『トカレフ』:2014、アメリカ&フランス

ポール・マグワイアは娘のケイトリンを高校まで迎えに行き、車に乗せる。親子関係は良好で、ポールはケイトリンの進学適性試験やボーイフレンドであるマイケルのことを気にしている。ポールは友人のケインが営むダイナーへ行き、もう1人の友人であるダニーとも会う。ケインはポールに、16歳の誕生日を迎えるケイトリンのために土曜は店を貸し切りにすることを話す。ポールは彼らと別れ、市長が進める再開発計画の記者会見に同席する。その計画を請け負っているのが、彼の会社だからだ。
夜、ポールは妻のヴァネッサと共に、市長のために働くホワイトの夕食会へ行くことになった。ヴァネッサは後妻で、ケイトリンとは血が繋がっていない。家にはマイケルと友人であるエヴァンが遊びに来ている。ポールは奨学金を貰って皿洗いのバイトをしているマイケルに、稼ぎたければ今年の夏は仕事を紹介してやると持ち掛けた。ポールはマイケルが娘とデートしたがっているのを見抜き、薬に手を出していない真面目な男であることを確認した上で、「認めてもいい」と述べた。
ポールはホワイトや彼の友人たちと会食し、事業を始めたきっかけを問われる。しかし夕食会の最中にピーター・セント・ジョン警部が現れ、自宅で事件が発生したことを告げる。ポールとヴァネッサは急いで帰宅し、ピーターはマイケルが負傷したこと、エヴァンが病院で鎮静剤を投与されていることを説明した。ピーターはマイケルから聞いた話として、家に拳銃を持った覆面の3人組が乗り込んできたこと、ケイトリンが拉致されたことを語った。
ピーターは隣人が何も目撃していないこと、身代金の要求が無いことを夫妻に告げた。ポールが「トラブルは何も無い」と言うと、彼は「今はな。過去はどうだ?オコネルとは?」と問い掛ける。ポールは苛立って「いつからの知り合いだ」と告げる。「15年前の4Pの虐殺からだ。君を知ってる」とピーターは言い、「昔の君に戻ってもらいたくない。我々に任せろ」と述べた。ヴァネッサが「どうするの?」と訊くと、彼は「ニュースでポールの経歴を説明する。犯人が知らなければ慌てるし、ケイトリンを解放するかもしれない。知っていれば接触して来る。電話に盗聴器を仕掛けておく」と語った。
ピーターはヴァネッサに、「心当たりがあるとすれば、1人だけだ」と告げた。ヴァネッサは「どんなことをしても見つけて」と述べた。彼はマイケルの家を訪れ、「例え身代わりで撃たれても守って欲しかった」と告げた。「奴らの声を思い出せ。言葉に訛りは?匂いは?何か手がかりをくれ。娘に何かあれば責任を取らせるぞ」と彼はプレッシャーを掛けるが、マイケルは「何も覚えていないんです。あっという間だったから」と泣きそうな顔で言うだけだった。
ポールはケインとダニーを呼び出し、協力を求めた。「まだオコネルと繋がってるな。警察は俺を監視してる」と彼は話して金を渡そうとするが、ケインたちは「受け取れない。家族同然だ」と無償での手助けを約束した。ケインとダニーはチンピラのオリヴァーを訪ね、ケイトリンの誘拐犯について話すよう要求する。オリヴァーが「知ってたら話すよ」と無関係であることを主張すると、彼らは一緒にいた恋人のリサを殺そうとする。「神に誓って知らない」とオリヴァーが言うので、ケインたちは「信じるよ」と告げて去った。
ケインとダニーはポールと会い、「一晩中捜したが、誰も知らないようだ。犯人は鳴りを潜めてる」と報告した。翌朝、ケイトリンは死体となって発見された。ケイトリンの葬儀にはフランシス・オコネルも参列し、ポールはヴァネッサに紹介した。ポールはオコネルと2人になり、「君は立派になった。素晴らしい人生を送ってる。4Pの虐殺を覚えてるか。ロシア人が私にしたことを」と言われる。ポールが「もちろん」と告げると、オコネルは「私が君に言った言葉を覚えてるか。皆殺しにすると息巻いた時」と問い掛けた。
ポールが「既に多くを失ったと」と答えると、オコネルは「そうだ。君は何かをしようとするはずだ。やめておけ。警察に任せろ」と忠告する。ポールが納得できない様子を示すと、彼は「義理は無かったが、君が足を洗うのを助けただろ。君を助けた見返りに求めるのは、何もしないことだ。放っておけ」と述べた。ポールはケイン&ダニーを家に呼び、ヴァネッサに席を外させる。ダニーは「オコネルから君を見張るよう言われた」と告げ、ポールは警察の情報提供者に事件を調べさせるよう頼んだ。ケインが「言いたくなかったが」と口にすると、ポールは「あれは昔のことだ。上手く片付けただろ」と告げた。
ハンソンはピーターに弾道分析の資料を渡し、使用された拳銃がトカレフであることを報告した。さらに彼は、1983年と1988年に起きたチェルノフ・ファミリーの事件に関連していることを話した。その情報は警察の提供者を通じて、ケインとダニーの元にも届いた。ダニー「20年前だ。なぜ俺たちを知ってる?」とは言い、ケインは「俺は喋ってないぞ。お前もポールもだろ。なぜバレる?」と話す。ケインはポールの家へ行き、トカレフが犯行に使われたことを知らせた。
ポールはケイン&ダニーと共に、チェルノフの息が掛かった闇カジノを襲撃した。彼らは襲って来る連中を叩きのめし、銃を取ろうとした男は殺害した。ポールはケインたちに、「連中は俺たちを狙って来る。情報を得るには最適の方法だ」と述べた。帰宅した彼は安全な場所へ避難するようヴァネッサに指示するが、彼女は従わなかった。ポールは思ったような情報が得られないことから、ケインとダニーに「やり方を変えよう。情報を集めるためにロシア人が必要だ」と告げた。
ポールはストリップ・クラブへ乗り込み、ヴォリーというロシア人を捕まえようとする。ヴォリーが外へ逃げると、ダニーが発砲して深手を負わせる。ポールはヴォリーを捕まえ、「俺を知ってるはずだ。19年前、お前を車から放り出し、お前のボスの金を奪った」と言う。ヴォリーが「チェルノフは俺が盗んだと思って拷問した。お前のせいで指を失った」と告げると、ポールは「俺の娘を誰かが殺した。誰がやった?」と尋問して何度も殴り付ける。しかしヴォリーは死んでしまい、ポールは何も聞き出すことが出来なかった。
ピーターはポールと会い、「騒ぎを起こすな。誰も得をしない」と忠告する。ポールが「何のことは分からない」とシラを切ると、彼は「娘さんは生き返らない。辛いのは分かるが、こんなことを続けるなら、お前と仲間を永久にブチ込むぞ」と告げた。彼は車にはねられた息子のことを例に挙げ、復讐心を捨てるよう説いた。しかしポールは「息子さんは生きてる」と言い、耳を貸さなかった。彼はチェルノフの手下であるサーシャやヴィクトルたちのアパートへ乗り込み、そこにいた連中を次々に射殺した。
チェルノフは手下が殺されたという報告を受け、「犯人を見つけて連れて来い」と命じた。彼は「どうなってるんだ。俺が若い頃は、銃を使う前に言葉を交わした。暴力を使うのは、話し合いで解決しない時だけだった。しかし最近は、すぐに撃つ。理屈も作法も無い」嘆息した。ケインは店にチェルノフの手下たちが来るのを目撃し、奥へ隠れてポールに電話を入れた。しかしポールが駆け付ける前に彼は一味に捕まり、車で拉致されてしまった…。

