『タワーリング・インフェルノ』:1974、アメリカ

ダンカン建設会社によって、サンフランシスコに138階建て、全面ガラス張りの超高層ビル“グラス・タワー”が建てられた。しばらく留守にしていた設計担当者ダグ・ロバーツは完成祝賀パーティーが開かれる日にビルに戻り、スーザンとの愛を確認する。
地下の電気室では、キャラハン主任が配線のショートによるボヤ騒ぎに遭遇していた。50階の保安室にいる警備主任のジャーニガンは、コンピュータで地下の異常を確認するが、自動火災警報は作動しなかった。同じ頃、81階の倉庫でもボヤが発生していたが、警報が作動しなかったことから、誰一人として気付かない。
電気室から連絡を受けたダグは、部下のウィルと共に配電盤を調べる。すると、彼の指示とは全く違う安物のヒューズターミナルが使われていた。ジム・ダンカン社長の娘婿で工事部長のシモンズが、金を浮かせるために手抜き工事をしていたのだった。
その日の夜、パーティーに出席する人々がビルに集まって来た。パーカー上院議員夫妻、ラムゼイ市長夫妻、それにシモンズも妻のパティと共に現れた。彼らはエレベーターに乗り、パーティーが開かれる最上階のプロムナード・ルームに向かった。
ダンカン建設の社員ダン・ビグロウは、用事があると言ってパーティーに出席する人々を先に行かせ、自分は部下で恋人のローリーと密会する。パーティー会場では、詐欺師のハリー・クレイボーンがリゾレットという淑女を口説き落とそうとしている。
その頃、既に81階の倉庫室は火に包まれていた。火事に気付いたジャーニガンは、消防署への緊急連絡ボタンを押して現場へ向かう。81階にやって来たダグは異変を察知するが、扉を開けたウィルが大火傷を負ってしまう。
ダグはプロムナード・ルームに連絡を入れ、パーティー客を避難させてほしいと社長に依頼する。だが、社長は火はすぐに消えるはずで、最上階への影響は無いと楽観視する。そしてパーティーを台無しにしたくないと告げ、ダグの要請を拒否した。
やがて消防署の面々が駆け付け、消防チーフのオハラハンが指揮を執る。オハラハンは最上階に出向き、避難指示を出すよう強い態度で社長に告げる。社長はパーティー客にボヤが起きていることを明かし、念のために1階に移動してほしいと告げる。
社長の言葉を聞いたパーティー客が、エレベーターで1階へと降り始めた。だが、その頃、既に81階は火の海と化していた。手抜き工事のため、防火設備が全く揃っていなかったのだ。そして81階では爆発が発生し、火災はビル全体へと広がり始める…。

監督はジョン・ギラーミン、原作はリチャード・マーティン・スターン&トーマス・N・スコーティア&フランク・M・ロビンソン、脚本はスターリング・シリファント、製作&アクション・シークエンス監督はアーウィン・アレン、製作協力はシドニー・マーシャル、撮影はフレッド・コーネカンプ、アクション・シークエンス撮影はジョセフ・バイロック、編集はカール・クレス&ハロルド・F・クレス、美術はウィリアム・クレバー、衣装はポール・ザスタプネヴィッチ、音楽はジョン・ウィリアムズ。
出演はスティーヴ・マックィーン、ポール・ニューマン、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、スーザン・ブレイクリー、リチャード・チェンバレン、ジェニファー・ジョーンズ、O・J・シンプソン、ロバート・ヴォーン、ロバート・ワグナー、スーザン・フラナリー、シーラ・マシューズ、ノーマン・バートン、ジャック・コリンズ他。


T・N・スコーシア&F・M・ロビンソンの小説の映画化を企画していた20世紀フォックスと、R・M・スターンの小説の映画化を企画していたワーナー・ブラザースが、2つの企画を1つにまとめて、共同製作した超大作パニック・ムーヴィー。

オールスター・キャストが集められた今作品の中で、最初にクレジットされるのはオハラハン役のスティーヴ・マックィーンとダグ役のポール・ニューマン。
どちらのクレジットを先に出すのかが問題となり、結局は画面の左側にマックィーン、右側にニューマンの名前を出して、ただしマックィーンよりニューマンの方を上に位置するようにした。

2人の他に、ダンカン社長をウィリアム・ホールデン、スーザンをフェイ・ダナウェイ、ハリーをフレッド・アステア、パティをスーザン・ブレイクリー、シモンズをリチャード・チェンバレン、リゾレットをジェニファー・ジョーンズ、ジャーニガンをO・J・シンプソン、パーカーをロバート・ヴォーン、ビグロウをロバート・ワグナーが演じている。

作品の性質上、当然といえば当然なのだが、大半の人物は死ぬために登場する。
オールスター映画ではあるのだが、それぞれにカッコイイ見せ場が用意されているわけではない。むしろ、次々に惨めに死んでいくという感じである。
ちゃんした活躍の場を与えられているのは、ダグとマイケルぐらいだろうか。

そう、オールスター映画といえども、やはりマックイーンとニューマンは別格なのである。
似たようなシーンでの別の人物との比較をすれば、それが非常に分かりやすい。

火災でローリーの部屋に閉じ込められたビグロウは、助けを呼びに行くために走って部屋を横断しようとするが、あっという間に火に包まれて死亡する。
一方、子供を助けようとしたダグは、火災が広がっている部屋の中をゆっくりと歩き回っているのに、全く火に包まれることは無い。
それが、役者としての格の違いというモノだ。

女優にしても、やはりフェイ・ダナウェイだけは別格の扱いだ。
例えばローリーを演じるスーザン・フラナリーなどは、火に包まれてビルから転落死するという惨めな役回りだが、フェイ・ダナフェイはスタントシーンも全く存在せず、キレイなままで生き延びる。

まだギラーミンとアーウィン・アレンが完全に腐る前に撮った作品だが、やはりギラーミン、やはりアーウィン・アレンなので、作りはかなり大雑把である。
熱くなっているはずの手摺りをダグが平気で素手で握るとか、87階の部屋の扉が簡単に開いてしまうとか、バックドラフト現象が起きないとか。
ま、細かいことは気にしちゃダメってことで。

 

*ポンコツ映画愛護協会