシュタインヘイガーと共に車で施設を出た。新聞ではエディーの射殺が大きく報じられ、ポレットも解放された。ドイツ軍二等兵のフランツ・グラウマンとして行動することになったエディーは、特殊任務課を統括するフォン・グルーネン大佐と会った。特殊任務課の候補生となったエディーは訓練を受け、専門的な知識や技術を学んだ。彼に重要任務を与えようと考えたグルーネンは、ヘルガに報告を入れるよう命じた。
連合軍の陽動作戦に対し、特殊任務課はレジスタンスの一斉検挙に出た。エディーが乗り込んた家には、ポレットの姿があった。エディーは今すぐに出て行けと指示し、彼女を助けた。エディーはグルーネンから、任務のための契約を要求された。彼は報酬について問い掛け、任務遂行後に支払われること、現金が金庫に入っていることを聞いた。エディーはグルーネンや自分を怪しむケリーたちを騙し、停電を起こして極秘コマンドの数字をメモした。
エディーはグルーネンからイギリス潜入の任務を命じられ、到着から15分以内に信号を送るよう告げられた。輸送機からパラシュートで降下したエディーは、そこがフランスだと気付いた。信号を送った彼は、テストだと言われて腹を立てた。発電所に爆弾を仕掛ける任務を命じられたエディーは、今度こそ本当にイギリスへ降下した。彼は民家で電話を借りて警察に連絡し、ホワイトホールでイギリス情報部の上層部と対面した。エディーは情報部のフレディー・ヤングに、自分を買収するよう取引を持ち掛けた。
エディーはドイツ情報部に通信を入れ、ビッカーズ航空機工場の爆破を指示された。ヤングは爆破させる代わりに、スパイとしてドイツに戻るよう告げる。エディーは報酬と恩赦と勲章を要求し、ヤングは承諾して戦時内閣に話を通した。エディーが工場を爆破すると、ドイツの偵察機が確認のために飛来した。エディーには次のメッセージが届き、船でリスボンへ向かうよう指示された。誉め言葉が無いことに不審を抱くエディーだが、二重スパイとしてドイツへ戻ることを決めた…。

監督はテレンス・ヤング、原作はフランク・オーウェン、脚本はレネ・ハーディー、追加台詞はウィリアム・マーチャント、製作はジャック=ポール・ベルトラン、製作総指揮はフレッド・フェルドカンプ、製作協力はジュルジュ・シェイコ、撮影はアンリ・アルカン、美術はネ・ルヌー、編集はロジャー・ドワイア、音楽はジョルジュ・ガルヴァランツ。
出演はクリストファー・プラマー、ロミー・シュナイダー、トレヴァー・ハワード、ゲルト・フレーベ、クローディーヌ・オージェ、ユル・ブリンナー、ハリー・マイエン、ジェス・ハーン、ジョルジュ・ライカン、ジル・バーバー、ジャン=クロード・ベルク、ジャン・クラウディオ、ロベール・ファヴァー、ベルナール・フレッソン、クレメント・ハラリ、ハワード・ヴァーノン、フランシス・デ・ウルフ、ジョン・アビー、ポール・ボニファス、ジャン・ルネ・カウシモン、アネット・クローディエ、ピエール・コレ、トニー・ドーソン他。


フランク・オーウェンのノンフィクション書籍を基にした作品。
監督は『007』シリーズの第1&2&4作を手掛けたテレンス・ヤング。
脚本は『にがい勝利』『恋人たちの森』のレネ・ハーディー。
エディーをクリストファー・プラマー、ヘルガをロミー・シュナイダー、ヤングをトレヴァー・ハワード、シュタインヘイガーをゲルト・フレーベ、ポレットをクローディーヌ・オージェ、グルーネンをユル・ブリンナー、ケリーををハリー・マイエンが演じている。

まず感じるのは、無駄に長くないかってことだ。
上映時間は128分なので、そこまで長すぎるってわけでもない。戦争映画というジャンルを考えても、その程度の尺はザラにあるだろう。
そして厳密に言うならば、実は上映時間の問題ではなく、無駄なシーンが多いってことだ。
そういう箇所を全て削って、代わりに他のシーンを入れるか、あるいは既存のシーンを厚くするかという変更を施せば、同じ尺でも問題は無かったかもしれない。

まず冒頭、エディーの強盗は1回だけで充分だ。
また、強盗に使う化合物をビーカーを使って作るシーンなんて要らない。どうせエディーが化学に詳しいという設定が後で役立つわけでもないし、特殊任務課で専門的な知識や技術も教わっているし。
1つ目の強盗でエディーは現場にメッセージカードを残すが、次の犯行は爆破で次のカットに切り替えている。
なので描写としては半端になっている。「強盗は1回で充分」ということを置いておくとすれば、どちらもカードを残すか、逆に残さないか、どちらかに統一すべきだ。

っていうか、もっと根本的なことを言っちゃうと、実は強盗シーンなんて無くても大きなマイナスには働かないんじゃないか。
連続強盗が報じられる中、エディーがジャージー島で女性と一緒にいたら警察に捕まるという導入でも別に構わないと思う。
必要なのは、エディーの「強盗」という職業設定と、なかなか捕まらない中で幾つもの犯行を成功させているという情報だけなのだ。
「どういう方法を使って強盗を行っているのか」という情報の重要性は、決して高いわけではない。

エディーがヘルガ&シュタインヘイガーと面会して自分を雇うよう持ち掛けた後、特殊任務課の候補生になる時間と手間も、もっと削り落とせる。
シュタインヘイガーが独房に戻すよう指示した後、エディーはロマンヴィルへ移送される。
この時点では、まだ観客はエディーがドイツ情報部に雇われたことが分からない。
そして「ポレットと寝たエディーが射殺されたかと思いきや、カットが切り替わると車に乗っている」という流れになるが、観客の騙し方がものすごく下手だ。