監督はパコ・カベサス、脚本はジム・アグニュー&ショーン・ケラー、製作はリシャール・リオンダ・デル・カストロ&マイケル・メンデルソーン 製作協力はA・レイモンド・ハムリック三世&デヴィッド・ミルナー&ナタリー・ペロッタ、製作総指揮はパトリシア・エバリー&ヘイリー・マグワーク・アラビア&キャム・キャノン&マイク・ナイロン&ウィリアム・V・ブロミリーJr.&マーク・ウォード&ジェームズ・アグニュー&ショーン・ケラー&マーティン・J・バラブ&フレデリコ・ラペンダ&ルイス・デ・ヴァル&ダーマ・クレア、撮影はアンジェイ・セクラ、美術はヴィンセント・デフェリース、編集はロバート・A・フェレッティー、衣装はクリッター・ピアース、音楽はロラン・エケン。
主演はニコラス・ケイジ、共演はレイチェル・ニコルズ、マックス・ライアン、ダニー・グローヴァー、マイケル・マグレイディー、ピーター・ストーメア、パシャ・D・リチニコフ、パトリス・コル、ウェストン・ケイジ、マックス・ファウラー、オーブリー・ピープルズ、ジャック・ファラヒー、ロン・ゴールマン、マイケル・パパジョン、アミール・ザンディー=カリミ、ジョン・ダネリー、ギャリソン・バフ=タイラー、ポール・サンプソン、ケヴィン・ヤング、エレナ・サンチェス、エリック・C・シュミッツ、サラ・アン・シュルツ他。


