『トランスフュージョン』:2024、オーストラリア

特殊空挺部隊のライアン・ローガンは仲間と共に、アルカイダの本部へ突撃した。隊員のジョニーが捕まえた男を尋問する中、ライアンは奥にいた仲間に気付いた。彼は相手を射殺するが、自分も撃たれて負傷した。休日、ライアンは8歳になる息子のビリーを連れて鹿狩りに出掛けた。しかしヒリーは鹿を見つけても、撃つことを嫌がった。ライアンは鹿を仕留めて肉を焼き、ナイフの研ぎ方を息子に教えた。ビリーが誤って指先から出血すると、彼は「黄金の血だから大事にしないと」と述べた。
ビリーは野犬に襲われ、ライアンに助けを求めた。離れた場所にいたライアンは、ライフルで野犬を射殺した。帰宅したライアンは、妊娠している妻のジュスティーヌと話した。ビリーから「パパみたいな勇気が欲しい」と言われると、ライアンは「色んな勇気がある。お前は鹿を撃ちたくないと言ったが、俺を失望させるかもと怖かったはずだ。だが言った。それも勇気だ」と述べた。翌日、ライアンは基地へ行き、訓練中の新兵たちに訓示を行った。一方、ジュスティーヌはビリーを車に乗せて外出した。そこへ横から猛スピードで車が突っ込み、ビリーは重傷を負ってジュスティーヌは死亡した。
8年後。ライアンは軍を辞めてから定職に就かず各地を転々としており、ビリーは6度も転校していた。ビリーは3度も家出し、その度に窃盗と麻薬所持と器物損壊で逮捕されていた。3度目となった裁判で、判事はライアンに「次に事件を起こせば一緒に暮らせなくなる」と警告した。故郷のシドニーに戻っているライアンは、ジョニーから「会って話したい」というメールを受け取った。ビリーは1学期で10日も欠席しており、ライアンは校長に呼び出された。校長は「高い授業料を支払っても本人が幸せとは限らない」と言い、公立高校への転校を勧めた。しかもライアンは前期の授業料を未納だったが、必ず支払うし息子も休ませないと告げた。
ライアンはジョニーと会い、今の仕事を問われてセールスだと答えた。彼が「今も同じ稼業を?」と訊くと、ジョニーは「他にやれることが無い」と言う。彼は「一緒にやらないか。手を貸してくれ。一晩限りの仕事だ。銃を撃つことも無い」と語り、考えてくれと告げた。ライアンはワインのセールスで酒店に出向くが、店主に冷たくあしらわれた。腹を立てた彼は店主を恫喝し、その場を去った。ジョニーはライアンの家を訪れ、ビリーに「君のお父さんは狙撃手で英雄だ」と語った。
ライアンはジョニーに、「例の件は断る」と告げた。しかしジョニーが「トニー・マクマナスを覚えてるか。相棒だから、お前のためにやったんだ」などと語ると、引き受けることにした。ビリーは同級生のブラッドたちから、金曜日のパーティーに誘われた。ライアンはジョニーと共に覆面を被り、アパートの一室へ乗り込んだ。彼らは部屋にいたティムとディーラーを銃で脅し、暗証番号を聞き出して金庫の金を奪った。寝室を覗いたジョニーは、レイが携帯でネッドから「侵入者だ。銃声がした。すぐ行く」とメールを受け取っているのを知った。レイはジョニーに、「すまない」と詫びた。
ピザ宅配員がドアをノックすると、ジョニーはライアンに「中に入れろ」と指示した。ドアを開けると、宅配員はピザを置いて去っていた。ジョニーはライアンと共に後を追い、宅配員を始末した。ジョニーは店主への恫喝が原因で、上司に呼び出された。上司は「オーナーは謝罪を受け入れると言ってる」と話し、ライアンに受け入れるよう促した。ライアンが「謝罪はしてもいい。しかし同じことをされたら、またやる」と全く反省せず店主への怒りを吐露したので、上司は仕方なくクビを通告した。
ライアンはジョニーを訪ねてクビになったことを明かし、「金が無いわけじゃないが、学費には手を付けたくない。当座の生活費が要る」と助けを求めた。ジョニーは「ある男と会うが、信用できない奴だ」と言い、見張り役を彼に頼んだ。ビリーはライアンに、「友達の家へ出掛けてもいいか」と許可を求めた。彼が帰って来ると約束したので、ライアンは承諾した。ビリーはブラッドや女子たちと合流し、屋外で一緒に酒を飲んで楽しんだ。
ジョニーはネッドの家を訪れて一味と会い、ライアンは離れた場所からライフルを構えて様子を見守った。ネッドはジョニーに、「部屋に押し入ったのは2人組だった。仲間のレイも殺された」と話す。ティムが「こいつが犯人に違いない」と激怒すると、ジョニーは何食わぬ顔で否定した。ネッドはティムをなだめ、その場を収めた。ブラッドは父の車をビリーに見せ、運転するよう勧めた。ビリーは他の面々にもそそのかされて運転するが、事故を起こして車を路肩に突っ込ませてしまった。
ライアンはビリーから連絡を受け、事故現場へ赴いた。怪我人はいなかったが、車は壊れて動かなくなっていた。ライアンはビリーが運転していたこと、全員が飲酒していたことを知った。目撃者がいないことを確認した彼は、車を燃やした。ライアンはブラッドの父のジムを訪ね、「車を盗まれて燃やされたと保険会社に申告してほしい」と申し入れた。事務弁護士であるジムは、「不正請求がバレたら刑務所行きだ。嘘はつけない」と彼の頼みを断った。ライアンが弁償を持ち掛けると、彼は「金が出来てから言え。そして今後、ウチの息子には関わるな」と鋭く言い放った。ライアンは「2日間くれ」と言い、金を工面するためにジョニーの力を借りようとする…。

