『トルク』:2004、アメリカ&オーストラリア

バイクを走らせていたケイリー・フォードは、2台の車に行く手を塞がれた。フォードはスピードを上げて2台の真ん中を突っ切り、軽く振り切った。ダイナーに立ち寄った彼は、壁に貼られている大量の写真に目をやった。自分と恋人のシェーンの写真を見つけたフォードは、それを剥がして店を出た。車を運転していた2人が来て喧嘩を吹っ掛けるので、フォードは叩きのめして追い払った。バイカー仲間のヴァルとダルトンが来ると、彼は「今日は特別な日になる」と告げた。旅から戻ったフォードにとって、久々の再会だった。
フォードが仲間2人とバイクを走らせていると、チーム”リーパーズ“のトレイたちが絡んで来た。トレイはフォードに強い不快感を示し、挑発的な態度を取った。しかしパトカーが来たので、事を荒立てることは避けた。街に戻ったフォードはカスタム・ショップを経営するシェーンを尋ねるが、「もう終わったのよ」と冷たく拒絶される。フォードが「説明させてくれ。半年前は話せる状態じゃなかった」と釈明しても、シェーンは聞く耳を貸そうとしなかった。
シェーンが「こんな場所にいてもいいの?ヘンリーは貴方がバイクを盗んだと今でも思ってるのよ」と忠告していると、そのヘンリーがバイカーギャング”ヘリオンズ“の仲間を率いて現れた。ヘンリーの恋人チャイナは、シェーンを挑発した。シェーンが嫌味を返すとチャイナはナイフで襲い掛かろうとするが、ヘンリーが制止した。フォードは「俺のバイクはどこだ?」とヘンリーに詰め寄られるが、余裕の態度で「どこかにあるだろう」と告げた。
ヘンリーはバタフライナイフを構えようとするが、それより早くフォードが拳銃を突き付けた。ヘンリーは「バイクを返さない限り、お前を始末してやる」と捨て台詞を吐き、仲間を連れて去った。彼はトレイの元を訪れて「デカい取り引きがある」と告げ、手を組むよう持ち掛ける。しかしトレイは「お前らの目的は薬だろ。答えはノーだ」と拒絶した。トレイの弟ジュニアは「勿体無いじゃないか」と非難し、露骨に不快感を示した。
フォードはバイクを走らせるシェーンを追い掛け、一緒にクラブへ入ることを承諾させた。ジュニアが来て挑発して来たので、フォードはパンチを食らわせた。リーパーズが集まって来たので、フォードはシェーンを連れて移動する。ジュニアはトレイに叱責されるが、激しく反発した。店内でヘリオンズの仕掛けた乱闘が勃発し、ジュニアはトイレへ逃げ込んだ。そこにヘンリーがチャイナと仲間のルーサーを連れて現れ、「俺を騙しやがったな」と凄んだ。「もう一度だけチャンスをくれ。俺が兄貴を説得する」とジュニアは訴えるが、ヘンリーは「時間切れだ」と告げ、ルーサーに始末させた。
フォードは店を出てシェーンと2人きりになり、「半年間、君のことを思いながら走っていた。離れたのは仕方が無かった。半年前、俺は薬を見つけてしまったんだ」と釈明した。トレイは弟の死を知り、怒りに震えた。バーンズ保安官は彼に、チャイナが「犯人はバイクに乗った白人の男で黒とオレンジの皮ジャンを着ていた」と証言していることを教える。そのせいでトレイは、フォードが犯人だと誤解した。FBIのマクファーソン捜査官と若手のヘンダーソンが現場入りし、事件を担当することになった。
トレイは仲間たちに、フォードを捕まえるよう命じた。マクファーソンとヘンダーソンも、フォードをジュニア殺害犯として断定した。フォードはヴァルたちに「ヘンリーのことはどうするんだ?」と問われ、「無実を証明する。そのための舞台を用意し、警察にヘンリーを捕まえさせる。そして俺たちはメキシコへ行って楽しむんだ」と述べた。テレビのニュースを見ていたシェーンは、フォードが殺人容疑で指名手配されたことを知った。
ヘンリーはフォードに電話を掛け、バイクのありかを教えるよう要求した。フォードは「持ってないし、返す気も無い」と告げ、電話を切った。フォードを殺人犯と思い込んだガソリンスタンドの男たちが、銃を威嚇発砲してきた。しかしシェーンが背後から拳銃を突き付け、フォードを助けた。「ヘンリーは俺に手を引くよう脅しているんだ」と言うフォードに、彼女は「引けばいいでしょ」と告げる。だが、フォードは「これは俺の問題だ。手は引けない」と拒否した。
シェーンが警察に行くよう促すと、フォードは「警察には行かない」と拒んだ。リーパーズが来るのが見えたので、フォードたちはバイクで逃亡する。リーパーズが追い掛けて来るが、一行は洞窟に隠れてやり過ごした。フォードはヘンリーがジュニアを殺したと確信し、犯行に使われたチェーンがヘンリーのバイクに一致すると証明すれば全て終わりに出来ると考える。フォードはマクファーソンに電話を掛けて「ヘンリーが犯人だ。俺は罠に掛けられただけだ。奴は薬と繋がってる」と話すが、相手にされなかった。
フォードはヘンリーのバイクを手に入れるため、仲間を引き連れて出発した。待ち伏せていたリーパーズの追跡を受けた彼らは、森へと突っ込んだ。フォードたちは発砲を受けながらも、巧みな運転で次々に敵を蹴散らしていく。フォードはトレイに追われ、バイクごと列車に飛び乗った。フォードは車内を突っ切って飛び出し、トレイは後を追い掛ける。しかしタイヤがパンクしてバイクが倒れ、トレイは足を挟まれて動けなくなってしまった。
列車が迫って来るのを目にしたフォードは、トレイを助けに戻った。バイクを犠牲にしながらも、フォードはトレイを救出する。列車が通過している間に、フォードはトレイの前から姿を消した。フォードは追って来たシェーンのバイクに2人乗りし、ヴァル&ダルトンと合流する。リーパーズだけでなく大量の警官隊も張り込んでいることを知ったフォードだが、ヴァルから「何か考えはあるのか」と質問されて「計画がある」と言う。彼は仲間と共にトラックの荷台へ隠れ、警察の検問を突破してロサンゼルスに入った…。