『最終爆笑計画』や『恋するリストランテ』の脚本家であるパコ・カベサスが監督を務めた作品。
パコ・カベサスはスペインで2本の長編映画を監督しているが、ハリウッド映画は初めてだ。
脚本は『ジャーロ』のジム・アグニュー&ショーン・ケラー。
ポールをニコラス・ケイジ、ヴァネッサをレイチェル・ニコルズ、ケインをマックス・ライアン、ピーターをダニー・グローヴァー、ダニーをマイケル・マグレイディー、オコネルをピーター・ストーメア、チェルノフをパシャ・D・リチニコフ、ケイトリンをオーブリー・ピープルズが演じている。
若い頃のポールを演じているのは、ニコラス・ケイジの息子であるウェストン・ケイジだ。

ヴァネッサは後妻であり、ケイトリンとは血の繋がりが無いんだけど、この設定に何の意味があるのかサッパリ分からない。
わざわざ継母という必要性の乏しい設定を持ち込むからには、そこに何かしらの意味があるんだろうと思うのは当然だろう。しかし、仲が悪いわけでもないし、ヴァネッサが疑いを掛けられるわけでもない。
仮にポールの奥さんがケイトリンの実の母親だったとして、ストーリー展開に何か違いが生じるのかというと、何も無いのだ。
ひょっとすると、先にヴァネッサとケイトリンのキャスティングが決まって、「この2人で実の母娘という関係だと変だから、継母にしておこう」ってことだったのかもしれんけど、だとすれば不格好だなあ。

導入部で、ポールが市長の記者会見に同席している様子が描かれる。再開発計画に関わっていることは分かるが、どういうポジションにあるのかは分からない。
その後、夕食会のシーンにおける会話によって、どうやら計画を担当する会社のボスらしいってことは分かる。
しかし、ポールの「建設会社の社長」としての顔は、ほとんど見えて来ない。彼の会社は一度も登場しないし、大勢の部下を従えている様子も描かれない。
そりゃあ「復讐劇」という本筋には直接的に絡まないが、「足を洗って今はビジネスで成功している」ってことを、もう少しハッキリとした形で描写しておくべきじゃないかと。そこをボンヤリさせておくのは、得策とは思えない。

ポールから協力を求められたケインとダニーはオリヴァーを恫喝し、その恋人であるリサを殺そうとする。
しかし、ケイトリンを見つけるための行動とは言え、「やり過ぎだろ」という印象が強い。何しろ、オリヴァーが関係している証拠が無いどころか、そこに疑いを掛ける理由さえ全く分からないからだ。
実際、オリヴァーは全くの無関係なわけで、やっぱり「やり過ぎ」ってのは正しい感覚なのだ。
ポール自らの行動ではないにしても、「ケイトリンの奪還に燃える」という彼の行動に共感することが、初っ端から難しくなっている。