監督はマット・ネイブル、脚本はマット・ネイブル、製作はジョン・シュワルツ&マイケル・シュワルツ、製作総指揮はアンドリュー・マン&シルヴィオ・サロム&ニコラス・コール&サム・ワーシントン&ウィル・クラーク&アンディー・メイソン&マイク・ルナゴール&カイラー・スコビー&ポール・ウィーガード&ジミー・コスタス&クリステル・コナン&クレイグ・コードリー&ナディーン・ルケ、撮影はシェリー・ファージング=ドー、美術はサム・ホブス、編集はジョナサン・タッピン、衣装はシャリーン・ベリンジャー、音楽はルーク・アルトマン。
出演はサム・ワーシントン、マット・ネイブル、フィービー・トンキン、エドワード・フライデー・カーモディー、サム・パーソンソン、ジェレミー・リンゼイ・テイラー、ギルバート・ブラッドマン、マックス・ダフィールド、ダミアン・ストラトス、ジェシー・ロウルズ、トミー・ネイブル、イーサン・プース、トリスタン・ゴー、サム・コットン、クリストファー・ストーレリー、ジェシカ・ネイピア、ジュリアン・マルーン、スージー・ポーター、ダリウス・ウィリアムズ、アレックス・マローン、アーロン・ネイブル、ジョン・シュウォーツ、マイク・ダンカン、ブラッド・マクマーレイ、ニコラス・コール、マイケル・シュウォーツ他。


『アバター』『タイタンの戦い』のサム・ワーシントンが主演と製作総指揮を兼任した作品。
オーストラリアの元ラグビー選手で俳優、脚本家、小説家、スポーツコメンテーターとマルチに活動するマット・ネイブルが、初監督を務めている。
ライアンをサム・ワーシントン、ジョニーをマット・ネイブル、ジュスティーヌをフィービー・トンキン、ビリーをエドワード・フライデー・カーモディーが演じている。
他に、ネッドをサム・パーソンソン、ジムをジェレミー・リンゼイ・テイラー、8歳のビリーをギルバート・ブラッドマン、ブラッドをマックス・ダフィールドが演じている。