監督はジョセフ・カーン、脚本はマット・ジョンソン、製作はニール・H・モリッツ&ブラッド・ラフ、共同製作はグレッグ・サープ、製作総指揮はマイク・ラックミル&グレアム・バーク&ブルース・バーマン、撮影はピーター・レヴィー、編集はハワード・E・スミス&デヴィッド・ブラックバーン、美術はピーター・J・ハンプトン、衣装はエリザベッタ・ベラルド、視覚効果監修はエリック・ダースト、音楽はトレヴァー・ラビン。
出演はマーティン・ヘンダーソン、アイス・キューブ、モネ・メイザー、ジェイ・ヘルナンデス、アダム・スコット、マット・シュルツ、ウィル・ユン・リー、ジェイミー・プレスリー、クリスティーナ・ミリアン、エディー・スティープレス、ニコール・マーセデス・ロビンソン、デイン・クック、ヘイデン・マクファーランド、トニー・ワイルド、ジム・コーディー・ウィリアムズ、ジェリー・ウィンセット、キンガ・フィリップス、ランス・ギルバート、ギーチ・ガンバ、ジョン・アシュカー、スコット・ワウ、ハリー・シェリー、ティナ・シェリー他。


『ワイルドスピード』や『トリプルX』を手掛けたニール・H・モリッツが製作に携わった映画。
ミュージック・クリップのディレクターとして活動しているジョセフ・カーンが初めて映画監督を務めており、脚本のマット・ジョンソンも本作品がデビュー。
ケイリーをマーティン・ヘンダーソン、トレイをアイス・キューブ、シェーンをモネ・メイザー、ダルトンをジェイ・ヘルナンデス、マクファーソンをアダム・スコット、ヘンリーをマット・シュルツ、ヴァルをウィル・ユン・リー、チャイナをジェイミー・プレスリー、ニーナをクリスティーナ・ミリアンが演じている。

『ザ・リング』のマーティン・ヘンダーソン、『エンジェル・アイズ』のモネ・メイザー、『オールド・ルーキー』のジェイ・ヘルナンデス、『ハイ・クライムズ』のアダム・スコット、『トランスポーター』のマット・シュルツ、『007/ダイ・アナザー・デイ』のウィル・ユン・リー、『グリッター きらめきの向こうに』のマックス・ビースレイなど、ヒット作や話題作で主要キャストに名を連ねた役者が揃っている。
という風には言えるのだが、でも印象としては「アイス・キューブ以外は地味」という感じだ。
全体的に華が無いというか、パッとしないというか。
それは役者だけの問題じゃなくて、キャラとして魅力的に描写できていないという問題もあるが。

マニアックな視点からキャストに注目するなら、ジェシー・ジェームズがアンクレジットでカスタム・ショップの客を演じている。
この人はオートバイのカスタム・ショップ「ウエストコースト・チョッパーズ」経営者でテレビ番組の司会も務める人だ。
ただ、そういうことよりも、「後にサンドラ・ブロックと結婚し、複数の女性と浮気しまくった上に暴露本まで出版し、サイテー男として名を馳せることになる」というスキャンダラスな部分の方が有名なんじゃないかな。

ザックリと言うならば、これは「馬鹿な連中が作った、馬鹿な連中しか出て来ない映画」である。
何か1つのことに熱中している人を称して、「なんちゃら馬鹿」という表現をすることがある。
だから本作品に関しても「バイク好きな奴らが作っている」とか「登場する連中がバイクに人生や命を懸けている」ということで、「バイク馬鹿」という意味で前述の言葉を使ったのだろうと解釈する人がいたとしたら、それは違う。
単純に、オツムが足りないという意味で使っている。
そもそも監督のジョセフ・カーンはバイク好きじゃないし、むしろバイクが怖くて乗ったことが無いような人だ。