オコネルはポールが復讐を考えるだろうと読み、「物事は収まってる。何もするな」と告げる。
しかし、娘が殺されたら復讐心を燃やすというのは、ごく当たり前のことだ。ギャングであるオコネルが、「警察に任せろ。何もするな」と言うのは、ちょっと理解し難い。
もう年も取ったし、車椅子生活にもなったので、すっかり考え方が穏やかになったということなのかもしれんが、こいつを「ポールに復讐を思い留まらせようという役割」として動かすのは、ちょっと違和感を覚える。
これが事件の真相を知っているってことなら分からんでもないが、まるで知らないのに「復讐はやめとけ」と言うわけだから、そりゃ引っ掛かるわ。

それに関連して、実はもっと引っ掛かることがある。それは、「4Pの虐殺って何なのよ」ってことだ。
それについてはオコネルだけでなくピーターも言及しており、どうやらポールはギャング時代にケイン&ダニーと組んでデカい事件を起こしたことがあるようだ。
途中、何度か短い回想が挿入され、若い頃のポールたちが大金を盗んだり、人を撃ち殺したり、車を燃やしたりする様子が描かれる。だが、その断片が1つの事件として、ハッキリとした形を持つことは無いのだ。
後から出て来る映像や台詞などからすると、ポールたちはチェルノフの兄を殺して金を奪った過去があるようだが、それと「4Pの虐殺」はイコールじゃないみたいだし。

事件に「虐殺」とあるんだから、大勢の人を殺したってことだろうってのは推測できる。だが、詳細については最後まで明かされない。
しかし、そこはマクガフィンとして機能するような要素じゃないんだし、どこかのタイミングで、っていうか出来れば早い内に説明すべきだろう。
説明しないまま終わらせるぐらいなら、最初から中途半端に触れない方がいい。
仮に「ポールたちは過去にギャングだった」という設定だけだったらと考えた時に、そんなに支障は無いんだし。

弾道分析の結果を知らされたポールは、チェノルフが絡んでいると確信する。
トカレフが1983年と1988年に起きたチェルノフ・ファミリーの事件で使われたってことは、そこにポールが絡んでいるってことだ。しかし、具体的にどう絡んでいたのかは全く教えてくれないのだ。
だから、ポールが「チェルノフの仕業だ」と決め付けて荒っぽい行動に出ても、こっちはピンと来ないのだ。
それどころか、「確たる証拠も無いのに、安易に動き過ぎじゃねえか」と思ってしまう。
そういう方向でポールを暴走させるのなら、チェルノフとの過去の因縁を描写しておくってのは必要不可欠じゃないのか。

ポールがチェルノフの手下を次々に殺すのは、自分たちを狙わせて情報を得るのが目的だったはずだ。
ところが、いざチェルノフが行動を起こすと、呆気なくケインがボコられて拉致されてしまい、ポールは完全に後手に回っている。
向こうが狙い通りに動き始めたのに、そのための備えが全く出来ていないわけだから、底無しのバカじゃねえか。
しかもケインは殺されちゃうし、ポールはダニーに裏切りの濡れ衣を着せて殺しちゃうし、オコネルはチェルノフに殺されちゃうし、全てポールのせいなのよね。クソじゃねえか。

この映画、「ホントにチェルノフ・ファミリーの仕業かどうか分からないし」ということもあって、復讐に燃えるポールの行動に全く気持ちが乗らない。復讐劇なのに主人公の行動に乗れないってのは、普通に考えれば、かなりマズいことだ。
しかし終盤に入ると、「それは意図的だったんじゃないか」と思う。なぜなら、ポールの復讐劇にカタルシスが無いからだ。
そもそも復讐劇は遂行されないし、それどころか相手を間違えている。だから、最初から意図的に気持ちが乗らないように作っていたんじゃないかと思うのだ。
ただし、気持ちが乗らないように作ったから正解なのかというと、それはまた別の話だ。
それ以前の部分で、この映画には問題があるのでね。