粗筋で書いたように、映画はライアンがアルカイダの本部へ突入して撃たれるシーンから始まる。そのシーンが終わるとタイトルが入り、今度は休日にビリーと鹿狩りをする様子が映し出される。
こういう入り方をするのだから、ビリーと鹿狩りをするシーンを「現在」として、その流れで最後まで話を紡いでいくのだと思った。
ところが粗筋で書いたように、翌日に事故が発生し、そこから8年後に飛んでいる。
これは構成として、あまりにも不細工だ。

事故をきっかけに8年後へ飛ぶのなら、冒頭シーンは無い方がいい。
どうせ冒頭シーンが、後の展開に上手く連動している部分なんて皆無なんだから。
そこでライアンとジョニーの友情が描かれているわけではないし、ライアンが敵を撃ったことや撃たれたことがトラウマになっているわけでもないし。
もっと言っちゃうと、事故までのシーンも冗長。ビリーの出血を先に描いておきたかったんだろうけど、別に無くてもいい。

そのパートでは「ライアンは家族で幸せに暮らしていたのに事故で一変」という、悲劇への落差こそが重要なのであって。
鹿狩りでビリーが怖がるとか、勇気について語るとか、そんなのは約15分も費やして描くほどの情報じゃない。
結局、冒頭シーンも含めて、8年後に入るまでにトータルで21分ぐらい使っているわけで、明らかに長すぎるし、長さに見合う中身があるでもない。
何なら8年後から話を初めて、過去は回想として入れる形式でもいいんだし。そっちの方が、都合のいいタイミングで都合のいい情報だけ挿入できるし。

冒頭で「主人公が米兵として突入して銃撃」という内容なので、アクション主体の映画化と思ったら、さにあらず。強盗シーンにしても、アクションを見せるためのパートではない。
じゃあ代わりに何があるのかと言うと、ひたすら陰気で重苦しいだけのドラマ。
しかもドラマとして面白いわけじゃなくて、何もかもがボンヤリしている。心情や人間関係の掘り下げも浅い。
どこかで変化が起きるのかと思ったが、最後まで低調なままで進んでいく。

ビリーは何度も家出して捕まっているので、ライアンに対して反抗的なのかと思ったら、それは全く無い。また、ライアンがビリーを叱責する様子も無い。
この親子関係の描写からして、既にボンヤリしている。
ライアンが息子を無理して私立の学校に通わせている理由も良く分からない。それなりに考察することは可能だが、そこを丁寧に描こうとする意識は感じられない。
ビリーが家出と犯罪を重ねている理由にしても、父への反発が無いってことは他に何かあるんだろうけど、その心情を上手く伝えるような作業は乏しい。

ジョニーはライアンから「今も同じ稼業を?」と訊かれた時、「俺たちの得意分野だ。他にやれることも無い」と答える。なので民兵とか傭兵みたいな仕事をしているのかと思ったら、ライアンに手伝ってもらうのは強盗。
いやいや、他にやれることはあるだろ。幾ら元相棒で借りがあるにしても、ライアンが強盗を手伝うのも違和感があるし。
さらに良く分からないのは、レイが「済まないジョニー」と言い、ジョニーが「レイ」と名前を口にすること。
ってことは、ジョニーはレイの手引きで強盗を働いたのか。そこにレイがいたのは何故なのか。2人組とはどういう関係なのか。そもそも2人組は何者で、金庫の金はどういう金なのか。
分からないことが一杯だ。

ジョニーがネッドの家を訪ねるシーンで、どうやらネッドがヤクの売人であること、ジョニーは仲間であることが明らかになる。
つまりジョニーは、仲間を裏切って金を奪ったわけだ。
さらに言うと、そこではジョニーがレイを殺していたことも判明する。
だったら、いっそのことティムたちも始末すりゃ良かったんじゃないのか。どうせ自分が疑われる可能性は高いんだし、だったら全員を始末して「敵対する組織の仕業」みたいに偽装した方が利口なんじゃないかと。