劇中の人物がいかに馬鹿なのかってのは、それを示すシーンが幾つもある。っていうか、むしろ馬鹿に見えないシーンを見つける方が大変な作業じゃないかな。
みんな明らかに大人なのに、まだ学生なのかと思ってしまうぐらい幼稚な奴らだ。
そもそも、ケイリーとヘンリーが揉めている原因からして、「バイクを盗んだ、盗まない」ということなんだぜ。
ただのバイクじゃなくて麻薬が絡んでいるので、ホントは「どうでもいい」という問題ではないんだけど、でも映画を見ていると「どうでもいい」と言いたくなる。

なぜかチャイナの証言が裏取りもされないまま全面的に信用され、地元の保安官だけでなくFBI捜査官までフォードを犯人と決め付ける。
マクファーソンはフォードから「ヘンリーが犯人だ」と言われても全く相手にしなかったのに、「ヘンリーが半年前に問題を起こしている」と聞いた途端に「ヘンリーが全て仕組んだ犯人だ」と急に言い出す。
どういう思考回路なんだかサッパリ分からないが、単細胞な奴だなあと思っていたら、終盤になって彼がヘンリーと裏でつるんでいたことが明らかとなる。
だったら、なぜ「ヘンリーが仕組んだんだ」と言い出したのか。辻褄が合わないでしょ。

フォードは半年前、シェーンの店にあったヘンリーのバイクに麻薬が隠されていることを知って、それで逃げたらしいが、ちょっと良く分からない。
麻薬を見つけたのなら、警察に知らせりゃいいんじゃないのか。
なぜかシェーンは「ヤクを見つけたから逃げた」と言われてフォードを許しているけど、それって彼が逃げなきゃいけなかった理由の説明になってないでしょ。
それとも、その説明で彼が逃げた理由が理解できないワシがアホなのかな。

ヘンリーはバイクを取り戻そうとしているようだが、そのためにジュニアを殺してフォードに罪を被せるってのも良く分からん。
そんなことをしても、フォードがバイクのありかを教える気になるとは到底思えないぞ。
だって、それを教えたとしても、犯人だという疑いが解消されるわけでもないんだし。
ヘンリーが目的を果たしたいのなら、弱みを握ったり暴行を加えたりしてフォードを脅すか、取り引きを持ち掛けるか、その2つしか選択肢は無いと思うんだけど、その行動が目的達成のための内容に合致しているとは思えない。

ものすごく単純で薄っぺらい話なのに、なぜか妙に分かりにくくてゴチャゴチャしている。
その理由は、説明が下手なのと、そもそも説明が不足しているからだ。
ただし、じゃあキッチリと説明していれば物語が分かりやすくなり、それに伴って映画の印象が大きく変化したかというと、そうでもないけどね。
説明が厚くなって内容の理解が容易になったところで、やっぱり中身がペラペラでつまらないってのは変わらないんだから。

よく「頭をカラッポにして楽しむ映画」なんていう表現をすることがあるが、これは「思考を停止させ、出来れば内容を無視して映像だけを何となく見る映画」だ。
マトモに付き合っていたら、腹が立つか、途中で見るのが嫌になるか、そういう類の映画だ。
「とにかくバイクが走りまくってアクションやりまくっていれば、バイク好き&バイクアクション好きの皆さんは満足でございましょ?」という軽い気持ちを、製作サイドは持っていたのかもしれない。

バイクのアクションだけで満足してくれる観客も、いないわけではないだろう。
ただし、リアルなバイク・アクションをやっているわけではなくて、そこはファンタジーの世界に足を突っ込んだ描写になっているのよね。
それってバイク好きからすると、どうなのかねえ。
ちなみに私はバイク好きでもなんでもないのだが、「つまらん」としか感じなかった。
猛スピードでバイクを走らせている連中が会話を交わすのが有り得ないとか(当時はブルートゥースなんて無いし、生の声で喋っているのだが、聞こえるわけがない)、そういうのは置いておくとしても、充分なドラマ性が付随していないとか、キャラが魅力的じゃないとか、そういうのが大きなネック。

それと、バイク・アクションに徹底的にこだわっているのかと思ったら、後半にはフォードが車でチェイスをするシーンもあるんだよな。
それには、すっかり興醒めさせられる。
そりゃダメだろ。追って来る相手が車を使うのはいいけど、フォードは何があろうともバイクにこだわらないと。
その後の格闘アクションも要らないわ。
あと、肝心のフォードとヘンリーの最終対決より、その前のシェーン対チャイナの方が面白いってのはマズいだろ。

(観賞日:2014年5月14日)

 

*ポンコツ映画愛護協会