この映画、かなり卑怯とも言える表現を序盤で使っている。
ピーターが「マイケルの話では、3人でビデオゲームをしていたらしい」と話した後、武装した覆面の3人組が押し入る様子が描かれる。
そういう描き方をすると、それは「事実としての回想シーン」という形になる。しかし完全ネタバレになるが、それは事実ではないのだ。
だったら、そこは「ピーターが言葉で説明し、それを受けてポールが勝手にイメージした映像」として描いておくべきだ。
それは巧みなミスリードではなく、キツい言い方をするなら単なるインチキだ。

しかも、それだけじゃないのだ。そこには、もう1つの問題点が含まれている。
それは、「警察が無能すぎる」ってことだ。
これまた完全ネタバレだが、マイケルは保身のために嘘の証言をしている。しかし、事前に綿密な計画を練って実行したわけではなく、事件が発生してから咄嗟に嘘をついているので、それを真実に偽装するための細工や証拠隠蔽の作業は杜撰なのだ。
にも関わらず、警察がマイケルの証言を全面的に信じ込むってのは不可解だ。ちゃんと現場検証すれば、侵入の形跡はないし、すぐに証言との不一致は見えるはずなのだ。
そこを「警察が無能だから分からなかった」ということで納得するのは無理だわ。

面倒なので、そろそろハッキリとした「事件の真相」を書いてしまうが、犯人はマイケルだ。ただし意図的にケイトリンを殺したのではなく、ポールの家にあったトカレフを軽い気持ちで触り、誤ってケイトリンを撃ったのだ。
で、それならマイケルは罪悪感を抱いているべきだろうし、話の作りとしても彼は容疑者の線から遠ざけるように描いておくべきだろう。
ところがポールが家を訪ねた時、目を閉じてイヤホンで音楽を聴いている彼の様子からは、ケイトリンを死なせたショックや罪悪感なんて全く見えないのだ。すんげえ普通に音楽を聴いており、その時点で違和感を抱かせるような態度なのだ。
それはミスリードとしてもマズい描写だし、真相が分かった後も「罪悪感を抱いていなかったのかよ」と言いたくなる描写でもあるぞ。

で、最終的にポールはマイケルが犯人と知っても復讐せず、自ら望んでチェルノフに殺される。
ザックリと言うならば「主人公が復讐に燃えるが相手を間違え、真相を知らされると犯人を許し、自分は殺される」という話なんだけど、それで観客に何を伝えたいのか、何をどう感じ取ってほしいのか、サッパリ分からない。
「復讐は虚しいだけだ」というのがテーマだとしたら、内容とズレがあるしね。
ポールが虚無感に見舞われるのは事件の捉え方や復讐相手を間違えたのが理由であり、ホントに彼の思い込んだ通りの犯行があった上で復讐を果たしていたら、どういう気持ちになったのかは分からないわけで。

あと、ポールは過去に金を強奪して人を殺す悪事を働いているので、仮にチェルノフが動いていたとしても、「そもそもテメエの行動が原因だろ」ってことになっちゃうんだよな。
そこを全く反省しておらず、「自分のせいでケイトリンが殺されたのではないか」と罪悪感や責任を感じて後悔することも無く、復讐心で突っ走られてもさ。
なんか色々と引っ掛かることが多すぎるわ。
つまり、もしもチェルノフの仕業だったとして、そりゃあ娘を殺されたらポールが復讐心を燃やすのは当然だけど、復讐を果たしてもカタルシスは無いだろうなあと思ってしまうんだよな。

事件の真相に意外性や驚きがあるのかと問われたら、何も迷わずに「イエス」と答える。
ただし、その意外性や驚きは歓迎できるものかと問われたら、これまた迷わずに「ノー」と答える。
いわゆる「誰得」にしか思えないドンデン返しであり、そのドンデン返しによって観客に与えるインパクトが生み出すモノは、それこそ虚しさぐらいしか無いだろう。
もしも観客にモヤモヤした気持ちを与えたいというのが狙いなら、それは大成功していると言っていいだろうけど、そんな映画、すんげえ嫌だわ。

(観賞日:2015年10月22日)

 

*ポンコツ映画愛護協会