っていうか、そもそも組織の金を強奪した時点で、「そんなリスクを背負う必要があるのか」と言いたくなる。
そこまで当座の金に困っているわけでもないだろうに。
ネッドの一味は明らかに危険なグループであり、裏切りがバレたら始末される可能性が高いわけで。そんなリスクを負ってまで、ジョニーが金を奪わなきゃならない理由は何なのかと。
この時点では、まだライアンから「当座の金が必要だ」などと相談されているわけでもないんだし。

ジョニーはネッドの家を訪ねる時、ライアンにライフルを構えての見張り役を頼んでいる。
つまり彼は、「下手すりゃ命を狙われるかも」と危惧し、万が一の場合はライアンにネッドたちを撃ってもらうつもりだったわけだ。
だったら、やっぱりティムたちも始末しておいたが良かったんじゃないか。
っていうか、いっそ最初からネッドたちを皆殺しにする計画でも良かったんじゃないかと。どうせ、「いつかは裏切りがバレて命を狙われる」という状況が続くことになるんだから。

粗筋で書いた内容の後、ジュスティーヌが事故に遭った時の出来事が詳しく描かれる。胎児は流産で死んだが、彼女は即死していなかった。
しかしジュスティーヌもビリーも希少な血液型だったため、輸血のための血が足りず、ライアンは医師から「どちらか片方への輸血」を迫られることになった。
そして彼は苦渋の決断で、ビリーを選んだのだ。それにより、ビリーは「自分のせいで母が死んだ。
だから父は自分を憎んでいる」と思い込み、「自分が死ねばよかった」と苦悩しながら暮らしていたのだ。

だが、事故に関する詳細やビリーの気持ちを終盤まで隠したまま引っ張っているのは、明らかに失敗だ。
そういうのを早く明かして、その上で「父と息子の複雑な感情のすれ違いとぶつかり合い」をドラマとして描けば良かったのよ。
とは言え、仮にそれを前半から描いたとしても、それで全ての問題が解決して傑作に大変身することは絶対に無い。
なぜなら、「父と息子の複雑な関係」と、ライアンとジョニーが絡む犯罪サスペンスのパートとは、まるで上手く混ざり合っていないからだ。

ライアンは車の弁償代を工面するため、またジョニーに助けを求める。するとジョニーはネッドの一味を始末して金を奪う計画を持ち掛け、ライアンは承諾する。
そんな展開になると、「やっぱり最初から一味を殺しておけば良かっただろ」と言いたくなるが、ひとまず置いておくとしよう。
で、なぜか皆殺しにしたはずなのに、ジョニーは刺客に襲われる。
ジョニーは敵を返り討ちにするが、なぜ他にも一味がいたのか、なぜ皆殺しの件がバレたのかは分からないままだ。

ジョニーは刺客を始末した後、ライアンの家へ赴いて「全員をおびき出して殺そう」と持ち掛ける。ライアンが拒否すると、ジョニーは彼を殺そうと襲い掛かる。
だけど、ライアンを殺しても何の解決にもならないので、どういうつもりの行動なのかはサッパリ分からない。
で、ライアンが窮地に陥ると、ビリーがジョニーを射殺する。
粗筋でも書いたように、冒頭で彼は怖がって鹿を撃てなかった。そして野犬に怖がっていた時、ライアンの狙撃に助けられた。
そんなビリーが、今度はライアンを助けるために撃ったという形なんだろう。

映画はライアンがジョニーに車を運転させるシーンで終わるが、「何も終わっちゃいないだろ」と言いたくなる。
まずライアンは大勢を殺しているし、ビリーだって父親を守るためとは言えジョニーを射殺している。それなのに、警察に通報することもなく逃げているのだ。
だけど少なくともジョニーを殺した件に関しては、どう考えたって警察が捜査に乗り出すだろ。そうなれば、ライアンとジョニーが容疑者として追われる身になることは確実であって。
表面的には綺麗に終わらせているけど、投げっ放しもいいトコだぞ。

(観賞日:2025年12月28日)

 

*ポンコツ映画愛護協会