『追憶の上海』:1998、中国

国民党政府による共産党弾圧の激しかった1936年の上海。アメリカ人外科医ロバート・ペインの住むアパートにチウチウという女性が重症の夫ジンを診察してほしいと訪ねてきた。往診に出掛けたペインはジンに対するチウチウの態度を見て、ペインは2人が夫婦ではないと気付く。
次の日、チウチウの家を訪れたペインは共産党員と勘違いされて逮捕される。だが革命家狩りの責任者ハオミンと知り合いだったため、なんとか解放される。診察室に戻ったペインをチウチウが訪れた。最初は非難するペインだったが、思い直して彼女の話を聞くことにする。
チウチウの案内でジンに会ったペイン。ジンとチウチウは共産党員で、偽装夫婦として上海にやって来たのだ。ペインはチウチウに惹かれていく。だがチウチウはジンに恋い焦がれていた。そしてジンは死んだ妻を忘れられずにいた。
ハオミンと再会したペインは、チウチウがハオミンの娘だと知らされる。ハオミンは彼女を泳がして共産党の幹部をおびき出そうと考えていた。彼はペインが協力者だということも知っていた。そしてペインは病院をクビになる。
職を失って酒に溺れる日々を過ごすペインだったが、新聞記事でチウチウがハオミンの元に戻ったことを知る。ハオミンの開くパーティー会場へ向かうペイン。だがその場でチウチウはハオミンを射殺し、逮捕される。連行されるチウチウのお腹の中にはジンの子供がいた。
ペインの元にジンがやって来た。チウチウが去った後、ジンは彼女がかけがえの無い存在だと気付いたのだ。ペインの協力でジンはチウチウと面会する。そしてジンは自分の身柄と引き換えに、チウチウを救おうとするのだが…。

監督はイエ・イン、脚本はチアン・チータオ&マーク・カプラン&アンディ・ナンサンソン、製作総指揮はチャン・フーピン、撮影はチャン・リー、編集はチョン・ロン、美術はチェン・ユンシュエン、衣装はモー・チュンチェ、録音はチー・チャンホワ、音楽はチャン・チェンイー。
主演はレスリー・チャン、共演はメイ・ティン、トッド・バブコック、タオ・ツァオルー、ロバート・マックレー、イエ・タンタン他。


1998年カイロ国際映画祭でシルバー・ピラミッド賞(審査員特別賞)と主演女優賞を受賞した作品。イエ・イン監督が耳にした話を基にしているらしい。ジンをレスリー・チャン、チウチウをメイ・ティン、ペインをトッド・バブコックが演じている。

基本的には、革命に翻弄される男女の愛を描いた壮大なスケールのラブストーリー。
ところがどっこい、実は「共産党は素晴らしい」という隠れメッセージが入っている。
原題の「紅色恋人」は、“共産党員(紅軍)の恋人”という意味だしね。
で、“共産党バンザイ”的な感覚がやたら鼻に付くせいか、たぶんそうなんだけど、肝心の(はずの)ラブストーリーが、妙に陳腐に感じられるのよね。

そもそも、ペインが病院の規則に逆らってまで、ジンとチウチウに積極的に関わろうとする必要って全く無いんだよなあ。まあね、チウチウに惹かれてるから、関わるんだろうけどさ。でも、ペインがチウチウに惚れていく過程も、それほど描かれているように思えないし。その時点で、違和感を抱いてしまったりするわけで。

で、どうやらジンが主役らしいんだけど、映画を観た限りでは、ペイン役が主役に思えるんだよね。ストーリーテラーとして登場したはずが、完全に物語の中心人物になっているわけですよ。まあ、それにしては中身の薄いキャラクターではあるんだけどね。
いや、だけど、ジンやチウチウも薄いな。
じゃあ、別にいいのか(いや、ダメだろ)。

 

*ポンコツ映画愛護協会