何よりダメなのは、エディーは最初から情報部の計画に基づいて行動していたのか、ただの女好きでポレットと寝たけど結果的に情報部に救われたのか、それが全く分からないってことだ。
それに、もしも前者だったとしても、大いに疑問が残る。情報部が「エディーが射殺されたように偽装して情報部の候補生にする」という絵図を描いていたとして、わざわざロマンヴィルの施設に移してポレットとセックスさせるという手間を掛ける必要性を全く感じない。
では後者の場合はどうなのかというと、こちらの場合はシンプルに見せ方が下手ってことになる。
あと、それだと「ラッキーで助かっただけ」であり、ポレットと寝たエディーの行動はボンクラ極まりないってことになる。
どっちにしても、製作サイドが「策士策に溺れる」という状態だと感じる。

エディーが一斉検挙でシュタインヘイガーたちと民家に乗り込む直前、レジスタンスの男たちはポレットを3階へ行かせている。エディーは男がポレットの腕時計をしていると気付き、激怒して殴り付ける。
男が女に貰ったと証言し、エディーはベッドで寝ていたフリをするポレットを発見する。彼は腕時計を返し、今すぐ出て行くよう命じる。そこにヘルガが来ると、エディーは「彼女は雑魚だ」と告げる。
これでポレットは逮捕されずに済んでいるのだが、そこは情報部の対応がヌルいんじゃないかと。レジスタンスと同じ家にいたのにヘルガだけが検挙されずに済むのは、都合が良すぎるだろ。
っていうか、そのエピソードはポレットを再登場させるためにあるようなモノだけど、「エディーがポレットと寝て射殺の処分が下って」という前述のパートを無くせば、こっちもカット出来るんだよね。

グルーネンがエディーに「イギリスへ潜入しろ」と嘘の任務でフランスへ送り込むのは、信頼できるかどうかを確かめるテストのためだ。
実際にスパイとしてイギリス人を雇うのなら、そういうチェックは必要かもしれない。
ただ、この映画においては、ただの余計な小細工だと感じるだけ。
そこでは「エディーが信号を送るまでに時間が掛かる」というピンチでスリルを煽ったりするけど、そういうのも「別に無くてもいいなあ。他のトコでスリルを作ればいいだけだしなあ」と感じるし。

この映画を面白くするために、ボンクラ頭の私が思い付くアイデアは2つだけ。
1つ目は、もっと軽妙なテイストに仕上げること。国家やイデオロギーには左右されず、軽やかに軍人たちを騙したり利用したりしながら戦時中を生き抜く様子をユーモラスに描くってことだ。
もう1つは、「実は最初からエディーはイギリス情報部のスパイであり、それを隠してドイツ軍情報部に入り込んでいた」という設定に変えちゃうこと。
実際のエディー・チャップマンからは大幅に逸脱するし、色々と問題はあるかもしれない。
ただ、どうせ本作品だって、実際のエディーとは全く違う描写になっているらしいからね。

エディーが二重スパイの要求を受諾したら、そこからは「イギリス情報部から指令を受けて任務を遂行する」ってのを描けばいい。やるべきことはハッキリしているので、ある意味では分かりやすいはずだ。
ところが変にコネくり回しており、無駄に分かりにくくなっている。
まず、エディーが工場に潜入して爆弾を仕掛ける手順は無駄でしかない。
「イギリス情報部がエディーの能力を確認するため」ってことかもしれないが、こっちからすると「今さら」であり、何の意味も無い作業でしかない。

ヤングが戦時内閣の会合に出席し、工場の爆破に反対する航空機生産省の代表者に「承服してもらう」と通告する会話シーンも、無くても全く困らない。
エディーがドイツ情報部から暴力的な尋問を受けた時に備えて、特訓を積むシーンも要らない。
変なトコでクソ丁寧に色々な手順を踏もうとして、話のテンポが悪くなっている。
エディーとヘルガの間でロマンスを作ろうとする描写もあるが、こんなのも話の厚みや深みには全く繋がっていないので要らない。

ようやくエディーがドイツに戻ってからも、イギリス情報部の二重スパイとして積極的に行動する様子は皆無に等しい。
基本的には「正体がバレないように冷や冷やしながら何とか誤魔化し続ける」といいう様子ばかりが描かれる。
そんな中、ドイツ軍上層部の面々がエディーを有効活用できる任務に関して話し合う会議が行われるが、「何を見せられているんだろう」という気分にさせられる。
当たり前だけど、会議の間、エディーは単なる傍観者でしかないし。

その会議が終わった直後に連合軍のノルマンディー上陸が伝えられ、ドイツ軍の大半が敗北を確信する。そしてヒトラーの暗殺未遂が勃発する内輪揉めがあったりする中、シュタインヘイガーはエディーが二重スパイだと分かった上でイギリスへ送り出す。
クライマックスとして緊張感を高めたりアクションで盛り上げたりすべき時間帯に突入しているにも関わらず、どんどん話は下降線を辿って行く。
結局、エディーはドイツに戻った後、目に見える形での二重スパイとしての仕事は何も無いままで脱出しているのだ。
なので、何のための潜入だったのかサッパリ分からない。
「エディーのおかげで情報を入手できたイギリス情報部が行動し、連合軍の勝利に結び付いた」ということは全く無いのだ。

(観賞日:2025年10月25日)

 

*ポンコツ映画愛護協会